36 / 44
謝罪と責任
しおりを挟む
「その、申し訳ありません……」
この人は何度謝れば気が済むのだろう。
本部の中へ入るなり、何か聞くでもなく第一声がこれだ。
久慈方さんはお得意の平身低頭の姿勢で謝罪してくるが、そうペコペコとされるとこちらとしてもやり辛い。
立場上そう言わざるを得ないのだろうが。
恨むなら自分の運命を恨む他ない。そんなことは分かりきっている。
「何について謝ってんだか知らんが、気にすんな」
俺の言葉に、彼女はさらに表情を曇らせる。
あー、面倒くさいっ!
俺は気分を変えるため、違う話題を切り出すことにした。
「なぁ、そう言えば新加ってどんな奴だったんだ?」
「新加さん、ですか? とても優秀な方でしたね。元々、先々代の理事長の側近で、早くから後継者としての道を約束されていましたから」
「ふーん。優秀な奴ほど疑問を感じるモンなのかね」
「何だかそれだと、私が優秀じゃないみたいですね……。いや、反論の余地はないんですが」
しまった。地雷を踏んでしまった。
しかし正直なところ、彼女が理事長に抜擢された理由は分からない。
ただ陣海さんや貞永さんの様子を見る限り、人望はあるのだと思う。
俺もその点については疑うつもりはない。
それに最高責任者とは、文字通り最高の責任を持つ者だ。
そういう観点で言えば、彼女は自ら率先して責任を取るつもりでいる。
果たして、実社会でそれだけの覚悟を持って仕事をしている上席の人間はどれだけいるか。
……いかん、また嫌なことを思い出しそうになった。
「あー、すまん。別にそういうことを言いたかったわけじゃないんだ。俺はアンタのことをボンクラだなんて思ってねぇよ。言っただろ、理想の上司だってよ」
「またそうやって揶揄う! でも……、ありがとうございます」
所詮は部外者の主観、気休めだ。
だが、そんな無責任な言葉にでも人は救われるのかもしれない。
「……まぁ何はともあれ、アイツらを探さねぇとな」
「彼らは予備端末を通して私たちの動向を探っているはずです。予備端末は理事長室で管理していますので、恐らくは……」
「分かった。急ごう」
それから俺たちは予備端末が保管されているという理事長室へ向かった。
この人は何度謝れば気が済むのだろう。
本部の中へ入るなり、何か聞くでもなく第一声がこれだ。
久慈方さんはお得意の平身低頭の姿勢で謝罪してくるが、そうペコペコとされるとこちらとしてもやり辛い。
立場上そう言わざるを得ないのだろうが。
恨むなら自分の運命を恨む他ない。そんなことは分かりきっている。
「何について謝ってんだか知らんが、気にすんな」
俺の言葉に、彼女はさらに表情を曇らせる。
あー、面倒くさいっ!
俺は気分を変えるため、違う話題を切り出すことにした。
「なぁ、そう言えば新加ってどんな奴だったんだ?」
「新加さん、ですか? とても優秀な方でしたね。元々、先々代の理事長の側近で、早くから後継者としての道を約束されていましたから」
「ふーん。優秀な奴ほど疑問を感じるモンなのかね」
「何だかそれだと、私が優秀じゃないみたいですね……。いや、反論の余地はないんですが」
しまった。地雷を踏んでしまった。
しかし正直なところ、彼女が理事長に抜擢された理由は分からない。
ただ陣海さんや貞永さんの様子を見る限り、人望はあるのだと思う。
俺もその点については疑うつもりはない。
それに最高責任者とは、文字通り最高の責任を持つ者だ。
そういう観点で言えば、彼女は自ら率先して責任を取るつもりでいる。
果たして、実社会でそれだけの覚悟を持って仕事をしている上席の人間はどれだけいるか。
……いかん、また嫌なことを思い出しそうになった。
「あー、すまん。別にそういうことを言いたかったわけじゃないんだ。俺はアンタのことをボンクラだなんて思ってねぇよ。言っただろ、理想の上司だってよ」
「またそうやって揶揄う! でも……、ありがとうございます」
所詮は部外者の主観、気休めだ。
だが、そんな無責任な言葉にでも人は救われるのかもしれない。
「……まぁ何はともあれ、アイツらを探さねぇとな」
「彼らは予備端末を通して私たちの動向を探っているはずです。予備端末は理事長室で管理していますので、恐らくは……」
「分かった。急ごう」
それから俺たちは予備端末が保管されているという理事長室へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる