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December
12月23日(月) 冬補習
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冬休みに入ったと言ったな、あれは嘘だ!
――とでも言わんばかりに、俺たちは今日も朝から学校へと向かっていた。
冬季休校に際し、その代わりとして始まった補習授業は、いつもの朝補習と違って少し遅めのスタートとなっており、また、午前いっぱいまでという気持ち良心的なスケジュールを示してくれてはいるけれど、午後から控えている部活動の時間も合わせれば、平時の学校生活と大して変わらない帰宅時間となっている。
……何だこれは。
『休み』とはどういう意味だったのか。今一度、問い質したいところである。
「しょうがないさ、そら」
そんな悪態に、爽やかな声音で返す少年の名は畔上翔真。
肘をつき、手のひらに顎を乗せて苦笑する姿はお世辞にも上品とは言えないが、それさえも彼が行うことで様になっていた。
「それに、ウチは休みに入るのが早い方らしいよ。妹の通う中学校は明日が終業式みたいだし……」
「へぇー、そうなんだ……。陽向ちゃんも大変だね」
そして、傍らで話を聞いていた菊池さんもまた会話に混じってくる。
こちらも現状に特に不満はないのか、いつも通りおだやかだ。
「水曜から休み――って、また微妙な時期だな。キリよく金曜で締めればいいのに」
「学校的にも色々あるってことなんじゃないか?」
まぁ、そうなのだろうけど……休みも増えるし、オンとオフのメリハリがつくことを考えると、やはり文句の一つくらいは言いたくなるな。
「――それで、その……かなちゃんはどうしたの?」
ここまで一言もなく、そして触れられずにいた者の名前を、菊池さんはとうとう口にした。
そうして三人で件の少女へと視線を向ければ、わざわざ後ろを向いてまで俺の机に突っ伏す幼馴染の頭頂部が見受けられる。
「あぁ……諦めてるんだよ」
『諦めてる……?』
仲良くハモりった二人の返事に、俺は一つ首を縦に降った。
「そそ、俺と一緒で補習に絶望してんの。でも、文句を言う気力もなくて、こうして拗ねてるというか……ダラけモードに入ってる――ってわけ」
そう言って俺がワシャワシャとその頭を撫でると、手で払うでも顔を上げるでもなく、かなたはされるがままに受け入れる。
「まぁまぁ、それも今週いっぱいまでだしさ」
「そ、そうだよ……! 一緒に頑張ろ? ね?」
片やイヤイヤ言うだけのお子様ペアに対し、片や励まし続ける大人の対応組。
この出来の違いは、一体どこから生まれたものなのだろうか。
――なんて、他愛もなければ実りもない会話にただただ花を咲かせていると、今日も休むことなく学校の予鈴が鳴り響く。
至る所に散らばり、各々がグループを形成していたクラスメイトたちはマグロに襲われるイワシの群れのように一人一人ととき解れて、それぞれの居場所へと戻って行った。
「はい皆さん、おはようございます」
同時に、教室の扉が音を立ててスライドし、我がクラスの担任である三枝悠先生が姿を見せる。
……どうにも今日は機嫌がいいらしい。
なぜ分かったかと問われれば、二葉先生絡みでそれなりに仲が良いから――などというわけでもなく、単にいつもは学級委員の号令の後に挨拶を交わす先生が開幕から声を発していたからだ。
普通なら、補習という余分な仕事が増えて憂鬱なはずなのに……昨日か今日か、はたまた明日にでも何か良い事でもあるのだろうか。
「……まぁ、何にしても俺の知ったことじゃないか」
それよりも問題は補習である。
今週の金曜日――二十七日まで続き、気が付けばそのまま家の大掃除で大晦日。果てには正月、明けたら学校。
バタバタと忙しく、しかし宿題の猛威は遠慮なしに振るってくるだろう。
