22 / 75
つながりを求めた(2)
しおりを挟むしばらくすれば、集合時間少し前に女子五人も全員集まった。
休みの日だから当然といえば当然だが、彼女たちも駅の方からやってきたらしく、校舎からではなかった。
「よし、みんな集まったし、そろそろ行くか!」
テンションの高い拓也が先陣を切ると、みんなもそれについていく。拓也たちが言うには、彼女たちは派手ではないが、男子に人気のあるタイプらしい。
千秋も歩き始めたとき、門から学生らしき二人組が出てきて、ぶつかる前に立ち止まる。
「……えっ」
千秋は思わず声を漏らした。
出てきた人物は、門の死角で最初こちらに気づかなかったが、千秋は先にバッチリと見てしまった。
不運にも、自分の声に振り向いたその人物と目が合ってしまう。
「あ?…………高梨?」
「あ、この前の子」
門から現れたのは、英司と、路地事件の日に英司と一緒にいた女の人、恵理子だった。二人の視線が刺さる。
「柳瀬さん……」
一体何回目だ、この感じ。というか、なんでここにいるんだ。え…ここの学生だったのか?しかも、なんでまたその女の人が一緒に…。
向こう側にいる拓也が、なかなか来ない千秋の名前を呼んでいる。
英司は合コンメンバーの方に一度目を向けると、再びこちらを見下ろす形で、ゆっくり視線を戻した。
そして状況が読めたように、
「…………合コン」
と、静かにつぶやいた。
その視線に、悪いことがバレた時のように千秋は内心ドキリとする。
もう一度、拓也に「おーい千秋?」と呼ばれたところで、今度こそハッと我に返る。拓也は千秋を気にしつつも、女子たちとのおしゃべりに夢中らしい、英司には気づかない。
「俺もう行くんで」
目も合わせず小さい声で言うと、千秋は逃げるように英司の横をすり抜けて、合コンメンバーの元に早歩きで戻って行く。
拓也が遅いぞ~と文句を言っていたが、適当な返事しか返せない。
……俺、この一年間と少し柳瀬さんと同じ大学だったの、こんなに近くにいたのに知らなかったのか。
その後の合コンは散々で、ひたすら英司のことで頭がいっぱいだった。
英司は医学部で、キャンパスが違うから気づかなくて、毎日忙しそうで……。そうなら、全ての辻褄が合う。しかも、うちの医学部となればかなりの難関である。柳瀬さんって、やっぱり頭いいんだ。
上の空でぐるぐる考えていると、「拓也がついに潰れた!」と友人の一人が騒ぎ始めた。まだ一時間しか経ってないのに、最初から飛ばすからだ。
「え、高梨くん帰っちゃうの?」
「まだ少ししか時間経ってないのに~」
女子たちが不満そうに言い始める。たしかに二人も抜けたら盛り下がるかもしれないけど、拓也が潰れてるのではしょうがない。
「ごめん。悪いけど拓也を送ってかないと。今日はありがとう」
それから彼女たちはしばらく食い下がったが、拓也を立ち上がらせて、なんとか合コンを抜けた。最後にまた拓也の友人に礼を言われてしまった。
タクシーに乗って拓也を部屋まで送り届けた後、千秋は歩いて帰ることにした。ここから30分くらいかかるけど、急いでないし、言うほどの距離じゃないだろう。
歩きながら、考え事の続きをする。
英司が土日だろうといつも夜遅くに帰宅してくるのは、医学部だったからか?
勉強が大変そうというのはイメージとしてあるけど、生活スタイルがまちまちで不揃いなのも、そういうことなのか。
色々と疑問は湧いてくるけど、なにせ医学部について千秋は全然知らない。
考えても無駄なのは分かっているが、こんな近くにいたのにも関わらず、同じ大学だと今まで知らなかったことに、思ったより驚いているようだ。
よし、考えるのやめよう。
同じ大学だからといって、キャンパスも違うし普通にしていれば会うことはない。今までもそうだったように。
確かにびっくりはしたが、千秋には関係のないことだ。何より、ずっと英司のことを考えている自分が気持ち悪すぎる。
途中で何か買っていこうという別の思考へシフトさせると、千秋は足早に家を目指した。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる