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September
9月28日(土) 相談事
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『――って話があったんだけど、俺はどうしたらいいかな?』
土曜日。週末。そして休日。
ゲームで遊んでいた俺は、ボイスチャットによって紡がれる親友の話を聞いていた。
何でも、昨日の呼び出しはテレビ関係者によるものらしく、そこでテレビ出演の話が来たそうなのだ。
流石は、学園一のイケメン。指名オファーなんて、あるんだな。
「……その前に、聞きたいことが一つあるんだが」
『何だ?』
「お前が選ばれたきっかけって何?」
その容姿、そして学校での人気から鑑みるに、出演そのものは何もおかしい話ではない。
むしろ、今までモデルやらアイドルとしてスカウトされていない事実こそ疑うべきことだろう。
だが、だ。
それでも、翔真は一般人。
そのやって来たディレクターとやらは、一体どこで翔真のことを知ったのだろうか。
……いや、多少は予想がつくけどさ。
真実が気になり尋ねてみると、もったいぶるでもなくすぐに教えてくれる。
『あぁ……なんか来た人が、ウチの体育祭を撮りに来た番組のディレクターでもあったらしくてな』
……やっぱりか。
『その時の俺のインタビューシーンは反響が凄かったらしくて、それで声が掛かったっぽい』
「なるほどな……」
確かに、あの番組後しばらくは他校の女子生徒が翔真を一目見ようと集まっていたわけだしな。
学校側が本格的に取り締まるまで騒ぎが終わらなかったことを考えれば、それ以上に番組側に視聴者の声が集まるのも、当然といえば当然か。
むしろ、無理矢理に騒ぎを終わらせたせいで、もう一度テレビで見たいと考える輩が出てきた可能性さえある。
モテるって、大変だ。
「それで、どんな番組なんだ?」
『えっと……って、言っていいのか、コレ?』
この前の延長線上で今度は学校紹介でもするのか、それとも彼の学園生活に密着するのか……色々と先行きの面白そうな展開に、具体的な内容を聞いてみれば、翔真は心配そうにそんなことを尋ね返してきた。
だが、そんな業界のルールなど俺はもちろん知る由もない。
「さぁ、知らん。口止めはされたのか?」
『いいや、そういうことは特に……』
「なら、大丈夫だろ。俺も口外するつもりはないし」
俺には責任の発生しないこと故、文字通り無責任な発言をしてみる。
……いや、口外しないのは本当だけど。
ともすれば、この一年と少しで培われた信頼の末なのか、ポツポツと教えてくれた。
『……なんか、施設や授業・部活の活動風景を撮って紹介映像を作るらしい』
ビンゴ!
ということは、その活動している被写体や紹介者として翔真は出演するわけか。
まぁ、それくらいならコイツには問題だろうし、画的にも映える。
チョイスは間違っていない……むしろ、最適といえよう。
「ふぅん……別にいいんじゃね?」
そのため、俺からこの発言が出るのは至極当然であった。
『そらは、賛成派なのか?』
「は……? いや、別にどっちでも。翔真がやってもいいと思うならやればいいし、やりたくないなら断ればいい」
こういう時に大切なのは、自分の意思だ。
誰が、ではなく己がどう思うかどうか――だと、俺は思っている。
「逆に、何に悩んでいるんだ?」
だから、それでも悩むのには何か理由があるに違いない。
本人にしか分からない、しがらみが。
『特に、悩んでいるわけじゃないよ。ただ、そらだったらどうするのか――それが気になっただけさ』
などと、格好良く言ってみたりしたわけだが、どうやら考えすぎだったらしい。
俺同様に、翔真なりの単なる疑問だったのだろう。
「俺か? 俺はそんな面倒くさいこと、即刻お断りだ。死んでもやりたくないね」
『はは、そららしいな』
迷いのない一蹴に、親友は笑う。
『…………ほんと、強いよ』
予想していたらしいことなのに、どこまでも楽し気に、どこまでも面白そうに。
「…………? 悪い、聞き取れなかった」
『何でもない。悪かったな、こんな話して』
「気にするな。ゲームに雑談は付き物だ」
予定もない。行事もない。
明日も休みで、パーリナイ。
雑談もゲームも、まだまだ続いてく。
土曜日。週末。そして休日。
ゲームで遊んでいた俺は、ボイスチャットによって紡がれる親友の話を聞いていた。
何でも、昨日の呼び出しはテレビ関係者によるものらしく、そこでテレビ出演の話が来たそうなのだ。
流石は、学園一のイケメン。指名オファーなんて、あるんだな。
「……その前に、聞きたいことが一つあるんだが」
『何だ?』
「お前が選ばれたきっかけって何?」
その容姿、そして学校での人気から鑑みるに、出演そのものは何もおかしい話ではない。
むしろ、今までモデルやらアイドルとしてスカウトされていない事実こそ疑うべきことだろう。
だが、だ。
それでも、翔真は一般人。
そのやって来たディレクターとやらは、一体どこで翔真のことを知ったのだろうか。
……いや、多少は予想がつくけどさ。
真実が気になり尋ねてみると、もったいぶるでもなくすぐに教えてくれる。
『あぁ……なんか来た人が、ウチの体育祭を撮りに来た番組のディレクターでもあったらしくてな』
……やっぱりか。
『その時の俺のインタビューシーンは反響が凄かったらしくて、それで声が掛かったっぽい』
「なるほどな……」
確かに、あの番組後しばらくは他校の女子生徒が翔真を一目見ようと集まっていたわけだしな。
学校側が本格的に取り締まるまで騒ぎが終わらなかったことを考えれば、それ以上に番組側に視聴者の声が集まるのも、当然といえば当然か。
むしろ、無理矢理に騒ぎを終わらせたせいで、もう一度テレビで見たいと考える輩が出てきた可能性さえある。
モテるって、大変だ。
「それで、どんな番組なんだ?」
『えっと……って、言っていいのか、コレ?』
この前の延長線上で今度は学校紹介でもするのか、それとも彼の学園生活に密着するのか……色々と先行きの面白そうな展開に、具体的な内容を聞いてみれば、翔真は心配そうにそんなことを尋ね返してきた。
だが、そんな業界のルールなど俺はもちろん知る由もない。
「さぁ、知らん。口止めはされたのか?」
『いいや、そういうことは特に……』
「なら、大丈夫だろ。俺も口外するつもりはないし」
俺には責任の発生しないこと故、文字通り無責任な発言をしてみる。
……いや、口外しないのは本当だけど。
ともすれば、この一年と少しで培われた信頼の末なのか、ポツポツと教えてくれた。
『……なんか、施設や授業・部活の活動風景を撮って紹介映像を作るらしい』
ビンゴ!
ということは、その活動している被写体や紹介者として翔真は出演するわけか。
まぁ、それくらいならコイツには問題だろうし、画的にも映える。
チョイスは間違っていない……むしろ、最適といえよう。
「ふぅん……別にいいんじゃね?」
そのため、俺からこの発言が出るのは至極当然であった。
『そらは、賛成派なのか?』
「は……? いや、別にどっちでも。翔真がやってもいいと思うならやればいいし、やりたくないなら断ればいい」
こういう時に大切なのは、自分の意思だ。
誰が、ではなく己がどう思うかどうか――だと、俺は思っている。
「逆に、何に悩んでいるんだ?」
だから、それでも悩むのには何か理由があるに違いない。
本人にしか分からない、しがらみが。
『特に、悩んでいるわけじゃないよ。ただ、そらだったらどうするのか――それが気になっただけさ』
などと、格好良く言ってみたりしたわけだが、どうやら考えすぎだったらしい。
俺同様に、翔真なりの単なる疑問だったのだろう。
「俺か? 俺はそんな面倒くさいこと、即刻お断りだ。死んでもやりたくないね」
『はは、そららしいな』
迷いのない一蹴に、親友は笑う。
『…………ほんと、強いよ』
予想していたらしいことなのに、どこまでも楽し気に、どこまでも面白そうに。
「…………? 悪い、聞き取れなかった」
『何でもない。悪かったな、こんな話して』
「気にするな。ゲームに雑談は付き物だ」
予定もない。行事もない。
明日も休みで、パーリナイ。
雑談もゲームも、まだまだ続いてく。
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