108 / 284
July
7月9日(火) タイプ別診断・幼馴染編
しおりを挟む
「…………ひまー」
昼食を済まし、放送部の流す小粋な曲に耳を傾けながら五限目までの時間を潰す現在。
幼馴染のかなたは、そう退屈そうに唸り、机にへばりついていた。
「…………何かネタない?」
問われる俺であるが、急に言われて出てくるわけもなく肩を竦める。
一応、翔真にも目線だけで尋ねてみるが同じような姿が返ってくるだけだ。
「あっ、じゃあ……かなちゃん。ネットのタイプ別診断でもやってみる?」
『タイプ別診断……?』
そんな中、意外にも菊池さんから振ってきた話題に俺たち三人は揃って首を傾けた。
名前からして、性格診断的なやつだとは思うが……。
「うん。十五個の質問に答えて、その人を十七のタイプに分ける診断サイトがあるの。…………これなんだけど」
そう言って差し出されるスマホの画面を眺めてみれば、可愛くデフォルメされたキャラクターの絵が載っているポップなサイトが見て取れる。
「……まぁ、確かに暇つぶしにはなりそうだな」
こういったものは腐るほどあるし、故に信憑性の欠片もないおふざけに過ぎないのだけど、だからこそ手持ち無沙汰な今を過ごすお遊びとしては相応しかった。
その事をかなたも感じたのであろう。
一つ頷くと、画面をタップし、早速質問に答えていく。
『第一問。議論や討論は好きな方ですか?』
その様子を眺めていると、どうやら①から⑤の割り振られた数字で解答するようで、①のいいえ、③がどちらでもない、⑤がはい、とそれぞれ程度で分けられているらしい。
「……あんまり好きじゃない。……①で」
『第二問。たとえ遊びの約束でも、遅刻をする人が許せない方ですか?』
「そうでもないけど……一応、②」
『第三問。政治の話をするのが好きな方ですか?』
「…………嫌い」
そう断言し、迷わず①を選択するかなた。
てか、学生で政治の話が好きなやつとかいるわけ――いる、わけ……いそうなんだよなぁ、そんな変人。だって日本だもん。
『第四問。旅行に行ったらお土産は忘れない方ですか?』
「……忘れないから、⑤」
というよりも、これで①を押せるやつは相当気が利かない奴だな。間違いない。
『第五問。小さいものや可愛いものが好きな方ですか?』
「……普通、③」
おいおい、それでいいのか花の女子高生。
――などと繰り返すこと残り十問。
テンポが悪いため、少し駆け足で進めていこう。
『第六問。人に同情して流されてしまいやすいタイプですか?』
「……②かな」
『第七問。相手の学歴や働いている企業を重視しますか?』
「……①、もっと大事なところがある」
『第八問。幽霊や超能力は信じない方ですか?』
「……そらがいるかもしれないし、いないかもしれない――って言ってたから③」
『第九問。フィクションよりもノンフィクションの方が好きですか?』
「……どっちもだから、これも③」
『第十問。喜怒哀楽が激しい方ですか?』
『これは絶対に①!』
「なんで皆が答えるし……」
『第十一問。趣味や娯楽にお金を惜しまない方ですか?』
「……使うけど、そらほどじゃないし②かな」
「おい、なんで今引き合いに出した?」
『第十二問。何かといい加減で遅刻などをしてしまうタイプですか?』
「…………どう、そら?」
「遅刻は割としないよな、お前。まぁ……いい加減ではあるけど」
「……じゃあ、②で」
『第十三問。ウジウジと悩んでしまう方ですか?』
「……あんまり悩まないし、①かな」
『第十四問。世間体を気にする方ですか?』
「全く……①で」
『第十五問。人から期待されると嬉しい気持ちより、ストレスを強く感じますか?』
「最終問題だね。どうなの、かなちゃん?」
「んー……その期待してくれる相手による、かも……」
……そう言いながら、チラチラとこっちを見るな。
「じゃあ、③かな?」
「…………③だろうな」
そんなこんなで、五分足らずで終えた問答。
その質問画面から切り替わるのを待っていれば、出た結果はこんなものだった。
『個性がないのが個性! 平均タイプ』
……あー、うん。
何か色々と察することのできる見出しに、一同は沈黙を保ちつつ診断結果を読んでいけば、そこに書いてある内容はあってないようなものであることに気付く。
曰く、バランスの良いタイプ。何でもそつなくこなす。可もなく不可もなく。普通。普通。普通。
ネタ枠としか考えられないほど書き込みの薄い結果であるのに、どうしてこうも心を削られる思いがするのだろうか。
診断されたかなたへの不憫さに空気が悪くなっていくのを感じ、俺は声を上げた。
「ま、まだ時間もあるし、俺もやってみようかなぁ……!」
半ば強制的にそのスマホを手に取れば、敢えて問題文まで読み、気分を紛らわせるように進めていく。
その際に気付いたのだけど、質問の内容が少しかなたのものと変わっていた。しかし、あまり変わり映えしないので割愛。
そのままタップすること十五回。同じようなロード画面に入る。
選んだ解答によって問題を変えてくるらしく、かなり凝った作りをしているようだが、結果は果てさて――。
『個性がないのが個性! 平均タイプ』
「ふざけてんじゃねーよ……!」
何だこの診断サイト、壊れてんのか?
それとも、俺たちが壊れてる――もとい、平凡すぎるのか?
投げそうになる手元のスマホであるが、菊池さんのものということで取り敢えず、壊す前に返した。
「……なぁ、そら
しかし、そうなればぶつける当てもなくなり、行き場のない怒りを一体どうしたものかと思案していると、翔真は肩を叩き、俺に語りかけてくれる。
「普通、って何だろうな」
「やかましいわ」
そんなもの、俺が聞きたいわ。
割と個性的な人物だと自覚していた分、この結果に自分でショックだよ。
「あれ……でも、これ――」
そんな面白味も何もない、悲しい結末に涙する人間が二人いれば、菊池さんが何かに気付く。
そうしてスマホを机に置くと、画面のある一部分を示した。
「平均タイプの人は、平均タイプの人と相性がいいみたい。しかも、最高って。ここだけ見れば、かなちゃんたちに当てはまってるね」
――どれどれ…………ふむ。
曰く、非常にバランスの取れた最高の組み合わせである、と。
その言葉に、一人の少女が頷く。
「ん……本当」
同時に浮かんだ微笑み。
それが、先程まで蔓延っていた空気を霧散させた。
……何だよ、良いとこあるじゃん。この診断サイト。
昼食を済まし、放送部の流す小粋な曲に耳を傾けながら五限目までの時間を潰す現在。
幼馴染のかなたは、そう退屈そうに唸り、机にへばりついていた。
「…………何かネタない?」
問われる俺であるが、急に言われて出てくるわけもなく肩を竦める。
一応、翔真にも目線だけで尋ねてみるが同じような姿が返ってくるだけだ。
「あっ、じゃあ……かなちゃん。ネットのタイプ別診断でもやってみる?」
『タイプ別診断……?』
そんな中、意外にも菊池さんから振ってきた話題に俺たち三人は揃って首を傾けた。
名前からして、性格診断的なやつだとは思うが……。
「うん。十五個の質問に答えて、その人を十七のタイプに分ける診断サイトがあるの。…………これなんだけど」
そう言って差し出されるスマホの画面を眺めてみれば、可愛くデフォルメされたキャラクターの絵が載っているポップなサイトが見て取れる。
「……まぁ、確かに暇つぶしにはなりそうだな」
こういったものは腐るほどあるし、故に信憑性の欠片もないおふざけに過ぎないのだけど、だからこそ手持ち無沙汰な今を過ごすお遊びとしては相応しかった。
その事をかなたも感じたのであろう。
一つ頷くと、画面をタップし、早速質問に答えていく。
『第一問。議論や討論は好きな方ですか?』
その様子を眺めていると、どうやら①から⑤の割り振られた数字で解答するようで、①のいいえ、③がどちらでもない、⑤がはい、とそれぞれ程度で分けられているらしい。
「……あんまり好きじゃない。……①で」
『第二問。たとえ遊びの約束でも、遅刻をする人が許せない方ですか?』
「そうでもないけど……一応、②」
『第三問。政治の話をするのが好きな方ですか?』
「…………嫌い」
そう断言し、迷わず①を選択するかなた。
てか、学生で政治の話が好きなやつとかいるわけ――いる、わけ……いそうなんだよなぁ、そんな変人。だって日本だもん。
『第四問。旅行に行ったらお土産は忘れない方ですか?』
「……忘れないから、⑤」
というよりも、これで①を押せるやつは相当気が利かない奴だな。間違いない。
『第五問。小さいものや可愛いものが好きな方ですか?』
「……普通、③」
おいおい、それでいいのか花の女子高生。
――などと繰り返すこと残り十問。
テンポが悪いため、少し駆け足で進めていこう。
『第六問。人に同情して流されてしまいやすいタイプですか?』
「……②かな」
『第七問。相手の学歴や働いている企業を重視しますか?』
「……①、もっと大事なところがある」
『第八問。幽霊や超能力は信じない方ですか?』
