新世界

午後野つばな

文字の大きさ
上 下
34 / 47

34

しおりを挟む
「あっ……! あんっ、あ……っ」
 ぬぷり、と崇嗣さんの指が入ってきた。内部を擦り、まるで後の行為を思わせるような抜き差しする動きに、マルはそれ以上腰を上げていることができない。先ほど達したばかりの性器は硬く張りつめ、ぽたぽたと滴を零していた。それがシーツに擦られるたびに強く甘い刺激となって、マルを苛む。
「あ、あっ、あぁ……っ」
「挿れるぞ」
 硬く張りつめた崇嗣さんのペニスがマルの内部に入ってきた瞬間、スパークするように頭の中が真っ白になった。
「ん……っ、あっ、あんっ、あぁ……っ」
 汗に濡れた前髪を掻き上げるように額にキスをされる。その手が愛撫するように、達したばかりのペニスに触れた。
「あん、あ、あっ、あっ、あ……っ」
 快楽が強すぎて、全身がバラバラになりそうだ。意識を保っているのがつらく、もう無理だと思うのに、崇嗣さんのペニスで内側を擦られるたびに、マルの内部はもっともっとと強請るように彼の性器を締め付けてしまう。その動きは欲望に忠実で、淫らだ。
 どくどくと、壊れそうなほど鼓動が鳴っている。マルを抱きしめる崇嗣さんの心臓も、同じくらい速い。ぽたり、と彼の汗がマルの首筋に落ちた。マルは顔を近づけると、崇嗣さんの唇にキスをした。
「……もっと、もっとしてください」
 あなたが好き……。
「……くそっ」
 薄明かりの中で、切なげに眉を寄せる崇嗣さんの顔が見えた。彼の口づけを受けながら、マルはそっと目を閉じた。
 これ以上望むことは何もない。そう思えるくらい、マルは幸せだった。

 ヴィオラが指名手配されている。マルがそのことを知ったのは、最近崇嗣さんのようすがおかしいことに気がついたせいだ。外を歩いていても、どこか周囲を警戒している。マルが理由を訊ねても、何でもないと笑って誤魔化されてしまう。
「しばらくは家から出るな。仕事には俺だけでいく」
 ついには朝食後、崇嗣さんからさりげない口調で告げられたマルは、びっくりして皿の上に付け合わせのトマトを落としてしまった。
「何かあったのですか?」
「何もないよ」
 崇嗣さんはテーブル越しに腕を伸ばすと、「ついてるぞ」とマルの口の端についていたスクランブルエッグを摘み、そのまま口に含んだ。
 心配することは何もないと崇嗣さんに言われても、マルの不安は拭えなかった。仕事の準備をして出掛ける彼の後をついてまわるマルに、崇嗣さんは苦笑した。
「心配するな。念のための用心だ」
「で、でも……っ」
 用心が必要だというなら、崇嗣さんはどうなのだろう。
 思わず言い募るマルに、崇嗣さんは腰を屈めキスをした。
「いってくる」
 マルの髪をくしゃっと撫でると、崇嗣さんはそのまま出ていってしまった。
『一体何がそんなに心配なのさ。あの人間も言ってただろう、何もないって』
 崇嗣さんがいなくなった後も、心配そうに玄関の前をうろうろしていたマルに、ヴィオラが呆れたように言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

処理中です...