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59話 方位コンパス
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「い、異世界だとぉ?」
亜人王が頓狂な声を上げる。
「いよいよもってわけがわからんぞ」
彼は天使のセンター長に向き直る。
「お前らは知ってんのか?」
「あ、あぁ、存在することは古くからの文献にも書いてある。しかし、実際に観測したことはなかった」
センター長はマジマジと黒猫を眺める。
「まぁ、アルゴン・クリプトン以降、俺が来るまで異世界から来た者などいなかっただろうからな」
黒猫は前足で頭を掻き回す。
「待ってくれ。お前が異世界から来て、賢者の石や魔神王のことを知っていたのならば、なんでもっと早くから話さなかった?」
イルヴァーナが冷ややかに問い詰める。
確かに。イースが魔神王復活を目論んでいることがわかっていたのなら、事前に僕らは彼の野望を阻止できていたかもしれない。
「あぁ、それなんだがな」
猫はバツが悪そうに眼を細めた。
「俺は魔神王が復活するまで普通の猫だったんだよ。皮肉なことにヤツによって魔力が増量したことで俺の本来の力を少し取り戻せたんだ」
「どういうこと?」
今度は僕が問いかけた。
「世界ってのは異物に対して敏感なんだよ。外から入り込んだ俺たちみたいなのには、制限が課されるんだ」
「制限?」
「あぁ、世界に対する影響度が強い程、受ける制限も大きくなる。まぁ、簡単に言えば強いヤツ程弱体化しちまうってことだ」
亜人王がボリボリと頭を掻きだした。
「なんだかよくわからん話だな。それは外部からやって来たヤツが世界をめちゃくちゃにしちまうのを防ぐ為か? そんな魔術があるわけか?」
黒猫は首を振って否定する。
「魔術じゃない。これはどの世界でも共通の法則ってヤツだ。アルゴン・クリプトンもその制限を受けていた。だからヤツは魔神王を倒しきれなかったんだ」
逆に言えば、本来の力を発揮できればアルゴン・クリプトンは魔神王を倒せたんだ。
「だけど、本物の賢者の石ならどうにかできたのだろ?」
イルヴァーナが小首を傾げる。
「あぁ、だけどその当時はまだ確信が持てなかったらしい。それにアルゴンが賢者の石を使った場合、悪い方に作用する可能性もあった。だから、その時は魔神王を封印し、その脅威を食い止めるに留めた」
「じゃあ、そのクリプトンが天使たちにアナフィリア王国を監視統制させたのか?」
イルヴァーナが再び問いかける。
そこにはアルゴン・クリプトンに対する非難が見て取れる。
「まぁ託したのは間違いない。だが、ヤツが想定していたのとは大分違っていたようだがな」
天使たちは気まずそうに眼を逸している。
「アレが最善だったんだ。魔神王を封じ続けるには犠牲を払う必要があった」
「……その犠牲を押し付けられたのが私たちというわけか?」
センター長とイルヴァーナが対峙するのを黒猫が止める。
「その責任の後始末は後にしようぜ。今は魔神王たちのことだ。えっと、そうそう、アルゴンはこの世界から去った後、賢者の石のこと十分に調べ、その安全な使用法を見つけ出した。だが、その頃、彼は別世界の大きな戦いに巻き込まれていてな。代わりにこの俺がこの世界にやって来たわけだ」
別世界の戦いだなんて想像もできない。それに今は僕らの世界のことで精一杯だ。
「だけども俺も世界の制限を受け、自由な行動ができないでいた。ミミを開放できたのはホント良かった」
黒猫は自分の背中に乗るミニミミを見やりながら言った。
「で、お前が賢者の石を使って魔神王をどうにかしてくれんのか?」
亜人王が問いかけると黒猫は否定した。
「いや、残念ながら俺ではない」
「じゃあ、誰が?」
今度はクイーナが問いかける。
「アイト、お前だ」
黒猫の言葉に、その場にいた者の視線がすべて僕に向けられる。
みな一様に驚きの表情を浮かべている。だが、一番驚いているのは他ならぬ僕だ。
「え、僕?」
「そうだ。お前だ」
黒猫は他のみんなを見回す。
「こいつは最近魔術の才能を開花させたばかりではあるが、その潜在能力はこの国一だと俺は考えている。お前はどうだイルヴァーナ?」
イルヴァーナはジッと僕のことを見てくる。
「そうだな……私も猫の意見には同意するよ。少し悔しいが、アイトくんが私の実力を超えていくのは時間の問題だったと思う」
僕は衝撃を受けた。
あのイルヴァーナさんが僕に魔術の才能があると認めてくれた。
古代樹で初めて会った時、こんな凄い魔術師がいるのだと僕は憧れの気持ちで彼女を見ていた。そんな彼女が僕を?
