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大当たりか大外れか(4)
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何も話さないイケメンにただついていくこと数分。マンションが立ち並ぶ住宅街までやってきた。そこで、ようやくその男が立ち止まる。
「ここまできたら大丈夫だよな」
暗闇でもわかる整った顔。今日はこいつとセックスして、ゆっくり屋根の下で寝られる……
「じゃあ、気をつけて」
「は!?」
イケメンはそう言ったら、踵を返してここから去ろうとする。さっきより早足だ。
え? じゃあ気をつけて?
今の、まるで解散するときの会話じゃなかったか?
「お、おい! どういうこと?」
あわよくば次の寄生先にしようとしていたのに。
慌てて追いつくと、男が今度は何だ? とでもいいたげな顔をした。お前が拾ったんだろ。今日俺と寝るために、あのハッテン場で。
「……無理やり連れて行かれそうになってたんじゃないの?」
訝しむように聞かれる。少しめんどくさそうだ。
「いや、無理やりっつーか………今夜の相手に誘われて俺も乗っかった? っつーか」
そこまで説明しても意味がわかってない様子に、雪哉は盛大な勘違いが生まれてることに気づく。
「あそこハッテン場なんだけど、知ってた?」
「ハッテン……ああ」
その言葉は知っているらしい、納得いったように声を落とした。でも、実際にあそこがそうだったとは知らなかったと。
じゃあ、なんで声をかけてきたんだ。家がないと誘ったつもりの俺を、ここまで連れてきたんだ。
あの目は、明らかに雪哉のことを心配して助けにきた顔ではなかった。だから、今夜の相手として、あのおじさんから奪うためかと思っていたのに。本当に、俺が困っていると思って助けただけ? 全くわからない。
男は勘違いだったことに呆れるようにため息をついた。
「あー、じゃあもしかして邪魔した?」
「いや、やっぱりやめようと思ってたからいいけど」
「そう。まあ、俺も見えて仕方なくやっただけだから」
……結構ぶっちゃける。好青年ぽいのはぽいだけで、全然愛想はよくない。だけど、それなら納得だ。
捨て猫を見つけてしまって、無視することもできず拾ってしまった、というのと似たようなものか。そう変換すると結構優しいというか、面倒見がいいのではと思ってしまう。
泊まる家を探していると言った俺をここまで連れてきたのも、あそこから逃げるための口実だと思って合わせたというわけだ。
なるほどなるほど……
って、まずい、今度こそ会話が終わる。このまま別れたらこの寒い中また寝床探しだ。すぐ見つかるとしても、もう一秒も外にいたくない早くあったかいベッドで寝たい。
雪哉がよく知っている興味のなさそうな目は気に入らないが、これしきのことでこの良物件を逃してたまるか。
「あ、でも、今日泊まる場所がないのは本当で────」
「……じゃあ、うちに泊まる?」
表情も変えず、思いのほかすぐにレスポンスがくる。
お? そこまで面倒を見るのは嫌がりそうだと思ったが。いや、嫌がってはいるか。
その反応はいただけないにしても、ここはぐっと堪えるしかない。野宿だけは勘弁だ。
会ったばかりとはいえ、興味なさげなのは不満だが、ないものは持たせればいいだけ。俺はもうそれを知っているし、すべを持っている。
それに、さっきのハッテン場のことを聞いた時の反応。男同士に抵抗はないとみた。
どちらにせよ、こっちについてきたのはやはり正解だったかもしれない。
「ここまできたら大丈夫だよな」
暗闇でもわかる整った顔。今日はこいつとセックスして、ゆっくり屋根の下で寝られる……
「じゃあ、気をつけて」
「は!?」
イケメンはそう言ったら、踵を返してここから去ろうとする。さっきより早足だ。
え? じゃあ気をつけて?
今の、まるで解散するときの会話じゃなかったか?
「お、おい! どういうこと?」
あわよくば次の寄生先にしようとしていたのに。
慌てて追いつくと、男が今度は何だ? とでもいいたげな顔をした。お前が拾ったんだろ。今日俺と寝るために、あのハッテン場で。
「……無理やり連れて行かれそうになってたんじゃないの?」
訝しむように聞かれる。少しめんどくさそうだ。
「いや、無理やりっつーか………今夜の相手に誘われて俺も乗っかった? っつーか」
そこまで説明しても意味がわかってない様子に、雪哉は盛大な勘違いが生まれてることに気づく。
「あそこハッテン場なんだけど、知ってた?」
「ハッテン……ああ」
その言葉は知っているらしい、納得いったように声を落とした。でも、実際にあそこがそうだったとは知らなかったと。
じゃあ、なんで声をかけてきたんだ。家がないと誘ったつもりの俺を、ここまで連れてきたんだ。
あの目は、明らかに雪哉のことを心配して助けにきた顔ではなかった。だから、今夜の相手として、あのおじさんから奪うためかと思っていたのに。本当に、俺が困っていると思って助けただけ? 全くわからない。
男は勘違いだったことに呆れるようにため息をついた。
「あー、じゃあもしかして邪魔した?」
「いや、やっぱりやめようと思ってたからいいけど」
「そう。まあ、俺も見えて仕方なくやっただけだから」
……結構ぶっちゃける。好青年ぽいのはぽいだけで、全然愛想はよくない。だけど、それなら納得だ。
捨て猫を見つけてしまって、無視することもできず拾ってしまった、というのと似たようなものか。そう変換すると結構優しいというか、面倒見がいいのではと思ってしまう。
泊まる家を探していると言った俺をここまで連れてきたのも、あそこから逃げるための口実だと思って合わせたというわけだ。
なるほどなるほど……
って、まずい、今度こそ会話が終わる。このまま別れたらこの寒い中また寝床探しだ。すぐ見つかるとしても、もう一秒も外にいたくない早くあったかいベッドで寝たい。
雪哉がよく知っている興味のなさそうな目は気に入らないが、これしきのことでこの良物件を逃してたまるか。
「あ、でも、今日泊まる場所がないのは本当で────」
「……じゃあ、うちに泊まる?」
表情も変えず、思いのほかすぐにレスポンスがくる。
お? そこまで面倒を見るのは嫌がりそうだと思ったが。いや、嫌がってはいるか。
その反応はいただけないにしても、ここはぐっと堪えるしかない。野宿だけは勘弁だ。
会ったばかりとはいえ、興味なさげなのは不満だが、ないものは持たせればいいだけ。俺はもうそれを知っているし、すべを持っている。
それに、さっきのハッテン場のことを聞いた時の反応。男同士に抵抗はないとみた。
どちらにせよ、こっちについてきたのはやはり正解だったかもしれない。
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