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July
7月10日(水) タイプ別診断・親友編
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「…………ひまー」
昼食を済まし、放送部の流す小粋な曲に耳を傾けながら五限目までの時間を潰す現在。
幼馴染のかなたは、そう退屈そうに唸り、机にへばりついていた。
――……って、なんかデジャブ。
昨日も同じようなことがあったような気がしてならない俺は、ため息をついて提案をする。
「じゃあ、昨日は時間が足りなくてできなかった翔真たちのタイプ別診断でもやるか?」
二人とも平均タイプという不甲斐ない前回の結果をリベンジするという意味でも、当人である翔真と菊池さんに声を掛けてみれば、快く頷いてくれた。
「あぁ、別に構わないよ」
「う、うん……私も」
――というわけで、今日もやっていこう。
『第一問。政治の話をするのが好きな方ですか?』
「嫌い……というよりも、自分の意見を話すこと自体あまり好きじゃないかな」
そう言い、①を押す翔真であるが確かに、彼の周りへの影響力を考えれば、おいそれと変なことを口にはできないのだろう。
教師などといった立場と一緒で、大変だな。
『第二問。断言口調でしゃべることが多い方ですか?』
「これについては、皆に聞こうか。…………どう?」
「いや、別に。①でいいんじゃない?」
「…………同じく」
「わ、私も……」
『第三問。議論や討論が好きですか?』
「普通、かな……。やる時はやるけど、別に積極的でもないし……③で」
『第四問。困っている人がいると手や口を出してしまう?』
「出すな」
「ん……出す」
「出してる、かも……」
本人が答えるよりも早く、満場一致で外野から答えが決定する瞬間であった。
『第五問。小さいものや可愛いものが好きな方ですか?』
「うーん、人にプレゼントならともかく………俺個人の話なら、①かな……」
人にプレゼントするなら、可愛いものを選ぶのか……。
わーお、このモテ男め。
『第六問。旅行に行ったらお土産は忘れない方ですか?』
「これはさすがにな、⑤で」
わーお、この気配り名人め。
『第七問。旅行などの計画をしっかりと立てる方ですか? 』
「うん……⑤かなー」
わーお、この計画的め。
…………ちょっと、苦しくなってきたかも。
『第八問。何事にもあまり熱くならない方ですか? 』
「ものにもよるんだよなぁ……これ」
「でも、大体は冷静だろ……翔真」
「じゃあ、④にしとく」
『第九問。フィクションよりもノンフィクションの方が好きですか?』
「そこに区別はつけないから、③かな」
『第十問。飽きっぽい方ですか?』
「そうでもないし、①と」
『第十一問。下ネタやエロい話が好きな方ですか? 』
「…………………………………………」
そうして、順調に進んでいた診断であるが、ここに来て一同は無言を貫くこととなる。
何だろう、このいたたまれなさは。
きっと俺と二人きり――あるいは、男子だけであったならこんな空気にはならなかったはずだ。
なまじ女子が絡んできているからこそ、何とも言えない状況となっていた。
『学園の貴公子』としての顔もあるのだろう。黙って、無難に、①を押す。そうせざるを得なかった。
『第十二問。大勢でお祭り騒ぎをするのが好きな方ですか?』
「よ、④……かな……」
気を取り直して続く質問に翔真が答えれば、先程の空気を一刻も早く払拭しようと少し会話に乗る。
「へ、へぇー……意外だな。そういうのは頻繁に誘われるんじゃないのか?」
「わ、私も……よく皆で遊んでいるし、⑤かと思ってた」
「そうだな。結構誘われるし、楽しいからもちろん行くんだけど……でも、大勢だとふざけ過ぎちゃう奴も出てくるから……」
……なんか、持つ者は持つ者なりの苦労があるらしい。頑張れ。
『第十三問。嫌なことを嫌と言えない方ですか?』
「これは①、と……」
『第十四問。人から期待されると嬉しい気持ちより、ストレスを強く感じますか?』
「④……かなぁ…………」
「そ、そうなの……?」
意外に思ったのか、菊池さんはそう声を上げた。
確かに、翔真は人一倍期待される側の人間であるのだし、それでストレスを感じているのなら、割と危うい状態なのではないだろうか。
「まぁ、ね……。特に、『次へ次へ』って期待が先走り出すと、ちょっと堪えるかな」
そう冗談交じりの苦笑で答える翔真であったが、俺にはそれが彼の本心に思えてならなかった。
さて、気を取り直して最終問題。
『「高校→大学→正社員」と決まった道から外れたくない気持ちが強いですか?』
「うーん、別にその人がやりたいことをやればいい――って思うし、③だな」
ポチッと選択肢をタップし、しばらく待てば結果は表示される。
『困っている人を見過ごせない! 看護師タイプ』
取り敢えず、平均タイプでなくて良かった。
それで内容だが――自分のことは二の次に、人に優しく接する。そのため、誰からも愛され、人が集まってくる。異性からも好かれるタイプ、と。
「まぁ、概ね当たってるんじゃね……?」
「ん…………ピッタリ」
「うん、翔真くんのこと……だね」
いい感じの結果で良かったと、誰もが思った。
少し、在り来りなことしか書いてない気もするが……所詮はサイトの性格診断だしな。こんなものだろう。
「じゃあ、最後は詩音さんがやる?」
スマホを持ち主に返し、そう問い掛ける翔真であったが、本人が答えるよりも先に俺はあることを指摘……というか確認する。
「ていうかさ、菊池さんがこの診断サイトのことを教えてくれたんだし……すでにやってるんじゃないの?」
ともすれば、菊池さんの方はビクリと震えた。
心なしか目を逸らしている気も……。
「…………確かに」
関心げに呟く、翔真。
「…………詩音、結果は何だったの?」
ジトーっと追求する、かなた。
その二人の猛攻に耐えきれなかったようで、ツイツイと画面をタップしていくと、ある画面を見せてくれた。
「…………こ、これが私のタイプ」
そこには――。
『あなたに全てを捧げます! ヤンデレタイプ』
あー…………ヤバい。その見出しだけで納得してしまう自分がいる。
故にどんな反応をすればいいのかも分からず黙っていれば、それは二人も同じだったようで、誰もが無言となった。
…………一応、内容も読んでおこうか。
えっと――自己犠牲精神がすべてのタイプの中で最も高く、誰かに尽くすことで自分の存在価値を見出すタイプ。女性の場合は『ダメンズウォーカー』になりやすい。決断力が皆無ですし、情に流されまくり。
…………なんで、こんなにボロクソなの?