嬉しさよりも、やはり驚きのほうが大きい。
「で、使用者はいいとして、肝心の石はどこにあるんだよ?」
亜人王が先を促す。
「あぁ、それならアルゴンがこの世界から立ち去る際に誰にも見つからないように隠したんだぜ」
「おいおい、今からその場所を探さなきゃなんねぇなんて言うんじゃないだろうな?」
「大丈夫だ。アルゴンはヒントを残していった。隠し場所ならすぐにわかるさ」
黒猫は僕を見上げる。
「アイト、これまでの旅でお前はいくつかのアルゴンの所持品を見つけてきたんじゃないのか?」
黒猫の指摘に僕はハッとする。
そうだ。確かに僕らは古代樹から始まり、行く先々で彼の所持品を発見してきた。
「あとカルネスト湖のモノで全部揃う。ナナ?」
「命令すんなバカネコ!」
ミニナナさんが僕に向き直る。
「アイトさん、Nanazonを使いたいって魔力を込めて念じてください」
僕はナナさんの言う通りにしてみた。
すると、僕の手元に彼女がいつも使っていた専用端末が現れた。
「これでカルネスト湖から持ってこられるリストを見てください。クリプトンの野郎の持ち物があるはずです」
彼女の言う通り探してみると、確かにあった。
【アルゴン・クリプトンの壊れた方位コンパス】
それを選択すると僕の手の平の上に丸い金属製のコンパスが現れた。
ただし、そのコンパスには針がついていない。
「これってもしかして?」
今度はボックス・ディメンションを開き、浮遊島の鳥人からもらった羽ペンを取り出す。
この羽ペンの中には方位コンパスの針が隠されていた。
みんなが見守る中、僕は針をコンパスに戻した。
「……あれ?」
何も起こらない?
「おいアイト、アルゴンの所持品はまだあっただろ?」
黒猫の言葉に僕は思い出した。
「クイーナ、君が持っているペンダントだ!」
亜人の姫君はペンダントを取り出した。
「これが賢者の石への鍵だったのか……」
亜人王が呟くように言った。
そのペンダントは亜人たちの間で受け継がれてきたモノだった。全てはこの時のために。
「はめ込まれている宝石がいるんだ」
黒猫の指示でペンダントから外された宝石を、今度は方位コンパスの裏面の窪みにはめ込んだ。
僕の手の上でそれは激しく揺れ動き、針がグルグルと回っている。
「ここはデーモン・ディメンションだから正しく機能していないが、元の世界に戻れば賢者の石の在処を示してくれるんだぜ」
亜人王が頓狂な声を上げる。
「いよいよもってわけがわからんぞ」
彼は天使のセンター長に向き直る。
「お前らは知ってんのか?」
「あ、あぁ、存在することは古くからの文献にも書いてある。しかし、実際に観測したことはなかった」
センター長はマジマジと黒猫を眺める。
「まぁ、アルゴン・クリプトン以降、俺が来るまで異世界から来た者などいなかっただろうからな」
黒猫は前足で頭を掻き回す。
「待ってくれ。お前が異世界から来て、賢者の石や魔神王のことを知っていたのならば、なんでもっと早くから話さなかった?」
イルヴァーナが冷ややかに問い詰める。
確かに。イースが魔神王復活を目論んでいることがわかっていたのなら、事前に僕らは彼の野望を阻止できていたかもしれない。
「あぁ、それなんだがな」
猫はバツが悪そうに眼を細めた。
「俺は魔神王が復活するまで普通の猫だったんだよ。皮肉なことにヤツによって魔力が増量したことで俺の本来の力を少し取り戻せたんだ」
「どういうこと?」
今度は僕が問いかけた。
「世界ってのは異物に対して敏感なんだよ。外から入り込んだ俺たちみたいなのには、制限が課されるんだ」
「制限?」
「あぁ、世界に対する影響度が強い程、受ける制限も大きくなる。まぁ、簡単に言えば強いヤツ程弱体化しちまうってことだ」
亜人王がボリボリと頭を掻きだした。
「なんだかよくわからん話だな。それは外部からやって来たヤツが世界をめちゃくちゃにしちまうのを防ぐ為か? そんな魔術があるわけか?」
黒猫は首を振って否定する。
「魔術じゃない。これはどの世界でも共通の法則ってヤツだ。アルゴン・クリプトンもその制限を受けていた。だからヤツは魔神王を倒しきれなかったんだ」
逆に言えば、本来の力を発揮できればアルゴン・クリプトンは魔神王を倒せたんだ。
「だけど、本物の賢者の石ならどうにかできたのだろ?」
イルヴァーナが小首を傾げる。
「あぁ、だけどその当時はまだ確信が持てなかったらしい。それにアルゴンが賢者の石を使った場合、悪い方に作用する可能性もあった。だから、その時は魔神王を封印し、その脅威を食い止めるに留めた」
