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第138話 歪んだ哲学
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荷物を詰め込んだラケットバックを背負い、聖は早めにホテルを出た。
いつもは気にならない荷物の重さが、今日はやけにずっしりと両肩にのしかかる。
<イイのかよ? 練習しなくて>
挑発半分、心配半分といった様子で尋ねてくるアド。言うまでもなく、これから準決勝だというのにウォーミングアップをしなくて良いわけがない。しなかったのではなく出来なかった。より正確に言えば、それよりも回復を優先せざるを得なかった。そのお陰で、どうにかこうにか動ける程度にはなったが、いつも通り動ける出来る状態には到底及ばない。
(原因、やっぱりアレなのかな)
試合会場へ向かう送迎のタクシーに乗り込みながら、聖は考えを巡らせる。昨晩は原因について考える余裕もなかった。早めに就寝して間もなく、激しい吐き気と腹痛に襲われたのだ。典型的な急性胃炎、ないし腸炎の症状が見られ、夜の間トイレから離れられず、ほぼ一睡も出来なかった。病院に行くことも検討したが、症状がそこまで深刻とは思えず、眠い頭では冷静な判断が下せないまま、ずるずると時間が過ぎてしまった。
<ひゃくぱーそうだろ。ったく、油断しやがってこのバァカ>
さすがに気の毒なのか、言い方こそいつも通りのアドだが、雰囲気には同情が滲んでいる。弱っているときにいつもの調子で来られるのも辛いが、アドに心配されるのもなんだかしっくりこない。というより、アドがいう通り今回の事態は、聖の油断が招いたと言われても仕方がない。だからむしろ、アドにはそれを徹底的につついて欲しいくらいだ。狡猾に仕掛けられたことだろうとはいえ、気付けるチャンスはあっただろう。ならいつもの調子でバカにしてくれた方が、まだ精神的に幾分かラクに思えた。
――何か、ご馳走させて欲しいの
紫色のワンピースドレスを着た、テニスファンを名乗る日本人の女性。金俣からバーへ誘われた時点で、聖は何かされるのではないかと自分なりに警戒しているつもりだった。金俣から目を離さず、バーテンに不審な点がないか気を配り、可能な限り注意を払っていたのだ。しかし、客の中に協力者がいる可能性までは、さすがに思い至らなかった。後になってよく考えてみれば、あのタイミングで見ず知らずの人間から話しかけられることの不自然さに気付くべきだったと猛省する。体調不良の原因は、まず間違いなく土産代わりに持たされたドライフルーツとナッツだろう。警戒すべき相手と過ごす時間から解放された緩みから、ついひと口だけ手を付けてしまった。お陰でこのザマだ。
(でもそっちがその気なら、こっちだって考えがある)
迂闊にも口にしてしまったが、量が少なかったお陰か致命的な症状は免れることができた。体調は最悪だし、まともに試合出来るとは思えない状況ではあるが、考え方を変えれば良い点もある。証拠となり得る現物が、聖の手元にあるのだ。試合前に大会側へ申告し、何らかの鑑定をしてもらう。そうすれば、仮にすぐではないにせよ、何らかの形で金俣の不正を証明できると、聖は考えていた。
(なにが、正しい努力をすれば必ず実を結ぶ、だ。屁理屈もいいとこだ……!)
得意げに語る金俣の顔を思い出し、聖は胸中で唾を吐く。
(あんなヤツの思い通りに、させてたまるか)
身体の不調を塗り潰す為に、聖は全身から怒りをかき集める。
寝不足と体力低下で最悪な気分に、じっとりとした怒りの火が灯った。
★
会場へ着くと、聖は早々に大会スタッフを捕まえて事のあらましを説明した。聖が想像していたよりも、スタッフは親身になって話を聞いてくれて、大会運営の最高責任者であるスーパーバイザーとも話をすることができた。証拠を預けると、スーパーバイザーは厳粛に調査すると約束し、何よりも聖の体調を気遣ってくれた。だが聖にとって厄介だったのは、現時点では金俣へ何らかの処分を下すことができず、試合自体は実施しなければならない、ということだった。
「君の言い分は分かった。しかし、疑わしいというだけで証拠もなしに決定はできない。万が一、君の主張が証明できなかったら、今度は金俣選手の名誉に関わる。君からすれば有り得ない話だと思うだろうが、現状では予定通り試合をするか、それとも君が出場を辞退して棄権するかしかない。その場合、金俣選手は決勝へと進む。彼に処分が下されるとしたら、調査が終わってからだ。どうする?」
