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25話 アイトさん、スノーモービルですよ

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「さぁ、アイトさん! ウーゼンに到着しまし……た?」

 ナナさんは固まって前方を眺めている。

「えーと、ウーゼンって火山地帯なんだよね?」
「ですね……」

 しかし、目の前には雪による銀世界が広がっていた。

「うーん? 地図的にはここで合っているんですよね」

 ナナさんは端末と外の景色を見比べながら言う。

「ウーゼンの街はこの先にあるの?」
「はい、温泉街があります。とりあえずそこまで行ってみましょう」
「そうだね」
「だけどその前に……」

 ナナさんは車から降りた。
 何をしているのか見ていると、彼女が指を鳴らした瞬間、キャンピングカーの前輪が板状に、後輪がゴツゴツしたタイヤに変化していった。

「雪道をこのまま走るのは不便ですからね。スノーモービルにモードチェンジしました」

 すのーもーびる?
 たぶん、見た目的にソリのようなモノだろうと納得した。

 運転席に戻ったナナさんはブツブツと文句を言っている。

「ホント雪って面倒で嫌いです!」
「そうなんだ? 僕は見慣れてないからちょっと新鮮だな」
「最初はそう、綺麗だなぁと思ったりするんですけど、すぐに飽きてウンザリしちゃいますって」

 確かに、雪では行動が阻害されそうだし、厄介かもしれない。

 ◆

 キャンピングカー(スノーモービルモード)で進んでいると、建物群が見えてきた。
 アレがウーゼンの温泉街だろう。

 しかし、街中に入ってみても人の気配はしなかった。ここも、カルネスト湖や古代樹の街のように廃墟のようである。

「温泉街って感じじゃなさそうだね」
「うー、ここまで来たからには意地でも温泉に入りたいです」
「ちょっと探索してみようか?」

 僕らは入ることができる温泉がないか探してみたが、どこにも温泉は湧いていなかった。

「ダメだね。それらしき形跡はあるけど、どこも枯れてしまってる」

 廃墟の様子を見るに、何十年と経ってしまっているようだ。
 この街は、温泉が枯れてしまったせいで寂れたのかもしれない。

「どうしようかナナさん?」

 と、話を向けるがナナさんの反応がない。
 どうしたのかと見てみると、彼女は不可思議そうに首を傾げている。

「ナナさん?」
「ん? あぁ、ごめんなさいアイトさん。ちょっと変な気配を感じていまして……」

 それが何なのか尋ねようとした時、ふとどこかから女の子の鼻歌が聴こえてきた。

 さっきまでは誰もいなかったはずなのに。
 怪しい。

「いや、これって……まさか……」

 ナナさんは訝しげな表情で声のする方を見ている。

 建物の角から、雪だるまを転がしながら女の子が現れた。
 背は低いが、緑色の髪が腰より下まで伸びている。

「げっ!?」

 ナナさんが後ずさる。

「あっ!」

 女の子がこちらに気づいた。

「ナナしゃーん!!」

 彼女はいきなりナナさんに抱きついてきた。

「うげぇ、ミミ!」

 ナナさんは顔を引き攣らせている。

「えっとナナさん、その娘とは知り合いなの?」
「知り合いというか……この娘もわらわと同じ魔神です」

 ナナさんは抱きついている女の子を指差す。

「魔神ミミナミナエルです」
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