53 / 284
May
5月22日(水) 定期考査一日目
しおりを挟む
定期考査一日目。
本日の予定は一時限目から選択教科、自習、コミュニケーション英語と三本仕立てであり、午前授業だ。
そのために、朝のSHRを終えた現在は、私も含めたクラスの半数が筆記用具を片手に別教室へと移動していく。
逆に、移動しない者の中で知った名前を挙げるとするなら、そら・詩音・畔上くんであるのだけど……。
さて、ではこの『選択教科』とは何なのだろうか。
それは、ここ特Ⅰ類ならではの科目であり、中学校の教育課程に存在するようなものとは全く関係のない代物。
説明をしよう。
復習にはなるが、特Ⅰ類とはそもそもが、この学校の中でも特に学力に優れた者を集めた学科である。
したがって、本来二年生で分けられるべき文理選択がこの学科内だけでは唯一行われず、代わりに必要な教科を選択教科として選ぶことになるのだ。
その中身は全部で四教科――日本史、世界史、物理、生物。
化学と地理はそれぞれ強制的に受けさせられ、文系ならば前二つのうちどちらかを、理系ならば後ろ二つのうちどちらかを履修する必要がある。
文理選択のために選ばなければならない教科、故に『選択教科』なのだ。
そんな私たちが移動した先は、ウチのクラスと同じ階層に位置するちょっと手狭な空き教室。
普段の世界史で使用される場所でもあり、私にはとても馴染み深かった。
唯一違う点を挙げるとするなら、普段よりも人数が多いという点だろうか。
それもそのはず。ここに集められたのは、世界史選択の者だけではないのだから。
試験監督の人数――という世知辛くも切実な理由のために、日本史選択の生徒も集まる故の妙な違和感と空気の密度を感じてしまう。
でもきっと、そらたちもそうなのだ。
詩音と畔上くんは移動しなかった。二人とも生物選択者で、唯一物理を選択したそらとは違うはずなのに。
しばらくして入室してきた先生は、小脇に少し厚みのある茶封筒を抱えている。
前から後ろに、いつも通りの動作で配布された問題用紙を送れば、その表紙には『日本史・世界史』と表記されていた。
二教科を同じく空間で受けさせるのだし、問題も一緒にしてしまおう。
……といった魂胆に違いない。まぁ、これもまたいつものことであるのだし、どうでもいいのだけど。
ひと先ずは、この与えられた問題を解くのだ。
赤点なんて目も当てられない。留年なんてもってのほか。
だって――私たちの学区の中でたった一つ、文理を問うことなく三年間同じクラスで生活を送ることができる場所なのだから。
本日の予定は一時限目から選択教科、自習、コミュニケーション英語と三本仕立てであり、午前授業だ。
そのために、朝のSHRを終えた現在は、私も含めたクラスの半数が筆記用具を片手に別教室へと移動していく。
逆に、移動しない者の中で知った名前を挙げるとするなら、そら・詩音・畔上くんであるのだけど……。
さて、ではこの『選択教科』とは何なのだろうか。
それは、ここ特Ⅰ類ならではの科目であり、中学校の教育課程に存在するようなものとは全く関係のない代物。
説明をしよう。
復習にはなるが、特Ⅰ類とはそもそもが、この学校の中でも特に学力に優れた者を集めた学科である。
したがって、本来二年生で分けられるべき文理選択がこの学科内だけでは唯一行われず、代わりに必要な教科を選択教科として選ぶことになるのだ。
その中身は全部で四教科――日本史、世界史、物理、生物。
化学と地理はそれぞれ強制的に受けさせられ、文系ならば前二つのうちどちらかを、理系ならば後ろ二つのうちどちらかを履修する必要がある。
文理選択のために選ばなければならない教科、故に『選択教科』なのだ。
そんな私たちが移動した先は、ウチのクラスと同じ階層に位置するちょっと手狭な空き教室。
普段の世界史で使用される場所でもあり、私にはとても馴染み深かった。
唯一違う点を挙げるとするなら、普段よりも人数が多いという点だろうか。
それもそのはず。ここに集められたのは、世界史選択の者だけではないのだから。
試験監督の人数――という世知辛くも切実な理由のために、日本史選択の生徒も集まる故の妙な違和感と空気の密度を感じてしまう。
でもきっと、そらたちもそうなのだ。
詩音と畔上くんは移動しなかった。二人とも生物選択者で、唯一物理を選択したそらとは違うはずなのに。
しばらくして入室してきた先生は、小脇に少し厚みのある茶封筒を抱えている。
前から後ろに、いつも通りの動作で配布された問題用紙を送れば、その表紙には『日本史・世界史』と表記されていた。
二教科を同じく空間で受けさせるのだし、問題も一緒にしてしまおう。
……といった魂胆に違いない。まぁ、これもまたいつものことであるのだし、どうでもいいのだけど。
ひと先ずは、この与えられた問題を解くのだ。
赤点なんて目も当てられない。留年なんてもってのほか。
だって――私たちの学区の中でたった一つ、文理を問うことなく三年間同じクラスで生活を送ることができる場所なのだから。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる