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つながりを求めた(2)

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 しばらくすれば、集合時間少し前に女子五人も全員集まった。

 休みの日だから当然といえば当然だが、彼女たちも駅の方からやってきたらしく、校舎からではなかった。

「よし、みんな集まったし、そろそろ行くか!」

 テンションの高い拓也が先陣を切ると、みんなもそれについていく。拓也たちが言うには、彼女たちは派手ではないが、男子に人気のあるタイプらしい。

 千秋も歩き始めたとき、門から学生らしき二人組が出てきて、ぶつかる前に立ち止まる。

「……えっ」

 千秋は思わず声を漏らした。 

 出てきた人物は、門の死角で最初こちらに気づかなかったが、千秋は先にバッチリと見てしまった。

 不運にも、自分の声に振り向いたその人物と目が合ってしまう。

「あ?…………高梨?」

「あ、この前の子」

 門から現れたのは、英司と、路地事件の日に英司と一緒にいた女の人、恵理子だった。二人の視線が刺さる。

「柳瀬さん……」

 一体何回目だ、この感じ。というか、なんでここにいるんだ。え…ここの学生だったのか?しかも、なんでまたその女の人が一緒に…。

 向こう側にいる拓也が、なかなか来ない千秋の名前を呼んでいる。

 英司は合コンメンバーの方に一度目を向けると、再びこちらを見下ろす形で、ゆっくり視線を戻した。

 そして状況が読めたように、

「…………合コン」

 と、静かにつぶやいた。

 その視線に、悪いことがバレた時のように千秋は内心ドキリとする。

 もう一度、拓也に「おーい千秋?」と呼ばれたところで、今度こそハッと我に返る。拓也は千秋を気にしつつも、女子たちとのおしゃべりに夢中らしい、英司には気づかない。

「俺もう行くんで」

 目も合わせず小さい声で言うと、千秋は逃げるように英司の横をすり抜けて、合コンメンバーの元に早歩きで戻って行く。

 拓也が遅いぞ~と文句を言っていたが、適当な返事しか返せない。


 ……俺、この一年間と少し柳瀬さんと同じ大学だったの、こんなに近くにいたのに知らなかったのか。





 その後の合コンは散々で、ひたすら英司のことで頭がいっぱいだった。

 英司は医学部で、キャンパスが違うから気づかなくて、毎日忙しそうで……。そうなら、全ての辻褄が合う。しかも、うちの医学部となればかなりの難関である。柳瀬さんって、やっぱり頭いいんだ。

 上の空でぐるぐる考えていると、「拓也がついに潰れた!」と友人の一人が騒ぎ始めた。まだ一時間しか経ってないのに、最初から飛ばすからだ。

「え、高梨くん帰っちゃうの?」

「まだ少ししか時間経ってないのに~」

 女子たちが不満そうに言い始める。たしかに二人も抜けたら盛り下がるかもしれないけど、拓也が潰れてるのではしょうがない。

「ごめん。悪いけど拓也を送ってかないと。今日はありがとう」

 それから彼女たちはしばらく食い下がったが、拓也を立ち上がらせて、なんとか合コンを抜けた。最後にまた拓也の友人に礼を言われてしまった。



 タクシーに乗って拓也を部屋まで送り届けた後、千秋は歩いて帰ることにした。ここから30分くらいかかるけど、急いでないし、言うほどの距離じゃないだろう。

 歩きながら、考え事の続きをする。

 英司が土日だろうといつも夜遅くに帰宅してくるのは、医学部だったからか?

 勉強が大変そうというのはイメージとしてあるけど、生活スタイルがまちまちで不揃いなのも、そういうことなのか。

 色々と疑問は湧いてくるけど、なにせ医学部について千秋は全然知らない。

 考えても無駄なのは分かっているが、こんな近くにいたのにも関わらず、同じ大学だと今まで知らなかったことに、思ったより驚いているようだ。

 よし、考えるのやめよう。

 同じ大学だからといって、キャンパスも違うし普通にしていれば会うことはない。今までもそうだったように。

 確かにびっくりはしたが、千秋には関係のないことだ。何より、ずっと英司のことを考えている自分が気持ち悪すぎる。


 途中で何か買っていこうという別の思考へシフトさせると、千秋は足早に家を目指した。
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