気持ちとしてはまるで納得がいかない聖だが、スーパーバイザーのいうことはもっともだ。聖からすれば疑いようのないことでも、第三者の目から見れば、まだ何一つとして断定できる状況ではない。大会の規模を考えれば、調査結果が出るまで日程を延期してもらう、などというのは現実的ではない。罠にかかった時点で、聖が圧倒的に不利な状況となるのは確定しているのだ。
「……出ます」
しばし逡巡してから、聖は力強く言い切った。
その様子に、スーパーバイザーが驚いた様子で聞き返す。
「大丈夫なのか? ここで無理をする意味は無いんだぞ」
聖の主張が正しく、第三者の手によって証明されたなら、今回聖が試合に出ようが出まいが、金俣には処分が下される。大会で得るポイントや賞金は、不正発覚の時点へ遡って剥奪されるため、スーパーバイザーが言うように無理をする必要はまったく無い。一時的に勝ちを譲る形にはなるが、主張に自信があるなら棄権してしまう方が賢い選択だと言える。聖としても、今の身体の状態で満足に戦えるとは思っていなかった。しかしそれでも、聖は予定通り出場することを選択した。
「いえ、出ます。お客さんに悪いですから」
それは建前じゃないか、と、内心で聖は自分の言葉を自ら批難する。
試合に臨むのは、決してお客さんの為、などという綺麗ごとではない。
(思い通りにさせて堪るか)
それは純粋な私怨。聖にはその自覚がある。賢くない選択であると知りつつも、聖に棄権の選択肢はなかった。もしここで聖が棄権すれば、試合をひとつスキップできる金俣は、決勝の相手に対して有利な状況で戦えてしまう。卑怯な真似をした方が得をするなど、あってはならない。例え勝つ事ができなかったとしても、嫌がらせぐらいはできるだろう。なんとしても、金俣の鼻をあかしてやりたい。見え透いた罠にかかった自分への苛立ちと、平気でこんな真似を仕掛けてくる金俣への怒り。主にその二つが綯い交ぜになって、聖の闘志をかきたてていた。
<イイじゃん。そういうの好きだわ、オレ>
とびきりの悪戯でも思い付いたかのように、アドが笑った。
★
ATP250 バレンシアオープン セミファイナル
金俣剛毅【JP】 VS 若槻聖【JP】
対峙する若槻聖の顔色を見て、内心でほくそ笑んだ。
(クク、キャラに似合わず、怒り心頭って感じだな)
まともに眠れなかったのだろう、睡眠不足で目の下に隈ができている。連戦の疲労が重なっているのか、金俣が知る若槻の顔つきよりも幾分かやつれているようにも見えた。動きに張りが無くどこか緩慢で、見るからに体調が悪そうだ。というより、立って歩きまわるのもやっとなのだろう。だというのに、戦おうとする瞳の輝きは失われていない。若槻を今奮い立たせているのは、その瞳に僅かながら見て取れる、金俣に対する怒りが原動力なのだろう。
(さて、どんな具合か教えてもらおうか)
試合前に行われる選手同士のウォーミングアップで、金俣はさらに若槻の状態を正確に推し量ろうとする。体調不良と一口にいっても、どの程度のものなのかは把握する必要があった。快復に向かっているのか、それとも未だにダメージが蓄積しているのか、或いは実はなんともないのか。
(さすがにそれは無さそうだな)
ただの準備運動に過ぎないやりとりだというのに、若槻は金俣の打つボールについていくのがやっと、という印象だ。あくまで金俣の肌感覚ではあるが、ほぼ間違いなく若槻の体調不良は真実とみて良さそうだった。既に汗を流し始めている若槻の様子を見て、金俣は思わず笑いだしそうになる。
「練習時間は残り1分です」
主審のアナウンスがコートに響く。
(普段なら、棄権を申告するまで時間を稼ぐんだが)
呼吸を落ち着けるように、若槻はゆっくりしたリズムでサーブを打っている。その若槻がいる方向に向け、金俣はわざと強めにサーブを打った。ボールが飛んできたことに驚いた若槻は、避けようとして尻もちをつく。観客が少しざわつき、金俣は悪気がなかったというジェスチャーを見せる。立ち上がる若槻の様子を見て、腹の底から笑いと共に嗜虐心がこみ上げてくる。だが同時にふと、金俣の脳裏に忌々しい小娘の横顔が浮かび上がった。たったそれだけのことで、愉快な気分は一瞬で掻き消され、真っ黒な氷の塊を飲み下したような気分になる。
(潰すことにしたよ。なんたって、お前は素襖春菜のフィアンセだからな)
――お疲れ様でした
涼し気な顔で、彼女は金俣を圧倒した。その瞳に浮かぶ、見下すような色。
いや、見下していたのではない。あれはきっと、見透かされていたのだ。
当時、日本男子No.1の座についていた自分の、本当の実力を。
★
「Game、金俣。3-0」
(――ッ! ダメだ、全っ然カラダが動かない……!)
