その声が聞きたい

午後野つばな

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 部屋に戻ってくると、そうすけは腰に手をまわすようにして、さとりを自分の腕の中に閉じこめた。
「そうすけ、あの……?」
 顔を上げるとすぐ目の前にそうすけの顔があって、その近さにさとりはどぎまぎしてしまう。
 そのとき、ようすを窺うようにじっと見つめられて、なんだろうとさとりが思ったら、
『だいじょうぶかな? こいつ、嫌がってないかな……?』
 と心配するようなそうすけの声が聞こえてきた。
「や、嫌じゃない」
 さとりはぷるぷると頭を振って、
「あっ……」
 と口元に手を当てた。またそうすけの心の声に答えてしまった。
「ご、ごめんなさい……」
 思わずさとりが謝ると、そうすけはこつん、と自分のおでこをさとりのそれにぶつけた。上目遣いにちらっと見つめられて、さとりはどきっとした。鼓動がどきどきと速く打つ。
「あのな、それもうやめないか?」
「え?」
「いちいち謝るの。言っただろ、気持ちを読みたいのなら勝手に読めって。お前がなんであれ、俺はさとりが好きだよ」
 好き? そうすけがおいらのことを、好き?
 言われている意味がわからなくて、さとりはそうすけをじっと見つめた。そうすけはそんなさとりを見ると、困ったようなやさしい笑みを浮かべた。
「……お前の気持ちも読めればいいのにな」
『そしたら、お前が本当は嫌がってないか、わかるのに』
「い、嫌じゃないよ。おいら、本当にそうすけがすることで嫌なことなんて何もないよ」
 さとりの言葉に、そうすけが顔をしかめる。
『……それが困るんだよ』
 え? どういうこと……?
 何かそうすけの気の障ることを言ってしまっただろうか。とたんにおろおろするさとりに、そうすけは微かに苦笑を漏らした。
「俺がこれからどんなことをお前にしたいか知ったら、嫌われるのは俺のほうだよ」
「そうすけ……?」
 そうすけは首をわずかに傾けると、さっき頬にした口づけを、今度は唇にした。それからいったん顔を離すと、目をまん丸くさせているさとりを見て、ようすを見るようにもう一度口づける。
「……さと。さとり」
『かわいい……』
 そうすけのやさしい声が、心の呟きが耳に落ちてくるたびに、さとりの胸はアイスクリームみたいに甘くとろけた。
『……とろんとした顔している』
 うっとりしたように囁かれて、さとりは頬を染める。これはなんだかとんでもなく恥ずかしくないか。
 思わず顔をそらすと、今度は目の縁にキスをされる。
『……服を脱がして、全部にキスしたい。よけいなことなんか考えないですむみたいに、俺のことだけでいっぱいにしたい。とろとろした甘い声を聞きたい』
「さとり」
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