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異世界編〜テイクアウトのお店はじめます〜
2.
しおりを挟む1階をあらかた見た後、2階のリビングはさっき見たので飛ばして3階へ上がった。
元気に階段を駆け上がったウィンクルムを見ながら、俺は腰を押さえた。地味に腰が痛いのは、昨夜の運動が祟っているのか。
この痛みともしばらくはお別れか。
「ママ、どしたの?」
階段の先でヴィータそっくりのウィンクルムが心配そうな顔をしている。
何でもないよ、と笑って追いつき小さな手を取った。
「3階は個室だって。ウィンの部屋はどんな感じかな?」
「ぼくのお部屋はおくだって!パパがよういしてくれたってノインがいってた」
「いつの間に。じゃあ、まずウィンの部屋を見に行こうか」
ウィンの部屋はいかにも子供部屋って感じの内装だった。シングルサイズのベッドに背の低いタンス、絵本の詰まった本棚、柔らかそうなクッション、ベッド脇には大きなクマのぬいぐるみにすべり台まである。部屋の隅に置かれた箱は玩具箱らしく何やらたくさん入っていそうだ。
ウィンがはしゃいだ声をあげながら、滑り台で遊びはじめた。
「ヴィータ、やり過ぎ……」
「牧野様のイメージする子供部屋を作りたかったそうです。某有名家具メーカーの子供部屋を参考にされたそうです」
言われてみれば確かに俺が思い浮かべるザ子供部屋だけど。
「なるほどね。まあ、ウィンもこんなに喜んでるし、いいけど」
離れている分、プレゼントくらいあげたいって気持ちも分かる。
ただ、気になるのは俺の部屋。一体、何が置いてあるんだろう。楽しみなような、怖いような。ヴィータのぬいぐるみとか抱き枕とか置いてあったりして。
「なあ、俺の部屋はどんな感じなんだ?」
「……」
「無言ヤメテ」
「次のお部屋をご案内しますね。隣は寝室です。ウィンクルム様のお部屋にもベッドはございますが、まだお小さいので必要かと思いましてご用意させて頂きました」
さらりと流された。俺の部屋行くのがちょっと怖くなったんだけど。
気にはなるけど、ノインくんの誘導に従ってウィンクルムを連れて隣室へ入る。
ノインくんが寝室と呼ぶそこはとても広々していた。
「こちらの部屋にはトイレとバスルームも備えつけてあります。ご紹介しませんでしたが、2階リビングの隣もトイレとバスルームです」
「そうなんだ。広い寝室だね。ベッドも大きい。ウィンと2人で寝てもまだまだ余りそう」
ていうか、ここが俺の部屋なんじゃないのか。クローゼットに書き物机や戸棚もあるし。
「ベッドはーーヴィータ様が面談の日にお泊まりになることも想定しておりますので」
「宿泊ありなんだ……」
ウィンクルムと面談したら即帰宅かと思ってた。
1泊2日なら結構一緒にいれるな。3人で遊んだり、ご飯食べたり、お風呂入ったり。
楽しみだなってウィンクルムとにこにこしてたら、ノインくんにため息をつかれた。
「……ヴィータ様が日帰り出来るお方だとでも?」
「思わない」
部下としては早く戻って欲しいのか。
それにしても大きいベッドだな。
柔らかそうだし、寝心地も良さそう。試しに腰掛けてみると、良い具合に沈み込む。
たまらずに寝転ぶとかなり良い。ウィンクルムもベッドダイブして来たので、捕まえる。
「ウィンー。ウィンの部屋にもベッドあるけど、寂しいから2人でここで寝ような」
「いいよ!」
「ありがとう」
「パパの分もぼくがぎゅってしてあげるね!」
「あ、ありがとう?」
寝室の次はいよいよ、俺の部屋。ノインくんに焦らされたけど、ついに全容が明らかになる! なんて、大袈裟か。
3つ目のドアの前でノインくんが頭を下げた。
「3階の最後は牧野様のお部屋です」
「やっぱりさっきの寝室が俺の部屋じゃないんだな」
「実質的にはそうです。ですが、ヴィータ様がどうしても、と」
「ヴィータがねぇ」
「どうぞ。お入り下さい」
「ノインくんは入らないの?」
「こちらの部屋はヴィータ様と牧野様しか入れない作りになっているんです。緊急時には、ウィンクルム様も入れますが」
「は?」
「防音結界も万全です」
「んん?」
それは俗にいうヤリ部屋では。
「……ヴィータが泊まる時は、寝室を使うんだよね?」
「お休みになる時は、そうですね」
「はは……」
「お伝えしようか迷いましたが」
「なに?」
「おひとりでされる時は、ぜひ知らせて欲しいそうです」
「なっ……ばかなの、あいつ」
覗く気か?! 後で文句言ってやる!
結局、俺の部屋は入らず、リビングに戻って来た。屋上は、特に手を入れていないらしく、柵なども無いため上がるのをやめた。
「では、一通りご案内が終わりましたので失礼します」
「ああ、色々ありがとうな。ヴィータによろしく伝えてくれーーいや、後で話があるからって言っておいて」
「ーー承知しました」
「ノイン、ばいばーい!」
ウィンクルムに手を振られながら、ノインくんはどこでもドアで神殿へ戻っていった。
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