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建国式典へ

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建国記念式典の日、エルウィンは初めて元いた国の国王と対面した。
国民ではなくなってから初めて会うなんて、ちょっとした皮肉だと思う。

「陛下、この度は誠におめでとうございます」

「おお、ロクセーヌのグレン殿か!よくぞ来てくれましたな。おや、そちらの美しい女性は?」

「こちらは大魔術師エルウィン様です。現在我が国で魔法薬を中心とした研究をしていただいているのです。実は出身は貴国なのですよ」

「ほう、こんなに美しく優秀な魔術師殿が我が国におったとは。実に惜しいことをした」

「ええ。ですが私も国民も彼女の愛らしさに夢中なのです。もう返す訳には参りませんよ?」

ははは、と和やかに笑い合う国王とグレンを見て、エルウィンは小さく縮こまった。
美しいとか優秀だとか、エルウィンには到底似つかわしくない言葉が飛び交っている。
お世辞だとしてもひどい。


あちこちからの賓客が挨拶をしようと列を作っているため、グレンとエルウィンは早々に国王の前から辞去した。
人だかりから離れたところで、エルウィンはグレンに食ってかかる。

「グレン、さっきのはなに?!美しいとか愛らしいとか、笑われるからやめてよ!」

半分涙目で抗議したのに、グレンは涼しい顔だ。

「僕の本心です。エルウィンさんは、本当に美しいです」

「な…っ」

まっすぐに見つめられ、グレンのストレートな物言いにエルウィンはうろたえた。
そんなことを言われたのは初めてだ。
首まで真っ赤になると、グレンが優しく微笑む。

「エルウィンさんはもっと自分に自信を持って下さい。あなたは優秀な魔術師だし、容姿も心根も美しい。磨けばもっと光りますよ」

エルウィンは何も言えずに俯いた。
本当は、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、今日の自分は少し可愛いのではと思っていたのだ。

今日のエルウィンの服装はいつもの簡素なローブではない。
グレンから、「これは仕事着ですから」と言って贈られた、贅を凝らした素晴らしいドレス姿だ。
王宮の侍女が身支度を手伝うためにやって来てくれて、化粧や髪型なども、すべてプロの手で仕上げてくれた。
そして初めて鏡を見た時の感動は、言葉では言い表せないものだった。

少しだけ、自惚れてもいいだろうか。

そう思ったエルウィンの耳に、突然聞き覚えのある声が飛び込んで来た。

「…エルウィン?おい、お前エルウィンじゃないか?!」
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