「……そらがいるかもしれないし、いないかもしれない――って言ってたから③」
『第九問。フィクションよりもノンフィクションの方が好きですか?』
「……どっちもだから、これも③」
『第十問。喜怒哀楽が激しい方ですか?』
『これは絶対に①!』
「なんで皆が答えるし……」
『第十一問。趣味や娯楽にお金を惜しまない方ですか?』
「……使うけど、そらほどじゃないし②かな」
「おい、なんで今引き合いに出した?」
『第十二問。何かといい加減で遅刻などをしてしまうタイプですか?』
「…………どう、そら?」
「遅刻は割としないよな、お前。まぁ……いい加減ではあるけど」
「……じゃあ、②で」
『第十三問。ウジウジと悩んでしまう方ですか?』
「……あんまり悩まないし、①かな」
『第十四問。世間体を気にする方ですか?』
「全く……①で」
『第十五問。人から期待されると嬉しい気持ちより、ストレスを強く感じますか?』
「最終問題だね。どうなの、かなちゃん?」
「んー……その期待してくれる相手による、かも……」
……そう言いながら、チラチラとこっちを見るな。
「じゃあ、③かな?」
「…………③だろうな」
そんなこんなで、五分足らずで終えた問答。
その質問画面から切り替わるのを待っていれば、出た結果はこんなものだった。
『個性がないのが個性! 平均タイプ』
……あー、うん。
何か色々と察することのできる見出しに、一同は沈黙を保ちつつ診断結果を読んでいけば、そこに書いてある内容はあってないようなものであることに気付く。
曰く、バランスの良いタイプ。何でもそつなくこなす。可もなく不可もなく。普通。普通。普通。
ネタ枠としか考えられないほど書き込みの薄い結果であるのに、どうしてこうも心を削られる思いがするのだろうか。
診断されたかなたへの不憫さに空気が悪くなっていくのを感じ、俺は声を上げた。
「ま、まだ時間もあるし、俺もやってみようかなぁ……!」
半ば強制的にそのスマホを手に取れば、敢えて問題文まで読み、気分を紛らわせるように進めていく。
その際に気付いたのだけど、質問の内容が少しかなたのものと変わっていた。しかし、あまり変わり映えしないので割愛。
そのままタップすること十五回。同じようなロード画面に入る。
選んだ解答によって問題を変えてくるらしく、かなり凝った作りをしているようだが、結果は果てさて――。
『個性がないのが個性! 平均タイプ』
「ふざけてんじゃねーよ……!」
何だこの診断サイト、壊れてんのか?
それとも、俺たちが壊れてる――もとい、平凡すぎるのか?
投げそうになる手元のスマホであるが、菊池さんのものということで取り敢えず、壊す前に返した。
「……なぁ、そら
しかし、そうなればぶつける当てもなくなり、行き場のない怒りを一体どうしたものかと思案していると、翔真は肩を叩き、俺に語りかけてくれる。
「普通、って何だろうな」
「やかましいわ」
そんなもの、俺が聞きたいわ。
割と個性的な人物だと自覚していた分、この結果に自分でショックだよ。
「あれ……でも、これ――」
そんな面白味も何もない、悲しい結末に涙する人間が二人いれば、菊池さんが何かに気付く。
そうしてスマホを机に置くと、画面のある一部分を示した。
「平均タイプの人は、平均タイプの人と相性がいいみたい。しかも、最高って。ここだけ見れば、かなちゃんたちに当てはまってるね」
――どれどれ…………ふむ。
曰く、非常にバランスの取れた最高の組み合わせである、と。
その言葉に、一人の少女が頷く。
「ん……本当」
同時に浮かんだ微笑み。
それが、先程まで蔓延っていた空気を霧散させた。
……何だよ、良いとこあるじゃん。この診断サイト。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる