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異世界編〜テイクアウトのお店はじめます〜
4.
しおりを挟むウィンクルムと家に戻り、買って来たものを必要なものだけ残して冷蔵庫にしまう。
使うのは牛乳とベーコン、ブラッシカというブロッコリーっぽい野菜に、カロータというニンジンっぽい根菜。想像通りの味になるといいんだけど。
賽の目に切ったカロータを下茹でしながら固いパンを一口大に切る。なかなか切れない。
何だ、このパンは。ハード過ぎるだろう。
四苦八苦しながら切り終えた頃には、カロータがいい感じに茹で上がっていた。
牛乳を火にかけ、刻んだベーコンを投入。沸騰し始めたところでブラッシカを適当なサイズに切って入れ、最後にカロータと一生懸命に切ったパンを加えた。
パンがスープを吸って柔らかくなったら塩胡椒で味を整えて完成。
風邪をひいた時の定番メニューのパン粥の出来上がりだ。
見た目はアレだけど、離乳食としても食べられてるし、ウィンクルムも食べられるはず。
俺の知ってる離乳食ってコレと後は蒸しパンくらいだしなぁ。いや、見た目3歳児だし、離乳食じゃなくてもいいんだろうけど、さっきのスープ無理っぽかったしな。
色んなもの食べさせてみて、食べられるもん増やしていくしかないか。
「ウィン~、ご飯出来たぞ」
「はーい」
ダイニングで遊んでいたウィンクルムに声を掛けると、シルバーの毛並みのウサギのぬいぐるみを抱いてやって来た。ウィンクルムの身長と殆ど変わらない大きさのウサギは、妙に存在感がある。
ウィンクルムとお揃いの毛並だが、この雰囲気はウィンクルムというより……
「ヴィータみたい……」
声に出すとウサギがピクリと震えた気がするが、ぬいぐるみが動くわけないのでウィンクルムが反応しただけだろう。
「ねぇ、ウィン。そのウサギさんはどうしたの?」
「そこにいたんだよ」
「ダイニングに?」
「うん。テーブルのちかくにすわってたの」
こんなぬいぐるみあったっけ?
思い出せないが、きっとヴィータがウィンクルムのために用意したおもちゃの1つだろう。
「気に入ったの?」
「うん! いっしょにごはんたべてもいい?」
「いいけど、汚れちゃうと可哀想だから席は俺の隣な」
「はーい」
ちょこんとダイニングの椅子に座らせられたウサギが嬉しげに見えて耳の間を撫でてみた。
うわっ ふわっふわじゃん。手触りめっちゃ気持ちいい。
抱っこして撫で回していると、ウィンクルムから抗議の声が上がった。
「ずるい~。ぼくもなでて」
抱きついて来たウィンクルムを膝にあげ、ウサギを隣の椅子に戻す。膝に収まったウィンクルムを撫でていると、さっきまで俺の膝を独占していたウサギが恨みがましくこちらを見ている気になって、首を傾げた。
表情がないぬいぐるみなのに、なぜこんなに視線を感じるんだ?
気になるが、どう見てもただのぬいぐるみだし。
「ママ?」
「ん? いや、何でもない。さて、そろそろご飯食べないと冷めちゃうぞ」
「はーい」
ウサギのお陰でほどよく冷めたパン粥を渡すと、ウィンクルムはぱくんと一口頬張った。
と、見る見るうちに顔が綻んでいく。
「おいしー」
「そうか」
「パン、ふわふわ、とろとろでおいしい」
どうなるかと思っていたが、精一杯の語彙力で美味しさを伝えてくれた。
良かった。ひとまず、ウィンが食べられるものができて。
何気なく隣を見ると、銀色のウサギも見守るような目でウィンクルムを見ている。
ホント、人間くさいぬいぐるみだな。
その後、ウィンクルムはおかわりをしてくれて、作ったパン粥は全て食べ切った。
お腹いっぱいで眠そうなウィンクルムを宥めながら風呂に入り、一緒に寝室へとやってきた。
大きなベッドではなぜか、銀色のウサギが俺たちを待っていた。
ウィンが持ってきたのか?
いつの間に?
*********
※次回、相手はヴィータですがぬいぐるみ姦です。
苦手な方は飛ばして下さい。
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