白木と武藤

一条 しいな

文字の大きさ
上 下
5 / 24

2の2

しおりを挟む
火鉢を白木は武藤に近寄せて、白木が武藤の体を覆うように抱きしめる。こんなに体格差があっただろうかと考えていた武藤の唇に白木の冷たい唇が重なる。ゆっくりと唇をはむような動き、甘がみで官能を引き出す動きである。それに負けてたまるかと武藤はなにも感じないように、意識しないように別のことを考えていた。
 祐樹は生きているだろうか。それとも殺されたのか。今更、そんなことを考える。前歯にツンツンと舌がノックする。武藤は意味がわからず、白木を見つめていた。白木はなにを思ったのか、武藤の股間を触った。びっくりした武藤は声を上げそうになった。
 その隙をついて、口内に舌が入ってきた。温かな異物、しかも意識がある。それをかみちぎってやると考えていた武藤を鼻で笑うように、歯茎を刺激する。
 ゾクゾクと背すじになにかが走る。悪寒とも違う、腰のものを刺激するような感覚。ディープキスくらいで勃起しているのか、と武藤は冷静になろうとした。しかし、頭が混乱するというを忘れていた。
 なぜ男で勃起する。それに、キスだけで感じるのか。今まで人を避けて、性欲も淡泊だと思っていた自分がこんな浅はかな感情にもてあそばれるなんて、やはり白木に心を操作されたからか。そんなことを武藤は考えていた。
「大丈夫か?」
 気を遣われる。口から透明な唾液が二人の間から落ちた。それを見たとき、武藤の目は見開いていた。白木の顔が祐樹と重なったような気がしたからだ。幻だとわかっていても、武藤はそれだけで腰の奥のものがこわばる。それがわかった。
「大丈夫」
「人間のやり方を真似た?」
「ああ、俺達に交尾はない」
 そうかと武藤はつぶやいた。とっさに武藤は白木から目をそらしていた。
「つづきをしような」
 あっさりと服を脱がす白木がいた。寒いと言ったがなにかの魔法なのか、部屋の温度が上昇していた。武藤が興奮したせいか、それとも白木の体が熱いからか、武藤にはわからない。
 裸の武藤のへその下を触る。
「そこは女じゃないと」
 武藤が言うと男女のまぐわいを見てきたのだろう。白木はバケモノだ。その気になれば隣の夜の営みを見るだろう。
「あっ、そう。今度、作ろうかな」
「なにを?」
「子宮」
「自分の体に?」
「いや、おまえの体に」
 武藤は寒気がした。心を変えて、体まで変えるつもりだ。
「人間の男には子供を作る体ではない。それは、女性しかできまい」
「そうか。武藤が女になればいいのか」
「おい」
「冗談。まあ、それよりこっちだな」
 武藤の自身がゆるくだが、少しだけ勃ち上がっている。それを発見して白木は「本当にそうなるんだな」と感心したような口ぶりで、白木の言葉に武藤は恥ずかしくなった。
 まるで、キスをしたからゆるく勃ち上がっていたと言われたようなもの。それに観察するような目が場を白けさせることを白木は知らない。
「もういいだろう」
「まだ、だめ。発散したいだろう」
 手コキというものはしたことがある。武藤だって男である。それくらいの経験はした。武骨な男の手で女の手の柔らかさまでは再現されていない。しかし、他人の体温がある。白木の体温は異物と感じて、緊張して出ないかも。
「リラックスは、していないか」
 まるで実験台にされた被験者だと武藤は思った。そんな武藤に白木はゆっくりと腰の辺り、側面をなでていく。それは女に効果があってと言いたくなる。白木は武藤を女と言いたいのだろうか。まるで、なにかをほぐすような動きであると武藤は気がついた。
 なにも感じないはずが、気持ちがよい。そうマッサージを受けているような心地がする。腰のあたりをマッサージしていると気がついた。白木の手が冷えていると思っていた。しかし、違うのだ。武藤の体温が熱いからだと知る。
 お互いの肌と肌をすり合わせるとき、体温を知る。それは異物である。しかし、なじんでいくと不思議なもので武藤には心地よいものに感じられた。
「白木」
 緊張しているはずが、ゆっくりとほぐされる。そういえば座りつづける商売である。腰がこって当たり前である。気持ちがいいと思う。感じているのか、と脳が反応する。そんなことはないと武藤は考えていた。
「白木、もう」
 いいからと武藤は言う。白木はニヤニヤしながら、武藤の腰をさすりつづけている。柔らかくなる体で、ゆっくりと解されていく。緊張とか、誰かの体につなぐことに怖がっている自分がいると武藤は気がついた。人と関わりを避けていた。
 それは恐ろしいから。なにからと武藤はそこまで考えていた。
 自身がゆっくりと刺激される。手が熱いと気がついた。どんな形でどんなものでなんて考えられなかった。吐き出したいと考えていた。吐き出して、それで、自己嫌悪をするんだろう。それは女性の体で味わうものである。そう武藤は教わった。
 しかし、期待を裏切るように、生暖かい、柔らかいものが自身に覆う。びっくりした武藤は白木を見る。白木が自身を口に含んでいるのだ。
 あまりのことで体が固まっている武藤は頭が真っ白になった。脳が勘違いをする。
「汚いから、口から出せ」
 上目遣いで白木が武藤を見る。白木はしばらく動かさないまま、じっとしている。
「あっ」
 ゆっくりと喉の奥に自身が迎えられる。頭がショートしたように出したいと思った武藤は白木の喉を使いたくなる。それを必死に抑えていると、武藤は目をつぶる。柔らかな口が、喉が、あれに似ていると考えていた。そうして、感じてしまった武藤の体は勝手に動く。白木の管理下であるとわかった。
 白木の喉を使い、武藤は達した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】

彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。 「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

俺と父さんの話

五味ほたる
BL
「あ、ぁ、っ……、っ……」   父さんの体液が染み付いたものを捨てるなんてもったいない。俺の一部にしたくて、ゴクンと飲み込んだ瞬間に射精した。 「はあっ……はー……は……」  手のひらの残滓をぼんやり見つめる。セックスしたい。セックスしたい。裸の父さんに触りたい。入れたい。ひとつになりたい。 ■エロしかない話、トモとトモの話(https://www.alphapolis.co.jp/novel/828143553/192619023)のオメガバース派生。だいたい「父さん、父さん……っ」な感じです。前作を読んでなくても読めます。 ■2022.04.16 全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。ボリュームあります。 攻め×攻め(樹生×トモ兄)、3P、鼻血、不倫プレイ、ananの例の企画の話などなど。 Amazonで「五味ほたる」で検索すると出てきます。 購入していただけたら、私が日高屋の野菜炒め定食(600円)を食べられます。レビュー、★評価など大変励みになります!

【※R-18】αXΩ 懐妊特別対策室

aika
BL
αXΩ 懐妊特別対策室 【※閲覧注意 マニアックな性的描写など多数出てくる予定です。男性しか存在しない世界。BL、複数プレイ、乱交、陵辱、治療行為など】独自設定多めです。 宇宙空間で起きた謎の大爆発の影響で、人類は滅亡の危機を迎えていた。 高度な文明を保持することに成功したコミュニティ「エピゾシティ」では、人類存続をかけて懐妊のための治療行為が日夜行われている。 大爆発の影響か人々は子孫を残すのが難しくなっていた。 人類滅亡の危機が訪れるまではひっそりと身を隠すように暮らしてきた特殊能力を持つラムダとミュー。 ラムダとは、アルファの生殖能力を高める能力を持ち、ミューはオメガの生殖能力を高める能力を持っている。 エピゾジティを運営する特別機関より、人類存続をかけて懐妊のための特別対策室が設置されることになった。 番であるαとΩを対象に、懐妊のための治療が開始される。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

眠れるΩは白い森の中

玻璃 れにか
BL
世界中でΩの減少が始まってから十数年、Ωは希少で身近に存在を感じない社会となっていた。機能不全のため、Ωであることを隠しアカデミーで研究と治療に勤しむ莉絃(りいと)。 改善の兆しが見られない莉絃が病院から提案された治療は、強力な因子を持つαの槐(えんじゅ)と身体を重ね、Ωホルモンを刺激させるというとんでもない内容で―― 次第に槐に惹かれていく莉絃。しかし、槐とは治療のパートナー以上の関係にはなれないことが明らかになり、淡い恋心を心の内に封印することを決めるが……。 おっとりドSなα× 気持ちは男前華奢美人Ωの運命の恋

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...