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【おまけ】 プロトタイプ examination”C”

examination”C” 中編

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  examination”C” 中編

夕菜「ちょっと、本選ってどういうこと? もう試験は終わったんじゃないの?」
総真「終わったのは予選だ」
無我「待てよ。examination”C”に予選があるなんて聞いたことないぞ?」
「それが、過去に一度だけあったんだなぁ」 別館の入り口に、私服姿のタケルが姿を見せる。
無我、夕菜、幻斗「「「!」」」
無我「なんで部外者のてめぇがここにいる?」
タケル「なに、単なる一ギャラリーだ。気にするな、話を続けなよ」 適当な場所にパイプ椅子を広げ、腰をかける。
神威「先生。本選と言われますが、これから何を始めるつもりですか?」
総真「これからお前等には互いに戦ってもらう」
夕菜「それじゃあ、半分は試験に落ちることになるじゃない?」
総真「別に勝敗が試験結果に影響するわけではない。ま、言わば実力を見せてもらうといったところだ」
遥「……試合の組み合わせは?」
総真「そこに貼ってある」
 壁にはトーナメント表が貼り出されていた。トーナメント表には、左から7、1、2、6、4、3、5と数字がかかれている。
平男「はは。番号の意味がわからないや」
総真「それは予選の順位だ。つまるところ、第一試合、桐生 対 平田。第二試合、五十嵐 対 氷室。第三試合、舞川 対 真壱ってことだ」
無我「おい、俺は?」
総真「おまえはシードだ」
タケル「不満なら、俺が相手になってもいいぜ?」
総真「やめとけ。恥をかくぞ」
美紅「先生、その方はいったい……」
タケル「あ、悪いな。知った顔があったもんで自己紹介が遅れた。俺は草薙 タケル(くさなぎ たける)。一応、ここの卒業生さ」
無我「そして、現役EXPERTだ」
 無我、夕菜、幻斗以外の生徒の表情が変わる。
タケル「そう身構えるなって。俺は試験とは無関係。ここにいるのはプライベートだ」
総真「こいつが騒ぎ出すとうっとうしいからな。そろそろ試合を始めるか。桐生、平田。装置をつけろ」
幻斗「試合のルールを聞いてませんが?」
総真「なに、ただ相手を倒すだけさ。相手をDEAD・OUTさせるか、降参させれば勝ち」
平男「ははは。単純でいいね」 平男は装置を身につける。
幻斗「了解した」 幻斗も装置を身につける。
 仮想空間装置の電源が入れられ、二人は仮想空間内へ。スクリーンに中の光景が投影される。
総真「なお、Boutの時のようにライフ表示はないし、リカバリーや痛覚制御も入れてない。つまり、攻撃を受ければ、痛みを感じ、傷が残る。さっき、勝敗は関係ないといったが、降参のタイミングは重要だ。下手をすれば、体は何ともなくても、精神に障害をきたすことになりかねんからな」
幻斗「そろそろ始めてもらえますか?」
総真「ふ。そう急(せ)くな。第一試合。桐生 幻斗 VS 平田 信男。――始めっ」

 仮想空間内は、無機質な石床が続いているだけだった。
平男「先手必勝」 開始直後、構成に時間のかかる銃を構成し始めたのだが、すでに銃が現れ始めていた。
幻斗「顔に似合わずせこい事を。開始前から、頭ん中でフォースの構成をしてやがったな」
 銃口が幻斗に向けられる。
平男「作戦だよ。今回は最初から飛ばすからね」
幻斗「飛ばしてその程度じゃ、底が知れるな」 幻斗は、高速で間合いを詰める。
平男「! 早い。――このぉ」 発砲。しかし幻斗には狙いが定まらず、弾は、石床を傷つけるだけだった。
 幻斗の肘が、平男の鳩尾(みぞおち)に入る。平男は声を漏らすのを堪えたが、平男の体は前かがみになって、飛び出た顔面に肘打ちからの連続攻撃である裏拳が強打する。
 裏拳を受け、平男はダウンする。
幻斗「さて、俺もフォースを使うとしますか」 幻斗がカタールを生成し始める。しかし、現れたのは、篭手だけだった。
夕菜「! ま、まさか……」
 篭手の先に風が集まっていく。
幻斗「風の聖剣、エクスカリバー」 風で作られた白い刃が、カタールの刃として、両腕の篭手から現れる。
夕菜「私の武器を真似たぁ」
幻斗「なに言ってやがる? 俺は舞川の武器なんて見たことねぇぞ? こいつはまぎれもなく――!」 前方から、螺旋をえがきながら弾丸が飛来する。
 とっさに反応し、体を捻って回避した幻斗だったが、弾は左肩をかすめた。
幻斗「ダウン中にサイレンサーを追加しやがったな」
平男「ははははは。僕に目を離すからだよ」 追加されたサイレンサーから硝煙が立ち昇る。
幻斗(肩が熱い。これが銃の威力かよ) 左手のエクスカリバーを消滅させた。
平男「どうやら左手が動かせなくなったみたいだね」 平男は幻斗の左側に回りこむ。
 幻斗が体を回転させて平男を追うが、平男はすでに発砲していた。
幻斗「なめるなよ」 幻斗の周りに、風が吹き荒れる。
 弾丸は風に軌道をそらされる。そのまま幻斗は平男を斬りにかかる。
平男「当たらないよ」 上体をそらして攻撃を回避する。
 攻撃をかわした平男だったが、右腹部から血が噴き上がる。
平男「な、なん、で……」 幻斗は平男の腹部から、エクスカリバーが構成された左手を抜いた。
幻斗「少し痛ぇけど、問題なく動くんだよ、俺の左手はな」
 平男が床に倒れこむ。
幻斗「これで俺の勝ちだろ?」
無我「幻斗っ、なにをしている? まだ終わってないぞ」
幻斗「はぁ? これはどう見てももう、戦えないだろ?」
無我「勝負は降参するかDEAD・OUTしないかぎり決まらないんだろ?」
平男「……そうだよ。まだ、終わってないんだよ」 平男は立ち上がり、周りに次々と砲台を生成していく。砲台にはさまざまな種類があり、ただの大砲のもあれば、ガドリングカノンを搭載したものまである。
 そのガドリングカノンが幻斗に向けて放たれる。
幻斗「風よっ」 幻斗の足元から風が渦巻くが――
平男「このガドリングがそんな風で防げるものか」 深手を負い、身動きの出来ない平男だが、攻撃の手は止まらない。
 ガドリングのいくつかは風の壁を貫いて、幻斗にダメージを与えていく。
平男「とどめだよ」 大砲が幻斗に照準を定める。
幻斗「――仕方ない、奥の手に行くか」
平男「その状況でなにが出来るのさ? さあ、これで終わりだよっ」 大砲が放たれた。
 だが、幻斗の姿は、すでに平男の背後に位置していた。平男が向いている方向から足音が聞こえてくる。何もない空間に、ただ足音だけが平男に近づいてくる。 
平男「な、なに? コレ?」
 次の瞬間、人の首をはねる音がした。その音が終わるのと同時、平男にDEAD・OUTがかかった。

平男「――! い、いったいなにが?」 バイザーが上がり、現実に戻った今でも、なにが起きたかが分からずにいる。
幻斗「……ソニックブームって知ってるか?」
美紅「ソニックブーム?」
夕菜「それってたしか、音速を超える飛行機が通りすぎた後に飛行音が後から聞こえてくるってやつでしょ?」
幻斗「そう。そして俺はそれと同じことをやったまでだ」
夕菜「どういうこと?」
幻斗「俺があの位置に移動した地点で、攻撃はもう終わっていた。ソニックブームって技の名前じゃ、小技みたいかもしれんが、これが俺の最大奥義だ」
総真「まずは桐生の勝利だな。――よし、次。五十嵐、氷室、前に出ろ」
美紅「けっこうバタバタしますね」 文句を言いながらも、装置の前に座り、装置の電源を入れる。
総真「ちょいと時間に自信がなくてな。ほら、氷室も急いでくれ」
 無我が総真に近づき、小声で総真に意見する。
無我「――敗者に慰めの言葉くらいくれてやったらどうなんだ?」
総真「敗者? 誰が?」
タケル「無我。最初に説明があっただろ? 勝敗は関係ないって。これはな、試験合格者の――」
総真「タケル、それ以上は言うな。……無我、平田はEXPERTに欲しい人材だ。たしかにお前やタケルのような実戦タイプのEXPERTとしては劣っている。だが、戦いだけがEXPERTじゃない」
タケル「さあ、もう戻れ。いいかげんにしておかないと、俺たちの関係を勘ぐられるぞ?」

 スクリーンに仮想空間が映し出され、神威と美紅が対峙する。
総真「よしっ、第二試合だ。五十嵐 美紅 VS 氷室 神威。――始め」
 開始合図と同時に、まずは氷室をが飛び出した。
神威「キミの武器は遠距離型。キミの間合いにはさせない」
美紅「流石です。でも、それは出来ませんでしょうね」 美紅は杖を出さずに、光の球を五つ作り出す。そして、それらが神威を囲む。
 神威は動きを止める。
神威「なんだ、これは?」
美紅「弱点をカバーする技くらい用意しています」
神威「……察するところ、支援攻撃系の能力か。――壊す」 氷のつぶてが、美紅の作り出した光球目掛けて飛来する。
 光球はつぶてを回避し、神威に向けて光線を放った。神威は、光線の嵐に飲み込まれてていく。
夕菜「決まった?」
美紅「たぶん、効いてない。氷室君がこの程度でやられるとは思わないから」 この隙に、美紅は杖を作り出す。
 美紅の右前方に影が現れる。
美紅「そこっ」 杖を振り、フォースを放とうとするが、出てきたのは氷の塊だった。美紅は攻撃の手を止める。
美紅「その手にはかかりません。後ろっ」 その対称側から現れた影に向かってフォースが飛ばされる。
 氷の塊が砕け散る。
美紅「こっちも、偽物?」
神威「違うな。最初が僕だったのさ」 最初に出てきた氷の塊の中から神威が現れ、美紅の背後を取る。
神威「『氷牙(ひょうが)』」 地面から、氷の牙が美紅を襲う。
美紅「くっ」 光球を操作し、氷牙を砕かせる。
 そして美紅は、振り向きながら神威目掛けて杖を振るう。神威の周りに氷が飛び散る。
美紅「氷の、防御膜」
 美紅のあご下に、神威は手のひらを当てる。
神威「『氷雨(ひさめ)』」 そのまま、細かい氷の刃をいくつも放った。
 しかし美紅は体をそらし攻撃を回避、氷雨は上方へと消えていった。
 美紅が神威から離れ、間合いを取る。杖を回し、その先端を神威に向けた。
美紅「やっぱりあなたに技の出し惜しみは失礼ですね。私の最高の技で行きます」 杖先に光が集まる。神威は宙を舞う光球にけん制され、下手には動けない。
美紅「いきます。『バニシング・レイ』」 杖の輝きが増す。
 神威は杖先に視線を集中する。しかし、杖の光は一向に飛び出そうとしない。
神威「?」
夕菜「まさか、未完成だったの?」
美紅「……やはり、引っかかってくれました」
 次の瞬間、光速で上空から光が降り注いだ。神威の周りに氷が散るものの、完全に光に飲み込まれた神威に大ダメージを回避する術はない。
神威「ぐぉっ」
 光が去った後、ダメージで神威が膝をつく。
美紅「耐え切っただけでも凄いですよ」 美紅の操作により、光球が神威を囲む。
美紅「ですが油断はしませんよ。あなたが桐生君のような、高速移動技を持っていないとも限りませんから」 杖先に光が集まる。二発目のバニシング・レイの体勢だ。
 地面から神威を中心に巨大な氷の柱が現れた。美紅はとっさに光球に攻撃を命じる。しかし、氷の柱は、光線を乱反射させていく。
美紅「なら、その柱ごと消し去るまで。バニシング――!」 喉元に、冷たい刃の感触。
 神威が美紅の背後から、氷の刃を喉元につきつけていた。
神威「桐生のような移動技を警戒したまでは良かったのだがな」
美紅「どうして? あなたはバニシング・レイを受けて、満足に動くことも出来ないはずなのに」
神威「僕の砕いた氷の上に陣取ったのがまずかったね。キミの予想通り、僕も移動系の技を習得している。この技は『氷招(ひょうしょう)』。僕が作り出した氷の位置に僕を引き寄せる。さあ、キミの取るべき行動は、わかっているな?」
美紅「警戒はしていたんですけどね……。――降参です」 ここで美紅が投了した。
総真「勝者、氷室 神威」

 仮想空間から現実に戻される。
美紅「あーあ、負けちゃった」
夕菜「その割には悔しそうに見えないけど?」
美紅「夕菜ちゃん、戦闘中、バニシング・レイが未完成だって言ってたけど、あれね、ほんと未完成だったんだ」
夕菜「でも、ああして――」
美紅「気づかなかった? あの技、発動から発生までにものすごく時間がかかるの。そんな技を奇策を使ったとはいえ、実戦で決めれたんだもん、負けても満足してるよ」
夕菜「そういうもんなのかな?」
美紅「さあ、次は夕菜ちゃんの番だよ? 相手は、あの真壱さん。今度は勝ってね」
夕菜「当然。Boutの私とは違うんだから」
遥「そして私も、ね」
タケル「おーい、無我ぁ? この二人、なんか因縁でもあるのか?」
無我「さぁ?」
幻斗「そういやお前、Boutの時は寝てたんだっけなぁ。――こいつら、Boutの時に引き分け同然の試合をやったんだよ。結果を言えば真壱の勝ちだったんだがな」
タケル「へぇ、引き分け同然の試合ねぇ。思い出すな、総真?」
総真「くだらん話はいい。二人とも、装置をつけろ」
 夕菜、遥が装置を装着する。
遥「舞川。私はBoutの時に勝ったとは思っていない。でも、今度の試合に判定なんてものはない。完全に決着をつけようじゃない」
夕菜「ここ一ヶ月、とんでもない地獄を見せられたからね。これまでの私と思わないでね」
 二人のバイザーが順に降ろされる。

