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タイミングってやつ(14)

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 柳瀬さんの誕生日お祝いプランはこれだけではない。最後に、どでかいものが待ち構えている。

「千秋、風呂上がったぞ」

「あ、俺も今から入ります」

 すぐに風呂に駆け込むと、シャワーを捻って入念に洗い出す。

 今日は泊まりだと最初から予定を合わせていた。つまり、最後にはアレがある。そのアレに向けて、千秋はまず風呂で準備をしなければいけない。

 英司は、甘いものが苦手だ。だから誕生日ケーキはなかったが、その代わり別のもので補おうというのが千秋の考えであった。それが、夜のアレであると。

 ……いや、自分でも何言ってんだとは思う。けど、そんな理由でもつけないと、できない、できるわけがない。こんなイベントがなければ、一生やらないだろう。

 要は、今日は、英司よりもベッドの上で頑張ろうということなのだ。

 千秋は普段、英司に全てを任せっきりなのである。英司は千秋の望んでることを言わなくても全てしてくれる。そして一方、千秋といえば、行為に及ぶまで抵抗してみせたり、任せっぱなしだったり……これ、マグロってやつ?そう思うことは少なくない。なのに改善しないのは、英司が不満そうじゃないのと、単に恥ずかしすぎるからだ。

 だから、こういう特別な日くらい、できるということを見せねばならない。

 千秋はぱんと頬を叩いて気合を入れると、風呂を上がった。どうせ脱ぐけど部屋着を着て、髪を乾かして、準備万端な状態で部屋に戻る。

「お、出た?」

「……はい」

 英司はベッドに座って、テレビを見ていた。

 最初が肝心だと、思い切って英司の近くに寄って座り、ぴとりとくっついてみる。

「なに、珍しい」

「たまには……」

 そのままぎゅっと腕に抱きついてみると、英司はさすがに異変に気づいたらしい、「どうした?」と聞いてきた。いつもと違う千秋の様子に、少しドキドキしているのが垣間見える。

 見計らって、千秋はテレビの電源を消した。そして、ベッドに座っている英司を前に、地面にぺたりと座り込んだ。英司の顔を見ようとすると、自然と視線は上がる。

「おい、どうしたんだよ急に」

「今から、します」

 甘い行為を今から始まるとは思えない言い方で、千秋が宣言する。かなり緊張している。

 わけのわかっていない英司の膝の間に割り入った。チャックのないズボンだったので、そのままくいと下げようとする。

「ちょ、ちょっと待て!」

 そこで制止がかかる。なんで、と思って見上げると、英司が焦った様子で眉をひそめていた。

「これも、誕生日のお祝いの一貫?」

「い、一応」

 英司のものはすでに兆し始めていて、早く始めたいという気持ちが高まる。

「千秋はそんなことしなくていい。それなら俺がしてやる方が……」

「……ですか」

「え?」

「……いや、ですか?」

 下から眉を下げて聞いてくる千秋に、うっと英司が言葉をつまらせた。

 ……たしかに、誕生日だから、やろうと思った。柳瀬さんなら、そこを舐めることだってできると思った。だから、いやいやじゃなくて、むしろ──

「い、や、じゃねえけど……」

 歯切れの悪い英司に、千秋はむっとする。

「じゃあ、する……」

 ここまで来たら意地だと、またズボンに手をかけたが、「こらこらこら、待てって」と本気で止められる。

 ここまで勃たせているくせに、これ以上何を言う必要があるのか。

「え、うわっ」

 英司がふいに千秋の脇に手を入れて、上にぐいと持ち上げた。床に座り込んでいたのが、膝立ちになってしまった。

「普段から俺が色々やってあげたいだけだから、千秋は気にしなくていいの」

 きっと英司は、千秋が普段こういう時、何もできないこと気にして、嫌々やろうとしてると思ったのだろう。だから、それだけじゃないし……とも言えず、諭されるようにして千秋は黙った。

「千秋、おいで」

 引っ張って千秋をベッドに横にすると、英司が千秋にキスを落とした。

 しばらく見つめうと、千秋は英司の首に腕を回して、自らキスを誘った。

「ん……っ」

 うっすら目を開けてみると、ぱちりと英司と目が合う。興奮しているが、まだ余裕ありというところだろうか。

 そのまま服に手がかかった。はっとして、千秋はその手を掴んで止める。

「今日は、自分で脱ぎます」

「えっ」

 実は、今まで英司に脱がされるばかりで、こういうとき自分で脱いだ試しがない。そもそも、英司は自分は服を着たまま、千秋だけを裸にするのが好きなの変態なのだ。しかも明るいところで。

 余計恥ずかしくて、自分から脱げるわけがなかった。

 しかし今、自分はTシャツをぱさりと、ズボンをもそもそ脱いでいる。

 英司は何も言わず手で口を抑えながら、興奮気味に凝視していた。これだけで、そんなに喜ぶものなのか。
 
 そして千秋は顔を真っ赤にしつつも、宣言通り、下着まで脱ぎ去った。何も纏わない体が晒される。

「……終わりました」

 英司は、まだ口を抑えたまま、おう、と吐息まじりに言った。

 そして、千秋を性急に転がすと、また覆い被さってキスをしながら、今度は体をゆっくり撫で始めた。

「はっ……」

 そして、ピンポイントで乳首を弄り始めた。そこはすでに気持ちよさを拾うようになっていて、千秋の息が荒くなっていく。

 同時に英司が体のいろんなところにキスを落とすから、その度に千秋は体を震わせた。

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