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つながりを求めた(11)
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「で、本当に信じてくれたんだよな……?俺のこと」
目を細めてじーっと疑うように覗き込んでくる英司。
「……しつこいですよ」
きっと睨んで言うと、英司は「はあ~……」と安心したように息をついた。
「これで心なくお前を好きだって言えるんだな」
「今までだって心置きなかったですけどね」
千秋は思わず軽く笑いをこぼすと、英司からの反応がない。てっきり「そこはつっこむな」とでも言われるかと思ったのに。
不思議に思って横を見ると、こちらを見つめる英司とパチリと目が合った。
いつの日かのように、その視線に捕らえられて動けなくなる気がして、そう気づいた時にはもう遅い。
どこか熱を含んでいて、その目に見られているだけで、体が上気してくるのだから不思議だ。
そうすると英司の顔を見つめるしかなくなって、やっぱりこの顔好きだな……と思っているうちに、だんだんとその顔が近づいてくる。
そして、やがて、ゆっくりと唇が重なった。
ただくっつけるだけのキスなのに、とてつもなく満たされる。
数秒そのままでいると、次第に離れていく。離れる瞬間に、無意識だが、追いかけるように自身の唇が少し突き出てしまって恥ずかしくなった。名残惜しそうにしてるって思われたかもしれない。
「……お前のちゃんとした笑顔、久しぶりに見たかも」
「……そうでしたっけ」
「やっぱりかわいい」
「なっ……」
かわいいって別に嬉しくないはずなのに、なんか妙にムズムズしてしまう。
……柳瀬さんが褒め言葉で言ってるって、わかってるからかな。
「千秋、本当に卒業式から今日まで、ずっと本当にごめん。信じてくれてありがとうな」
「もう終わりって言ったじゃないですか。……でも柳瀬さんさんこそ、勘違いしてた俺に、全部話してくれてありがとうございました」
目を合わせて言うと、英司は心底安心したように、眉を下げて笑った。
もう気にしてない、とわかるように英司の方に体ごと向き直ると、もう一度ちゅっと軽いキスをされ、英司が満足げに微笑んだ。
千秋は、横のベッドにコテンと頭を預ける。
なんだ?いつもはもっとガツガツくるくせに……今日というか、最近はやたら遠慮気味な気がする。
別になんかしろっていうわけではなく、単純に毎回ペースを乱されるのはごめんだ。
千秋は不満げにちらりと目をやると、すぐに目をそらした。
「.……柳瀬さん、昨日から全然触ってこないですよね」
「ああ…まあ、あんなことがあったし、あと千秋が嫌がるなら控えようと思ってな」
「今キスしたじゃないですか」
「いやそれは悪い、思わずというか。……どうした?」
ムキになって言い返すと、いつもこんなことを言わないからか、どころか抵抗しまくりだったのにと、英司は怪訝な顔でこちらを見てくる。
いやなんでここで引くんだよ…!謝るな!いや、そうさせたのは俺の方かもしれないけど……!心の中で理不尽に怒るが、どうせ口には出せない。
いきなり気を使ってくる英司と結局なにも言えない自分、どちらももどかしい。
「……別に、いいならいいですけど」
じゃあ今日はもうここまでだ、と立ち上がろうとすると、手を引かれて制される。
「悪い、珍しい感じだったから意地悪した。……触っていい?」
はああ?千秋は本気でキレそうになったけど、なぜか英司が喜んでいるので仕方なくやめておいた。
「結局そういうこと聞くんじゃないですか……」
「ええ?昨日はめちゃくちゃ素直だったのに」
そう言いつつも距離を詰めてきて、ぎゅっと抱きしめられる。
「や、柳瀬さん……」
千秋の答えも聞かずに、結局いきなりだ。
英司の力強く抱きしめる腕が、安心する匂いが、千秋を包んでクラクラさせる。昔も、こうやって抱きしめられるのが千秋は好きだった。
そうしているうちにふわふわと心地よくなって、千秋も腕を背中に回す。
