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39話 アイトさん、のんびりしましょう
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明日の百年王に備えて、僕らはつかの間の休息を浮遊島で過ごすことになった。
鳥人の長曰く、浮遊島の周りの雲海には虹色魚という世にも珍しい魚が生息しているらしく、とても美味しいらしい。
と言うわけで、僕らは今釣りをしている。
雲海に向かって釣り糸をたらすというのも初めての経験だ。
「こんなにのんびりしていていいのかな?」
僕は誰ともなしに呟く。
「どうせ明日まで来ないことがわかっているんだ。今から気を張り詰める必要はないさ。今のうちにしっかり休息を取ろう」
イルヴァーナが雲海を眺めながら言う。
「そうですよアイトさん! 今はのんびり楽しみましょう!」
隣のナナさんも竿を引っ張り回しながら同調する。
「それはいいとして。あなたたちと私たちとで釣竿の質が違い過ぎないかしら!?」
シシーがナナさんに詰め寄る。
言われてみれば、確かに僕らが使っている竿とシシーとイルヴァーナが使っているモノは全然違う。彼女たちのはハッキリ言ってボロ竿だ。
「もうそれしか無かったんだよーだ」
「嘘おっしゃい!」
ちなみにミミにも僕らと同じ上等な竿が貸し与えられていた。彼女は釣りなど構わず眠りこけている。竿の管理は彼女の解放者である黒猫が行っていた。なんとも器用な猫だ。
「さぁ、大物を狙っていきましょうアイトさん!」
ナナさんは張り切って竿を引っ張った。
それから約2時間後。
10匹くらいの虹色魚が釣り上げられていた。
釣ったのはシシーとイルヴァーナだけだ。僕らは一切釣れなかった。
「まぁ、日頃の行いですわね!」
「うぅ、そんな馬鹿な」
ナナさんは釣竿を放り投げ、懐からダイナマイトを取り出した。
「ちょ、ナナさん! 何する気?」
「もちろん、ダイナマイト漁ですよ!」
笑顔で火を付けようとするナナさんを僕はなんとか押し止めさせた。
◆
日が傾き、雲海が黄金色に染まり始めた。
僕らはキャンピングカーの前でバーベキューセットなるモノを取り囲んでいた。
焼けた虹色魚は鳥人の長が言う通りとても美味しかった。
食事が終わると、僕らはのんびりと金色の雲海を眺めていた。
「こうしてのんびりするのも久しぶりだな」
イルヴァーナが言う。
「魔導技士団はいつも忙しいんですか?」
「あぁ、国を脅かす存在は決していなくならないものさ」
そんなイルヴァーナの言葉にナナさんは鼻で笑う。
「そんな生き方のどこが良いんだか」
「ナナくん、君の意見も良くわかるよ。だが、誰かが担わないと……」
ナナさんは肩を竦めた。
「……こうして雲の上にいると古代樹の時のことを思い出すね」
イルヴァーナが髪を掻き上げながら言う。
そう言えば、古代樹では彼女たちに初めて出会った。あの頃はこんな国の命運を賭けた戦いに参加するとは思わなかった。
「アイトくん、君はあの時よりも強くなっているな」
「そうですかね?」
面と向かって言われると照れてしまう。
「そりゃそうですよ。アイトさんには才能があるし、このわらわが魔術のイロハを教えて差し上げましたから!」
ナナさんが胸を張って言う。
「あ、そうだ。そろそろクロスボウだけじゃ心許なくないですか? 良かったらコレを使ってみませんか?」
そう言って彼女はハンドガンを僕に差し出した。
「え、僕が使っていいの?」
「もちろんです。今のアイトさん使いこなせるでしょう。ついでにこれも」
ナナさんはさらに魔剣ダーインスレイヴも手渡してきた。
「え、いいの!?」
「ちょっと! そもそもそれは私のでしょ!」
シシーが割って入る。
「まだ言ってんの、あんた」
「あなたね! って、まぁ、別に良いですけど。ナナよりはアイトさんの方が大切に使ってくれそうですもの」
「あ?」
僕はシシーに食ってかかろうとするナナさんを抑えて、2人に礼を述べた。
「大切に使わせてもらうよ」
僕は魔剣を構えた。
これを使いこなせるようになれば、僕はもっと強くなれる。
