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王国編
7-強化
しおりを挟む翌朝
冒険者ギルドを訪れた俺達は、別室でトシントさんから昨日の報告を受けていた。
「皆さんが持っている冒険証ではステータスは勿論、どこで何をしたかの詳細な経歴、現在の所在地から大まかな健康状態まで把握可能です」
え? プライバシーとか無い感じ? 俺達の素性とかダダ漏れな感じか?
顔に出ていたみたいで、トシントさんが続けて説明する。
「冒険証の情報は、太古の時代にそのシステムが構築されてから現代に至るまで一度も突破されたことのないセキュリティによって守られています。国王クラスの重鎮でも勝手な改竄どころか閲覧すら不可能。システムに則った手続きと範疇でのみ運用されますので、ご安心下さい」
「な、なるほど。なぜそれを今?」
「行方不明だったキセルさんですが、死亡したと認定されました。恐らく咄嗟展開したシールドの保護対象に自分が入ってなかったのでしょう。アースドラゴンの息吹によって肉体が消滅したと判断しました。同様にファデスさんの遺体も一部を残して回収出来ませんでした」
なんというか、現実なんだな。という感想しか出て来ない。出会って数時間の仲だから悲しいとかは無いが、あれがもし自分達だったと思うと怖くなる。
「最後に、昨日お渡し頂いたペニシア草を確認致しました。こちらが達成報酬になります」
トシントさんが硬貨が何枚か入っているであろう布袋を机に置く。
袋の中には金貨10枚と銀貨5枚の計15枚、こっちに来てろくに買い物していないから円換算が分からないな。
反応に困っていると美穂が俺の耳に顔を近づけ小声で話す。
「銀貨が1000円で、金貨が1万円だよ」
ホントかよ。本当だとして何で知ってるの? まぁいいや、何の基準も無いので一先ずそれでいったとして薬草採取で10万5000円、3人で山分けして3万5000円。駄目だ相場が分からん。日給3万5000円なら結構高い方かな。
「アースドラゴン討伐に関しては正式な依頼ではない為満額ではありませんが含まれております」
それを聞いて陰葦達が受け取りを渋ったがそこは丸く収まった。
「それと、今回の件で借金は完済となりますが宿は5泊分有効ですのでそのままご利用下さい」
「あの、アースドラゴンみたいな強い魔物って他にも居たりしますか」
「? はい、そういう場所であればそれ以上の化け物はゴロゴロと」
今の俺達には目標が無い。最終的には魔王を倒す展開になるかもしれないが、どれだけ考えたって机上の空論だ。ただ、足りないものなら明確だ。知識と強さだ。必要だ。出来れば早急に。
「強くなる為の、新人育成制度とかあったりしませんか」
「ありません。そんなものあれば最初に案内しています。冒険者は図書館で自主的に勉強するか、経験を積むかになります」
「そうですか」
仕方ない。先ずは知識からだ。近くの図書館に通って。収入的にも1ヶ月ぐらいは問題無いだろう。
思案しているとトシントさんが情報をくれる。
「ですが、そういった事を有志で行っている方はいらっしゃいます。伝説の冒険者パーティ『プロディターズ』最後の一人。“剣聖”ベルゴーニ。彼ならば、貴方の求める何かを得られるかもしれません」
「何か強そうだね」
「いや強いでしょ絶対」
二人が小並みたいな事になってるが放っておこう。
「どうすれば会えますか」
「南東に20km進むとあるオクソセスという町にいる筈です。詳しい事はその町の冒険者ギルドで聞いて下さい」
目先の方針は決まった。俺達はトシントさんにお礼を言ってギルドを後にする。
「色々とありがとうございます」
「お気になさらず。仕事ですから。お二人もまたお会いしましょう」
「はい、ありがとうございました」
「今度は、女子会でもしましょうね」
「はい」
そして一夜明けた。
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