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37話 アイトさん、他の女たちと楽しそうですねー
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浮遊島に向けて出発してから二日程過ぎた。
今僕は運転席に座り、下に広がる雲海を眺めている。
この二日間にちょっとしたトラブルがいくつか起きていた。
まずミミの解放者である黒猫が車内で行方不明になり、みんなで探した。
結局、彼は車内後部にある物置でアルゴン・クリプトンのペンダントで遊んでいるところをナナさんが見つけた。
そして次に、僕とナナさんがほぼ一緒のベッドで寝ていることにシシーが抗議し、怒ったナナさんが彼女を飛行船から蹴り落とそうとしたりした。
最後にイルヴァーナがたまには料理を作ると言いだした。任せたところ、呪われた物体が出来上がるという始末だ。
まぁ、色々あったけど僕は結構楽しかった。
こういう日常が毎日送れたらいいのになどと考えていると、隣の助手席にイルヴァーナが腰掛けてきた。
「失礼するよ」
「はい、どうぞ」
イルヴァーナはフロントガラスから広がる空を眺めた。
ちなみにダッシュボードの上の部分には丸くなったミミと黒猫が眠っている。ここが良く日が当たって気持ちがいいらしい。
「もうすぐ到着するそうだよ」
「意外と早かったですね」
「そうだな」
これから最後の百年王と戦うとなると、少し気が重い。
「なぁ、アイトくん。ちょっと質問があるんだが?」
「何でしょう?」
「あのイースとかいう魔神、信用できると思うか?」
僕はゆっくりとイルヴァーナの方を向いた。彼女も僕の方を見ている。
「信用できるかどうかは正直わかりません。だけど、彼には恐怖を感じています」
「恐怖か……私も似たような印象だったよ」
「イルヴァーナさんも?」
イースは他の魔神たちとは異質な存在だ。
他者の肉体を乗っ取って自分のモノにするだなんて。
「アナフィリア王家はあの魔神に支配されている。それは危険なことだと思う。なぜ王家はあの魔神を開放したのだろう?」
「魔神の力の恩恵が目的でしょうか?」
「理由はもっと単純ですわ」
僕らの話にいつの間にか側に来ていたシシーが入ってきた。
「イースが元王族の人間だから。今の王家にとって彼は大切なご先祖様ですもの。それはもう神のように崇めているのかも」
「なるほど、本当にあのイースがこの国を掌握しているわけだ」
ふと僕は思いついたことを話してみようと思った。
「このまま百年王を倒さず放置するというのはどうなんでしょう? シルフたちには申し訳ないけど、千年王は目覚めないんですよね?」
するとシシーは首を振る。
「アイトさん、残念ながらそれでは防ぐことはできないのです。千年王が目覚めるのはこの国の魔力総量が一定値を超えた時です。最後の百年王を倒さずとも、いずれ目覚めます」
そっか。
百年王を一体でも倒して時点でもう後戻りはできないんだ。
つもり、僕とナナさんとで戦いを始めてしまった。
それなら、僕らは千年王を倒す為に頑張らないと。
自分の甘かった考えを捨てなければならない。
「僕はこの世界のこと、魔神のことも全然知らないんだね」
そう言うと、シシーは笑みを浮かべた。
「それはアイトさんだけではありません。イルヴァーナも聞いて。私たち魔神のことで、ついでに教えておくことがありますの」
僕とイルヴァーナは顔を見合わせ、シシーの方を向く。
「何だいシシー?」
「魔神の魔術デーモン・ディメンションは当人しか使用できない、ということは知っていますね?」
僕らは頷いた。
「しかし、魔神の解放者になら、一時的に貸し与えることができるのです。かなりの魔力を消費してしまいますが……」
それは驚きだ。
僕の場合、nanazonを自由に使えるようになるってことか。
「なぜそんな話をするんだいシシー?」
