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「おまえにはつまらないだろうな」
ここの世界はと白木が言った。それは、白木の本心なのだろう。白木もここがつまらない世界だと思っているのだろうか。そんなことを思っていた武藤に白木は「茶を飲むだろう?」と問いかけていた。喉が渇いた自分に武藤は気がついた。
白木は火鉢の上にやかんを置く。寒いのか、白木の顔は青白い。今まで、白木の顔色を考えていたことは武藤にはなかった。
「なんだよ」
白木が武藤の視線に気がついた。白木は笑った。ニヤニヤとした、何かをたくらんでいるような。心を変えるつもりだろうか。そんなことを思う武藤に「さっさと、それ、よこせ」という。
武藤の側にはもう一つ火鉢があった。それを白木に渡す。重かった。木でできたものだ。ヒノキだろう。香りがいい。
「新しく、作ったんだ。武藤がいるから」
「愛玩はなにをすればいい?」
白木はきょとんとした。そのまま、武藤を見る。武藤は服を脱ごうとした。着物のような服だと気がついた。武藤の服は女の服のように、袖にフリルがついていた。それが気に入らない。
「別に。まさか、抱いてくれというつもりは?」
「この服はいやだ。俺には似合わない」
「いや、似合っている。服はそれしかない。裸でもいいぞ。人はいない」
白木の目がスッと細くなる。まるで絵画を鑑賞するようなそれに、武藤は背筋にぞくりと鳥肌が立つような感覚がした。
「俺を変えたのか」
「おまえ、にぶいな。俺は宝物をそう簡単にいたずらしない」
「なら」
「心を変えて、依存させるなんて誰だってできる」
「じゃあ、なんで」
感じているんだと武藤はつぶやいた。白木はじっと武藤を見つめていた。武藤は座る。座布団は柔らかい。そうして、武藤は自分が白木に反応していることが意外だった。これも愛玩になったせいだと思っていたからだ。
「茶を飲むか?」
湯気がふわふわと部屋に広がる。暖かな空気が武藤の近くに感じる。乾いた空気が湿気を帯びる。白木は武藤に近づいていく。
「おまえは、本当によく泣くな」
「泣いていない」
「泣くことは当たり前だ」
白木の言葉が信じられなかった。武藤に優しい言葉をかけるとは思わなかったからだ。白木は意地悪なことを言う。それは昔からだと思っていた。
白木の手が伸びる。武藤の長い髪をなでていく。ゆっくりと感覚を楽しむというより、幼子にするような優しさがあった。
「白木、帰してくれ」
もう戻れないから、そんな言葉が出てきた。武藤は感情的になっている自分に気がついた。今までは通り過ぎるような、自分には関係のないものだった感情があふれそうになる。
白木はジッと武藤を見つめていた。彼の目は観察するものになっていた。それがひどく冷たいものに武藤には感じていた。
「おまえは、バカだな。もう遅い」
そう白木が言った。正しいことをしたのに、そんなことはないと武藤は感じた。助けてほしかったのは武藤だと、ようやく武藤は気がついた。中学のときとなにも変わらないと武藤は思っていた。
「遅いけど、幸せにしてやるよ」
白木の言葉に武藤は信じていいのか、わからない。ただ、自分が愛玩であることは確かだ。それを否定することはできずにいた。もう後には戻れない。
ここの世界はと白木が言った。それは、白木の本心なのだろう。白木もここがつまらない世界だと思っているのだろうか。そんなことを思っていた武藤に白木は「茶を飲むだろう?」と問いかけていた。喉が渇いた自分に武藤は気がついた。
白木は火鉢の上にやかんを置く。寒いのか、白木の顔は青白い。今まで、白木の顔色を考えていたことは武藤にはなかった。
「なんだよ」
白木が武藤の視線に気がついた。白木は笑った。ニヤニヤとした、何かをたくらんでいるような。心を変えるつもりだろうか。そんなことを思う武藤に「さっさと、それ、よこせ」という。
武藤の側にはもう一つ火鉢があった。それを白木に渡す。重かった。木でできたものだ。ヒノキだろう。香りがいい。
「新しく、作ったんだ。武藤がいるから」
「愛玩はなにをすればいい?」
白木はきょとんとした。そのまま、武藤を見る。武藤は服を脱ごうとした。着物のような服だと気がついた。武藤の服は女の服のように、袖にフリルがついていた。それが気に入らない。
「別に。まさか、抱いてくれというつもりは?」
「この服はいやだ。俺には似合わない」
「いや、似合っている。服はそれしかない。裸でもいいぞ。人はいない」
白木の目がスッと細くなる。まるで絵画を鑑賞するようなそれに、武藤は背筋にぞくりと鳥肌が立つような感覚がした。
「俺を変えたのか」
「おまえ、にぶいな。俺は宝物をそう簡単にいたずらしない」
「なら」
「心を変えて、依存させるなんて誰だってできる」
「じゃあ、なんで」
感じているんだと武藤はつぶやいた。白木はじっと武藤を見つめていた。武藤は座る。座布団は柔らかい。そうして、武藤は自分が白木に反応していることが意外だった。これも愛玩になったせいだと思っていたからだ。
「茶を飲むか?」
湯気がふわふわと部屋に広がる。暖かな空気が武藤の近くに感じる。乾いた空気が湿気を帯びる。白木は武藤に近づいていく。
「おまえは、本当によく泣くな」
「泣いていない」
「泣くことは当たり前だ」
白木の言葉が信じられなかった。武藤に優しい言葉をかけるとは思わなかったからだ。白木は意地悪なことを言う。それは昔からだと思っていた。
白木の手が伸びる。武藤の長い髪をなでていく。ゆっくりと感覚を楽しむというより、幼子にするような優しさがあった。
「白木、帰してくれ」
もう戻れないから、そんな言葉が出てきた。武藤は感情的になっている自分に気がついた。今までは通り過ぎるような、自分には関係のないものだった感情があふれそうになる。
白木はジッと武藤を見つめていた。彼の目は観察するものになっていた。それがひどく冷たいものに武藤には感じていた。
「おまえは、バカだな。もう遅い」
そう白木が言った。正しいことをしたのに、そんなことはないと武藤は感じた。助けてほしかったのは武藤だと、ようやく武藤は気がついた。中学のときとなにも変わらないと武藤は思っていた。
「遅いけど、幸せにしてやるよ」
白木の言葉に武藤は信じていいのか、わからない。ただ、自分が愛玩であることは確かだ。それを否定することはできずにいた。もう後には戻れない。
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