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第1章 ラスラ領 アミット編
09 ペリドット死す
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「なんじゃ、この酒場はやけに暑いのー」
先生と呼ばれる少女は真っ赤なローブを脱いだ。
そして更に首に巻いていたスカーフのような巻物を解こうとした。
「おやめ下さい。それを外されると先生(マスター)の防御力は限りなく0になります」
「そんなもん解っとるわ。しかし、今日はもうはずしても良いじゃろー。暑くて敵わんぞ」
「大丈夫ですわ。私たちがついていますもの。ロベルト、何かあったらあなたの責任よ」
「ふざけるなアリステラ。先生の呪いを忘れたのか?」
「(呪いだって? 聞いたかリディア? )」
「(うん。でも何のことだろう?)」
呪いと言う言葉を聞いた僕は敏感になる。
僕には3つの呪いが掛けられているらしいが、悪魔から掛けられたそれの正体は未だ不明だ。
この少女にも呪いが掛けられているというのを聞くと、僕自身の呪いを謎を解く鍵となるのかもしれない。
これは耳が離せない。
「暖炉に薪をくべすぎじゃー」
「少し暑いくらいがお酒は進みますわ」
少女がスカーフを外したとき、その下から見覚えのあるチェーンが覗いた。
鈍く光るチェーンの先には小ぶりだが存在感のあるクロスが付いている。
どこかで見覚えのあるものだが……
そうだ、あれは僕と同じ___
見覚えがある、どころではない。
あれは、今朝サラからもらった物と似ているじゃないか。
なんとなく覗き込む形になり、僕は少しだけ体を乗り出した。
ちょうどその時である。
______ズン!!
何かが背中に当たった気がした。
「なんだ?」
胸元の違和感に目線をやる。
何やら尖った物が胸から突き出ていた。
その尖った物の先端を中心に、次第に赤黒い血液が滲んでゆくのが見える。
胸のチェーンクロスが血で濡れて鈍く光る。
するとだんだん僕の上着が黒い血液に濡れていった。
酒場の床に僕の血液で血だまりができる。
「う、嘘……? ペリドットっっっ!!!! 嫌だ! 嫌だ!」
僕はいつの間にか地面に倒れ込み、リディアから抱きかかえられるように支えられた。
酒場は騒然としていたが僕だけは冷静なままだった。
(??? リディア? そんなに慌ててどうしたの? あれ? 声が出ないや……)
薄れゆく意識のなかで、魔術師の1人が立ち上がるのが見える。
その少女のような魔術師は何者かに対して指先を振った。
指先を振っただけである。
だが僕のような素人にもそれが魔術だというのは分かった。
指先からは、直視できないほどの眩い光が広がる。
すべてを覆いつくすような圧倒的な違和感の塊。
それを最後に、僕の意識は沈み込んだ。
◇◇◇
目が覚めると知らない天井だった。
朝か……
小鳥のさえずりが聞こえた。
(僕はどうしてここに______?)
見渡すとそこは高級ホテル?
間違っても平民向けの宿屋ではない。
石造りの真っ白で丈夫そうな壁の中では、仰々しい絵画が至る所に飾られ、透き通った窓ガラスからはアミットの街並みが高い位置から臨めた。
身体がすっぽりと沈み込みそうな柔らかいベッドから降りると、自分が全裸であることに気が付く。
胸には包帯。
僕は怪我をしたのか?
思い出せない……。
窓と反対側の壁には血塗れの僕の服が丁寧に掛けられていた。
その上着は胸元と背中に小さな穴を空けていた。
そうか。
僕は昨日何かで刺されたんだった___
僕は自分の胸を触って確かめた。
大きく包帯が巻かれていたが痛みはない。
血も止まっているようだ。
クロスのペンダントは首に下げられたままだった。
傷跡すらない。
これは上質な回復薬を使用されたのだろうか。
代金を請求されたら、とてもじゃないが払えない。
奴隷生活の始まりか?
勘弁してくれ。
こんな時にお金の心配とは我ながら呆れる……。
けれど僕はなぜ刺されたんだろう?
