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act5 Melancholie

5-4 Secret Truth

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 スクランブル交差点前の改札は、騒然としていた。駅員の判断で、乗降客を他の改札へ誘導し、避難用に開放された結果、其処に人が集中した。
 笹平を連れて避難した黒薙は、改札の柵にもたれたまま広場での一部始終を遠目で見ていた。隣の黒いロングヘアの少女は、ただ広場に背を向けて柵にしがみ付き、俯いて体を震わせている。
 「……宇奈月……」
と黒薙は呟き、奥歯を軋ませた。
 地面に蹲り、恋人に抱かれながら泣き叫ぶ、日本人らしからぬ見た目の少年。1年前の夏の終わりも、あいつはこんな風に泣いていたのだろう……、但したった独りで。この場で命を落とした、大切にしたかった少女のために。
 あの日、スマートフォンのスピーカー越しに聞こえていた声と、今遠くから微かに聞こえてくる声が、黒薙の頭でリンクする。
 ……あんな奴が、本当に最低なワケがない。ただ、そう罵るのは、そうしなければならないからだ。黒薙は、その葛藤に初めて苛まれた。
 「……ふ、2人……は……?」
笹平は声を絞り出して問う。黒薙は
「無事だ」
とだけ言い、問い返す。
「……動けるか?」
「……どうにか……」
と笹平は答え、顔を上げる。ただ、表情は怯えたままだ。
 3秒経って、黒薙は同級生の手を引いて言った。
「行くぞ」
「何処に……?」
「渋谷じゃない何処か」
とだけ、笹平の問いに答える黒薙。中学生の頃から見知った同級生を、この辛い街から引き離せるなら、何処だってよかった。

 2人は応援に駆け付けた警察官に保護され、無人になった交番に案内される。名前と保護者の名前、そして連絡先を問われ、先に澪が答えるが、保護者として父の名前を出すと
「常願……あの室堂さんの……?」
と警察官が目を見開いた。澪が頷くと、別の警察官が固定電話を手にし、臨海署の電話番号を押した。
 ……やはり、警視庁の中でも室堂と云う名前はそこそこ知名度が有るらしい。父の実績からか、単に珍しい名字だからかは知らないが。
 そして流雫も、問われたままに答える。その直後に事情聴取が始まったが、銃を撃ったことについてはもうすぐ着く刑事に任せるらしい。
 ふと澪が外を見る。私鉄や地下鉄を含めれば世界第2位の乗降客数を誇る駅の最も有名な広場では、現場検証が始まっていた。そして爆発したドライバンの撤去と遺体の収容が行われている。その隣で流雫は、ガラス張りのドアに振り向く気は無く、俯いてただ泣かないようにと気を張り詰めていた。
 「……流雫、ダメだよ……?」
澪はその顔に目を向け、背中を撫でながら言った。
 ……流雫がそうやって気丈に見せるのは逆効果、今までもそうだった。ただ、そうでもしないと、あの惨劇を思い出して泣き出しそうになる。それは澪にも判る。
「……判ってる……」
とだけ呟くように答えた流雫は、長く深い溜め息を吐いた。それで少しでも落ち着ければ……、と期待したが、無駄な悪足掻きにすらならなかった。

 「……俺は君たちの、エクスクルーシブじゃないんだけどな」
と、若めの刑事が少し悪態をつきながら交番のドアを開けたのは、それから30分後のことだった。流雫は
「あ……」
と声を上げる。
 ちょうど、一通りの聴取が終わったところだ。と云っても、9割以上を澪が話して、流雫は問われた相違の有無に答えるだけだった。あまりにも寡黙な少年だと警察官は思ったが、ロクに言葉を発することができないほどに、参っているのが2人には判る。
 「昨日ぶり。……無事だったかい?」
と問うた声に彼はか細い声で
「弥陀ヶ原さん……」
と名前を呼ぶが、すぐに言葉を詰まらせる。その様子に弥陀ヶ原は澪に顔を向けるが、目を合わせた少女は目を閉じて首を水平に振る。溜め息をついた弥陀ヶ原は
 「……彼らを、臨海署へ連行したい。俺にとってはトンボ帰りだが」
と警察官に言い、続けた。
「今の2人には、この街は残酷だ。特にこの少年にとっては、重要な取調の妨げになりかねない。何しろ此処は……」
そう、ただでさえ此処は、流雫にとっても辛い街なのだ。彼の名誉のためにと、弥陀ヶ原は何が有ったか言及は避けたが、警察官は調書を渡し、今までの出来事を色々説明していた。
 「……じゃあ、行こうか」
と言った弥陀ヶ原についていく2人は立ち上がったが、流雫は下を向いたままだった。
 ……焼け焦げたドライバン、破片が散乱する慰霊碑、自分が撃った犯人のものではない誰かの血痕……その全てから目を逸らすように足下しか見ず、両手で耳を塞ぐ流雫。その後ろを歩く澪は、その背中に手を当てていた。
 セダンの後部座席に2人を乗せると、エンジンを掛けた弥陀ヶ原は一度車から離れ、少しして戻ってくるとホットの缶コーヒーを1本ずつ、2人の高校生に渡そうとした。
「あ、ありがとうございます……」
と礼を言った澪とは対照的に、流雫は受け取りもせず、ただじっと俯いているだけだった。……軽く頭を下げる、それさえもできないほどに。
「……はぁ……」
と弥陀ヶ原は溜め息をつきながら、缶を2本まとめて澪に渡すと、ルーフ上の回転灯を光らせてセレクトレバーをDへと引いた。

