神様に愛されなかった僕、貴族に転生した2秒後に平民落ちしたけど、メイドが愛してくれるので今日も幸せです

水の入ったペットボトル

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第10話 15年と2日間にお別れを

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「ルイ様」
「はい、どうしました?」
「あの方はとても大きな商会の方です」
「え、そうなんですか?」

 アンナさんには大きな商会だとお金を取られるため、運びドラゴや大きな馬車の近くにいる人には話しかけても無駄になってしまうと教えてもらっていた。

「じゃあお金取られるんですかね?」
「いえ、それはないでしょう。この短時間で何故かルイ様とあの方は仲が良さそうにしてましたし」
「ちょっと話してただけですよ」
「馬車探しでですか?」
「あ、いや、流石にアンナさん1人に探してもらうのは良くないと思って、話を切り上げて他の人に聞きに行こうとしたら、連れて行ってくれるって言われたんです。ほ、本当ですよ」
「私はルイ様を疑いませんよ。それにルイ様には探していただかなくても私が探せばいいだけですし。ですが、そうでしたか、スリフパス商会の方とお知り合いになられるとは」

 僕は全くスリフパス商会がどれだけ大きな商会なのかわからない。

「あ、お弁当ですよね! すぐお持ちします!」

 宿屋に入ると朝見かけなかった人が居て、お弁当を持ってくるために急いで奥へ走っていった。

「2日間で見なかった人ですね」
「私も見ていないですね」

 僕もアンナさんも、あの人を見たことがない。

「お持ちしました!」
「ありがとうございます」
「あの、自分を庇ってくれてありがとうございました! これからはミスしないように気をつけます!」
「あぁ、あなたがあの日替わり魚を作った方ですか」
「白い砂糖をあまり見慣れてなくて、塩と間違えてしまいました。手触りも少しおかしいなと思ったんですけど、まさか間違えているとは思わず」
「まぁそういうこともありますよね。それにこうしてお弁当をいただけましたし、もう気にしないでください」
「ありがとうございます! そのお弁当は自分が一生懸命作ったので、美味しく出来たと思います! 少し多く作り過ぎましたんで、もし余ったら馬にでも食わせてください。勿論モンスター種でなければ食べさせないでくださいよ」
「あれ、僕達って今日出ていくこと言いましたっけ?」
「私達は言っておりませんが、分かるものですよ」
 
 アンナさん曰く、また僕とアンナさんがこの宿屋に泊まるなら、今日の晩御飯を無料にという要求をするはずで、そうしなかったということはどこか他の場所へ移るということは予想できるらしい。

「うちは冒険者の方が多い宿屋なので、そういうのはなんとなく分かるらしいです。ちなみに自分は厨房で料理を作ってるだけで、全く分からないですよ」

 そう話すこの料理人から僕はお弁当を受け取り、お礼を言って宿を出る。

「これは本当に作り過ぎたんだと思います。ちょっと重いので」
「2人では食べ切れそうにないですね」

 馬車の中で食べやすい物が良いと言う話はどこかへ飛んでいってしまったのだろう。少し中を見てみたが、揺れた状況で食べれそうにないものもいくつかあった。

「あれ、あっちじゃないんですか?」
「スリフパス商会は商店街の方にありますから」

 アンナさんは先程学園都市行きの馬車を探した商人ギルド近くの場所とは違う方向へ行く。

「え、あれですか?」
「そうですね。前に止まっているのが私達の乗せてもらえるものでしょう」
「お、きたきた。先に名前を聞いても? ゴードさんに聞いたらどっちの名前も聞いてないって言うもんで」
「アンナです」
「ぼ、僕はルイです。あの、馬車じゃないんですか?」
「え、ゴードさん馬車に乗せるって言ってた? うちはほぼ竜車しかないんだけど、大丈夫?」

 竜車を引っ張っているのは先程聞いた運びドラゴ2体だ。

「こいつらはコンフォオオトカゲ。モンスターの中でもこいつと馬系は結構運搬に使われてるから見慣れてるもんだと思ってたけど、そんなに珍しいか?」
「えっと、そうですね。さっき運びドラゴを初めて見ました」
「嘘だろ?」
「ルイ様は少し前に記憶喪失になられて、色んなことが初体験なのです」
「あぁ、それはすまねぇな。おれはドレール。ゴードさんと2人でこの竜車を学園都市まで運ぶから、その間よろしくな」