試合前、昨晩の状態と比較すると、聖の感覚的には回復の兆しを見せ始めているように思えた。身体の動きは鈍いものの、寝不足については頭が起きてくるのに伴って問題にならなくなってきた。連戦の疲労についても、クライオセラピーの効果が感じられてかなりマシになっている。残った問題は内臓へのダメージと、大幅な体力の低下。嘔吐や下痢は朝方には収まっていたので、内臓についてもそれほど深刻に考える必要はなさそうだ。ただそうはいっても、イメージ通りに身体が動かず、聖は焦りと苛立ちを覚えてしまう。
<体水分については、不足はしてはいますが辛うじて許容範囲。脱水症状を起こさない為に少量ずつの接種が必要。消化器官の機能は平常時より60%ほど低下。肝臓に貯蔵されているグリコーゲンが不足中。また、ビタミンやミネラルも全体的に欠乏状態。バナナやエネルギー飲料による補給を推奨>
コートチェンジ中にバナナをかじり、ゼリー飲料を飲んでいる聖に、珍しくリピカが発言した。アドとは違って相変わらず無感情だが、聖がやっていることを肯定するその内容に、なんだか勇気づけられる気がした。
<はァ~? 試合中のアドバイスは禁止なンじゃないンですか~?>
<アドバイスではありません。事実を列挙したのみです>
<いや思クソ推奨とか言ってンだろナメとンのか>
<言い間違えました。正しくは補給は許可されています>
<誰でも知ってるわンなこと! ンだコイツ、昨日から出しゃばってよォ>
<彼の行動を、客観的事実として列挙しただけですので>
<あーハイハイ、ソウデスカ~>
(アド、ちょっと黙っててくれるか)
<オイ! なンでオレだけ注意すンだボケ!>
<失礼しました>
(いや、リピカは良いんだ。ありがとう)
<クソフェミかァ~!? 男女差別反対ッ!>
賑やかさに多少うんざりしつつも、一方で気がまぎれることに聖は感謝する。思うように身体が動かないのは承知の上で、試合に臨んでいるのだ。想定したことが想定した通りに起こっているのだから、焦ったり苛立ったりする必要はない。幾分か冷静さを取り戻した聖は、気持ちを切り替えて再び試合に臨む。
(能力を使うにしても、まだもう少し体調が整ってからだ)
金俣の打つボールに、終始圧倒される聖。しかしそれでも、最初のセットだけはリザスを使わないと決めていた。勝つために試合をするのではなく、金俣の体力を少しでも消耗させ、決勝戦で有利にさせないことを目的としているからだ。ただの嫌がらせのような方針だが、今の聖にできるのはせいぜいがその程度。簡単に勝ち進めさせてたまるか、という気持ちが強かった。
(思い通りに、させてたまるか……!)
半ばコートの上でサンドバックになりながら、聖は懸命に抵抗の意を示した。
★
金俣が素襖春菜と初めて対面したのは、彼女がまだ中学生の時だった。
その頃から既に「史上最高の天才」、「日本テニス界の至宝」と称されるほど、春菜の見せる才能は圧倒的だった。しかし、所詮は女子。当時、日本男子No.1の座についていた金俣からすれば、いくら天才少女が現れたと騒がれたところで、全く自分には関係がなかった。そもそも、男子と女子では身体の作りが違う。ほぼ全てのスポーツで男女が分かれて競われるのは、男性の方が女性よりも肉体的な運動性能が勝るからだ。
「女性が男性にスポーツで勝つことなど、あり得ない」
それが、スポーツが文化として人類に根付いて以降の、共通した常識だった。勿論、個人で比較した場合は事情が異なる。オリンピックメダリスト級の女子選手と一般人男性が競えば、当然女性が勝つ。前述の常識はつまり、性別以外の条件を揃えた場合、統計的に算出される勝敗は明らかである、ということだ。テニスの場合でいうならば、女子のランキングNo.1選手は、男子のランキングでいうところの100位台の選手に相当すると言われている。それほど、運動における男女の肉体の性能差には開きがある。
だから当然、いくら素襖春菜が天才だと持てはやされようと、男子である金俣の知ったことではなかった。所詮、スポーツにおける女子の立ち位置など、男子の添え物に過ぎない。真の意味で人類としての最高峰を競い争うのは、男子の役目。女子はあくまで賑やかしで、市場を支え、一般人を楽しませる為の要素でしかない。金俣はそう考えていた。
「金俣さん、素襖春菜と試合して頂けませんか」
スポーツ関係のメディアからそう打診されたとき、金俣は初め断るつもりでいた。自分にメリットが無いし、勝つ事は分かり切っている。所詮この対戦は勝敗に関係なく、メディアが天才少女である素襖春菜を持てはやすためのイベントに過ぎない。金俣からすれば時間の無駄以外の何ものでもなかった。だが、思っていた以上に高い出演料を提示されたことと、丁度スケジュール的に空いている期間だったため、あまり乗り気では無かったが結局は了承した。ちやほやされて調子に乗っているであろう小娘の鼻っ柱を圧し折るのも、たまには悪くないという考えもあった。
「……よろしくお願いします」
対面した素襖春菜は、思ったよりも暗い印象の娘だった。中学生女子にしては身長が高いものの、筋肉の発達が追いついていない為に身体の線は細い。顔立ちは整っているが女らしさはなく、かといって幼さよりも大人びた表情を見せるアンバランスさがあった。そして何よりも、テレビやネットで見る愛想の良さは全くなく、ずっと人形のように無表情だった。
(負けると分かっている試合を組まれて、ヘソを曲げているのか)
春菜の態度をそう解釈した金俣は、愉快な気分になった。相手が誰であろうと負けたくない、という気持ちはよく分かる。ただの練習ならいざ知らず、曲がりなりにもエキシビジョンとして組まれた試合なのだ。恐らくマスコミは、出場する試合で負けなしの春菜を持てはやすだけであることに飽きたのだろう。ここらで天才少女に負けてもらって、しかしそれでいて「あの男子No.1選手にここまで肉薄する」といった内容で褒めそやしたい。それなら彼女のプライドが傷つくのも最小限に抑えられるし、これまでとは違う切り口で彼女の記事が書ける。そんな大人の事情にも、春菜は恐らく気付いているのだろう。
(ククク、早熟の天才も大変だなぁ?)