 複雑に入り組んだ首都高速を、臨海副都心に向けて走る弥陀ヶ原は、ステアリングを握りながら後部座席の少年を案じていた。 
 流雫から兄のように慕われている刑事にとって、弟のような少年がこれほどにまで参っているのは、初めて見た。10月の、秋葉原での澪以上だった。
 澪は相変わらず、流雫の背をそっと撫でているだけだった。
 ……人は戦う度に強くなる、と言われても、それはゲームやアニメの世界での話に限る。この世界にステータスやレベルの概念など無いのだ。強くなるなら、誰も苦労しない。
 そして流雫は、テロに遭遇し、戦う度に強くなるどころか、弱くなっているように見える。
 何者かの手によって、突然人の命がこの世界から切り取られる瞬間を目の当たりにし、平静でいられるワケがない。そして、彼にとってはあまりにもダメージが大き過ぎる。
 東京港トンネルを出ると、臨海副都心の街並みがフロントウィンドウに広がる。あと少しで臨海署に着く。外は、未だ粉雪がちらついている。

 河月からの高校生2人は、午前中で帰るのも癪だからと、首都タワーに向かった。あの日トーキョーアタックが起きなければ、笹平と美桜は渋谷に行った後、最後に古くからの東京のシンボルから大都会の景色を眺め、新宿に戻り高速バスで帰ることになっていた。
 私は無事です、とだけ澪にメッセージを送った笹平は、黒薙に折角だからとタワーへ連れて行ってほしい、と頼んだ。
 笹平は、東京の街を未だ1人では歩けない。ただ、誰かが一緒なら歩ける。それでも、地元河月の駅前の人混みさえ避けようとしていた頃に比べれば遙かにマシだ。
 エレベーターで上がった、地上150メートルの展望台。地元の人工物でも、これほどの高さのものは無い。コンクリートに囲まれた街を見下ろすのは新鮮だが、同時に何か異様な感じがした。
 この世界にいない同級生と眺めたかった景色を、中学生の頃からの同級生と隣り合って眺める笹平は、しかしその黒薙の目が険しいままだったことに気付く。
「私と一緒、イヤだった?」
と問うた笹平に黒薙は
「イヤじゃない」
とだけ答えて、ただ粉雪が舞う東京の街並みを眺めている。……自分と一緒がイヤじゃない、ならば彼が何を思っているのか、それは何となく判る。笹平は少し間を置いて本題を切り出した。
 「……先刻、珍しく宇奈月くんと普通に話していたわね。美桜の前だったから?」
「……そうかもな」
笹平の問いにそう答えた黒薙は、少しだけ間を置くと、遠くの東京湾を見つめながら言った。
 「……宇奈月は必死だ。新しい彼女に頼りながら、必死であの日と向き合おうとしている。先刻だってそうだった。……どうやって出逢ったのかは知らんが」
先刻の渋谷でも、今のタワーでも、今日の黒薙には流雫を見下すような様子は無い。それが、逆に疑問だった。
 「じゃあ、どうして2人を最低呼ばわりしたの!?」
と笹平は問い詰める。黒薙と流雫の確執……と云うよりは黒薙の一方的な言い掛かりは、本気で担任教師に相談しようと思っているほどだ。
 「……オフレコだからな」
と言った黒薙は観念した。逆に担任に介入されても困る……特に流雫が。それなら、笹平には全て話して、牽制すべきだと思った。
 「……宇奈月は最低だ。それは間違いじゃない。ただ、欅平を見殺しにしたからじゃない。そうだと言って自分を追い込んでるからだ」
と黒薙は言った。その言い方も、あの日本人らしからぬ見た目の同級生をバカにするような様子は無い。寧ろ、案じていた。
「じゃあどうして……!」
と、笹平は思わず声を張り上げる。
 何事か、と一瞬周囲の目が2人に集まるが、彼女は気にしなかった。
「ただ、あまりにも多過ぎるんだよ。見殺しにしたと言ってる奴が」
そう言った黒薙は、一度深く溜め息をつく。そして、最も避けたかった言葉を吐いた。
 「……挙げ句、あいつが欅平の代わりに死ねばよかったと、言ってる奴までいる。1年経った今でもだ」
その言葉に反射的に
「それって……!」
と一際大声を上げた笹平は、同時に頭を殴られたような感覚に襲われた。完全に初耳だった。
 ただ、誰が言いそうかは日常を思い返していると何となく判る。そして、遣り場が無い怒りがゆっくり沸いてくる。
 自分が当事者なら、後先構わず担任に通報したり直接相手に立ち向かったりはできるが、あまりにもナーバス過ぎる。黒薙がオフレコだと釘を刺す理由も合点がいく。しかし……。
「宇奈月が代わりに死ねば、欅平をモノにするチャンスが回ってくる。人気者だっただけに、その彼と云うポジションは自慢できるからな」
と黒薙は言い、眉間に皺を寄せる。その隣で笹平は
「人の死を、何だと思ってるの!?」
と震えながら言った。それは黒薙も同じだった。そして、一瞬言わなければよかったと黒薙は思ったが、今更遅い。遅いし、言わなければいけなかった。
 「……何処かで何度も吹聴されたからか、あいつ自身がそう思ってたからかは判らんが、奴らの思い通り、宇奈月は見殺しにしたと思い込んでやがる」
と言って笹平に顔を向けた黒薙は、険しい目付きのまま続けた。
 「これから先はどう言われても、どう思われてもいいが、……だから俺も片棒を担ぐことにした。宇奈月の優しさに甘えていたと言われれば、その通りだがな」
その言葉に
「今更自分を擁護する気?」
と笹平は険しい表情で、同級生を問い詰める。擁護するにしたって、既にその限度を超えているとしか彼女には思えない。
 「どう言われてもいいと言ったろ?……奴らは、俺が代わりに因縁を付けてるから、それで満足しているんだ。宇奈月を叩ければ、それでいいんだ」
黒薙は答える。
「宇奈月くんには、本当のことを言わないの!?あと1年半も、こんなことが続くのかって思わせる気!?」
笹平は更に問う。
「……言い掛けた。先刻な。まさか銃に邪魔されるとは思わなかったが……」
と黒薙は言った。
 ……あの時なら、流雫には言えると思った。いや、東京にいるうちに言わなければならないと思っていた。河月では、言うワケにはいかない。
 その意味では、先刻は或る意味では図らずも訪れた最大の、恐らく唯一チャンスだった。それも、もしかすると欅平が取り持ったのかもしれない。ただ、最悪の形で断ち切られた。
 「……だから、あの人にも引っ叩かれるのよ」
と笹平は言った。
 澪が黒薙を叩いたことは、澪自身から聞いていた。その話を蒸し返したのは、同級生に悪態の一つでもつかなければ、個人的に気が済まないだけの話だった。
「……そうだな」
とだけ言った黒薙は、しかしあの少女が笹平に余計なことを喋った、とは思わなかった。彼自身、少しやり過ぎだと思っていた。だから、当然の報いか。
 「……宇奈月と欅平をバカにするなら、容赦しない、か」
と、黒薙は呟いた。

 「流雫と美桜さんをバカにするなら、あたしが容赦しないわ……!」
そう言った少女の、あの可愛い顔からは想像もつかないような睨みを、黒薙は忘れない。
 あの時は、突然のことについ手を出しそうになった。咄嗟に流雫が、伸ばした手を弾いて止めたのは、寧ろ救いだった。
 ……あの言い方からして、あの少女は流雫と美桜の関係と過去を知っていると、黒薙は思った。その上で、あれだけ恋人に必死なら、間違い無くシルバーヘアの同級生を支えてやれる。
 そして流雫はようやく、人に頼ることを覚えた。黒薙にはそう見えた。惜しむらくは、もっと早く、覚えてほしかった。
 そして、欅平を失ったことを過ちだと思ってほしくはないが、それでもそう思い続けるのなら、せめて過ちを繰り返すな、と思った。もし、あの名も知らない彼女を欅平美桜のように失えば、今度こそ宇奈月流雫は完全に壊れる。
 「……度が過ぎてたわね」
と皮肉交じりに言った笹平に、
「今更ながら、俺もそう思う。ただ……」
と返した黒薙は溜め息をついた。何か言いたげな彼に
「ただ?」
と笹平は問うた。
 「……宇奈月には悪いが、もう1年半付き合わせる。形だけでもな」
「どうして!?」
同級生の言葉に、学級委員長は再び声を大きくする。
 「……俺が止めたところで、奴らが手を出すのが目に見えてる。それなら今のままがいい。俺が因縁を付けてる限り、奴らは何も言わない。あの連中なんかに、好き勝手言わせるものか」
黒薙は言い、思わず奥歯を軋ませる。
「それが本当だとして、止めさせられないの?」
と笹平は苛立ち混じりに問うた。本当だとして……最早笹平は、何が事実で何がそうでないのか、判らなくなりつつあった。
「できるならとっくにやってる!」
黒薙も、思わず声を上げる。
 ……自分にとって好都合なことばかり言って、笹平を困惑させている。そう思われても仕方ない、とは最初から覚悟していた。……ただ、これが現実だった。
 「……お前、宇奈月の彼女と知り合いなのか?」
と問うた黒薙に、
「……まあ、少しだけ。別の学校だけど」
と笹平は答える。別の学校どころか、同じ県ですらない。
「最初に言ったが、今の話はオフレコだからな。そいつにも秘密だぞ」
と黒薙は再度釘を刺し、洗面所に消えた。

