落ちこぼれ魔術師のシンデレラストーリー

マリーの訴え

エルウィンは王宮の中を走った。
途中、グレンを探査魔法で探そうとしたが、やはり魔法はうまく作動しない。

かつての落ちこぼれエルウィンに戻ってしまった気がして泣きそうになりながら、いろいろな人に尋ねて回る。
するとマリーと一緒に歩いているところを見たという人が何人かいて、エルウィンはマリーの滞在する部屋へと急いだ。

「ここ…かしら…」

エルウィンは教えてもらった部屋の前で立ち止まった。

あれからかなり時間が経っている。
どんな顔をしてグレンと会えばいいのだろう。
やっぱり結婚の話はなしにして欲しいと言われたら、取り乱さずに返事ができるだろうか。

「…っ」

エルウィンは覚悟を決めて腕を上げる。
そして軽く拳を握り、ドアをノックしようとした時だ。

「きゃあああああああああっ！！！」

突然女の叫び声が響き渡った。
そして今ノックしようとしていたドアが内側から大きく開き、なんと胸元が大きくはだけたマリーが飛び出して来る。

「ま、マリー？！どうしたの？！」

エルウィンは慌てて彼女を抱きとめた。
一体何事かと、王宮の衛兵達や野次馬も続々と集まって来る。

「あの人よ！あの人にやられたの！部屋でお話をしていたら、突然襲われたの！」

はらはらと涙を零すマリーが指差した先には、険しい表情をしたグレンがいた。