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野菜泥棒?
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俺の住んでいるアパートは、最寄り駅からやや遠い。
不動産屋は〝徒歩8分の駅チカ〟と銘打って宣伝していたが、信号の状況によっては15分以上かかることも多々ある。誇大広告だと文句の一つも付けたくなるところだが、一概にそうとも言えない。
というのも、徒歩○分という言葉にはカラクリがあるからだ。不動産広告で物件の最寄り駅からの所要時間を表示する場合、分速80mで歩いたと仮定して算出しなければならないと景品表示法で定められている。しかし、当然ながら歩く速さなんて人それぞれだし、道路の状況も日によって違う。また、坂道や信号の数もその数字には全く加味されていない。
したがって、これらの表示は単純な距離を表したものに過ぎない。俺のアパートを例にとって言えば、駅から道路距離で約640m離れた場所にある、という事実が分かるだけだ。物件を決める際は、そういった不都合な真実も頭に入れておくべきなのである。
まぁ最終的に何が言いたいのかというと、『あんまり最寄ってねぇじゃねーか。ふざけんな』ということだ。
「何かとても面倒臭いことを考えてそうですね」
浄御原が呆れるように言う。
「いや、これからさらに面倒なことが起きると想像すれば、これよりいくらでも陰鬱な雰囲気を醸し出せるぞ」
「何の自慢ですか、ソレ」
「つーかあんたら何でそんな落ち着いてんの? これから警察にしょっ引かれるかもしれないのに」
「俺を甘く見んなよ。こちとら冤罪慣れしてんだ。そこらのパンピーと一緒にすんな」
「どんな人生送ってきてんだし……」
下らないやり取りで間を持たせつつグダグダ歩いていると、あるT字路に突き当たる。ココを右に曲がれば、目的のアパートはもうすぐだ。
T字路を曲がると、20m程先にある野菜の無人販売所に目がいく。
この辺りは住宅街なので、恐らく家庭菜園で作った野菜を個人で売っているのだろう。いつも通る度に思うが、本当に売れているのだろうか。
と、どうやら今日に関しては、その心配は無用のようだ。ってアレは……。
「何やらガサゴソ漁っていますね。〝近江さん〟、とうとう野菜泥棒ですか……」
「どうでもいいけど〝野菜泥棒〟ってなんか悲しい響きだよな……」
「落ちるところまで落ちた感がありますね」
現行犯で、しかも飛び切りにせこい犯罪に手を染めている自分の姿を目の当たりにするのは、やはり心に来るものである。
「はぁ!? 何で盗撮野郎が二人いんだし!」
女子高生が大声をあげると、〝俺〟はこちらの存在に気付き全速力で逃げ出した。
盗撮の毒牙にかけた女性に顔が割れていることを知ったからだろうか。
もしくは、本当に野菜泥棒だったのか。
いずれにしても〝俺〟が誤解を解かずに逃げるということは、何かしら疚しい事情があるに違いない。
やるせない気持ちはあるが、今更逃す訳にもいかない。
こちらも負けじと全速力で追いかける。
とは言え、相手は同じ俺だ。泥仕合になることは目に見えている。
普段からの運動不足も祟って、早々に諦め減速を開始する。
だが、女子高生はそんな俺を横目にあっという間に〝ホシ〟に追いついた。
「詳しい話は後で聞くし! だからもう諦めな!」
凄まじい気迫で〝俺〟に追いつき拘束する姿は、一般的な女子高生のソレとは言い難い。
「くっ、依頼は失敗か」
依頼? 何のことだ?
「まぁ碌に事情も聞かずにすまん。とりあえず詳しいことはお前の部屋で話さないか?」
「お前はっ!? ぐっ、分かったよ……」
この世界線の奴らはどう言う訳だか、物分かりがいいらしい。
不動産屋は〝徒歩8分の駅チカ〟と銘打って宣伝していたが、信号の状況によっては15分以上かかることも多々ある。誇大広告だと文句の一つも付けたくなるところだが、一概にそうとも言えない。
というのも、徒歩○分という言葉にはカラクリがあるからだ。不動産広告で物件の最寄り駅からの所要時間を表示する場合、分速80mで歩いたと仮定して算出しなければならないと景品表示法で定められている。しかし、当然ながら歩く速さなんて人それぞれだし、道路の状況も日によって違う。また、坂道や信号の数もその数字には全く加味されていない。
したがって、これらの表示は単純な距離を表したものに過ぎない。俺のアパートを例にとって言えば、駅から道路距離で約640m離れた場所にある、という事実が分かるだけだ。物件を決める際は、そういった不都合な真実も頭に入れておくべきなのである。
まぁ最終的に何が言いたいのかというと、『あんまり最寄ってねぇじゃねーか。ふざけんな』ということだ。
「何かとても面倒臭いことを考えてそうですね」
浄御原が呆れるように言う。
「いや、これからさらに面倒なことが起きると想像すれば、これよりいくらでも陰鬱な雰囲気を醸し出せるぞ」
「何の自慢ですか、ソレ」
「つーかあんたら何でそんな落ち着いてんの? これから警察にしょっ引かれるかもしれないのに」
「俺を甘く見んなよ。こちとら冤罪慣れしてんだ。そこらのパンピーと一緒にすんな」
「どんな人生送ってきてんだし……」
下らないやり取りで間を持たせつつグダグダ歩いていると、あるT字路に突き当たる。ココを右に曲がれば、目的のアパートはもうすぐだ。
T字路を曲がると、20m程先にある野菜の無人販売所に目がいく。
この辺りは住宅街なので、恐らく家庭菜園で作った野菜を個人で売っているのだろう。いつも通る度に思うが、本当に売れているのだろうか。
と、どうやら今日に関しては、その心配は無用のようだ。ってアレは……。
「何やらガサゴソ漁っていますね。〝近江さん〟、とうとう野菜泥棒ですか……」
「どうでもいいけど〝野菜泥棒〟ってなんか悲しい響きだよな……」
「落ちるところまで落ちた感がありますね」
現行犯で、しかも飛び切りにせこい犯罪に手を染めている自分の姿を目の当たりにするのは、やはり心に来るものである。
「はぁ!? 何で盗撮野郎が二人いんだし!」
女子高生が大声をあげると、〝俺〟はこちらの存在に気付き全速力で逃げ出した。
盗撮の毒牙にかけた女性に顔が割れていることを知ったからだろうか。
もしくは、本当に野菜泥棒だったのか。
いずれにしても〝俺〟が誤解を解かずに逃げるということは、何かしら疚しい事情があるに違いない。
やるせない気持ちはあるが、今更逃す訳にもいかない。
こちらも負けじと全速力で追いかける。
とは言え、相手は同じ俺だ。泥仕合になることは目に見えている。
普段からの運動不足も祟って、早々に諦め減速を開始する。
だが、女子高生はそんな俺を横目にあっという間に〝ホシ〟に追いついた。
「詳しい話は後で聞くし! だからもう諦めな!」
凄まじい気迫で〝俺〟に追いつき拘束する姿は、一般的な女子高生のソレとは言い難い。
「くっ、依頼は失敗か」
依頼? 何のことだ?
「まぁ碌に事情も聞かずにすまん。とりあえず詳しいことはお前の部屋で話さないか?」
「お前はっ!? ぐっ、分かったよ……」
この世界線の奴らはどう言う訳だか、物分かりがいいらしい。
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