「じゃあ、そのクリプトンが天使たちにアナフィリア王国を監視統制させたのか?」
イルヴァーナが再び問いかける。
そこにはアルゴン・クリプトンに対する非難が見て取れる。
「まぁ託したのは間違いない。だが、ヤツが想定していたのとは大分違っていたようだがな」
天使たちは気まずそうに眼を逸している。
「アレが最善だったんだ。魔神王を封じ続けるには犠牲を払う必要があった」
「……その犠牲を押し付けられたのが私たちというわけか?」
センター長とイルヴァーナが対峙するのを黒猫が止める。
「その責任の後始末は後にしようぜ。今は魔神王たちのことだ。えっと、そうそう、アルゴンはこの世界から去った後、賢者の石のこと十分に調べ、その安全な使用法を見つけ出した。だが、その頃、彼は別世界の大きな戦いに巻き込まれていてな。代わりにこの俺がこの世界にやって来たわけだ」
別世界の戦いだなんて想像もできない。それに今は僕らの世界のことで精一杯だ。
「だけども俺も世界の制限を受け、自由な行動ができないでいた。ミミを開放できたのはホント良かった」
黒猫は自分の背中に乗るミニミミを見やりながら言った。
「で、お前が賢者の石を使って魔神王をどうにかしてくれんのか?」
亜人王が問いかけると黒猫は否定した。
「いや、残念ながら俺ではない」
「じゃあ、誰が?」
今度はクイーナが問いかける。
「アイト、お前だ」
黒猫の言葉に、その場にいた者の視線がすべて僕に向けられる。
みな一様に驚きの表情を浮かべている。だが、一番驚いているのは他ならぬ僕だ。
「え、僕?」
「そうだ。お前だ」
黒猫は他のみんなを見回す。
「こいつは最近魔術の才能を開花させたばかりではあるが、その潜在能力はこの国一だと俺は考えている。お前はどうだイルヴァーナ?」
イルヴァーナはジッと僕のことを見てくる。
「そうだな……私も猫の意見には同意するよ。少し悔しいが、アイトくんが私の実力を超えていくのは時間の問題だったと思う」
僕は衝撃を受けた。
あのイルヴァーナさんが僕に魔術の才能があると認めてくれた。
古代樹で初めて会った時、こんな凄い魔術師がいるのだと僕は憧れの気持ちで彼女を見ていた。そんな彼女が僕を?
嬉しさよりも、やはり驚きのほうが大きい。
「で、使用者はいいとして、肝心の石はどこにあるんだよ?」
亜人王が先を促す。
「あぁ、それならアルゴンがこの世界から立ち去る際に誰にも見つからないように隠したんだぜ」
「おいおい、今からその場所を探さなきゃなんねぇなんて言うんじゃないだろうな?」
「大丈夫だ。アルゴンはヒントを残していった。隠し場所ならすぐにわかるさ」
黒猫は僕を見上げる。
「アイト、これまでの旅でお前はいくつかのアルゴンの所持品を見つけてきたんじゃないのか?」
黒猫の指摘に僕はハッとする。
そうだ。確かに僕らは古代樹から始まり、行く先々で彼の所持品を発見してきた。
「あとカルネスト湖のモノで全部揃う。ナナ?」
「命令すんなバカネコ!」
ミニナナさんが僕に向き直る。
「アイトさん、Nanazonを使いたいって魔力を込めて念じてください」
僕はナナさんの言う通りにしてみた。
すると、僕の手元に彼女がいつも使っていた専用端末が現れた。
「これでカルネスト湖から持ってこられるリストを見てください。クリプトンの野郎の持ち物があるはずです」
彼女の言う通り探してみると、確かにあった。
【アルゴン・クリプトンの壊れた方位コンパス】
それを選択すると僕の手の平の上に丸い金属製のコンパスが現れた。
ただし、そのコンパスには針がついていない。
「これってもしかして?」
今度はボックス・ディメンションを開き、浮遊島の鳥人からもらった羽ペンを取り出す。
この羽ペンの中には方位コンパスの針が隠されていた。
みんなが見守る中、僕は針をコンパスに戻した。
「……あれ?」
何も起こらない?
「おいアイト、アルゴンの所持品はまだあっただろ?」
黒猫の言葉に僕は思い出した。
「クイーナ、君が持っているペンダントだ!」
亜人の姫君はペンダントを取り出した。
「これが賢者の石への鍵だったのか……」
亜人王が呟くように言った。
そのペンダントは亜人たちの間で受け継がれてきたモノだった。全てはこの時のために。
「はめ込まれている宝石がいるんだ」
黒猫の指示でペンダントから外された宝石を、今度は方位コンパスの裏面の窪みにはめ込んだ。
僕の手の上でそれは激しく揺れ動き、針がグルグルと回っている。
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