試合を前にして、金俣は俄然やる気が出てきた。要求通り、素襖春菜を完敗させて、屈辱的な目に遭ってもらう。まだ中学生の子供が、あれこれと周囲の期待や思惑に翻弄される境遇に立たされていることには同情する。だが、それは言うなれば税金のようなもの。その才能が欲しくて欲しくてたまらない連中は山のようにいるのだ。恵まれた才能と環境を独占して周囲の羨望を集めている以上、多少の理不尽を被るのは当たり前。
(遠慮なく、叩き潰してやるよ)
そう思って試合に臨み、叩き潰されたのは金俣の方だった。
「マジか」
「いや、華を持たせたんだろ」
「とはいえ、凄すぎるよ」
「まさかこれほどとは……」
コートの周囲が騒然とし、配信されていた動画サイトではコメントが大量に流れていく。敗北を喫した金俣も、何故自分が負けたのかまるで理解できなかった。終始圧倒され、力の差を見せつけられ、ほぼ成す術もなく完敗した。
「お疲れ様でした」
呆然とする金俣を残し、春菜は握手もせずコートから立ち去った。金俣はそのあと、あれやこれやとマスコミから質問を投げかけられたが、何をどう答えたのか覚えていない。ただただ、突きつけられた敗北に愕然とするより他なかった。
「Game、金俣。5-0」
若槻をほぼサンドバックにしながら、金俣は当時の事を思い出していた。
(あの小娘、ナメやがって)
金俣とのエキシビジョンは、当然話題になった。春菜は日本男子No.1の金俣という存在を踏み台にし、ますます脚光を浴びていく。テニスの話題といえば素襖春菜が中心となり、金俣が海外でツアーを制してもニュースにすらならなかった。金俣への評価が下がったわけではない。だが、自分という存在が、素襖春菜という天才の物語の添え物にされたことが、何よりも許せなかった。認めざるを得ない彼女の才能に対する微かな尊敬は消え去り、受けた屈辱に対する憎悪だけが、今もなお金俣のなかで燻ぶり続けている。
「若槻、頑張れ!」
「どうした、プエルタを倒した底力を見せてくれよ!」
「本当の実力を発揮すれば勝てるぞ!」
観客席からは、判官贔屓の声援が若槻に向けられる。
聞こえないフリをしながら、金俣は胸中で毒吐いた。
(違うね。実力とは、出した結果に準じるものだ。結果を出すために、ありとあらゆる手を尽くすことのできる能力。それが実力だ。コート上での上手い下手など、その一つに過ぎない。重要なのは、求めた結果を得られるかどうかだ。本当の実力、などというものは存在しない。ただの幻、弱者の言い訳だ)
結果を出すことが、全てのアスリートに求められる唯一の真実。そう信じているからこそ、金俣は手段を選ばない。時にリスクを負ってでも、他者を出し抜こうとし、足を引っ張り、あまつさえ罠へ陥れる。勝った方が強いのだ。勝つ為に必要な全ての行動を実行できる者が、真の勝者。金俣は春菜に負けたことで、自身の哲学をより強めていった。
(今のオレがあるのは素襖、アイツのお陰だ。この世には絶対などというものが無いと、真の意味で教えてくれた。だから、オレは求めた結果を絶対手に入れる為に、ありとあらゆる可能性を潰す。このオレが、日本人男子で最初のグランドスラム制覇を成し遂げるために。それが出来れば、あのクソみてぇな汚名は返上できるだろうよ)
素襖春菜に敗れたことで、一時期金俣には、不名誉なあだ名がつけられた。今でこそ彼をそう呼ぶ者は殆どいないが、本当に時どき、素襖春菜に関する話がでる際に、話題に出ることがあった。
『女子中学生に敗けた、元日本男子No.1』、と。
続く
いつもは気にならない荷物の重さが、今日はやけにずっしりと両肩にのしかかる。
<イイのかよ? 練習しなくて>
挑発半分、心配半分といった様子で尋ねてくるアド。言うまでもなく、これから準決勝だというのにウォーミングアップをしなくて良いわけがない。しなかったのではなく出来なかった。より正確に言えば、それよりも回復を優先せざるを得なかった。そのお陰で、どうにかこうにか動ける程度にはなったが、いつも通り動ける出来る状態には到底及ばない。
(原因、やっぱりアレなのかな)
試合会場へ向かう送迎のタクシーに乗り込みながら、聖は考えを巡らせる。昨晩は原因について考える余裕もなかった。早めに就寝して間もなく、激しい吐き気と腹痛に襲われたのだ。典型的な急性胃炎、ないし腸炎の症状が見られ、夜の間トイレから離れられず、ほぼ一睡も出来なかった。病院に行くことも検討したが、症状がそこまで深刻とは思えず、眠い頭では冷静な判断が下せないまま、ずるずると時間が過ぎてしまった。
<ひゃくぱーそうだろ。ったく、油断しやがってこのバァカ>
さすがに気の毒なのか、言い方こそいつも通りのアドだが、雰囲気には同情が滲んでいる。弱っているときにいつもの調子で来られるのも辛いが、アドに心配されるのもなんだかしっくりこない。というより、アドがいう通り今回の事態は、聖の油断が招いたと言われても仕方がない。だからむしろ、アドにはそれを徹底的につついて欲しいくらいだ。狡猾に仕掛けられたことだろうとはいえ、気付けるチャンスはあっただろう。ならいつもの調子でバカにしてくれた方が、まだ精神的に幾分かラクに思えた。
――何か、ご馳走させて欲しいの
紫色のワンピースドレスを着た、テニスファンを名乗る日本人の女性。金俣からバーへ誘われた時点で、聖は何かされるのではないかと自分なりに警戒しているつもりだった。金俣から目を離さず、バーテンに不審な点がないか気を配り、可能な限り注意を払っていたのだ。しかし、客の中に協力者がいる可能性までは、さすがに思い至らなかった。後になってよく考えてみれば、あのタイミングで見ず知らずの人間から話しかけられることの不自然さに気付くべきだったと猛省する。体調不良の原因は、まず間違いなく土産代わりに持たされたドライフルーツとナッツだろう。警戒すべき相手と過ごす時間から解放された緩みから、ついひと口だけ手を付けてしまった。お陰でこのザマだ。
(でもそっちがその気なら、こっちだって考えがある)
迂闊にも口にしてしまったが、量が少なかったお陰か致命的な症状は免れることができた。体調は最悪だし、まともに試合出来るとは思えない状況ではあるが、考え方を変えれば良い点もある。証拠となり得る現物が、聖の手元にあるのだ。試合前に大会側へ申告し、何らかの鑑定をしてもらう。そうすれば、仮にすぐではないにせよ、何らかの形で金俣の不正を証明できると、聖は考えていた。
(なにが、正しい努力をすれば必ず実を結ぶ、だ。屁理屈もいいとこだ……!)
得意げに語る金俣の顔を思い出し、聖は胸中で唾を吐く。
(あんなヤツの思い通りに、させてたまるか)
身体の不調を塗り潰す為に、聖は全身から怒りをかき集める。
寝不足と体力低下で最悪な気分に、じっとりとした怒りの火が灯った。
★
会場へ着くと、聖は早々に大会スタッフを捕まえて事のあらましを説明した。聖が想像していたよりも、スタッフは親身になって話を聞いてくれて、大会運営の最高責任者であるスーパーバイザーとも話をすることができた。証拠を預けると、スーパーバイザーは厳粛に調査すると約束し、何よりも聖の体調を気遣ってくれた。だが聖にとって厄介だったのは、現時点では金俣へ何らかの処分を下すことができず、試合自体は実施しなければならない、ということだった。
「君の言い分は分かった。しかし、疑わしいというだけで証拠もなしに決定はできない。万が一、君の主張が証明できなかったら、今度は金俣選手の名誉に関わる。君からすれば有り得ない話だと思うだろうが、現状では予定通り試合をするか、それとも君が出場を辞退して棄権するかしかない。その場合、金俣選手は決勝へと進む。彼に処分が下されるとしたら、調査が終わってからだ。どうする?」
気持ちとしてはまるで納得がいかない聖だが、スーパーバイザーのいうことはもっともだ。聖からすれば疑いようのないことでも、第三者の目から見れば、まだ何一つとして断定できる状況ではない。大会の規模を考えれば、調査結果が出るまで日程を延期してもらう、などというのは現実的ではない。罠にかかった時点で、聖が圧倒的に不利な状況となるのは確定しているのだ。
「……出ます」
しばし逡巡してから、聖は力強く言い切った。
その様子に、スーパーバイザーが驚いた様子で聞き返す。
