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October
10月15日(火) 始業式
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「おいっす、久しぶりー」
束の間の休日が明けた今日。
登校時間十分前という、何とも普通なタイミングでやって来た俺は自分の席に着くなり、後ろに座る生徒に挨拶を交わす。
「やぁ、おはよう」
相変わらずの爽やかな笑みを浮かべた畔上翔真は、これからまた学校が始まるというにもかかわらず気怠げな様を微塵も感じさせない。
「休みはどうだった?」
「どうだったも何も、部活漬けだっただろ? あとは、終業式の時に言った通り家族の買い物に付いて行ったくらいかな……」
「ほぉーん……やっぱ、そんなもんか」
とはいえ、土日を挟んだ五日間。
しかも、ウチだけの突発的な休暇だ。
特に出掛けた――なんて人はいないだろう。
「そっちは?」
「同じく、変わらずだ。かなたが遊びに来てたくらいだな」
そう言って振り向けば、俺の前には菊池さんと談笑する幼馴染の姿があった。
「仲、良いな」
「まぁ、家族みたいなものだしな。ぶっちゃけ、仲が良いとか悪いとか……そういう話でもないと思うぞ」
人からよく言われる言葉であり、しかし、その度に僅かな違和感を覚える言葉。
それに対して、少しだけ心情を吐露をしてみた。
――そんな折の出来事である。
「そらくーん、それと畔上くん」
急な名指しを受けて、声の方向――教室の入り口へと二人して目を向ければ、ドアを半開きにして手招きをする三枝先生の姿がそこにあった。
「お話があるので、ちょっといいですか?」
俺は翔真と顔を見合わせるが、お互いに用件に心当たりはなく肩を竦め合うのみ。
「取り敢えず、行こうか」
「そうだな」
仕方なしに立ち上がり、前を歩く先生に付いていくと、通されたのはいつもの生徒指導室。
常備されているソファに向かい合うように座れば、ニコリと笑顔が向けられる。
…………が、そこに普段の圧は感じられない。
「先生、機嫌が良さそうですね」
「えぇ、まあ。黙々と一人で働く休日よりも、生徒と授業をしている平日の方が楽ですから。……そ、れ、に、そらくんたちとも会えますしね」
嬉しそうにニコニコと、はしゃぐかのように語る先生。
その時、俺の頭には一つの疑惑が浮かび上がる。
「あの……まさかとは思いますけど、そのために呼び出した――とかじゃないですよね?」
「大丈夫ですよ、ちゃんとした用事ですから。……まぁ、半分くらいはそうとも言えますが」
「半分もあるんですね……」
呆れたように呟く翔真であるが、俺も似たような気持ちだった……。
「それで、その半分の用事というのは何ですか?」
……取り敢えず、話を戻すか。
「はい。今日の始業式のことなのですが……その場で高総体の表彰式を一緒に行うことになりました。なので、九州大会一位と二位のお二人はHR後すぐに体育館に向かってください。軽い打ち合わせがあると思うので」
「えー、面倒くさ……」
「はい、分かりました」
明かされる用件を前に、二極化された返事が飛ぶ。
「……そらくーん?」
「そら、お前…………」
同時に異なる感情を含んだ二つの視線も飛ぶ。
「いや、だって目立ちたくないし……ねぇ?」
「さすがに、同意を求められても困るな……」
苦笑いを浮かべる親友。
「…………これは、きつーいお仕置が必要なようですね」
さっきの上機嫌はどこへ行ったのか。
普段の圧が全面に出た笑みを向ける先生。
「あっ、畔上くんはどうぞ先に戻ってくれて構いません」
「えっ、帰すの?」
思いもよらぬ一言に、俺は驚く。
「そうですか。なら、失礼します」
「てか、帰るの?」
あっさりと見捨てる親友の姿に、さらに驚く。
二人きりはさすがにマズい。なんか、こう……色々な意味で。
「ちょ、先生……HRまで五分を切ってるんですよ!」
「大丈夫です。五分あれば事足りますので」
事足りるって何!?
俺、何されるの……?
「それじゃあ、俺はここで。失礼しました」
あっ、閉めないで。
翔真、頼む……!
