3 / 33
大当たりか大外れか(3)
しおりを挟む
外でぶらついているうちに、すっかり日は落ちてしまった。
白鳥のことは上手く撒けたらしいからいいとして、今夜の寝床がない。頬もまだ痛いし。
この俺が野宿? 嘘だろ。しかも今は十二月。凍え死ぬ。白鳥に与えられたコートだが、羽織ってきて正解だった。
適当に近くの公園に入って、ベンチに腰を下ろす。
男を捕まえるより、女を捕まえる方が早いか……。
と今夜の行く末を真面目に考え始めたところで、いつの間にか近くにいたらしい、四十代くらいの男が話しかけてきた。
「誰か待ってる?」
……なるほど。
すぐその目を見てわかった。さっきまでは気づかなかったけど、ここはそういう場だってか。
金持ちではなさそうだ。それに、いけおじならいいけど、きもおじだ。でもまあ、一晩くらいならいいかもしれない。宿無しよりよりはマシだろうし手間が省ける。
「野外プレイは嫌なんだけど。あと金もねえよ、俺」
「もちろん、私がホテル代を出そう」
それさえクリアすれば誘いを受けてくれると理解したのか、興奮した様子で図々しく雪哉の腕を掴む。
……やっぱり、なんか嫌だな。
渋々ベンチから立ち上がったが、はたと立ち止まる。汗ばんだ手で雪哉の手首を引く男が、どうしたんだい、と振り向く。やっぱりやめる────そう言おうとしたところで、
「大丈夫ですか?」
すっと澄んだ、でも落ち着きのある低い声が、後ろからはっきり届いた。
「え?」
きもおじの方が先に反応した。何をそんなに驚くことがあるのか。
しかし、今日はよく話しかけられる日だな。いや、ここがハッテン場だからか。
でもこのきもおじよりいい男なら、そっちに行ってやってもいい。そう思って振り向いた。
えっ────
顔、もとい全体を目に収めた瞬間、驚くと同時に喜びが湧いてきた。
期待が当たった。その男は大変イケメンだったのだ。
「何かあったんですか」
そのイケメンが、掴まれた雪哉の手首を見て静かに言った。
「あ、いいや、そんなことはない。な、君?」
きもおじがうろたえながら言って、雪哉が肯定するのを待つ。
でも、そんなことはどうでもよかった。
すらりと高い背に、痛みのない黒髪、形のいい唇。少しばかり吊り上がった目が男の色っぽい印象を与えるが、いやらしさは全くなく自然で、それがとても目を引いた。
そして、身なりがいい、雪哉は直感で金の匂いを感じ取った。自分と同じくらいの年齢だろうけど、これは上々。
それに、その冷めた目の奥を見れば、本当にトラブルを心配しているわけではないのがすぐわかった。──そうか、この男も夜の相手を探しているのか。それなら都合がいい。
「俺、今日泊まるところ探してるんだけど」
目を見て告げる。
「え、ちょ、私は」
当然だが、きもおじがさらに狼狽えた。悪いな、きもおじもただ出会いを探しているだけなのに。だけど俺は俺の方が大事だから、より期待値の高い方を選ぶに決まっている。
「いいよ。こっちきて」
ほら、きた。
「ごめんおじさん、また縁があったら会おうな」
白鳥のことは上手く撒けたらしいからいいとして、今夜の寝床がない。頬もまだ痛いし。
この俺が野宿? 嘘だろ。しかも今は十二月。凍え死ぬ。白鳥に与えられたコートだが、羽織ってきて正解だった。
適当に近くの公園に入って、ベンチに腰を下ろす。
男を捕まえるより、女を捕まえる方が早いか……。
と今夜の行く末を真面目に考え始めたところで、いつの間にか近くにいたらしい、四十代くらいの男が話しかけてきた。
「誰か待ってる?」
……なるほど。
すぐその目を見てわかった。さっきまでは気づかなかったけど、ここはそういう場だってか。
金持ちではなさそうだ。それに、いけおじならいいけど、きもおじだ。でもまあ、一晩くらいならいいかもしれない。宿無しよりよりはマシだろうし手間が省ける。
「野外プレイは嫌なんだけど。あと金もねえよ、俺」
「もちろん、私がホテル代を出そう」
それさえクリアすれば誘いを受けてくれると理解したのか、興奮した様子で図々しく雪哉の腕を掴む。
……やっぱり、なんか嫌だな。
渋々ベンチから立ち上がったが、はたと立ち止まる。汗ばんだ手で雪哉の手首を引く男が、どうしたんだい、と振り向く。やっぱりやめる────そう言おうとしたところで、
「大丈夫ですか?」
すっと澄んだ、でも落ち着きのある低い声が、後ろからはっきり届いた。
「え?」
きもおじの方が先に反応した。何をそんなに驚くことがあるのか。
しかし、今日はよく話しかけられる日だな。いや、ここがハッテン場だからか。
でもこのきもおじよりいい男なら、そっちに行ってやってもいい。そう思って振り向いた。
えっ────
顔、もとい全体を目に収めた瞬間、驚くと同時に喜びが湧いてきた。
期待が当たった。その男は大変イケメンだったのだ。
「何かあったんですか」
そのイケメンが、掴まれた雪哉の手首を見て静かに言った。
「あ、いいや、そんなことはない。な、君?」
きもおじがうろたえながら言って、雪哉が肯定するのを待つ。
でも、そんなことはどうでもよかった。
すらりと高い背に、痛みのない黒髪、形のいい唇。少しばかり吊り上がった目が男の色っぽい印象を与えるが、いやらしさは全くなく自然で、それがとても目を引いた。
そして、身なりがいい、雪哉は直感で金の匂いを感じ取った。自分と同じくらいの年齢だろうけど、これは上々。
それに、その冷めた目の奥を見れば、本当にトラブルを心配しているわけではないのがすぐわかった。──そうか、この男も夜の相手を探しているのか。それなら都合がいい。
「俺、今日泊まるところ探してるんだけど」
目を見て告げる。
「え、ちょ、私は」
当然だが、きもおじがさらに狼狽えた。悪いな、きもおじもただ出会いを探しているだけなのに。だけど俺は俺の方が大事だから、より期待値の高い方を選ぶに決まっている。
「いいよ。こっちきて」
ほら、きた。
「ごめんおじさん、また縁があったら会おうな」
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる