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【おまけ】 プロトタイプ examination”C”
Prologue
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Prologue
月明かりが街をうっすらと映し出す闇の中、黒い服を身に纏い、顔を隠す程のフードを身につけた、年齢十五,六くらいの歳の少年が宙に浮き、地上を見つめている。その視線の先には、もう動かない巨大な生物が一体。
この空間にふさわしくない軽い音楽が夜空に響く。懐からその音の元凶、携帯電話を取り出すと、受信ボタンを押して電話に出る。
「こちら、無我。今ちょうど片付いた。――はぁ? ちょっと待て、まだ働かせる気かよ? ……テットトラブル? ランクは? ――! A? ……わかった、わかった。俺が出りゃいいんだろ?」 不機嫌そうに電話を切る。
無我「ったく、完全に人手不足だな。――EXPERTは」
この世界には人に害なす『テット』という生物が存在する。そして、そのテットが引き起こすトラブルから人々を守るために『ガーディアン』という組織が作られた。その中に『EXPERT』と呼ばれるチームが存在する。ガーディアンの中でも桁違いの能力を持つ彼らは、まさに人間最強と言っても過言ではないだろう。
古今、EXPERTに限らず、ガーディアンは人手不足に悩まされていた。そんな中、そのガーディアンを育成する『ガーディアン・スクール』が設立されたのだが、――まぁ、ガーディアン不足は解消されつつあるものの、ハイレベルなトラブルに対応できるEXPERTはあいかわらず人手不足のようで。
この物語は、現役学生兼EXPERTの『法名 無我(ほうな むが)』と、ふとしたことから彼に深く関わることになった『舞川 夕菜(まいかわ ゆうな)』。そして、彼らを取り巻く学生たちの成長と戦いを描いた物語である。
examination ”C”
さて。ここは、この物語の主人公の一人でガーディアンスクール三回生、『舞川 夕菜』さんの自宅。現在、午前八時前。彼女は今、珍しく時間に追われていた。
ガーディアンスクールの制服に着替えた夕菜は、階段を駆け下りていく。
「夕菜ちゃん、ちょっといい?」 母親の陽子が語りかけてくる。
夕菜「ゴメン、ほんと時間ないの」 真っ直ぐに玄関へ向かう。
陽子「夕菜ちゃん、大事な話なの」
夕菜「帰ってからにして! ――いってきます」 玄関を出ると、直角に曲がりフルスピードでダッシュ。
陽子「あーあ。もうあんなとこまで」
「どーも」 陽子が玄関を出たところで、引越し業者の服を着た男性が声を掛けてきた。
陽子「あら。早いですね?」
引越し業者「時間の指定がなくて、早めでお願いしますって言われたもので……、差し支えるのであれば出直しますが?」
陽子「いえ、大丈夫です。では、お願いします」
――ガーディアンスクール。
今、チャイムが鳴り終わる。
夕菜「ま、間に合ったぁ」 息を切らしながら教室に駆け込み、引き戸を閉めると、その引き戸にもたれかかる。
一息つくと、自分の席に向かう。夕菜の席に一つ前、男子生徒が机に伏せて眠っている。
夕菜「まったく、こいつはぁ。……いい身分だこと」
彼の名前は『法名 無我』。夕菜とは三年連続同じクラスという妙な縁がある人物だ。
「まぁまぁ。そいつ、昨日はバイトに追われて寝てねぇんだとよ」
声を掛けてきたのは『桐生 幻斗(きりゅう げんと)』、無我とは義務教育時代から付き合いがあるらしい。
夕菜「別に起こす気はないわよ。ただ、ちょっとムカついただけ」
幻斗「そうか? 俺には、今にも無我を背中から刺し殺そうとする雰囲気に見えたが?」
夕菜「あんたが最初の被害者になってみる?」
幻斗「……冗談、だよな?」 ――彼、本気でひいてませんか?