「ところで明日のことなんだけど」
シシーが僕とイルヴァーナを交互に見やる。
「あなたたち2人だけで百年王と戦ってみない?」
鳥人の長曰く、浮遊島の周りの雲海には虹色魚という世にも珍しい魚が生息しているらしく、とても美味しいらしい。
と言うわけで、僕らは今釣りをしている。
雲海に向かって釣り糸をたらすというのも初めての経験だ。
「こんなにのんびりしていていいのかな?」
僕は誰ともなしに呟く。
「どうせ明日まで来ないことがわかっているんだ。今から気を張り詰める必要はないさ。今のうちにしっかり休息を取ろう」
イルヴァーナが雲海を眺めながら言う。
「そうですよアイトさん! 今はのんびり楽しみましょう!」
隣のナナさんも竿を引っ張り回しながら同調する。
「それはいいとして。あなたたちと私たちとで釣竿の質が違い過ぎないかしら!?」
シシーがナナさんに詰め寄る。
言われてみれば、確かに僕らが使っている竿とシシーとイルヴァーナが使っているモノは全然違う。彼女たちのはハッキリ言ってボロ竿だ。
「もうそれしか無かったんだよーだ」
「嘘おっしゃい!」
ちなみにミミにも僕らと同じ上等な竿が貸し与えられていた。彼女は釣りなど構わず眠りこけている。竿の管理は彼女の解放者である黒猫が行っていた。なんとも器用な猫だ。
「さぁ、大物を狙っていきましょうアイトさん!」
ナナさんは張り切って竿を引っ張った。
それから約2時間後。
10匹くらいの虹色魚が釣り上げられていた。
釣ったのはシシーとイルヴァーナだけだ。僕らは一切釣れなかった。
「まぁ、日頃の行いですわね!」
「うぅ、そんな馬鹿な」
ナナさんは釣竿を放り投げ、懐からダイナマイトを取り出した。
「ちょ、ナナさん! 何する気?」
「もちろん、ダイナマイト漁ですよ!」
笑顔で火を付けようとするナナさんを僕はなんとか押し止めさせた。
◆
日が傾き、雲海が黄金色に染まり始めた。
僕らはキャンピングカーの前でバーベキューセットなるモノを取り囲んでいた。
焼けた虹色魚は鳥人の長が言う通りとても美味しかった。
食事が終わると、僕らはのんびりと金色の雲海を眺めていた。
「こうしてのんびりするのも久しぶりだな」
イルヴァーナが言う。
「魔導技士団はいつも忙しいんですか?」
「あぁ、国を脅かす存在は決していなくならないものさ」
そんなイルヴァーナの言葉にナナさんは鼻で笑う。
「そんな生き方のどこが良いんだか」
「ナナくん、君の意見も良くわかるよ。だが、誰かが担わないと……」
ナナさんは肩を竦めた。
「……こうして雲の上にいると古代樹の時のことを思い出すね」
イルヴァーナが髪を掻き上げながら言う。
そう言えば、古代樹では彼女たちに初めて出会った。あの頃はこんな国の命運を賭けた戦いに参加するとは思わなかった。
「アイトくん、君はあの時よりも強くなっているな」
「そうですかね?」
面と向かって言われると照れてしまう。
「そりゃそうですよ。アイトさんには才能があるし、このわらわが魔術のイロハを教えて差し上げましたから!」
ナナさんが胸を張って言う。
「あ、そうだ。そろそろクロスボウだけじゃ心許なくないですか? 良かったらコレを使ってみませんか?」
そう言って彼女はハンドガンを僕に差し出した。
「え、僕が使っていいの?」
「もちろんです。今のアイトさん使いこなせるでしょう。ついでにこれも」
ナナさんはさらに魔剣ダーインスレイヴも手渡してきた。
「え、いいの!?」
「ちょっと! そもそもそれは私のでしょ!」
シシーが割って入る。
「まだ言ってんの、あんた」
「あなたね! って、まぁ、別に良いですけど。ナナよりはアイトさんの方が大切に使ってくれそうですもの」
「あ?」
僕はシシーに食ってかかろうとするナナさんを抑えて、2人に礼を述べた。
「大切に使わせてもらうよ」
僕は魔剣を構えた。
これを使いこなせるようになれば、僕はもっと強くなれる。
「ところで明日のことなんだけど」
シシーが僕とイルヴァーナを交互に見やる。
「あなたたち2人だけで百年王と戦ってみない?」
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