彼と彼女の365日

如月ゆう

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October

10月9日(水) 終業式

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 今日は終業式。
 全校生徒およそ二千名が体育館へと一堂に会し、長々とした先生の話を黙って聞く催しである。

 さて、では何故こんな時期に終業式をやっているのか。

 それは、ウチの学校が小・中学校に多く見られるような三学期制ではなく、前期・後期の二学期制だからだ。

 三学期制ならば、普通は夏休みを区切りに一学期が終了し、夏休み明けから年末までが二学期、正月休みを過ぎた頃から三月末までが三学期と分けられることだろう。

 しかし、二学期制の場合はその区切りが少し伸び、今の時期に終業式。
 そこから秋休みという名の束の間の連休を味わい、残りは後期として頑張るだけなのである。

 当然、年末年始の休みもあるわけだから、単純計算をすれば三学期制よりも秋休みの分だけ休暇が多く、二学期制様々だということはここだけの話。やったぜ!

 …………まぁ、夏休み中の補習だったり、土曜講義のせいで帳消し――何ならマイナスなんですけどね……はは。

 閑話休題。

 そんなわけで、式も終え、テスト結果とそれにまつわる素点などの情報が記入されたペラッペラの紙を担任から受け取った俺たちは秋休みの予定について話し合っていた。

「誰か、秋休みに予定のある人ー」

 開口一番、単刀直入にそう問えば、俺を含めて存在する四人のうち二人が手を挙げる。

「へぇー、翔真はともかくかなたもか……。何があるんだ?」

 他人の家に入り浸る暇人かと思っていたのだが、意外や意外。
 菊池さんが手を挙げていないところを見るに、家族ぐるみでどこかに行くのだろうか。

「……そらの、家に行く」

 …………違った。
 どうやら、いつも通りに暇らしい。

「それは予定じゃないだろ……。あと、来てもいいけど、その前に連絡しろよ。困っちゃうことになるかもしれないだろ」

「……私は、気にしない」

「俺が気にしてんだよ、バカ」

 幼馴染で、お互いの裸を見たことがある仲だとは言っても、今はただのいたいけな男女だ。
 だから、こっちだって色々とあることを分かってほしい。

「…………で、翔真は何? 旅行?」

「いや、違う。何でも、妹が服を買いたいらしくてさ……それについて行くかもしれない――ってだけだよ」

「ほぉーん……」

 よくある、普通の予定だな。
 秋物だの冬物だの、女の子には色々とあるのだろう。

「――てことは、予定がないのは俺と菊池さんだけか……」

「う、うん……そうみたい、だね」

 とはいえ、かなたがウチに来る以上はそれが俺の予定にもなるのだけど……。

「なら、集まって一緒にどこかへ行く?」

 気を利かせて、そんな提案をする翔真。

「うーん、でも部活があるしなぁ……」

 すでに大会まで二週間を切っている。
 疲労と休息を加味すれば、わざわざ集まるのは億劫だった。

「……それに、宿題もある」

「だな。さすがに今回は量が多すぎる……」

 かなたの言う通り、そこに加わる課題の山。
 とてもじゃないが、みんなでゆっくりできる時間は少なそうだ。

 今回ばかりは見合わせた方がいいだろう。

「……むしろ、補習がないだけ有難いと思わなきゃだな」

 休暇は、明日から体育の日である月曜日までの五日間。
 そんな短い期間に補習が差し込まれるわけもなく、安心して休めるという事実に心が躍る。

「あら、そうですか? 私は補習が恋しいです」

「せ、先生……」

 ともすれば、背後から声が。
 振り向いてみれば、学級日誌やファイルなどをいくつか胸に抱えた我が担任が立っていた。

「補習はなくとも、仕事はあるのが私たち教師ですからね。それなら、補習で貴方たちと接していた方が、幾分か楽――それこそ、楽しいのですが……」

「そ、そうなんですねー」

 だとしても、だ。
 こちらも楽を望む人間として、先生には悪いが賛同できない。

「はぁー……どうせ休みにするなら、補習が入りやすいように長期休暇にならないでしょうか……」

 ……ほんと、大型連休をなくして完全週休二日制にしてくれないかなぁ。
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