 今までが今までだっただけに、鵜呑みにできる話、とは未だ思えない。しかし黒薙明生と云う高校生は元々、これだけの事をアドリブで言えるほど器用な性格ではない。
 そして何より、代わりに死ねばよかった……などとと云う言葉を、経緯はどうあれ平気で使う性格ではない。それは、中学生の時から変わっていない。
 「美桜……」
と、笹平は呟く。
 あの日何も起きなければ、この隣に美桜がいるハズだった。景色が綺麗だの何だの言って、心地好い疲労を抱えたまま高速バスに乗って……最高の1日になるハズだった。
 そして、翌週美桜は流雫とデートだった。1学期が終わる直前、
「今度、流雫とデートするんだ。楽しみ過ぎて」
と惚気ていたことを思い出した。何より、流雫から誘ってきたことが嬉しかったらしい。彼は何も言わなかったが、少し頬を紅くしていたことを思い出す。
 それなのに、彼女が地球から消えた……いや、消された。そして、あの日を境に、それなりに平和だった学校でも、今し方聞いたような問題が起きた。ただ、これほどに複雑だったとは、想像できるハズもなかった。
 黒薙に、半ば怒り任せに問い詰めたのも、半分以上は渋谷駅前で起こした、美桜の死のフラッシュバックから逃れるためでもあった。それが卑怯なことだとは、彼女自身も思っている。
 しかし、流雫が以前言っていたように、彼女の死はあまりにも大きく、重い。笹平志織、黒薙明生、そして宇奈月流雫……彼女の同級生だった3人に大きな影を落とした。そして、あれから1年以上も経つのに、誰一人として正しく、彼女の死に向き合えていないように思えた。向き合えと云う方が、難しいのだが。
 「……美桜……」
笹平は再度呟きながら、眼鏡を外し、柵に押し付けた腕に目を押し付ける。……私は、私たちは、どうすればいいの……?教えてよ、美桜……。

 黒薙は洗面所で、冷たい水に顔を晒すと
「くそっ……」
とだけ呟く。ハンカチで顔を拭きながら、成り行きとは云え洩らした言葉を思い出していた。
 ……宇奈月が、欅平の代わりに死ねばよかったのに。その一言を何時だったか最初に聞いた時、黒薙は思わず相手の胸倉を掴んだ。殴らなかっただけ、偉いと思いたい。
 しかし、一方で同時に聞こえていた流雫には深々と突き刺さっていた。言葉は諸刃の剣だ、とは飽きるほど聞かされてきたが、これほど突き刺さるものなのか、と愕然とした。そして、それは彼が弱いのではなく、繊細だからだと思った。
 ……その事を思い出すと、怒りがまた沸騰してくる。折角、気を紛らわせようと顔を洗ったと云うのに。
 深い溜め息をついて、黒薙は笹平の元に戻る。
「笹……」
と名を呼び掛けて、黒薙は言葉を留めた。……小さな嗚咽を漏らし、目を腕に押し付ける笹平が、其処にいたからだった。
 ……やはり、笹平には残酷な話だったか。悪いことをした、と思いながら、黒薙は同級生の背中を軽く叩く。
「……一つ、教えて……?」
と笹平は言った。
「何だ?」
と問うた黒薙に、同級生は
「どうして、この話を東京でしたの……?河月じゃダメなの……?」
と本題をぶつけた……簡単な理由だ。
 「河月じゃ、何時奴らと出会すか、何を聞かれるか判らん。だが東京じゃ、その心配も無い」
と黒薙は答える。
 「……だから、先刻宇奈月くんと普通に話せたのね……」
と言いながら、笹平は顔を上げた。視界は未だ、少し滲んでいる。
 4年来の同級生がやっていることは、やはり褒められることではないし、やり過ぎだと思う。ただ、自分が昔から知る彼の根幹は失われていない。それが判っただけでもよかった。……そう思わないと、今日のところは折り合いがつけられない。
 「……まあな」
とだけ言った黒薙は、しかし流雫のことが気懸かりでもあった。しかし、勝手に名も知らないあの恋人に任せることにした。
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