刺された……いや、おそらくは離れた位置からボウガンか、弓のような物で撃たれたのか。
違う。
いや、撃たれたことには違いない。
だが、標的は僕じゃなかった。
あの魔術師の少女に向かって放たれたんだ。
とするとあの少女は無事なのだろうか?
魔術師達の会話から推測すると、あの魔術師が、装備していたスカーフを外すことによって防御力が0になったところに暗殺者が矢を放ったのか。
だが、イレギュラーな存在によって暗殺者の思惑通りにはいかなかった。
僕という存在だ。
現場にたまたま僕が居合わせ、身を乗り出したことにより、矢は魔術師に到達する前に僕の背中に命中した。
暗殺者は失敗したのだ______
僕は運悪く矢を受け倒れ、魔術師は……あの眩い閃光の魔術を暗殺者に放った。
そして僕は意識を失った。
そこから先は記憶にない。
どうやってここまで運ばれたのだろうか……何はともあれ僕は無事だと言うことだ。
生の喜びを噛み締めていると、白く重厚なドアが静かに開いた。
そしてドアの隙間から顔が覗いた。
その人は僕の様子を伺いに来たのだろう。
魔術師の仲間の一人の女性……確かアリステラさんとかいったかな。
「あっ。目を覚ましたのね! よかったわぁ!」
その美しい魔術師は、長い髪を揺らしながら眩しい笑顔で駆けてきた。
その抱き付いてくるかのような勢いに胸が躍った。
が、しかしそうではなかった。
彼女は間近で僕の手を取ると溌剌と話し始めた。
「あなた、昨日は褒められて然るべきことをしたのよ! 本当に感謝してるわ!! 身体はもう大丈夫かしら?」
花のように笑うと、アリステラさんは僕にギュッと抱きついた。
クラクラとするような甘い香りと、柔らかい胸の感触に、僕の下半身が……
___まずい……!
今の僕は全裸だった。
あわてて股間を手で隠す。
何とも情けない姿。
サラやリディアに見られたら軽蔑されそうだ。
アリステラさんは、股間を隠そうとする僕の両手首を掴んで宙で張り付けにした。
「ちょ、ちょっと待って下さい……!」
そして僕の耳元に口を近付け、甘くそしてゆっくりと囁いた。
「あら、随分と元気じゃない?」
先生と呼ばれる少女は真っ赤なローブを脱いだ。
そして更に首に巻いていたスカーフのような巻物を解こうとした。
「おやめ下さい。それを外されると先生(マスター)の防御力は限りなく0になります」
「そんなもん解っとるわ。しかし、今日はもうはずしても良いじゃろー。暑くて敵わんぞ」
「大丈夫ですわ。私たちがついていますもの。ロベルト、何かあったらあなたの責任よ」
「ふざけるなアリステラ。先生の呪いを忘れたのか?」
「(呪いだって? 聞いたかリディア? )」
「(うん。でも何のことだろう?)」
呪いと言う言葉を聞いた僕は敏感になる。
僕には3つの呪いが掛けられているらしいが、悪魔から掛けられたそれの正体は未だ不明だ。
この少女にも呪いが掛けられているというのを聞くと、僕自身の呪いを謎を解く鍵となるのかもしれない。
これは耳が離せない。
「暖炉に薪をくべすぎじゃー」
「少し暑いくらいがお酒は進みますわ」
少女がスカーフを外したとき、その下から見覚えのあるチェーンが覗いた。
鈍く光るチェーンの先には小ぶりだが存在感のあるクロスが付いている。
どこかで見覚えのあるものだが……
そうだ、あれは僕と同じ___
見覚えがある、どころではない。
あれは、今朝サラからもらった物と似ているじゃないか。
なんとなく覗き込む形になり、僕は少しだけ体を乗り出した。
ちょうどその時である。
______ズン!!
何かが背中に当たった気がした。
「なんだ?」
胸元の違和感に目線をやる。
何やら尖った物が胸から突き出ていた。
その尖った物の先端を中心に、次第に赤黒い血液が滲んでゆくのが見える。
胸のチェーンクロスが血で濡れて鈍く光る。
するとだんだん僕の上着が黒い血液に濡れていった。
酒場の床に僕の血液で血だまりができる。
「う、嘘……? ペリドットっっっ!!!! 嫌だ! 嫌だ!」