そしてトドメに、彼はこう囁くのだ。
「千秋、好きだ。お前だけがずっと好きだ」
目を細めてじーっと疑うように覗き込んでくる英司。
「……しつこいですよ」
きっと睨んで言うと、英司は「はあ~……」と安心したように息をついた。
「これで心なくお前を好きだって言えるんだな」
「今までだって心置きなかったですけどね」
千秋は思わず軽く笑いをこぼすと、英司からの反応がない。てっきり「そこはつっこむな」とでも言われるかと思ったのに。
不思議に思って横を見ると、こちらを見つめる英司とパチリと目が合った。
いつの日かのように、その視線に捕らえられて動けなくなる気がして、そう気づいた時にはもう遅い。
どこか熱を含んでいて、その目に見られているだけで、体が上気してくるのだから不思議だ。
そうすると英司の顔を見つめるしかなくなって、やっぱりこの顔好きだな……と思っているうちに、だんだんとその顔が近づいてくる。
そして、やがて、ゆっくりと唇が重なった。
ただくっつけるだけのキスなのに、とてつもなく満たされる。
数秒そのままでいると、次第に離れていく。離れる瞬間に、無意識だが、追いかけるように自身の唇が少し突き出てしまって恥ずかしくなった。名残惜しそうにしてるって思われたかもしれない。
「……お前のちゃんとした笑顔、久しぶりに見たかも」
「……そうでしたっけ」
「やっぱりかわいい」
「なっ……」
かわいいって別に嬉しくないはずなのに、なんか妙にムズムズしてしまう。
……柳瀬さんが褒め言葉で言ってるって、わかってるからかな。
「千秋、本当に卒業式から今日まで、ずっと本当にごめん。信じてくれてありがとうな」
「もう終わりって言ったじゃないですか。……でも柳瀬さんさんこそ、勘違いしてた俺に、全部話してくれてありがとうございました」
目を合わせて言うと、英司は心底安心したように、眉を下げて笑った。
もう気にしてない、とわかるように英司の方に体ごと向き直ると、もう一度ちゅっと軽いキスをされ、英司が満足げに微笑んだ。
千秋は、横のベッドにコテンと頭を預ける。
なんだ?いつもはもっとガツガツくるくせに……今日というか、最近はやたら遠慮気味な気がする。
別になんかしろっていうわけではなく、単純に毎回ペースを乱されるのはごめんだ。
千秋は不満げにちらりと目をやると、すぐに目をそらした。
「.……柳瀬さん、昨日から全然触ってこないですよね」
「ああ…まあ、あんなことがあったし、あと千秋が嫌がるなら控えようと思ってな」
「今キスしたじゃないですか」
「いやそれは悪い、思わずというか。……どうした?」
ムキになって言い返すと、いつもこんなことを言わないからか、どころか抵抗しまくりだったのにと、英司は怪訝な顔でこちらを見てくる。
いやなんでここで引くんだよ…!謝るな!いや、そうさせたのは俺の方かもしれないけど……!心の中で理不尽に怒るが、どうせ口には出せない。
いきなり気を使ってくる英司と結局なにも言えない自分、どちらももどかしい。
「……別に、いいならいいですけど」
じゃあ今日はもうここまでだ、と立ち上がろうとすると、手を引かれて制される。
「悪い、珍しい感じだったから意地悪した。……触っていい?」
はああ?千秋は本気でキレそうになったけど、なぜか英司が喜んでいるので仕方なくやめておいた。
「結局そういうこと聞くんじゃないですか……」
「ええ?昨日はめちゃくちゃ素直だったのに」
そう言いつつも距離を詰めてきて、ぎゅっと抱きしめられる。
「や、柳瀬さん……」
千秋の答えも聞かずに、結局いきなりだ。
英司の力強く抱きしめる腕が、安心する匂いが、千秋を包んでクラクラさせる。昔も、こうやって抱きしめられるのが千秋は好きだった。
そうしているうちにふわふわと心地よくなって、千秋も腕を背中に回す。
そしてトドメに、彼はこう囁くのだ。
「千秋、好きだ。お前だけがずっと好きだ」
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