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September
9月11日(水) はたらく栞奈ちゃん
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倉敷先輩が正式なマネージャーとなりました。
それに関しては、私たちも最初から認めていた節がありましたし、正直な話、入部当初は本物のマネージャーの一人かと勘違いをしたこともあったので、別に不思議な話ではありません。
むしろ、遅すぎたくらい……。
ただ、そうなることで不定期に現れていた倉敷先輩は、これから部活がある日に毎回来るようになるため、私としては少し複雑です。
今まではあの人が来ない日にだけ、そら先輩を占領することができていたのに……。
――と、そう思っていたのですが、現実はそこまで非情ではないようで。
普段からそら先輩のお世話だけで済んでいたのは、倉敷先輩が正式なマネージャーではないから……ということが理由だったらしく、ここ最近はマネージャーの仕事を覚えるためにリーダーの詩音先輩に連れられて研修の日々。
ドリンクやタオルの用意、片付け、部室の清掃に練習のアシストなどなど……。
やるべき仕事の多さに、そら先輩に構える時間が全く取れていないようなのでした。
なので、私は頑張ります。働きます。
かつての詩音先輩のように真摯に、素早く、仕事を片付けて、この機会に私がお世話をするのです。
頑張るぞー!
♦ ♦ ♦
「栞菜ちゃん、楓ちゃん、その片付けが終わったら、得点板の準備をお願い。次は試合形式の練習だからって」
「分かりました」
「はい」
そう意気込んでみたはいいのですが、言うほど簡単には上手くいかないのが現実です。
思ったほど非情ではなかったのですけど、考えていたほど甘くもありませんでした。
コートの不足から、別口で練習をしていた一年生の監督に励んでいた美優先輩は、軽くこちらに顔を出すと指示を出してくれます。
それが終われば、部員の休憩時間も過ぎており、練習は再開。
得点付けは試合のない部員のみんなで受け持ってくれるため、私たちは使われたタオルやドリンクの片付けに回りました。
洗い場へ向かう途中、部室棟を見上げれば私たちの部室の扉が開きっぱなしなのが見えます。
きっと、まだ詩音先輩と倉敷先輩が奮闘しているのでしょう。
「じゃあ、私は容器を洗ってくるね」
「うん、お願い。私は洗濯してくる」
楓と二人、作業を分担して仕事に当たります。
「はぁー……これが終わっても、そら先輩たちは練習中だよね……」
既に洗濯の終わったタオルをカゴに入れ、代わりに先ほど使ったタオルを洗濯機にセットした私は、スイッチを入れながら独り言を呟きました。
「しょうがない、次こそは……!」
取り敢えず、柔軟剤の香りでいっぱいになった洗濯物を抱えて干しに出かけます。
一緒に、諦めないやる気も抱えながら。
♦ ♦ ♦
――などと、思って見上げた空は茜色。
結局、忙しさに負け、何も出来ないままに部活動の後片付けまで済ませた私は、同じ帰り道の楓と二人並んで帰ります。
「…………今日もダメだったぁー」
「仕事、大変だったもんね」
秋らしく、空中には秋茜が飛んでいました。
「でも、そう考えると詩音先輩って凄いよね。あれ以上の仕事をしてるのに、翔真先輩との時間も確保してるんだから」
呟く楓。
彼女も彼女なりに翔真先輩に近づこうと頑張っているのだろうけど……お互いに上手くはいかないものだ。
「明日、もっと頑張ろっか」
「うん、そうだね」
でも、だからこそやるしかない。
明日もまた部活はあるのだから。
昨日よりも成長して、今日よりも効率的に、私たちは明日も働こう。
それに関しては、私たちも最初から認めていた節がありましたし、正直な話、入部当初は本物のマネージャーの一人かと勘違いをしたこともあったので、別に不思議な話ではありません。
むしろ、遅すぎたくらい……。
ただ、そうなることで不定期に現れていた倉敷先輩は、これから部活がある日に毎回来るようになるため、私としては少し複雑です。
今まではあの人が来ない日にだけ、そら先輩を占領することができていたのに……。
――と、そう思っていたのですが、現実はそこまで非情ではないようで。
普段からそら先輩のお世話だけで済んでいたのは、倉敷先輩が正式なマネージャーではないから……ということが理由だったらしく、ここ最近はマネージャーの仕事を覚えるためにリーダーの詩音先輩に連れられて研修の日々。
ドリンクやタオルの用意、片付け、部室の清掃に練習のアシストなどなど……。
やるべき仕事の多さに、そら先輩に構える時間が全く取れていないようなのでした。
なので、私は頑張ります。働きます。
かつての詩音先輩のように真摯に、素早く、仕事を片付けて、この機会に私がお世話をするのです。
頑張るぞー!
♦ ♦ ♦
「栞菜ちゃん、楓ちゃん、その片付けが終わったら、得点板の準備をお願い。次は試合形式の練習だからって」
「分かりました」
「はい」
そう意気込んでみたはいいのですが、言うほど簡単には上手くいかないのが現実です。
思ったほど非情ではなかったのですけど、考えていたほど甘くもありませんでした。
コートの不足から、別口で練習をしていた一年生の監督に励んでいた美優先輩は、軽くこちらに顔を出すと指示を出してくれます。
それが終われば、部員の休憩時間も過ぎており、練習は再開。
得点付けは試合のない部員のみんなで受け持ってくれるため、私たちは使われたタオルやドリンクの片付けに回りました。
洗い場へ向かう途中、部室棟を見上げれば私たちの部室の扉が開きっぱなしなのが見えます。
きっと、まだ詩音先輩と倉敷先輩が奮闘しているのでしょう。
「じゃあ、私は容器を洗ってくるね」
「うん、お願い。私は洗濯してくる」
楓と二人、作業を分担して仕事に当たります。
「はぁー……これが終わっても、そら先輩たちは練習中だよね……」
既に洗濯の終わったタオルをカゴに入れ、代わりに先ほど使ったタオルを洗濯機にセットした私は、スイッチを入れながら独り言を呟きました。
「しょうがない、次こそは……!」
取り敢えず、柔軟剤の香りでいっぱいになった洗濯物を抱えて干しに出かけます。
一緒に、諦めないやる気も抱えながら。
♦ ♦ ♦
――などと、思って見上げた空は茜色。
結局、忙しさに負け、何も出来ないままに部活動の後片付けまで済ませた私は、同じ帰り道の楓と二人並んで帰ります。
「…………今日もダメだったぁー」
「仕事、大変だったもんね」
秋らしく、空中には秋茜が飛んでいました。
「でも、そう考えると詩音先輩って凄いよね。あれ以上の仕事をしてるのに、翔真先輩との時間も確保してるんだから」
呟く楓。
彼女も彼女なりに翔真先輩に近づこうと頑張っているのだろうけど……お互いに上手くはいかないものだ。
「明日、もっと頑張ろっか」
「うん、そうだね」
でも、だからこそやるしかない。
明日もまた部活はあるのだから。
昨日よりも成長して、今日よりも効率的に、私たちは明日も働こう。
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