するとシシーは肩を竦める。
「さぁ、何ででしょうね?」
僕とイルヴァーナは再び顔を見合わせた。
今僕は運転席に座り、下に広がる雲海を眺めている。
この二日間にちょっとしたトラブルがいくつか起きていた。
まずミミの解放者である黒猫が車内で行方不明になり、みんなで探した。
結局、彼は車内後部にある物置でアルゴン・クリプトンのペンダントで遊んでいるところをナナさんが見つけた。
そして次に、僕とナナさんがほぼ一緒のベッドで寝ていることにシシーが抗議し、怒ったナナさんが彼女を飛行船から蹴り落とそうとしたりした。
最後にイルヴァーナがたまには料理を作ると言いだした。任せたところ、呪われた物体が出来上がるという始末だ。
まぁ、色々あったけど僕は結構楽しかった。
こういう日常が毎日送れたらいいのになどと考えていると、隣の助手席にイルヴァーナが腰掛けてきた。
「失礼するよ」
「はい、どうぞ」
イルヴァーナはフロントガラスから広がる空を眺めた。
ちなみにダッシュボードの上の部分には丸くなったミミと黒猫が眠っている。ここが良く日が当たって気持ちがいいらしい。
「もうすぐ到着するそうだよ」
「意外と早かったですね」
「そうだな」
これから最後の百年王と戦うとなると、少し気が重い。
「なぁ、アイトくん。ちょっと質問があるんだが?」
「何でしょう?」
「あのイースとかいう魔神、信用できると思うか?」
僕はゆっくりとイルヴァーナの方を向いた。彼女も僕の方を見ている。
「信用できるかどうかは正直わかりません。だけど、彼には恐怖を感じています」
「恐怖か……私も似たような印象だったよ」
「イルヴァーナさんも?」
イースは他の魔神たちとは異質な存在だ。
他者の肉体を乗っ取って自分のモノにするだなんて。
「アナフィリア王家はあの魔神に支配されている。それは危険なことだと思う。なぜ王家はあの魔神を開放したのだろう?」
「魔神の力の恩恵が目的でしょうか?」
「理由はもっと単純ですわ」
僕らの話にいつの間にか側に来ていたシシーが入ってきた。
「イースが元王族の人間だから。今の王家にとって彼は大切なご先祖様ですもの。それはもう神のように崇めているのかも」
「なるほど、本当にあのイースがこの国を掌握しているわけだ」
ふと僕は思いついたことを話してみようと思った。
「このまま百年王を倒さず放置するというのはどうなんでしょう? シルフたちには申し訳ないけど、千年王は目覚めないんですよね?」
するとシシーは首を振る。
「アイトさん、残念ながらそれでは防ぐことはできないのです。千年王が目覚めるのはこの国の魔力総量が一定値を超えた時です。最後の百年王を倒さずとも、いずれ目覚めます」
そっか。
百年王を一体でも倒して時点でもう後戻りはできないんだ。
つもり、僕とナナさんとで戦いを始めてしまった。
それなら、僕らは千年王を倒す為に頑張らないと。
自分の甘かった考えを捨てなければならない。
「僕はこの世界のこと、魔神のことも全然知らないんだね」
そう言うと、シシーは笑みを浮かべた。
「それはアイトさんだけではありません。イルヴァーナも聞いて。私たち魔神のことで、ついでに教えておくことがありますの」
僕とイルヴァーナは顔を見合わせ、シシーの方を向く。
「何だいシシー?」
「魔神の魔術デーモン・ディメンションは当人しか使用できない、ということは知っていますね?」
僕らは頷いた。
「しかし、魔神の解放者になら、一時的に貸し与えることができるのです。かなりの魔力を消費してしまいますが……」
それは驚きだ。
僕の場合、nanazonを自由に使えるようになるってことか。
「なぜそんな話をするんだいシシー?」
するとシシーは肩を竦める。
「さぁ、何ででしょうね?」
僕とイルヴァーナは再び顔を見合わせた。
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