その声が聞きたい

午後野つばな

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「さとりの純粋な気持ちを利用している気がする。お前が俺を好きだというのは、生まれたばかりの雛が最初に見たものを純粋に慕っているだけかもしれないのに、さとりがかわいくて、あまりに愛しくて、そんなお前の気持ちを利用してすべてを俺のもんにしたくなっちまう」
『お前を傷つけたくないんだ』
 さとりの身体をそっと離し、困った顔でやさしくほほ笑むそうすけに、さとりの中でこれまで感じたことのない、甘く切ないような焦れた感覚が生まれた。
 そうすけの言っていることはよくわからないけど、少なくとも自分の気持ちはわかる。
 さとりはそうすけの腕に手をかけると、背伸びをして、さっきそうすけがしてくれたみたいに、頬にキスをした。最初は右側から。
『……さとり?』
 それから、驚いているそうすけをじっと見て、さとりの行為を嫌がっていないことを確かめると、今度は反対側から。ぺろっと自分の唇を舐めてから、最後に正面からそうすけの唇にそっと自分のそれを押し当てたとき、唇の間からそうすけの舌らしきものがぬるっと滑り込んできて、さとりはびっくりした。
「んー……っ、んー……っ、んー……っ!?」
 そ、そうすけ……っ、とさとりは慌てるが、頭をがっしりと押さえられていて動けない。口の中はそうすけの舌が好き勝手に動き回っていて、さとりは自分が何かまるで食べ物になったような気がした。そのとき、そうすけの舌がさとりの上顎のあたりをぬるりと舐めた。
 ぞくぞくぞくっ……と痺れが腰のあたりを走った。
「んん~……っ!」
 いったん治まりかけていたものがそうすけの刺激によって再び反応する。おまけに先のほうからは、何かがじわっと滲み出た感触があって、さとりは漏らしてしまったのかと泣きたくなった。ぎゅっと身体強ばらせると、自分を守るように身を屈める。
「さとり?」
『やっぱり怖がらせたか?』
 かすかな落胆のこもった失望と、同時にさとりを心配するそうすけの気持ちが伝わってきたが、さとりはうつむいたまま答えることができない。
 そのとき、そうすけが自分の側から離れる気配がして、さとりはますます泣きたくなった。
 こんなことぐらいで漏らしてしまうなんて、おいらはやっぱりどこか変なんだ。そうすけに知られたら嫌われてしまうかもしれない。
 白いふわふわの妖怪が心配するように、さとりの周りでぴょんぴょん跳ねた。
「さとり」
 ふわりと包み込むようにかけられたブランケット越しに、そうすけに抱きしめられる。そうすけは慰めるようにそっと、さとりの背中をぽんぽんと軽くたたいた。
「大丈夫だよ、さとり。お前が嫌なことは何ひとつしないから」
 その表情は、かけらもさとりを怒ってはいない。
『怖がらせてごめんな』
 さとりを気遣うそうすけのやさしい思いに、さとりの胸はじわっと熱くなった。
「お、おいら、おいら、そうすけに嫌われると思って……」
『……嫌われる?』
「いったいどうしてそう思った?」
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