最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第159話

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「寝たなぁ」

 久しぶりに24時間近くゲームをしたからか、体が全く起きてくれなかった。

 今は昼の14時、時間にして約9時間程寝ていたことになる。
 昨日何もかも放ったらかしで寝たため、そのままになっていた食器なども洗い、ゆっくりと食事も取る。
 最近急いでばっかりだったので、久しぶりにゲームの中以外でこんなにのんびりした時間を過ごしている気がする。

「でも動画の確認が終わったらこっちですることは特に無いしなぁ」

 そう1人で呟きながら自分の動画のコメント等をゆっくり見ていく。
 俺の動画と全く関係ないアリスさん達との関係を聞いてくるものや、過去に俺がオークションで魔法シリーズを独占したことに対する棘のあるコメント、カジノで大儲けしていることに対するチート疑惑みたいなもの等、色々俺の行動に対して否定的なものが見られる。

「……なんかゆっくり見てなかっただけで、俺の動画のコメント欄も結構荒れてたんだな」

 少しだけ気分が下がってしまったが、俺のことを応援してくれるものや、楽しみにしてると言った声が大半なのは嬉しい。
 どうしても嫌なものが目に付くが、それ以上に俺の動画を待ってくれてる人達のコメントを見て、これからも頑張ろうと気持ちを切り替えた。

「……ん? コラボのお誘い?」

 動画のコメントを確認していると、俺宛にメールが来ていることに気づいた。こんなことは初めてで、俺はメールを開くのも少し緊張しながら、その内容を見ると……

(要はコネファンの動画投稿者や配信者の皆で何かしませんか?ってことか)

 内容としては、まぁこんなこともあるかというようなものだったが、最後まで読むと俺がアリスさん達を誘ってくれとのことだった。
 アリスさんが俺のファンだと言うことを公言したせいで、俺を誘えばアリスさんも誘えるだろうという考えが透けて見える。

「はぁ、これ断りのメールは必要か?」

 少しだけ、「アリスさん達は誘えませんでした。けど俺は行きますね!」みたいな事を送ったらどうなるかな、なんて悪い考えが浮かんだ。
 そもそも知り合いでもないこの人達と関わる時間が勿体ないし、今はコラボよりもゲーム内での繋がりが大切なので、一応これ以上面倒くさいことにならないように、丁寧なお断りメールを送っておいた。
 勿論「またお誘いください」なんてことは言わないで。

「……よし、じゃあやるか」 

 俺は一通り動画の確認を終えて、いつも通りカプセルベッドの中に入ると、コネファンの世界へ入るのだった。



「おはよう」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 今はゲーム内時間で21時だが、夜が来ない日のため外は明るかった。

「おはようございます」
「お、ユーマおはよう」
「あ、ユーマ!」

 モニカさんとモルガがリビングに居て、2人共何をするでもなく椅子に座って話していた。

「あれ、ハティとサイさんは居ないんですね」
「ハティは夕食を食べた後また冒険者ギルドへ行ったよ。早く私達に追いつきたいと言ってな」
「キプロもさっき夕食には来てたけど、今プレイヤー様のお客が多いからってすぐ帰っちゃった」

 ハティは今日も冒険者になるために頑張ってて、キプロも鍛冶師の仕事をちゃんと両立してるんだなと思うと、なんだか嬉しい気持ちになった。
 動画のコメントやコラボのお誘いメールに気付かなければ、俺も皆とご飯を食べれたんだなと思うと少しだけ後悔が残るが、これは仕方がない。運が悪かったと思おう。

「じゃあ俺も皆に習って頑張ってこようと思うんで、ご飯食べたら行ってきますね」
「ユーマは働き者だなぁ」
「休みも大事だぞ」
「まぁそうなんですけど、王都に着いたんで結構ワクワクしてるんですよ」
「早いな、もう着いたのか」
「あ、ゴーさんありがとう」
「ゴゴ」

 もう何も言わなくてもゴーさんが俺のためにご飯を用意してくれるので、モニカさん達と話しながらご飯を食べる。

「なのでまた朝の訓練に俺が参加できない可能性があって……」
「それは問題ない。私達でも十分教えられるからな」
「エマとキプロはぼくとモニカで教えて、ハティは今サイが教えてるからね」

 俺の知らない間に朝の訓練でもサイさんがハティへ教えるようになったようだ。

「そうなんですね、それなら良かったです」
「だからユーマは存分に楽しんでくれ」
「そうそう、キプロとハティもそう思ってるよ。ユーマはタイミングが合う時だけで良いから」

 モニカさんもモルガも優しくてありがたいし、この場に居ないキプロとハティにも感謝する。

「でも俺も来れる時は来ますね。皆と朝ご飯は食べたいですし」
「あぁ」
「いつでも待ってるよ!」
「待ってるって……モルガ、そもそもここはユーマの家だぞ」
 
 俺はご飯を食べ終えると、モニカさんとモルガにもう一度朝の訓練について感謝の言葉を言って、裏のクリスタルから王都へと向かった。



「うわぁ、高いな」

 前回ログアウトする前に決めた王都での装備更新をしようと思い防具屋まで来たが、1つの防具に50万Gかかるなんてざらだった。
 俺はせっかくボスの素材もあるしオーダーメイドをお願いしようと思ってるけど、装備の価格を調べておきたいと思って見に来たらこれだ。

「まぁそれくらいかかっても仕方ないか」

 考えてみると依頼1つで数万G貰える事が当たり前になってきたし、この値段は適正価格なのかもしれない。

「でも、無駄遣いはしたくないなぁ」

 取り敢えず王都の装備品がどれくらいの値段なのか知れたので、一度冒険者ギルドへと行く。

「お、プレイヤー様!」
「あ、この前の」

 俺はオーダーメイドで装備を作ってくれるお店を紹介してもらおうと思って冒険者ギルドへ来たが、入った瞬間横から声をかけられ顔を見ると、この前いつでも頼ってくれと言いながら名前を教えてくれなかった冒険者が居た。

「調子はどうだ?」
「この前は王都に来てすぐ寝ちゃったので、今から王都を探索しようかなって感じです」
「お、それなら俺が紹介してやろうか?」
「良いんですか?」
「今日はもう解散した後だから時間はあるぞ」
「じゃあお願いします」

 この冒険者の名前はバズマさんと言うらしく、王都生まれの王都育ちで、王都のことなら何でも聞いてくれとのこと。

「どこに行きたい?」
「えっと、オーダーメイドで装備を作ってくれるところはありますか?」
「鍛冶屋だな、任せろ!」

 バズマさんはそう言うとどんどん道を進んでいく。やっぱり王都で育っただけあって、道に迷うなんてことはなさそうだ。

 鍛冶屋に向かっている間暇なので、バズマさんと世間話をしていたのだが、話題はバズマさんが組んでいるパーティーメンバーの話になる。

 この前バズマさんはパーティーメンバーから頭が悪いなどと言われていたが、あのパーティーは王都出身の友達同士で組んだパーティーらしく、勉強が苦手なバズマさんのことをいつも皆でイジってくるらしい。

「俺だってあいつらよりちょっと頭が悪いのは分かってるんだがよ。何もあそこまで言わなくても……」
「まぁ皆バズマさんをからかうのが面白いんですよ。一度本気で落ち込んでる姿を見せたらやめてくれるかもしれないですよ?」
「ホントか!?」
「はい。その後しっかりバズマさんも言えばいいですよ。頭が悪いって言うのはやめてほしいって」
「それはこれまで何度も言ってきたんだ」
「本気で気にしてるって思われなかったのかも?」
「そうか……分かった。ユーマの言うようにやってみる」

 何故かバズマさんのお悩み相談を途中からしていたが、パーティーメンバーの皆がバズマさんをからかいたい気持ちはちょっとだけ分かってしまった。
 素直で感情が顔に出るバズマさんは見ていて面白いのだろう。まぁ本人が嫌がっていることをするのは感心しないが、たぶんここまで嫌がってるってのを知らないだけな気がする。
 付き合いが長ければ長いほど相手のことをこういうものだって決めつけてしまうのも分かるし、たぶんバズマさんに何を言っても平気だろうって皆思ってそうだ。

「ユーマ、俺プレイヤー様が良い奴だって皆にも言うから!」
「いや、まぁ嬉しいですけど」
「プレイヤー様って凄えな!」
「いや、まぁ、それは人による、かな?」

 うん、パーティーメンバーがバズマさんに馬鹿だの頭が悪いだの言いたくなる気持ちが少しだけ分かった。
 こういったトンデモ論理みたいなのが良く展開されるんだろう。

「あの、バズマさん、色々騙されないようにしてくださいね?」
「ユーマも俺を心配するのか。あいつらにもおんなじこと言われてるんだ。金が絡む話は1回俺達を通せとか、紙にサインはするなとかな」

 うん、ちゃんとバズマさんにパーティーメンバーの人達が首輪をつけてて良かった。
 ちょっと話しただけでも壺とかすぐ買っちゃいそうだし。

「あ、そうだ。ここってなんていう名前の国なんですか?」
「ここか? ここはエプリオン王国だ。だからここはエプリオン王都だな」
「なるほど、ありがとうございます」
「よし着いたぞ。紹介したかったのはあそこだ。おやっさーん!」

 俺はもう少しこの国について話を聞こうとしたけど、バズマさんは急に叫びだしたかと思うと、目的の鍛冶屋へ入っていくのだった。


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