夕菜「当たり前の冗談に真顔で確認を取るなぁ!」
幻斗が自分の席に戻っていく。それと同時に、3-Aの担任である『風見 総真(かざみ そうま)』が入ってくる。
総真「ん?」 総真は真っ直ぐ夕菜の席に向かってくる。
夕菜の席、ひとつ前で足を止める。そして、出席簿の面の部分を構え……って、そんな背表紙を向けて。――あ。
無我「いっ、てぇぇぇ。何しやがる、総真っ」 涙が浮かんでますよ? 本当に痛かったんですねぇ。
総真「起こしてやったんだ、感謝しろよ?」
無我「これがかわいい弟分に対する起こし方か?」
総真「なんだ? やさしいキスがお望みだったか?」
無我「マジやめろ。想像しちまうだろうが」
総真「さぁ、こんなくだらん奴にくれてやる時間はない。始めるぞ」
いつもどおり、HR(ホームルーム)が始まる。簡単な連絡事項と、他愛もない雑談で話が終わり、総真が教室を出て行こうとしたとき、総真は何かを思い出したように足を止める。
総真「そうだ、忘れてた。明日、『Bout』という模擬戦のイベントがあるんだが、代表三人誰か……、無我、お前と――」
無我「断る」
総真「強制だ。あとは平田と舞川、お前たちでやってくれ」
夕菜「はぁ? なんで私なの?」
平田「ははは。指名されちゃった」
『平田 信男(ひらた のぶお)』、通称『平男(ひらお)』。ま、名前を略して呼んでいたのが、いつの間にか定着しちゃったみたい。
総真「理由はない。ただ、無我の前後にいて目に入っただけだ」
夕菜「なによそれ? 第一、この席順は名前順になってるだけでしょ? ――私らは無我の巻き添えってわけ?」
総真「ま、そうなるな。じゃ、授業の準備しとけよ」
総真、退室。
夕菜「……無我ぁ」
無我「待て待て。俺のせいじゃないだろう?」
――放課後。
無我の席を中心に、夕菜、無我、平男が顔をあわせる。
夕菜「で、順番はどーすんのよ」
平男「とりあえず、法名くんが大将だね」
夕菜「ま、もともとはあんたの指名なんだし、当然ね」
無我「勝手にしてくれ。で、先鋒はどっちがやる?」
夕菜「私がいかせてもらうわ。嫌なこと、早く済ませたいし」
平男「じゃあ、僕が副将だね」
夕菜「――ところで、二人はもう自分の武器決めてるの?」
平男「武器? フォースウェポンのこと?」
[* フォースウェポン=ガーディアンは自分の内なる力にて武器を精製することができる(基本的にはどんな武器でも精製可能。ただし、複雑なモノはその構成を理解していないと精製できない)。当然、見習いである学生も二回生の時にフォースを習得している]
夕菜「そう。私、まだなにを使うか決めてないの」
平男「ははは。つまりは参考に見せてってこと?」
夕菜「話が早いじゃない」
平男「僕はコレだよ」 平男は掌に光の球を作り出す。その光球は次第に形を変えていく。
夕菜「ナイフ?」
その手には刃渡りの長い軍用ナイフ。
無我「いや、こいつは『アーミーナイフ』だな」
平男「――でもないんだな、コレ。ほら、ここ見て?」
握り手の部分に引き金がついている。
夕菜「なによコレ? 弾丸でも飛ぶわけ?」
幻斗「そいつは『スプリングナイフ』だな。弾が出るんじゃなく、ナイフの刃が弾丸の代わりになるんだ」 三人の輪の中に幻斗がやってきて会話にくわわる。
夕菜「ちょっと桐生。あんた、代わってくれない?」
幻斗「それはBoutに舞川の代わりに出てくれって意味か?」
夕菜「わかってるなら代わってよ?」
幻斗「……ま、たしかに俺が出れば勝利は確実。さらにA組代表の穴も消えるな」
夕菜「あ、穴!?」
幻斗「そうだな。じゃ、代わってやるか」
夕菜「ちょっと待てぇ。誰がA組の穴だってぇ?」
幻斗「自覚してるんじゃないの、舞・川・さん?」
夕菜「上等じゃない。そこまで言うなら見せてあげようじゃない、私の実力」
無我「……すっかり乗せられてぇ」
夕菜「しかしあんた、そこまで言うってことは、自分の能力に自信ありってこと?」
幻斗「当然」
夕菜「だったらあんたの武器も見せてよ?」
幻斗「参考にはならんと思うぞ?」 夕菜の考えを見透かすように言い放つ。
夕菜「うるさい」
幻斗の右手、手の甲が光り輝く。まずは篭手(こて)が形成され、そこから剣の刃が伸びていく。
無我「! 篭手剣――『カタール』か」
幻斗「ま、俺用にアレンジはしてあるがな」
夕菜「アレンジ、ねぇ」
幻斗「舞川も本とかで昔の武器を調べてみたらどうだ? いいのか見つかるかもよ?」
夕菜「昔の武器ねぇ」
平男「えーと、舞川さんは使用武器未定、桐生くんはアレンジカタール、で、僕がスプリングナイフ。……法名くんは?」
夕菜「そうよ、あんたも見せなさい」
無我「ほらよ」 人差し指と中指の間から一本の糸を垂らす。それを夕菜の目の前に出す。
夕菜「なによ、コレ? あんた、ひょっとしておちょくってん――」
平男「! 斬糸(ざんし)!?」
夕菜「へ? ざん、し?」
幻斗「そいつは人を切り裂くための糸だよ。もっとも、そう簡単に使いこなせるシロモノじゃないがな」
平男「ははは。法名くん、すごいや。これなら風見先生が推薦するわけだ」
無我「あれは総真の奴の嫌がらせだよ」
夕菜「でもあんた、コレ、本当に使いこなせるの?」
無我「さて、ね」
「夕菜ちゃん、帰れる?」 教室の入り口から夕菜を呼ぶ声。
夕菜「ゴメン美紅、ちょっと待って」
『五十嵐 美紅(いがらし みく)』、一回生の時に知り合った夕菜の親友、いまはD組にいる。夕菜の家に向かう途中に駅があるため、列車通いの美紅とはいつも途中まで一緒に帰っている。
幻斗「別に待ってもらわなくとも、もう話はまとまったんじゃないのか?」
夕菜「このあと、オーダー表を先生に渡しにいかないと」
無我「じゃ、よろしくな。お先」 無我は鞄を担いで教室を出ていった。
夕菜「無我っ! ……あいつぅ」
幻斗「じゃ、無関係な俺も帰るかな」 幻斗は自分の席へ。
夕菜「くっ」 平男の方を睨み付ける。
平男「ははは。安心して、僕は逃げないよ」
美紅「ふーん、A組は夕菜ちゃんたちが代表かぁ」
ようやく帰宅の準備が終わり……。
夕菜「ゴメン美紅。列車の時間、大丈夫?」
美紅「いいよ、どうせ五分おきには来るんだし」
夕菜「じゃあ行こうか」
教室を出て、話しながら廊下を進んでいく。
夕菜「そうだ、美紅の能力も教えてよ? 私の能力の参考にしたいの」
美紅「ダメ。……だって、夕菜ちゃんとは敵同士になるんだから」
夕菜「え?」
美紅「私、D組のBoutメンバー」
夕菜「嘘。じゃあ私たち、戦うのかな?」
美紅「それはわからないよ。まぁ、明日のお楽しみってことで」
夕菜「そうね」
昇降口を出て、校門に向かう途中……
「ふざけんなっ! てめぇ、なに勝手なことしてくれたっ」
無我の怒鳴り声。振り向くと、校舎を背に無我が携帯電話で話してた。
夕菜「なんなの、あいつ?」
美紅「さぁ?」
二人は学校を後にする。
――舞川家。
夕菜「ただいまぁ」 靴を脱ぎ、リビングに向かう。
「お? 夕菜か、おかえり」 奥から出てきたのは夕菜の父、『舞川 陸(まいかわ りく)』だ。
夕菜「あれ? きょうは早いね、お父さん?」
陸「今日は大事な客があるからな」
夕菜「客?」
陸「なんだ、陽子から聞いてないのか?」
夕菜「お母さんから? ……あっ!」(朝の用件ってこのこと?)