酷い書かれように、より一層みんなは無言となる。
「で、でもさ……『大和撫子』と言われる方もヤンデレタイプに分類される――って書いてあるし、詩音さんはこっちの方じゃないかな?」
そんな重い空気を何とか取り戻そうと、翔真が頑張ってそう菊池さんに告げれば、言った相手の影響もあるのだろうけど、彼女は俯いた顔を上げる。
「ほ、本当……? そう、かな……?」
チャンスはここしかない……!
「俺も翔真と同じ意見だな。その続きに『専業主婦としては最高のタイプ』とも書いてあるけど、部活のマネージャーっぷりを見ている限りでは本当にその通りだと思う」
「……詩音は、良い奥さんになる」
うんうん、と三人で頷き、畳み掛けるようにして彼女を持ち上げれば、その表情と漂う空気から負のオーラが消えていく。
「ふふ……だったら、嬉しいな」
ほころぶ笑顔に安心する一同。
そこでチャイムも鳴り、ひとまずは一件落着な訳だけど――最後にこれだけ、言わせてほしい。
昨日の事といい……このサイト、やっぱ駄目じゃねーの!?
昼食を済まし、放送部の流す小粋な曲に耳を傾けながら五限目までの時間を潰す現在。
幼馴染のかなたは、そう退屈そうに唸り、机にへばりついていた。
――……って、なんかデジャブ。
昨日も同じようなことがあったような気がしてならない俺は、ため息をついて提案をする。
「じゃあ、昨日は時間が足りなくてできなかった翔真たちのタイプ別診断でもやるか?」
二人とも平均タイプという不甲斐ない前回の結果をリベンジするという意味でも、当人である翔真と菊池さんに声を掛けてみれば、快く頷いてくれた。
「あぁ、別に構わないよ」
「う、うん……私も」
――というわけで、今日もやっていこう。
『第一問。政治の話をするのが好きな方ですか?』
「嫌い……というよりも、自分の意見を話すこと自体あまり好きじゃないかな」
そう言い、①を押す翔真であるが確かに、彼の周りへの影響力を考えれば、おいそれと変なことを口にはできないのだろう。
教師などといった立場と一緒で、大変だな。
『第二問。断言口調でしゃべることが多い方ですか?』
「これについては、皆に聞こうか。…………どう?」
「いや、別に。①でいいんじゃない?」
「…………同じく」
「わ、私も……」
『第三問。議論や討論が好きですか?』
「普通、かな……。やる時はやるけど、別に積極的でもないし……③で」
『第四問。困っている人がいると手や口を出してしまう?』
「出すな」
「ん……出す」
「出してる、かも……」
本人が答えるよりも早く、満場一致で外野から答えが決定する瞬間であった。
『第五問。小さいものや可愛いものが好きな方ですか?』
「うーん、人にプレゼントならともかく………俺個人の話なら、①かな……」
人にプレゼントするなら、可愛いものを選ぶのか……。
わーお、このモテ男め。
『第六問。旅行に行ったらお土産は忘れない方ですか?』
「これはさすがにな、⑤で」
わーお、この気配り名人め。
『第七問。旅行などの計画をしっかりと立てる方ですか? 』
「うん……⑤かなー」
わーお、この計画的め。
…………ちょっと、苦しくなってきたかも。
『第八問。何事にもあまり熱くならない方ですか? 』
「ものにもよるんだよなぁ……これ」
「でも、大体は冷静だろ……翔真」
「じゃあ、④にしとく」
『第九問。フィクションよりもノンフィクションの方が好きですか?』
「そこに区別はつけないから、③かな」
『第十問。飽きっぽい方ですか?』
「そうでもないし、①と」
『第十一問。下ネタやエロい話が好きな方ですか? 』
「…………………………………………」
そうして、順調に進んでいた診断であるが、ここに来て一同は無言を貫くこととなる。
何だろう、このいたたまれなさは。
きっと俺と二人きり――あるいは、男子だけであったならこんな空気にはならなかったはずだ。
なまじ女子が絡んできているからこそ、何とも言えない状況となっていた。
『学園の貴公子』としての顔もあるのだろう。黙って、無難に、①を押す。そうせざるを得なかった。
『第十二問。大勢でお祭り騒ぎをするのが好きな方ですか?』
「よ、④……かな……」
気を取り直して続く質問に翔真が答えれば、先程の空気を一刻も早く払拭しようと少し会話に乗る。