そんな未来にため息を吐き、ただひたすらにゆっくりと刻む秒針を行く末を淡々と目で追っていた。
――とでも言わんばかりに、俺たちは今日も朝から学校へと向かっていた。
冬季休校に際し、その代わりとして始まった補習授業は、いつもの朝補習と違って少し遅めのスタートとなっており、また、午前いっぱいまでという気持ち良心的なスケジュールを示してくれてはいるけれど、午後から控えている部活動の時間も合わせれば、平時の学校生活と大して変わらない帰宅時間となっている。
……何だこれは。
『休み』とはどういう意味だったのか。今一度、問い質したいところである。
「しょうがないさ、そら」
そんな悪態に、爽やかな声音で返す少年の名は畔上翔真。
肘をつき、手のひらに顎を乗せて苦笑する姿はお世辞にも上品とは言えないが、それさえも彼が行うことで様になっていた。
「それに、ウチは休みに入るのが早い方らしいよ。妹の通う中学校は明日が終業式みたいだし……」
「へぇー、そうなんだ……。陽向ちゃんも大変だね」
そして、傍らで話を聞いていた菊池さんもまた会話に混じってくる。
こちらも現状に特に不満はないのか、いつも通りおだやかだ。
「水曜から休み――って、また微妙な時期だな。キリよく金曜で締めればいいのに」
「学校的にも色々あるってことなんじゃないか?」
まぁ、そうなのだろうけど……休みも増えるし、オンとオフのメリハリがつくことを考えると、やはり文句の一つくらいは言いたくなるな。
「――それで、その……かなちゃんはどうしたの?」
ここまで一言もなく、そして触れられずにいた者の名前を、菊池さんはとうとう口にした。
そうして三人で件の少女へと視線を向ければ、わざわざ後ろを向いてまで俺の机に突っ伏す幼馴染の頭頂部が見受けられる。
「あぁ……諦めてるんだよ」
『諦めてる……?』
仲良くハモりった二人の返事に、俺は一つ首を縦に降った。
「そそ、俺と一緒で補習に絶望してんの。でも、文句を言う気力もなくて、こうして拗ねてるというか……ダラけモードに入ってる――ってわけ」
そう言って俺がワシャワシャとその頭を撫でると、手で払うでも顔を上げるでもなく、かなたはされるがままに受け入れる。
「まぁまぁ、それも今週いっぱいまでだしさ」
「そ、そうだよ……! 一緒に頑張ろ? ね?」
片やイヤイヤ言うだけのお子様ペアに対し、片や励まし続ける大人の対応組。
この出来の違いは、一体どこから生まれたものなのだろうか。
――なんて、他愛もなければ実りもない会話にただただ花を咲かせていると、今日も休むことなく学校の予鈴が鳴り響く。
至る所に散らばり、各々がグループを形成していたクラスメイトたちはマグロに襲われるイワシの群れのように一人一人ととき解れて、それぞれの居場所へと戻って行った。
「はい皆さん、おはようございます」
同時に、教室の扉が音を立ててスライドし、我がクラスの担任である三枝悠先生が姿を見せる。
……どうにも今日は機嫌がいいらしい。
なぜ分かったかと問われれば、二葉先生絡みでそれなりに仲が良いから――などというわけでもなく、単にいつもは学級委員の号令の後に挨拶を交わす先生が開幕から声を発していたからだ。
普通なら、補習という余分な仕事が増えて憂鬱なはずなのに……昨日か今日か、はたまた明日にでも何か良い事でもあるのだろうか。
「……まぁ、何にしても俺の知ったことじゃないか」
それよりも問題は補習である。
今週の金曜日――二十七日まで続き、気が付けばそのまま家の大掃除で大晦日。果てには正月、明けたら学校。
バタバタと忙しく、しかし宿題の猛威は遠慮なしに振るってくるだろう。
そんな未来にため息を吐き、ただひたすらにゆっくりと刻む秒針を行く末を淡々と目で追っていた。
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