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番外編(1)
しおりを挟む「酒、飲んでみるか?」
英司はすっかり隣に座るのが普通になった千秋にそう言うと、彼は顔に出してないつもりかもしれないがキラキラと目を輝かせた。
十二月十五日。今日は千秋が二十歳を迎える日。
中学時代を含めて恋人として誕生日を祝うのはこれで二回目だが、再会してからは初めてだ。昔とは違ってできることも増えた。
だから何か特別なことをしたいと思ったのだが、千秋は普通でいいと言う。それより、家で一緒にいたいのだと(直接は言っていなかったが)。
午前のうちに千秋の家に行って、プレゼントを渡して、昼ごはんを食べて、まったりして。夜ご飯は家で食べようということで、一緒に外に出て、やっぱり千秋の大好物をたくさん買った。
そんなに食べられないです、と言っていた千秋が愛おしい。結局食べてしまうくせに。
当たり前のように千秋が横にいることが幸せだ。買い物の帰り道、英司はしみじみ空を仰ぎたい気分になった。
それに、千秋の望み通りにまったりゆったり過ごす誕生日もいいものだ。千秋はこういうのが好きなんだな……と、いうのはもちろんわかっていたけど。
ぱんぱんに膨らんだ袋にはちょっとした好奇心と下心が入り込んでいる。
それは────酒だ。
もちろん、初心者にガバガバ飲ませるわけにはいかない。これでも医者志望だ。
でも、ほっといてもいつか千秋は酒を飲むことになるだろう。だから初飲酒は自分とにしてほしいのだ。
そもそも英司も普段はあまり飲まない。
飲むと勉強に支障が出る可能性があるからだ。それだけであって、飲めないわけじゃない。
まあ、ごちゃごちゃ言ったが、ようは酒を飲んで酔ってしまう千秋を見たいだけなのだ。
「酒って……あるんですか?」
「実は買っておいた」
気づかなかった、と千秋が驚いた顔をする。
「飲みたい?」
「……ちょっと興味はあります」
本当はすごく興味があるのだろう。
英司はその返事を聞いて、冷蔵庫に向かった。買ったお酒二人分を取り出して部屋に戻る。
持ってきた缶の表示を見て、千秋が本当にお酒だ……と呟いた。
その様子に思わず笑みが零れる。下心ありありでごめんな、と心の中で謝っておいた。
「じゃあ、乾杯」
「か、乾杯」
英司が少し飲むと、千秋は続くようにして、おずおずと口をつける。そして、ちびっと口に含んだ。
「どう?」
「……あ、おいしいかも」
少し味わってから、千秋がそう言って顔を明るくさせた。千秋が好きそうな甘いものを選んだのだ。
大丈夫だとわかると千秋はゆっくり飲み進めていく。
まあ少し飲んだくらいでは変わらないか。
とりあえず、ちょっとずつ飲む姿がなんだか幼いこどもみたいで可愛くて、もはやそれだけで満足だ。
英司は純粋に千秋と酒を飲みながらの会話を楽しむことにした。
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