懇願すれど、届きはしない。
軽快な挨拶とともに、ゆっくりと閉まってゆくドアを俺ただただ見ていることしか出来なかった。
♦ ♦ ♦
「うぅぅ……汚されたよぉ……」
「……よしよし、大丈夫」
机に突っ伏し、嘆く俺をかなたは優しく抱きしめて撫でてくれる。
「嫌ですね、そらくん。あんなに可愛がってあげたのに……」
「――――っ!」
「か、かなたさん……? あの、そんなに睨まないでください……冗談ですから」
「……ねぇ、翔真くん。あれ、何があったの?」
「さぁ、俺は先に教室に戻ったから知らないよ」
嘘泣きをする九州大会優勝者に、それを宥める幼馴染、謝罪する担任と、一連の出来事を生温かい目で見守る親友ら。
新学期が始まっても、俺たちのクラスは騒がしかった。
…………ちなみに、何をされたのかについては俺の精神上の都合のため割愛させていただこう。
束の間の休日が明けた今日。
登校時間十分前という、何とも普通なタイミングでやって来た俺は自分の席に着くなり、後ろに座る生徒に挨拶を交わす。
「やぁ、おはよう」
相変わらずの爽やかな笑みを浮かべた畔上翔真は、これからまた学校が始まるというにもかかわらず気怠げな様を微塵も感じさせない。
「休みはどうだった?」
「どうだったも何も、部活漬けだっただろ? あとは、終業式の時に言った通り家族の買い物に付いて行ったくらいかな……」
「ほぉーん……やっぱ、そんなもんか」
とはいえ、土日を挟んだ五日間。
しかも、ウチだけの突発的な休暇だ。
特に出掛けた――なんて人はいないだろう。
「そっちは?」
「同じく、変わらずだ。かなたが遊びに来てたくらいだな」
そう言って振り向けば、俺の前には菊池さんと談笑する幼馴染の姿があった。
「仲、良いな」
「まぁ、家族みたいなものだしな。ぶっちゃけ、仲が良いとか悪いとか……そういう話でもないと思うぞ」
人からよく言われる言葉であり、しかし、その度に僅かな違和感を覚える言葉。
それに対して、少しだけ心情を吐露をしてみた。
――そんな折の出来事である。
「そらくーん、それと畔上くん」
急な名指しを受けて、声の方向――教室の入り口へと二人して目を向ければ、ドアを半開きにして手招きをする三枝先生の姿がそこにあった。
「お話があるので、ちょっといいですか?」
俺は翔真と顔を見合わせるが、お互いに用件に心当たりはなく肩を竦め合うのみ。
「取り敢えず、行こうか」
「そうだな」
仕方なしに立ち上がり、前を歩く先生に付いていくと、通されたのはいつもの生徒指導室。
常備されているソファに向かい合うように座れば、ニコリと笑顔が向けられる。
…………が、そこに普段の圧は感じられない。
「先生、機嫌が良さそうですね」
「えぇ、まあ。黙々と一人で働く休日よりも、生徒と授業をしている平日の方が楽ですから。……そ、れ、に、そらくんたちとも会えますしね」
嬉しそうにニコニコと、はしゃぐかのように語る先生。
その時、俺の頭には一つの疑惑が浮かび上がる。
「あの……まさかとは思いますけど、そのために呼び出した――とかじゃないですよね?」
「大丈夫ですよ、ちゃんとした用事ですから。……まぁ、半分くらいはそうとも言えますが」
「半分もあるんですね……」
呆れたように呟く翔真であるが、俺も似たような気持ちだった……。
「それで、その半分の用事というのは何ですか?」
……取り敢えず、話を戻すか。
「はい。今日の始業式のことなのですが……その場で高総体の表彰式を一緒に行うことになりました。なので、九州大会一位と二位のお二人はHR後すぐに体育館に向かってください。軽い打ち合わせがあると思うので」
「えー、面倒くさ……」
「はい、分かりました」
明かされる用件を前に、二極化された返事が飛ぶ。
「……そらくーん?」
「そら、お前…………」
同時に異なる感情を含んだ二つの視線も飛ぶ。
「いや、だって目立ちたくないし……ねぇ?」
「さすがに、同意を求められても困るな……」
苦笑いを浮かべる親友。
「…………これは、きつーいお仕置が必要なようですね」
さっきの上機嫌はどこへ行ったのか。
普段の圧が全面に出た笑みを向ける先生。
「あっ、畔上くんはどうぞ先に戻ってくれて構いません」
「えっ、帰すの?」
思いもよらぬ一言に、俺は驚く。
「そうですか。なら、失礼します」
「てか、帰るの?」
あっさりと見捨てる親友の姿に、さらに驚く。
二人きりはさすがにマズい。なんか、こう……色々な意味で。
「ちょ、先生……HRまで五分を切ってるんですよ!」
「大丈夫です。五分あれば事足りますので」
事足りるって何!?
俺、何されるの……?
「それじゃあ、俺はここで。失礼しました」
あっ、閉めないで。
翔真、頼む……!
懇願すれど、届きはしない。
軽快な挨拶とともに、ゆっくりと閉まってゆくドアを俺ただただ見ていることしか出来なかった。
♦ ♦ ♦
「うぅぅ……汚されたよぉ……」
「……よしよし、大丈夫」
机に突っ伏し、嘆く俺をかなたは優しく抱きしめて撫でてくれる。
「嫌ですね、そらくん。あんなに可愛がってあげたのに……」
「――――っ!」
「か、かなたさん……? あの、そんなに睨まないでください……冗談ですから」
「……ねぇ、翔真くん。あれ、何があったの?」
「さぁ、俺は先に教室に戻ったから知らないよ」
嘘泣きをする九州大会優勝者に、それを宥める幼馴染、謝罪する担任と、一連の出来事を生温かい目で見守る親友ら。
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