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55話 黄金の男
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「え!?」
すぐ近くにいたはずなのに、いつの間にかイースの姿が消えていた。
「……なに、アイツ?」
ナナさんの声に僕は再び正面に向き直った。
彼女の視線の先には金色の光の源に向けられている。徐々に収まりつつある光の中から人型の何者かが姿を現した。黄金色の髪と肌、そして眼の色は賢者の石のように鮮やかな赤色。
そう、それは人の形(見た目的に男だ)をしているものの決して人間でないことは明らかだった。
圧倒的な魔力と存在感を発している。生物としての次元が違う。
ソイツは破壊されて墜落してくる天使のシャトルに目を向けている。
「あんた、アレが何なのか知らないの?」
僕らの側に降り立ったシシーにナナさんが尋ねる。
「さぁ、わかりませんわ……」
シシーも油断なく金色の男を見つめている。
「でも、もしかしたら……」
「なに?」
「私たちを魔神に進化させた源……」
シシーは呟くように言う。
「魔神王……」
僕は先程聞いた言葉を口にする。
「え? 何ですかアイトさん?」
僕は先程イースが発した言葉のことを彼女たちに話した。
「魔神王……イースはあの存在のことを知っているってわけですね。嫌な予感がしますわ」
シシーが考えに耽りながら言う。
「てか、イースのヤツはホントどこ行ったんでしょうね」
ナナさんは辺りをキョロキョロと見回している。
「シシー、みんな!」
イルヴァーナの声がした。そちらを見ると彼女の他に亜人王やその娘のクイーナの姿もある。そして亜人王に抱えられている男はアナフィリア王国一の槍使いだった。
千年王との戦いで負傷したらしい。今は意識も失っているようだ。
ドラゴンに乗ったミミは落ちてくるシャトルの破片を下の兵士たちに当たらないよう吹き飛ばしている。
そしてオルトロス形態のニニアリアは珍しく静かに魔神王の方を眺めている。
みな千年王と天使たちの脅威が去ったことに安堵しつつも、突如として現れた黄金の男に困惑している。
「あいつは一体なんなんだ?」
亜人王が金色の男を示しながら問いかける。
僕は簡潔に事情を話した。
「魔神王? そんな存在聞いたことがないな。で、ヤツは味方なのか?」
その問いに答える者はいなかった。
確かに魔神王は天使たちのシャトルを撃墜した。
しかし、今の彼から発せられている魔力はどこまでも邪悪に思える。
彼を中心に魔力の濃度が増し、そこの空間がどんどん歪み出している。
「あの者に悪意があろうとなかろうと、存在しているだけでこの世界を歪めてしまいますわ」
シシーの言う通りに思える。
このままあの魔神王を放っておけば大変なことになることが容易に予想できる。
「放っておけないというわけか。しかし、千年王との戦いで我々は疲弊している」
亜人王の言う通り、四族同盟軍の大半は怪我を動けない様子だ。
「奴と戦う余力はーー」
「わらわたちはまだ戦えるっての」
亜人王の言葉をナナさんが遮る。
「あんな訳のわかんないヤツ、とっとと倒してしまえば良いでしょ」
「もう少し様子を見るべきな気もするけれど……」
魔神王は周りを見回すことをやめ、僕らの方に視線を向ける。
「向こうもその気になったみたい」
魔神王は僕らの方に足を一歩踏み出した。
「!?」
と、その時、いきなり魔神王の体が固まった。
石像のように動かない。
彼を中心に白い魔術印が浮かび上がる。
「まさか!」
シシーが声を上げる。
魔神王の背後にゆらりと煙のような姿の人型が浮かび上がった。
「イース!!」
半透明の彼はニヤリと笑みを浮かべると、その手を動けないでいる魔神王に突き刺した。
瞬間、周囲は再び金色の光に満たされる。
「彼の狙いは最初からこれだったのだわ!」
シシーが目を細めながら言う。
その場にいた多くの者は何が起きているのか理解できないまま、事態は深刻になっているのが嫌でもわかる。
光が収まると、そこには変わらず魔神王が立っている。
ただし、雰囲気が先程までとは別人のようだ。
イースの面影がある。
「君たちには感謝しているよ」
魔神王が口を開いた。その声は紛れもなくイースのモノだった。
「千年前からの悲願、こうして叶えてくれたのだからね」
魔神王の肉体に乗り移ったイースはニヤリと笑みを浮かべて言う。
「これがあなたの真の目的だったわけ? その魔神王の肉体を乗っ取ることが?」
シシーの問い掛けにイースはゆっくりと頷いた。
「そうだよ。全てはこの究極の生命体、魔神王を手に入れる為の戦いだったのさ」
すぐ近くにいたはずなのに、いつの間にかイースの姿が消えていた。
「……なに、アイツ?」
ナナさんの声に僕は再び正面に向き直った。
彼女の視線の先には金色の光の源に向けられている。徐々に収まりつつある光の中から人型の何者かが姿を現した。黄金色の髪と肌、そして眼の色は賢者の石のように鮮やかな赤色。
そう、それは人の形(見た目的に男だ)をしているものの決して人間でないことは明らかだった。
圧倒的な魔力と存在感を発している。生物としての次元が違う。
ソイツは破壊されて墜落してくる天使のシャトルに目を向けている。
「あんた、アレが何なのか知らないの?」
僕らの側に降り立ったシシーにナナさんが尋ねる。
「さぁ、わかりませんわ……」
シシーも油断なく金色の男を見つめている。
「でも、もしかしたら……」
「なに?」
「私たちを魔神に進化させた源……」
シシーは呟くように言う。
「魔神王……」
僕は先程聞いた言葉を口にする。
「え? 何ですかアイトさん?」
僕は先程イースが発した言葉のことを彼女たちに話した。
「魔神王……イースはあの存在のことを知っているってわけですね。嫌な予感がしますわ」
シシーが考えに耽りながら言う。
「てか、イースのヤツはホントどこ行ったんでしょうね」
ナナさんは辺りをキョロキョロと見回している。
「シシー、みんな!」
イルヴァーナの声がした。そちらを見ると彼女の他に亜人王やその娘のクイーナの姿もある。そして亜人王に抱えられている男はアナフィリア王国一の槍使いだった。
千年王との戦いで負傷したらしい。今は意識も失っているようだ。
ドラゴンに乗ったミミは落ちてくるシャトルの破片を下の兵士たちに当たらないよう吹き飛ばしている。
そしてオルトロス形態のニニアリアは珍しく静かに魔神王の方を眺めている。
みな千年王と天使たちの脅威が去ったことに安堵しつつも、突如として現れた黄金の男に困惑している。
「あいつは一体なんなんだ?」
亜人王が金色の男を示しながら問いかける。
僕は簡潔に事情を話した。
「魔神王? そんな存在聞いたことがないな。で、ヤツは味方なのか?」
その問いに答える者はいなかった。
確かに魔神王は天使たちのシャトルを撃墜した。
しかし、今の彼から発せられている魔力はどこまでも邪悪に思える。
彼を中心に魔力の濃度が増し、そこの空間がどんどん歪み出している。
「あの者に悪意があろうとなかろうと、存在しているだけでこの世界を歪めてしまいますわ」
シシーの言う通りに思える。
このままあの魔神王を放っておけば大変なことになることが容易に予想できる。
「放っておけないというわけか。しかし、千年王との戦いで我々は疲弊している」
亜人王の言う通り、四族同盟軍の大半は怪我を動けない様子だ。
「奴と戦う余力はーー」
「わらわたちはまだ戦えるっての」
亜人王の言葉をナナさんが遮る。
「あんな訳のわかんないヤツ、とっとと倒してしまえば良いでしょ」
「もう少し様子を見るべきな気もするけれど……」
魔神王は周りを見回すことをやめ、僕らの方に視線を向ける。
「向こうもその気になったみたい」
魔神王は僕らの方に足を一歩踏み出した。
「!?」
と、その時、いきなり魔神王の体が固まった。
石像のように動かない。
彼を中心に白い魔術印が浮かび上がる。
「まさか!」
シシーが声を上げる。
魔神王の背後にゆらりと煙のような姿の人型が浮かび上がった。
「イース!!」
半透明の彼はニヤリと笑みを浮かべると、その手を動けないでいる魔神王に突き刺した。
瞬間、周囲は再び金色の光に満たされる。
「彼の狙いは最初からこれだったのだわ!」
シシーが目を細めながら言う。
その場にいた多くの者は何が起きているのか理解できないまま、事態は深刻になっているのが嫌でもわかる。
光が収まると、そこには変わらず魔神王が立っている。
ただし、雰囲気が先程までとは別人のようだ。
イースの面影がある。
「君たちには感謝しているよ」
魔神王が口を開いた。その声は紛れもなくイースのモノだった。
「千年前からの悲願、こうして叶えてくれたのだからね」
魔神王の肉体に乗り移ったイースはニヤリと笑みを浮かべて言う。
「これがあなたの真の目的だったわけ? その魔神王の肉体を乗っ取ることが?」
シシーの問い掛けにイースはゆっくりと頷いた。
「そうだよ。全てはこの究極の生命体、魔神王を手に入れる為の戦いだったのさ」
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