「大丈夫なのか? ここで無理をする意味は無いんだぞ」
聖の主張が正しく、第三者の手によって証明されたなら、今回聖が試合に出ようが出まいが、金俣には処分が下される。大会で得るポイントや賞金は、不正発覚の時点へ遡って剥奪されるため、スーパーバイザーが言うように無理をする必要はまったく無い。一時的に勝ちを譲る形にはなるが、主張に自信があるなら棄権してしまう方が賢い選択だと言える。聖としても、今の身体の状態で満足に戦えるとは思っていなかった。しかしそれでも、聖は予定通り出場することを選択した。
「いえ、出ます。お客さんに悪いですから」
それは建前じゃないか、と、内心で聖は自分の言葉を自ら批難する。
試合に臨むのは、決してお客さんの為、などという綺麗ごとではない。
(思い通りにさせて堪るか)
それは純粋な私怨。聖にはその自覚がある。賢くない選択であると知りつつも、聖に棄権の選択肢はなかった。もしここで聖が棄権すれば、試合をひとつスキップできる金俣は、決勝の相手に対して有利な状況で戦えてしまう。卑怯な真似をした方が得をするなど、あってはならない。例え勝つ事ができなかったとしても、嫌がらせぐらいはできるだろう。なんとしても、金俣の鼻をあかしてやりたい。見え透いた罠にかかった自分への苛立ちと、平気でこんな真似を仕掛けてくる金俣への怒り。主にその二つが綯い交ぜになって、聖の闘志をかきたてていた。
<イイじゃん。そういうの好きだわ、オレ>
とびきりの悪戯でも思い付いたかのように、アドが笑った。
★
ATP250 バレンシアオープン セミファイナル
金俣剛毅【JP】 VS 若槻聖【JP】
対峙する若槻聖の顔色を見て、内心でほくそ笑んだ。
(クク、キャラに似合わず、怒り心頭って感じだな)
まともに眠れなかったのだろう、睡眠不足で目の下に隈ができている。連戦の疲労が重なっているのか、金俣が知る若槻の顔つきよりも幾分かやつれているようにも見えた。動きに張りが無くどこか緩慢で、見るからに体調が悪そうだ。というより、立って歩きまわるのもやっとなのだろう。だというのに、戦おうとする瞳の輝きは失われていない。若槻を今奮い立たせているのは、その瞳に僅かながら見て取れる、金俣に対する怒りが原動力なのだろう。
(さて、どんな具合か教えてもらおうか)
試合前に行われる選手同士のウォーミングアップで、金俣はさらに若槻の状態を正確に推し量ろうとする。体調不良と一口にいっても、どの程度のものなのかは把握する必要があった。快復に向かっているのか、それとも未だにダメージが蓄積しているのか、或いは実はなんともないのか。
(さすがにそれは無さそうだな)
ただの準備運動に過ぎないやりとりだというのに、若槻は金俣の打つボールについていくのがやっと、という印象だ。あくまで金俣の肌感覚ではあるが、ほぼ間違いなく若槻の体調不良は真実とみて良さそうだった。既に汗を流し始めている若槻の様子を見て、金俣は思わず笑いだしそうになる。
「練習時間は残り1分です」
主審のアナウンスがコートに響く。
(普段なら、棄権を申告するまで時間を稼ぐんだが)
呼吸を落ち着けるように、若槻はゆっくりしたリズムでサーブを打っている。その若槻がいる方向に向け、金俣はわざと強めにサーブを打った。ボールが飛んできたことに驚いた若槻は、避けようとして尻もちをつく。観客が少しざわつき、金俣は悪気がなかったというジェスチャーを見せる。立ち上がる若槻の様子を見て、腹の底から笑いと共に嗜虐心がこみ上げてくる。だが同時にふと、金俣の脳裏に忌々しい小娘の横顔が浮かび上がった。たったそれだけのことで、愉快な気分は一瞬で掻き消され、真っ黒な氷の塊を飲み下したような気分になる。
(潰すことにしたよ。なんたって、お前は素襖春菜のフィアンセだからな)
――お疲れ様でした
涼し気な顔で、彼女は金俣を圧倒した。その瞳に浮かぶ、見下すような色。
いや、見下していたのではない。あれはきっと、見透かされていたのだ。
当時、日本男子No.1の座についていた自分の、本当の実力を。
★
「Game、金俣。3-0」
(――ッ! ダメだ、全っ然カラダが動かない……!)
試合前、昨晩の状態と比較すると、聖の感覚的には回復の兆しを見せ始めているように思えた。身体の動きは鈍いものの、寝不足については頭が起きてくるのに伴って問題にならなくなってきた。連戦の疲労についても、クライオセラピーの効果が感じられてかなりマシになっている。残った問題は内臓へのダメージと、大幅な体力の低下。嘔吐や下痢は朝方には収まっていたので、内臓についてもそれほど深刻に考える必要はなさそうだ。ただそうはいっても、イメージ通りに身体が動かず、聖は焦りと苛立ちを覚えてしまう。
<体水分については、不足はしてはいますが辛うじて許容範囲。脱水症状を起こさない為に少量ずつの接種が必要。消化器官の機能は平常時より60%ほど低下。肝臓に貯蔵されているグリコーゲンが不足中。また、ビタミンやミネラルも全体的に欠乏状態。バナナやエネルギー飲料による補給を推奨>
コートチェンジ中にバナナをかじり、ゼリー飲料を飲んでいる聖に、珍しくリピカが発言した。アドとは違って相変わらず無感情だが、聖がやっていることを肯定するその内容に、なんだか勇気づけられる気がした。
<はァ~? 試合中のアドバイスは禁止なンじゃないンですか~?>
<アドバイスではありません。事実を列挙したのみです>
<いや思クソ推奨とか言ってンだろナメとンのか>
<言い間違えました。正しくは補給は許可されています>
<誰でも知ってるわンなこと! ンだコイツ、昨日から出しゃばってよォ>
<彼の行動を、客観的事実として列挙しただけですので>
<あーハイハイ、ソウデスカ~>
(アド、ちょっと黙っててくれるか)
<オイ! なンでオレだけ注意すンだボケ!>
<失礼しました>
(いや、リピカは良いんだ。ありがとう)
<クソフェミかァ~!? 男女差別反対ッ!>
賑やかさに多少うんざりしつつも、一方で気がまぎれることに聖は感謝する。思うように身体が動かないのは承知の上で、試合に臨んでいるのだ。想定したことが想定した通りに起こっているのだから、焦ったり苛立ったりする必要はない。幾分か冷静さを取り戻した聖は、気持ちを切り替えて再び試合に臨む。
(能力を使うにしても、まだもう少し体調が整ってからだ)
金俣の打つボールに、終始圧倒される聖。しかしそれでも、最初のセットだけはリザスを使わないと決めていた。勝つために試合をするのではなく、金俣の体力を少しでも消耗させ、決勝戦で有利にさせないことを目的としているからだ。ただの嫌がらせのような方針だが、今の聖にできるのはせいぜいがその程度。簡単に勝ち進めさせてたまるか、という気持ちが強かった。
(思い通りに、させてたまるか……!)
半ばコートの上でサンドバックになりながら、聖は懸命に抵抗の意を示した。
★
金俣が素襖春菜と初めて対面したのは、彼女がまだ中学生の時だった。
その頃から既に「史上最高の天才」、「日本テニス界の至宝」と称されるほど、春菜の見せる才能は圧倒的だった。しかし、所詮は女子。当時、日本男子No.1の座についていた金俣からすれば、いくら天才少女が現れたと騒がれたところで、全く自分には関係がなかった。そもそも、男子と女子では身体の作りが違う。ほぼ全てのスポーツで男女が分かれて競われるのは、男性の方が女性よりも肉体的な運動性能が勝るからだ。
「女性が男性にスポーツで勝つことなど、あり得ない」
それが、スポーツが文化として人類に根付いて以降の、共通した常識だった。勿論、個人で比較した場合は事情が異なる。オリンピックメダリスト級の女子選手と一般人男性が競えば、当然女性が勝つ。前述の常識はつまり、性別以外の条件を揃えた場合、統計的に算出される勝敗は明らかである、ということだ。テニスの場合でいうならば、女子のランキングNo.1選手は、男子のランキングでいうところの100位台の選手に相当すると言われている。それほど、運動における男女の肉体の性能差には開きがある。
だから当然、いくら素襖春菜が天才だと持てはやされようと、男子である金俣の知ったことではなかった。所詮、スポーツにおける女子の立ち位置など、男子の添え物に過ぎない。真の意味で人類としての最高峰を競い争うのは、男子の役目。女子はあくまで賑やかしで、市場を支え、一般人を楽しませる為の要素でしかない。金俣はそう考えていた。
「金俣さん、素襖春菜と試合して頂けませんか」
スポーツ関係のメディアからそう打診されたとき、金俣は初め断るつもりでいた。自分にメリットが無いし、勝つ事は分かり切っている。所詮この対戦は勝敗に関係なく、メディアが天才少女である素襖春菜を持てはやすためのイベントに過ぎない。金俣からすれば時間の無駄以外の何ものでもなかった。だが、思っていた以上に高い出演料を提示されたことと、丁度スケジュール的に空いている期間だったため、あまり乗り気では無かったが結局は了承した。ちやほやされて調子に乗っているであろう小娘の鼻っ柱を圧し折るのも、たまには悪くないという考えもあった。
「……よろしくお願いします」
対面した素襖春菜は、思ったよりも暗い印象の娘だった。中学生女子にしては身長が高いものの、筋肉の発達が追いついていない為に身体の線は細い。顔立ちは整っているが女らしさはなく、かといって幼さよりも大人びた表情を見せるアンバランスさがあった。そして何よりも、テレビやネットで見る愛想の良さは全くなく、ずっと人形のように無表情だった。
(負けると分かっている試合を組まれて、ヘソを曲げているのか)
春菜の態度をそう解釈した金俣は、愉快な気分になった。相手が誰であろうと負けたくない、という気持ちはよく分かる。ただの練習ならいざ知らず、曲がりなりにもエキシビジョンとして組まれた試合なのだ。恐らくマスコミは、出場する試合で負けなしの春菜を持てはやすだけであることに飽きたのだろう。ここらで天才少女に負けてもらって、しかしそれでいて「あの男子No.1選手にここまで肉薄する」といった内容で褒めそやしたい。それなら彼女のプライドが傷つくのも最小限に抑えられるし、これまでとは違う切り口で彼女の記事が書ける。そんな大人の事情にも、春菜は恐らく気付いているのだろう。
(ククク、早熟の天才も大変だなぁ?)
試合を前にして、金俣は俄然やる気が出てきた。要求通り、素襖春菜を完敗させて、屈辱的な目に遭ってもらう。まだ中学生の子供が、あれこれと周囲の期待や思惑に翻弄される境遇に立たされていることには同情する。だが、それは言うなれば税金のようなもの。その才能が欲しくて欲しくてたまらない連中は山のようにいるのだ。恵まれた才能と環境を独占して周囲の羨望を集めている以上、多少の理不尽を被るのは当たり前。
(遠慮なく、叩き潰してやるよ)
そう思って試合に臨み、叩き潰されたのは金俣の方だった。
「マジか」
「いや、華を持たせたんだろ」
「とはいえ、凄すぎるよ」
「まさかこれほどとは……」
コートの周囲が騒然とし、配信されていた動画サイトではコメントが大量に流れていく。敗北を喫した金俣も、何故自分が負けたのかまるで理解できなかった。終始圧倒され、力の差を見せつけられ、ほぼ成す術もなく完敗した。
「お疲れ様でした」
呆然とする金俣を残し、春菜は握手もせずコートから立ち去った。金俣はそのあと、あれやこれやとマスコミから質問を投げかけられたが、何をどう答えたのか覚えていない。ただただ、突きつけられた敗北に愕然とするより他なかった。
「Game、金俣。5-0」
若槻をほぼサンドバックにしながら、金俣は当時の事を思い出していた。
(あの小娘、ナメやがって)
金俣とのエキシビジョンは、当然話題になった。春菜は日本男子No.1の金俣という存在を踏み台にし、ますます脚光を浴びていく。テニスの話題といえば素襖春菜が中心となり、金俣が海外でツアーを制してもニュースにすらならなかった。金俣への評価が下がったわけではない。だが、自分という存在が、素襖春菜という天才の物語の添え物にされたことが、何よりも許せなかった。認めざるを得ない彼女の才能に対する微かな尊敬は消え去り、受けた屈辱に対する憎悪だけが、今もなお金俣のなかで燻ぶり続けている。
「若槻、頑張れ!」
「どうした、プエルタを倒した底力を見せてくれよ!」
「本当の実力を発揮すれば勝てるぞ!」
観客席からは、判官贔屓の声援が若槻に向けられる。
聞こえないフリをしながら、金俣は胸中で毒吐いた。
(違うね。実力とは、出した結果に準じるものだ。結果を出すために、ありとあらゆる手を尽くすことのできる能力。それが実力だ。コート上での上手い下手など、その一つに過ぎない。重要なのは、求めた結果を得られるかどうかだ。本当の実力、などというものは存在しない。ただの幻、弱者の言い訳だ)
結果を出すことが、全てのアスリートに求められる唯一の真実。そう信じているからこそ、金俣は手段を選ばない。時にリスクを負ってでも、他者を出し抜こうとし、足を引っ張り、あまつさえ罠へ陥れる。勝った方が強いのだ。勝つ為に必要な全ての行動を実行できる者が、真の勝者。金俣は春菜に負けたことで、自身の哲学をより強めていった。
(今のオレがあるのは素襖、アイツのお陰だ。この世には絶対などというものが無いと、真の意味で教えてくれた。だから、オレは求めた結果を絶対手に入れる為に、ありとあらゆる可能性を潰す。このオレが、日本人男子で最初のグランドスラム制覇を成し遂げるために。それが出来れば、あのクソみてぇな汚名は返上できるだろうよ)
素襖春菜に敗れたことで、一時期金俣には、不名誉なあだ名がつけられた。今でこそ彼をそう呼ぶ者は殆どいないが、本当に時どき、素襖春菜に関する話がでる際に、話題に出ることがあった。
『女子中学生に敗けた、元日本男子No.1』、と。
続く
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