陸「聞いてないな。じゃあ――」
その時、インターホンが鳴り響いた。
陸「来たか」
夕菜「その大事なお客さんが?」
陸「多分な」
「おやっさん、聞いてくれよ。あの野郎、勝手に俺の部屋解約しやがってよ」
陸「まぁまぁ。おまえの荷物は届いてるよ、とりあえず上がれや」
玄関からかすかに二人の会話。
夕菜「この声、まさか――」
夕菜は玄関へと走る。
夕菜「……法名、無我」 そう、玄関には無我がいたのだ。
無我「夕菜!? え? じゃあ、おやっさんの娘って」
陸「なんだ,知り合いか?」
夕菜「クラスメイトよ。で、こいつがそのお客さんなわけ?」
陸「ああ。今日から新しい家族になる男だ」
夕菜、無我「「はぁ?」」
陸「だから、今日から無我は家で居候することになっているんだ」
夕菜「ちょ、ちょっと。なによそれ、そんな大事なこと私に勝手で決めたわけ?」
無我「ちょっとまてよ。じゃあ何か? もう俺の部屋が解約されることは決まっていたのかよ」
「はいはい。夕菜ちゃんにはなにも言う権利はないわよ」 玄関での騒ぎを聞いて、陽子がやってくる。
夕菜「なんでよ?」
陽子「話も聞かずに飛び出して言ったのは誰かしら?」
夕菜「そ、それはぁ……」
陸「無我、お前も文句は言えないぞ? なにせ、一月以上も部屋に帰ってないんだからな」
無我「おい、それは俺のせいじゃないだろ? 第一、あれは――」
陸「それにな、俺はお前が心配なんだよ。――学校、仕事、そして一人暮し。今の生活を続けていたらお前、いつかは倒れるぞ? だからせめて日常生活くらいは援助させてくれ」
無我「……ちっ」
夕菜「そういえばお父さん、こいつのことを知ってるみたいだけど?」
陸「こいつとは昔からの知り合いだ。……職場でな」
無我「おやっさんっ」
陸「おっと、口がすぎたな」
陽子「はいはい。お話はここまでにして、無我くんの歓迎会といきましょう?」
夜も静まり、あとは寝るだけという時間。夕菜が自室に戻る途中で無我の部屋から話し声が聞こえてくる。
「つまりは、俺に休息させないってことか? ――あ? 人手不足なことはわかってる。けど、ここ一月ろくに――。……わかった、出るよ。法名 無我、了解」
夕菜「なに、あいつ? 電話の声大きすぎよ。まったく、時間を考えてよね」
無我に文句を言うために、ドアをノックし、返答を待たずに開けて入る、が――
夕菜「あ、あれ?」
窓から入ってくる風が、カーテンをなびかせる。だが無我の部屋は、電気はついているものの、無人の状態になっていた。
夕菜「? ?」 何がなんだか理解できていない夕菜は、窓を閉め、電気を消して無我の部屋を後にした。
翌朝。夕菜は一応ということで無我を起こしに行く。だが、ドアを叩いても反応がなかった。
夕菜「これだから居候は……。無我、起きなさい」
部屋に入るが、部屋は昨日のままだった。
夕菜「もう学校にいったの? あいつは」(でも、昨日から帰ってないって考えるのが普通よね? いったいあいつはなにをしてるの?)
そして今日、Boutの当日を迎える。
・Episode.1 「Bout」へ続く
月明かりが街をうっすらと映し出す闇の中、黒い服を身に纏い、顔を隠す程のフードを身につけた、年齢十五,六くらいの歳の少年が宙に浮き、地上を見つめている。その視線の先には、もう動かない巨大な生物が一体。
この空間にふさわしくない軽い音楽が夜空に響く。懐からその音の元凶、携帯電話を取り出すと、受信ボタンを押して電話に出る。
「こちら、無我。今ちょうど片付いた。――はぁ? ちょっと待て、まだ働かせる気かよ? ……テットトラブル? ランクは? ――! A? ……わかった、わかった。俺が出りゃいいんだろ?」 不機嫌そうに電話を切る。
無我「ったく、完全に人手不足だな。――EXPERTは」
この世界には人に害なす『テット』という生物が存在する。そして、そのテットが引き起こすトラブルから人々を守るために『ガーディアン』という組織が作られた。その中に『EXPERT』と呼ばれるチームが存在する。ガーディアンの中でも桁違いの能力を持つ彼らは、まさに人間最強と言っても過言ではないだろう。
古今、EXPERTに限らず、ガーディアンは人手不足に悩まされていた。そんな中、そのガーディアンを育成する『ガーディアン・スクール』が設立されたのだが、――まぁ、ガーディアン不足は解消されつつあるものの、ハイレベルなトラブルに対応できるEXPERTはあいかわらず人手不足のようで。
この物語は、現役学生兼EXPERTの『法名 無我(ほうな むが)』と、ふとしたことから彼に深く関わることになった『舞川 夕菜(まいかわ ゆうな)』。そして、彼らを取り巻く学生たちの成長と戦いを描いた物語である。
examination ”C”
さて。ここは、この物語の主人公の一人でガーディアンスクール三回生、『舞川 夕菜』さんの自宅。現在、午前八時前。彼女は今、珍しく時間に追われていた。
ガーディアンスクールの制服に着替えた夕菜は、階段を駆け下りていく。
「夕菜ちゃん、ちょっといい?」 母親の陽子が語りかけてくる。
夕菜「ゴメン、ほんと時間ないの」 真っ直ぐに玄関へ向かう。
陽子「夕菜ちゃん、大事な話なの」
夕菜「帰ってからにして! ――いってきます」 玄関を出ると、直角に曲がりフルスピードでダッシュ。
陽子「あーあ。もうあんなとこまで」
「どーも」 陽子が玄関を出たところで、引越し業者の服を着た男性が声を掛けてきた。
陽子「あら。早いですね?」
引越し業者「時間の指定がなくて、早めでお願いしますって言われたもので……、差し支えるのであれば出直しますが?」
陽子「いえ、大丈夫です。では、お願いします」
――ガーディアンスクール。
今、チャイムが鳴り終わる。
夕菜「ま、間に合ったぁ」 息を切らしながら教室に駆け込み、引き戸を閉めると、その引き戸にもたれかかる。
一息つくと、自分の席に向かう。夕菜の席に一つ前、男子生徒が机に伏せて眠っている。
夕菜「まったく、こいつはぁ。……いい身分だこと」
彼の名前は『法名 無我』。夕菜とは三年連続同じクラスという妙な縁がある人物だ。
「まぁまぁ。そいつ、昨日はバイトに追われて寝てねぇんだとよ」
声を掛けてきたのは『桐生 幻斗(きりゅう げんと)』、無我とは義務教育時代から付き合いがあるらしい。
夕菜「別に起こす気はないわよ。ただ、ちょっとムカついただけ」
幻斗「そうか? 俺には、今にも無我を背中から刺し殺そうとする雰囲気に見えたが?」
夕菜「あんたが最初の被害者になってみる?」
幻斗「……冗談、だよな?」 ――彼、本気でひいてませんか?
夕菜「当たり前の冗談に真顔で確認を取るなぁ!」
幻斗が自分の席に戻っていく。それと同時に、3-Aの担任である『風見 総真(かざみ そうま)』が入ってくる。
総真「ん?」 総真は真っ直ぐ夕菜の席に向かってくる。
夕菜の席、ひとつ前で足を止める。そして、出席簿の面の部分を構え……って、そんな背表紙を向けて。――あ。
無我「いっ、てぇぇぇ。何しやがる、総真っ」 涙が浮かんでますよ? 本当に痛かったんですねぇ。
総真「起こしてやったんだ、感謝しろよ?」
無我「これがかわいい弟分に対する起こし方か?」
総真「なんだ? やさしいキスがお望みだったか?」
無我「マジやめろ。想像しちまうだろうが」
総真「さぁ、こんなくだらん奴にくれてやる時間はない。始めるぞ」
いつもどおり、HR(ホームルーム)が始まる。簡単な連絡事項と、他愛もない雑談で話が終わり、総真が教室を出て行こうとしたとき、総真は何かを思い出したように足を止める。
総真「そうだ、忘れてた。明日、『Bout』という模擬戦のイベントがあるんだが、代表三人誰か……、無我、お前と――」
無我「断る」
総真「強制だ。あとは平田と舞川、お前たちでやってくれ」
夕菜「はぁ? なんで私なの?」
平田「ははは。指名されちゃった」
『平田 信男(ひらた のぶお)』、通称『平男(ひらお)』。ま、名前を略して呼んでいたのが、いつの間にか定着しちゃったみたい。
総真「理由はない。ただ、無我の前後にいて目に入っただけだ」
夕菜「なによそれ? 第一、この席順は名前順になってるだけでしょ? ――私らは無我の巻き添えってわけ?」
総真「ま、そうなるな。じゃ、授業の準備しとけよ」
総真、退室。
夕菜「……無我ぁ」
無我「待て待て。俺のせいじゃないだろう?」
――放課後。
無我の席を中心に、夕菜、無我、平男が顔をあわせる。
夕菜「で、順番はどーすんのよ」
平男「とりあえず、法名くんが大将だね」
夕菜「ま、もともとはあんたの指名なんだし、当然ね」
無我「勝手にしてくれ。で、先鋒はどっちがやる?」
夕菜「私がいかせてもらうわ。嫌なこと、早く済ませたいし」
平男「じゃあ、僕が副将だね」
夕菜「――ところで、二人はもう自分の武器決めてるの?」
平男「武器? フォースウェポンのこと?」
[* フォースウェポン=ガーディアンは自分の内なる力にて武器を精製することができる(基本的にはどんな武器でも精製可能。ただし、複雑なモノはその構成を理解していないと精製できない)。当然、見習いである学生も二回生の時にフォースを習得している]
夕菜「そう。私、まだなにを使うか決めてないの」
平男「ははは。つまりは参考に見せてってこと?」
夕菜「話が早いじゃない」
平男「僕はコレだよ」 平男は掌に光の球を作り出す。その光球は次第に形を変えていく。
夕菜「ナイフ?」
その手には刃渡りの長い軍用ナイフ。
無我「いや、こいつは『アーミーナイフ』だな」
平男「――でもないんだな、コレ。ほら、ここ見て?」
握り手の部分に引き金がついている。
夕菜「なによコレ? 弾丸でも飛ぶわけ?」
幻斗「そいつは『スプリングナイフ』だな。弾が出るんじゃなく、ナイフの刃が弾丸の代わりになるんだ」 三人の輪の中に幻斗がやってきて会話にくわわる。
夕菜「ちょっと桐生。あんた、代わってくれない?」
幻斗「それはBoutに舞川の代わりに出てくれって意味か?」
夕菜「わかってるなら代わってよ?」
幻斗「……ま、たしかに俺が出れば勝利は確実。さらにA組代表の穴も消えるな」
夕菜「あ、穴!?」
幻斗「そうだな。じゃ、代わってやるか」
夕菜「ちょっと待てぇ。誰がA組の穴だってぇ?」
幻斗「自覚してるんじゃないの、舞・川・さん?」
夕菜「上等じゃない。そこまで言うなら見せてあげようじゃない、私の実力」
無我「……すっかり乗せられてぇ」
夕菜「しかしあんた、そこまで言うってことは、自分の能力に自信ありってこと?」
幻斗「当然」
夕菜「だったらあんたの武器も見せてよ?」
幻斗「参考にはならんと思うぞ?」 夕菜の考えを見透かすように言い放つ。
夕菜「うるさい」
幻斗の右手、手の甲が光り輝く。まずは篭手(こて)が形成され、そこから剣の刃が伸びていく。
無我「! 篭手剣――『カタール』か」
幻斗「ま、俺用にアレンジはしてあるがな」
夕菜「アレンジ、ねぇ」
幻斗「舞川も本とかで昔の武器を調べてみたらどうだ? いいのか見つかるかもよ?」
夕菜「昔の武器ねぇ」
平男「えーと、舞川さんは使用武器未定、桐生くんはアレンジカタール、で、僕がスプリングナイフ。……法名くんは?」
夕菜「そうよ、あんたも見せなさい」
無我「ほらよ」 人差し指と中指の間から一本の糸を垂らす。それを夕菜の目の前に出す。
夕菜「なによ、コレ? あんた、ひょっとしておちょくってん――」
平男「! 斬糸(ざんし)!?」
夕菜「へ? ざん、し?」
幻斗「そいつは人を切り裂くための糸だよ。もっとも、そう簡単に使いこなせるシロモノじゃないがな」
平男「ははは。法名くん、すごいや。これなら風見先生が推薦するわけだ」
無我「あれは総真の奴の嫌がらせだよ」
夕菜「でもあんた、コレ、本当に使いこなせるの?」
無我「さて、ね」
「夕菜ちゃん、帰れる?」 教室の入り口から夕菜を呼ぶ声。
夕菜「ゴメン美紅、ちょっと待って」
『五十嵐 美紅(いがらし みく)』、一回生の時に知り合った夕菜の親友、いまはD組にいる。夕菜の家に向かう途中に駅があるため、列車通いの美紅とはいつも途中まで一緒に帰っている。
幻斗「別に待ってもらわなくとも、もう話はまとまったんじゃないのか?」
夕菜「このあと、オーダー表を先生に渡しにいかないと」
無我「じゃ、よろしくな。お先」 無我は鞄を担いで教室を出ていった。
夕菜「無我っ! ……あいつぅ」
幻斗「じゃ、無関係な俺も帰るかな」 幻斗は自分の席へ。
夕菜「くっ」 平男の方を睨み付ける。
平男「ははは。安心して、僕は逃げないよ」
美紅「ふーん、A組は夕菜ちゃんたちが代表かぁ」
ようやく帰宅の準備が終わり……。
夕菜「ゴメン美紅。列車の時間、大丈夫?」
美紅「いいよ、どうせ五分おきには来るんだし」
夕菜「じゃあ行こうか」
教室を出て、話しながら廊下を進んでいく。
夕菜「そうだ、美紅の能力も教えてよ? 私の能力の参考にしたいの」
美紅「ダメ。……だって、夕菜ちゃんとは敵同士になるんだから」
夕菜「え?」
美紅「私、D組のBoutメンバー」
夕菜「嘘。じゃあ私たち、戦うのかな?」
美紅「それはわからないよ。まぁ、明日のお楽しみってことで」
夕菜「そうね」
昇降口を出て、校門に向かう途中……
「ふざけんなっ! てめぇ、なに勝手なことしてくれたっ」
無我の怒鳴り声。振り向くと、校舎を背に無我が携帯電話で話してた。
夕菜「なんなの、あいつ?」
美紅「さぁ?」
二人は学校を後にする。
――舞川家。
夕菜「ただいまぁ」 靴を脱ぎ、リビングに向かう。
「お? 夕菜か、おかえり」 奥から出てきたのは夕菜の父、『舞川 陸(まいかわ りく)』だ。
夕菜「あれ? きょうは早いね、お父さん?」
陸「今日は大事な客があるからな」
夕菜「客?」
陸「なんだ、陽子から聞いてないのか?」
夕菜「お母さんから? ……あっ!」(朝の用件ってこのこと?)
陸「聞いてないな。じゃあ――」
その時、インターホンが鳴り響いた。
陸「来たか」
夕菜「その大事なお客さんが?」
陸「多分な」
「おやっさん、聞いてくれよ。あの野郎、勝手に俺の部屋解約しやがってよ」
陸「まぁまぁ。おまえの荷物は届いてるよ、とりあえず上がれや」
玄関からかすかに二人の会話。
夕菜「この声、まさか――」
夕菜は玄関へと走る。
夕菜「……法名、無我」 そう、玄関には無我がいたのだ。
無我「夕菜!? え? じゃあ、おやっさんの娘って」
陸「なんだ,知り合いか?」
夕菜「クラスメイトよ。で、こいつがそのお客さんなわけ?」
陸「ああ。今日から新しい家族になる男だ」
夕菜、無我「「はぁ?」」
陸「だから、今日から無我は家で居候することになっているんだ」
夕菜「ちょ、ちょっと。なによそれ、そんな大事なこと私に勝手で決めたわけ?」
無我「ちょっとまてよ。じゃあ何か? もう俺の部屋が解約されることは決まっていたのかよ」
「はいはい。夕菜ちゃんにはなにも言う権利はないわよ」 玄関での騒ぎを聞いて、陽子がやってくる。
夕菜「なんでよ?」
陽子「話も聞かずに飛び出して言ったのは誰かしら?」
夕菜「そ、それはぁ……」
陸「無我、お前も文句は言えないぞ? なにせ、一月以上も部屋に帰ってないんだからな」
無我「おい、それは俺のせいじゃないだろ? 第一、あれは――」
陸「それにな、俺はお前が心配なんだよ。――学校、仕事、そして一人暮し。今の生活を続けていたらお前、いつかは倒れるぞ? だからせめて日常生活くらいは援助させてくれ」
無我「……ちっ」
夕菜「そういえばお父さん、こいつのことを知ってるみたいだけど?」
陸「こいつとは昔からの知り合いだ。……職場でな」
無我「おやっさんっ」
陸「おっと、口がすぎたな」
陽子「はいはい。お話はここまでにして、無我くんの歓迎会といきましょう?」
夜も静まり、あとは寝るだけという時間。夕菜が自室に戻る途中で無我の部屋から話し声が聞こえてくる。
「つまりは、俺に休息させないってことか? ――あ? 人手不足なことはわかってる。けど、ここ一月ろくに――。……わかった、出るよ。法名 無我、了解」
夕菜「なに、あいつ? 電話の声大きすぎよ。まったく、時間を考えてよね」
無我に文句を言うために、ドアをノックし、返答を待たずに開けて入る、が――
夕菜「あ、あれ?」
窓から入ってくる風が、カーテンをなびかせる。だが無我の部屋は、電気はついているものの、無人の状態になっていた。
夕菜「? ?」 何がなんだか理解できていない夕菜は、窓を閉め、電気を消して無我の部屋を後にした。
翌朝。夕菜は一応ということで無我を起こしに行く。だが、ドアを叩いても反応がなかった。
夕菜「これだから居候は……。無我、起きなさい」
部屋に入るが、部屋は昨日のままだった。
夕菜「もう学校にいったの? あいつは」(でも、昨日から帰ってないって考えるのが普通よね? いったいあいつはなにをしてるの?)
そして今日、Boutの当日を迎える。
・Episode.1 「Bout」へ続く
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