「へ、へぇー……意外だな。そういうのは頻繁に誘われるんじゃないのか?」
「わ、私も……よく皆で遊んでいるし、⑤かと思ってた」
「そうだな。結構誘われるし、楽しいからもちろん行くんだけど……でも、大勢だとふざけ過ぎちゃう奴も出てくるから……」
……なんか、持つ者は持つ者なりの苦労があるらしい。頑張れ。
『第十三問。嫌なことを嫌と言えない方ですか?』
「これは①、と……」
『第十四問。人から期待されると嬉しい気持ちより、ストレスを強く感じますか?』
「④……かなぁ…………」
「そ、そうなの……?」
意外に思ったのか、菊池さんはそう声を上げた。
確かに、翔真は人一倍期待される側の人間であるのだし、それでストレスを感じているのなら、割と危うい状態なのではないだろうか。
「まぁ、ね……。特に、『次へ次へ』って期待が先走り出すと、ちょっと堪えるかな」
そう冗談交じりの苦笑で答える翔真であったが、俺にはそれが彼の本心に思えてならなかった。
さて、気を取り直して最終問題。
『「高校→大学→正社員」と決まった道から外れたくない気持ちが強いですか?』
「うーん、別にその人がやりたいことをやればいい――って思うし、③だな」
ポチッと選択肢をタップし、しばらく待てば結果は表示される。
『困っている人を見過ごせない! 看護師タイプ』
取り敢えず、平均タイプでなくて良かった。
それで内容だが――自分のことは二の次に、人に優しく接する。そのため、誰からも愛され、人が集まってくる。異性からも好かれるタイプ、と。
「まぁ、概ね当たってるんじゃね……?」
「ん…………ピッタリ」
「うん、翔真くんのこと……だね」
いい感じの結果で良かったと、誰もが思った。
少し、在り来りなことしか書いてない気もするが……所詮はサイトの性格診断だしな。こんなものだろう。
「じゃあ、最後は詩音さんがやる?」
スマホを持ち主に返し、そう問い掛ける翔真であったが、本人が答えるよりも先に俺はあることを指摘……というか確認する。
「ていうかさ、菊池さんがこの診断サイトのことを教えてくれたんだし……すでにやってるんじゃないの?」
ともすれば、菊池さんの方はビクリと震えた。
心なしか目を逸らしている気も……。
「…………確かに」
関心げに呟く、翔真。
「…………詩音、結果は何だったの?」
ジトーっと追求する、かなた。
その二人の猛攻に耐えきれなかったようで、ツイツイと画面をタップしていくと、ある画面を見せてくれた。
「…………こ、これが私のタイプ」
そこには――。
『あなたに全てを捧げます! ヤンデレタイプ』
あー…………ヤバい。その見出しだけで納得してしまう自分がいる。
故にどんな反応をすればいいのかも分からず黙っていれば、それは二人も同じだったようで、誰もが無言となった。
…………一応、内容も読んでおこうか。
えっと――自己犠牲精神がすべてのタイプの中で最も高く、誰かに尽くすことで自分の存在価値を見出すタイプ。女性の場合は『ダメンズウォーカー』になりやすい。決断力が皆無ですし、情に流されまくり。
…………なんで、こんなにボロクソなの?
酷い書かれように、より一層みんなは無言となる。
「で、でもさ……『大和撫子』と言われる方もヤンデレタイプに分類される――って書いてあるし、詩音さんはこっちの方じゃないかな?」
そんな重い空気を何とか取り戻そうと、翔真が頑張ってそう菊池さんに告げれば、言った相手の影響もあるのだろうけど、彼女は俯いた顔を上げる。
「ほ、本当……? そう、かな……?」
チャンスはここしかない……!
「俺も翔真と同じ意見だな。その続きに『専業主婦としては最高のタイプ』とも書いてあるけど、部活のマネージャーっぷりを見ている限りでは本当にその通りだと思う」
「……詩音は、良い奥さんになる」
うんうん、と三人で頷き、畳み掛けるようにして彼女を持ち上げれば、その表情と漂う空気から負のオーラが消えていく。
「ふふ……だったら、嬉しいな」
ほころぶ笑顔に安心する一同。
そこでチャイムも鳴り、ひとまずは一件落着な訳だけど――最後にこれだけ、言わせてほしい。
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