総真「第三回戦。舞川 夕菜 VS 真壱 遥。――始めっ」
 まずは互いに武器を生成する。夕菜はフランベルクの元となる、刃のない剣を作り出す。そして遥は――
遥「まずは小手調べってとこで」 その手に現れたのは拳銃だった。
夕菜「拳銃? 平男の武器じゃない」
遥「学校襲撃の時にね、彼のフォースウェポンを手にする機会があってね。悪いけど解析させてもらったの」 銃口を向けると、迷わずに発砲する。
夕菜「フランベルクっ」 刃のない剣に炎の刃が噴き上がる。
夕菜「ただ発砲するだけならなんてことはない」 飛来する弾丸を斬りつけ、消滅させる。
遥「たしかにね。でも、このタイプは連射が可能なの。それでも防げるかしら?」 トリガーをロックし、ありったけの弾丸を放っていく。
夕菜「私をなめないでよね」 夕菜の体を、炎が包む。
 夕菜の炎は弾丸をもかき消していく。
遥「なんて防御性能なの」
夕菜「言っとくけど、フォース切れを期待してるんだったら無駄だからね」
遥「なるほど。たしかに以前とはまるで違うようね」 何を思ったか、手持ちの拳銃を投げ捨てた。拳銃が床に転がると、フォースウェポンである拳銃は消滅していく。
夕菜「なんのつもり?」
遥「そろそろ本来の武器を出そうと思ってね」
夕菜「どんな武器でこようとも、この炎は貫けないよ」
遥「これを見てもそう言える?」 右腕の部分から、弓が現れる。しかしそれは弓と言うよりはボウガンのようだった。
夕菜「ボウガン? なんでボウガンなんて……、銃の方が強力なのに」
遥「それは、私の技を使うため。そして、エレメンタルフォースを乗せるため」 右腕に水が纏わりつく。
夕菜「水のエレメンタルフォース?」
無我「! まずい。夕菜、その攻撃は食らうな」
夕菜「なに言ってんのよ? 私の炎が水くらいで消えると思ってるの」
 遥が作り出した水がボウガンの矢に変わる。
遥「よほど、その炎に自信があるようね。けど、私だってここ一ヶ月、死ぬような思いをしてエレメンタルフォースを習得したんだから。――『スプレッド・アロー』」 矢が放たれる。
 放たれた矢は水流に変わり、夕菜を襲う。
夕菜「『火球弾(かきゅうだん)』」 夕菜は火球で応戦する。
 しかし火球は水流に飲み込まれて消えてしまった。水流は夕菜に纏わる炎に触れる。炎と水が音を立てる。
夕菜「そんな、炎が消えていく?」
遥「水のフォースはフォース無効化の象徴。――本当、あなたとは相性がいいみたいね」
夕菜「くっ」 炎を破棄して右方に飛ぶ。
遥「捉えた。『スプレッド・スパイラル』」 スプレッド・アローとスパイラル・アローの合わせ技だ。強力な水流が、螺旋を描きながら夕菜を襲う。
神威「決まったか」
夕菜「『紅蓮薙(ぐれんなぎ)』」 夕菜は横に飛んでいる体勢でフランベルクを振う。フランベルクから炎が爆発し、炎が高速で燃え広がっていく。
 遥のスプレッド・スパイラルは炎に飲み込まれ、一旦、姿を隠す。が、フォースを無効化しながら夕菜に向かってくる。しかし、炎は消えずに遥に向かっていた。
遥「『スプレッド・ウォール』」 足元から水が噴き上がり炎を阻止する。
 スプレッド・スパイラルは夕菜の右肩をえぐった。
遥「勝負、あったかしら?」
夕菜「その状況でよくそんなことが言えるわね?」
遥「何を言って――! そんな……」
 夕菜の紅蓮薙はまだ消えていなかった。遥のスプレッド・ウォールは、炎の進行を止めているものの、炎自体の勢いはなんら弱まっていなかった。
夕菜「私の最強技がそんな簡単に消せると思っていたの?」
遥「なんなの? この炎?」
夕菜「さて、あなたはその状態で攻撃体勢が取れるのかしらね? ――多分、無理でしょう。だって、その水はフォースを消しちゃうんだから」 右肩を押さえながら、フランベルクに新しい炎を宿す。
夕菜「これで、決める」 夕菜は、自分で放った紅蓮薙の中に飛び込んだ。遥にとどめを刺すために。
遥「攻撃を防ぐ盾しか手元にないのなら、突いて戦うまで」 スプレッド・ウォールの中に手を入れ、ウォールの軌道を屈折させる。水流は、前方に放たれる。当然、スプレッド・ウォールは範囲が狭くなり、紅蓮薙は遥を飲み込んだ。
 夕菜も水流をまともに受け、ダメージを受ける。
 仮想空間は、炎も水も消え、倒れている二人の姿を映し出していた。
幻斗「相打ち? 引き分けか?」
神威「いや、まだだ。二人とも、DEAD・OUTに達していない」
美紅「夕菜、ちゃん……」
 遥が、体を振わせながら立ちあがる。立ちあがると、左腕で右腕のボウガンを支えながら、夕菜に狙いを定める。
美紅「夕菜ちゃんっ」
遥「これで、私の――」
 何かが回転しながら飛来し、遥の胴体を切り裂いた。その瞬間、遥にDEAD・OUTがかかる。
 金属音を立てて、その物体が床に落ちる。
遥「鉄の、剣……」
夕菜「この技は、まだ有効だったみたいね」 夕菜は鉄の剣を生成し、投げていたのだ。Boutの時のように……。
総真「勝者、舞川 夕菜」

遥「ふぅ、完敗ね。まさかあんな古い技を使ってくるとはね」
夕菜「でも、どっちが勝ってもおかしくない試合だった」
遥「――そうね」 遥は手を差し出す。
 夕菜はその手を取り、握手を交わした。
総真「じゃあ、ちょっと遅くなったが休憩を取るか」 現在、一時五十分。
総真「三時まで休憩を取る。その後、桐生と神威の戦いを行う。試験が終わった者は帰宅してもいいぞ? 結果は日を改めて、郵送する」 あえて、負けたものとは言わない。
 皆が席を立つ。そして、別館を後にしていった。しかし、幻斗だけは別館に残っていた。
 幻斗が、総真と話しているタケルに近づく。
幻斗「タケルさん、ちょっといいですか?」

・後編に続く
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