僕はいつの間にか地面に倒れ込み、リディアから抱きかかえられるように支えられた。
酒場は騒然としていたが僕だけは冷静なままだった。
(??? リディア? そんなに慌ててどうしたの? あれ? 声が出ないや……)
薄れゆく意識のなかで、魔術師の1人が立ち上がるのが見える。
その少女のような魔術師は何者かに対して指先を振った。
指先を振っただけである。
だが僕のような素人にもそれが魔術だというのは分かった。
指先からは、直視できないほどの眩い光が広がる。
すべてを覆いつくすような圧倒的な違和感の塊。
それを最後に、僕の意識は沈み込んだ。
◇◇◇
目が覚めると知らない天井だった。
朝か……
小鳥のさえずりが聞こえた。
(僕はどうしてここに______?)
見渡すとそこは高級ホテル?
間違っても平民向けの宿屋ではない。
石造りの真っ白で丈夫そうな壁の中では、仰々しい絵画が至る所に飾られ、透き通った窓ガラスからはアミットの街並みが高い位置から臨めた。
身体がすっぽりと沈み込みそうな柔らかいベッドから降りると、自分が全裸であることに気が付く。
胸には包帯。
僕は怪我をしたのか?
思い出せない……。
窓と反対側の壁には血塗れの僕の服が丁寧に掛けられていた。
その上着は胸元と背中に小さな穴を空けていた。
そうか。
僕は昨日何かで刺されたんだった___
僕は自分の胸を触って確かめた。
大きく包帯が巻かれていたが痛みはない。
血も止まっているようだ。
クロスのペンダントは首に下げられたままだった。
傷跡すらない。
これは上質な回復薬を使用されたのだろうか。
代金を請求されたら、とてもじゃないが払えない。
奴隷生活の始まりか?
勘弁してくれ。
こんな時にお金の心配とは我ながら呆れる……。
けれど僕はなぜ刺されたんだろう?
刺された……いや、おそらくは離れた位置からボウガンか、弓のような物で撃たれたのか。
違う。
いや、撃たれたことには違いない。
だが、標的は僕じゃなかった。
あの魔術師の少女に向かって放たれたんだ。
とするとあの少女は無事なのだろうか?
魔術師達の会話から推測すると、あの魔術師が、装備していたスカーフを外すことによって防御力が0になったところに暗殺者が矢を放ったのか。
だが、イレギュラーな存在によって暗殺者の思惑通りにはいかなかった。
僕という存在だ。
現場にたまたま僕が居合わせ、身を乗り出したことにより、矢は魔術師に到達する前に僕の背中に命中した。
暗殺者は失敗したのだ______
僕は運悪く矢を受け倒れ、魔術師は……あの眩い閃光の魔術を暗殺者に放った。
そして僕は意識を失った。
そこから先は記憶にない。
どうやってここまで運ばれたのだろうか……何はともあれ僕は無事だと言うことだ。
生の喜びを噛み締めていると、白く重厚なドアが静かに開いた。
そしてドアの隙間から顔が覗いた。
その人は僕の様子を伺いに来たのだろう。
魔術師の仲間の一人の女性……確かアリステラさんとかいったかな。
「あっ。目を覚ましたのね! よかったわぁ!」
その美しい魔術師は、長い髪を揺らしながら眩しい笑顔で駆けてきた。
その抱き付いてくるかのような勢いに胸が躍った。
が、しかしそうではなかった。
彼女は間近で僕の手を取ると溌剌と話し始めた。
「あなた、昨日は褒められて然るべきことをしたのよ! 本当に感謝してるわ!! 身体はもう大丈夫かしら?」
花のように笑うと、アリステラさんは僕にギュッと抱きついた。
クラクラとするような甘い香りと、柔らかい胸の感触に、僕の下半身が……
___まずい……!
今の僕は全裸だった。
あわてて股間を手で隠す。
何とも情けない姿。
サラやリディアに見られたら軽蔑されそうだ。
アリステラさんは、股間を隠そうとする僕の両手首を掴んで宙で張り付けにした。
「ちょ、ちょっと待って下さい……!」
そして僕の耳元に口を近付け、甘くそしてゆっくりと囁いた。
「あら、随分と元気じゃない?」
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