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そばにいる方法(11)
しおりを挟む外はもうすっかり暗い。
満足するまで交じりあったあと、二人はベッドから一歩も動けないでいた。
「……今日の千秋はすごかった」
「や、やめてくれません、そういう言い方」
恥ずかしいから。
寝たまま背を向けると、頭の下にある腕ががばっと巻きついてきた。
「な、なに……」
「んー?幸せだなって」
「……いきなり」
「いきなりじゃねえよ。千秋が恋人なのも、好きって言ってくれたのも、こうして一緒にいられるのも」
表情は見えない。けど、優しい顔をしてるのだろう。
「千秋に好きって言われなくても正直いいと思ってたけど」
なんだと?
「でも、言われたらものすげえ嬉しくて。やばい幸せってなった」
「そんなことだけで、ですか?」
「なんだよ、悪いか」
千秋でなければ、もっと好き好き言ってくれる人はいっぱいいるはずだ。それに、恋人なら珍しいことでもないはずで。
でも、この人は俺だから、と言う。
「俺は再会したとき、柳瀬さんのこと嫌いだって思ってました」
「あーうん、……そのことは本当に悪かった」
英司はばつ悪そうな声で笑った。
「でも、それは逆に、ずっと柳瀬さんのことが頭のどこかにあって、忘れたくなくて……」
千秋は話し始める。
「だから、俺、色々と面倒臭いけど……柳瀬さんのこと、本当に好きです」
これで顔を見て言えてたら、満点なんだろうけど。でも今はこれだけ。とにかく、自分の気持ちを英司に伝えたいと思った。
「……千秋、お前は本当に最高だ。俺も好きだよ、本当に、誰よりも」
これでもかと抱きしめられて、喜びを発散するようにぐわんぐわん揺さぶられる。
ここまではしゃいでる英司は見たことがなかったので、少しあっけに取られる。さっき勢いで言うよりも、こうやって改めて言うのがよかったか。
好きの言い合いなんて千秋には恥ずかしいけど、自分も嬉しくなって、思わず笑みがこぼれた。それも見えていないと思ったのに、後ろからしっかり見られてたらしい。
「……俺、千秋の笑顔も好きなんだよな」
「見ないでください……」
「千秋ちゃん可愛いー」
顔を伏せるとからかうように言われた。
英司は千秋の顔を向かせようとして、千秋は全力で抵抗する、なんて子どもみたいなじゃれ合いが始まる。
「こっち向いて、千秋」
しばらく攻防が続いた後、そう優しく言われると、結局千秋はそろそろと顔を向けるしかなった。たぶん、千秋はこの声に弱い。
体ごと向かい合うと、ふいに軽いキスを落とされる。
好きだ。その声も、このキスも。この人が好きだ。
何度もキスをしたのに、また飽きずにキスをした。ただ、お互いが満足いくまで、ずっと、ずっと。
抱き合って一緒に眠りについたその夜、夢を見た。
中学生の時の帰り道、彼の隣を歩く夢を。ただひたすら、彼が隣にいるその道を。
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