 ゴードさんは年齢が高めに見えたが、ドレールさんは商人の中でも若い方だろう。

「お、来たか」
「ゴードさん、名前はルイとアンナだってよ」
「分かった。うちは竜車だが、だからってコンフォオオトカゲ達を急がせるつもりはない。何泊か野宿はするし、それだけは覚えていてくれ」
「はい」
「そもそも竜車に乗る予定ではありませんでしたので、もとよりそのつもりです」
「それなら良かった。もう一緒に旅する仲間になったんだ、好きに話すからこの口調が気に入らなくても数日我慢してくれよ」
「ゴードさん交渉の時もたまにその口調出てますから」
「それは計算でやってるんだよ。お前にはまだ分からんだろうがな」
「へいへい、そういうことにしときます」

「なんか僕が思ってた商人と違います」
「意外とこういう方は多いですよ」

 アンナさんはゴードさんやドレールさんの会話にあまり驚いていない。

「よし、乗ってくれ。荷物はある程度避けてるからスペースはあるはずだ」
「分かりました」
「ありがとうございます」

 僕とアンナさんは後ろの竜車に乗ると、しばらくして竜車は動き出す。

「なんかあったら大声で呼んでくれ。おれとゴードさんは前でこいつらを動かしてるから」
「分かりました」

 まだ街の中なので速度は出ていないが、自分の足で歩かず見る街の景色は、いつもと違って特別なものに見えた。

「あ、3人組のパーティーの人達と目が合いました」
「驚かれているかもしれないですね。この状況はルイ様がスリフパス商会の方だと勘違いされた可能性が高いです」
「本当は草原ウルフの依頼を取ってしまったこと謝りたかったんですけど」
「そんなことをすればあの方達のプライドを傷つけてしまいます」
「ってアンナさんに言われましたし、僕も流石に話しかける勇気はなかったです」

 そんな話をしていると竜車が止まる。門を出る前に一度荷物検査があるみたいだ。

「お、2人か。一応冒険者カード見て良いか?」
「はい」
「どうぞ」

 ギルドカードだったり冒険者カードだったり、色々な呼び方があるのをこの段階で気付けて良かった。
 たぶん他にも僕が知らない常識がたくさんあるのだろう。

「……Gランクか、この竜車なら大丈夫だと思うが、目的地に着くまで気を付けてな」
「ありがとうございます」

 こうして軽い荷物検査も終わり、僕達は街の外に出る。

「こっからスピードを上げる。揺れに耐えられなかったら言ってくれ」
「分かりました」

 ドレールさんにそう言われたが、全然揺れを感じない。

「あんまり揺れないですね」
「馬車だとこの5倍は揺れますね」
「え、」
「あらかじめクッションを用意していたのですが、これなら必要なさそうです」

 僕は少し長距離移動というものを舐めていたようだ。

「そんなに揺れるんですか?」
「同じ速度であればの話ですよ。馬車で移動するならばもっと速度は遅いです」
「そうなんですね」
「偉そうに説明しましたが、私も竜車に乗るのは初めてですよ」

 確かにさっきから何台か馬車を抜かしているが、これは竜車が速いからという理由の他に、馬車ではこの速度で走ると物凄く揺れるからというのもあるのかもしれない。
 いや、そもそも馬車にはこんな速度出せないのかな?

「アンナさんに少しスリフパス商会のことを聞いてもいいですか?」
「そうですね。ルイ様には知っておいていただいたほうが良いと思います」

 アンナさんが言うには、このスリフパス商会は4つある大商会のうちの1つであり、何でも取り扱うとても有名な商会らしい。

「そんなに大きな商会の人だとは思いませんでした」
「胸に青色のバッジを付けていたのですぐ分かりました」
「本来はあれを見て判断するんですね」
「いえ、バッジを見る習慣など一般の方にはありませんから、ルイ様が分からなくて当然です」

 自分に常識が無いことは分かっているため、今回もやってしまったと思ったが、これは普通のことだったらしい。

「やっぱりアンナさんが居ないと僕は全然駄目そうです」
「……嬉しいですが、そんな事はありません。本当に、ほんっとーーうに私は嬉しいですし、ルイ様にこのままでいてほしい気持ちもありますが、ルイ様は素晴らしい才能をお持ちですから、すぐに慣れますよ」

 アンナさんにはこの後もスリフパス商会について教えてもらい、昼休憩の時間まで何事もなく竜車は走り続けるのだった。


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