最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第147話

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「ありがとうございました」
「いえ、部屋から出てきた後いくつか買って帰られる方も居ましたし、私達としましてもありがたかったです」

 自分達が食べたケーキも合わせたら、50個分くらいのケーキを買ったことになる。

「ベラさんにも後でお礼を言っておいてください」
「はい。ありがとうございました」

 ずっと俺もあっちでプレイヤーを見送る側だったが、最後は店員さんに見送られてベラさんの店を出る。

「アリスさん達にも連絡をして、クランチャットの方にも、クランハウスに集合お願いします、っと。これで来れる人は皆あの新しいクランハウスに来るだろう」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 今日入って来た第2陣の人達は夜何も出来ない時間が続くだろうし、長めにクラン会議をしても良さそうだ。

「一旦家に帰るか」

 ここからまっすぐ行けばクランハウスだが、先に北の街の家まで帰る。

「あ、ユーマおかえり」
「ただいま」
「今日は帰れなかったのではなかったのか?」
「またすぐ出るので晩ご飯は一緒に食べれないですね」
「ユーマさんからもらったお布団楽しみです!」
「ハティお嬢様、もし朝起きられなかった場合はモニカ様に起こしてもらうことになりました」
「モルガもハティも私が起こすから、安心して寝て良いぞ」
「モニカ、お願いだからぼくの布団を引き剥がすのだけはやめてよ」

 皆のやり取りを聞いていると、我が家に帰ってきた感じがする。

「ゴーさん、今からクランで話し合いをするんだけど、飲み物とか手で食べられるようなものってないかな? あ、あと冷凍室に入ってるお土産用のアイスは結構持っていくけど良い?」
「ゴゴ」
「ありがとう」

 ゴーさんからじゃがいもやさつまいもを揚げたもの、グラープジュースにいちごミルクをもらい、冷凍庫にあるアイスカップは自分で人数分インベントリに入れる。

「じゃあ行くね。俺もゴーさんのご飯食べたいけど、たぶん今日はあっちで食べることになると思う」
「ゴゴ」
「こっちは気にするな。また落ち着いたら皆で食べよう」
「もし朝も帰ってこなかったら、ぼくが代わりに氷魔法でアイスは凍らせておくよ。ゴーさんの手伝いは任せて」
「自分は、自分は……頑張って訓練します!」
「ハティお嬢様、家を守るで良いと思いますよ」
「家は任せてください!」
「この家には優秀なゴーレム様がいらっしゃるので、ハティお嬢様が守る必要はございません」
「サイ!!」

 どこの執事も主人をからかうのが好きらしい。まぁサイさんは執事ってより護衛だけど。

「みんなありがとう。ハティももし良かったらゴーさんのお手伝いをモルガとしてくれたら嬉しいかな。じゃあ行ってきます!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 こうして一瞬ではあったが皆と話せてリラックスできた。ずっとクランリーダーとして今日は面接していたため、凝るはずのない肩が凝っている気がする。

「じゃあ、クランハウスに向かうか」

 家のクリスタルからまたはじめの街に戻り、クランハウスの並ぶエリアまで歩く。

「今更だけどこんなに目立つ場所に俺のクランが陣取って良いのかな?」

 人数こそこの数時間で増えたが、もっと有名なクランはいっぱいいる。
 その中で俺達のクランが道を挟んで最前線攻略組のクランハウス横に位置しているのは凄いことなのだろう。

「まぁ、いいよな」

 結局こんなことを口では言いながら、自分の中では良いのかな? なんて弱気な気持ちは全くない。

「あれ、皆中に入ってないの?」
「あ、ユーマさんお疲れ様です。あのケーキ屋さんの部屋で面接した僕達が、本当にこのクランハウスへ入って良いのか分からなくて、取り敢えず皆で誰か来るのを待ってました」
「ごめんね。ガイルとメイちゃんはもう入ってると思うから、後から来るとしたら俺しか居なかったのかも」

 確かにケーキ屋さんで面接したのになんでこんなにデカいクランハウス持ってるんだって話だよな。

「ここにいる皆は取り敢えず中に入ってください。あ、あとこれはテーブルに置いといて。皆で食べてて良いから、あとこの飲み物とアイスも持って行って」
「はい」「分かりました」「入るです」……

 20人くらい居た幸福なる種族のメンバーが続々とクランハウスへ入っていく。

「ユーマさん、もう良いですか?」
「良いですよ。皆さんもクランに入れ直しましたし、会議中も配信をミュートにしてもらわないといけない時はあると思いますが、基本的には配信してて大丈夫です」
「了解っす」
「ユーマっちありがとう」

 アリスさん達にはクランを抜けてもらっていたため、今面接して入ってきた人の中だと、メイちゃんのお姉さんのサキさん以外誰もアリスさん達がこのクランに居たことを知らないはずだ。

「おお、メンバーが増えてるぞ!」
「よくこんなに増やしたね」
「ガイル様もメイ様もユーマ様もお疲れ様です」
「ガイルとメイちゃんが頑張ってくれたよ。俺はほぼ採用って言うだけだったし」

 俺はアリスさん達を連れてクランハウスへと入る。

「皆適当に席に座ってください。一旦これで幸福なる種族のクランメンバー全員かな?」
「後でうちらの配信友達が来るので、その子達の面接をお願いします」
「分かりました。取り敢えずクラン会議が終わるまでは面接出来ないので、終わったらアリスさんからまたその方に連絡してもらって良いですか?」
「はい!」

 今日入ったクランメンバーはアリスさん達の存在に驚いているが、意外と反応は薄い。

「俺はてっきり狂喜乱舞する人が何人か出てきてもおかしくないと思ってたけど」
「アリスはユーマのクランに入れて狂喜乱舞してたわよ」
「みーちゃん!」

 配信者をあまり知らない俺は、あんまりそこら辺の常識が分からないため、これが普通の反応なんだと思い直す。

「こんな感じならアリスさん達に抜けてもらう必要は無かったか?」
「ユーマ、それは違うぞ。俺とメイが止めなかったらもっとアリス達のファンはこのクランに入ってた」
「え、アリスさん達のファンが来たの?」
「アリスとユーマの繋がりから、ユーマの動画に映ってた俺とメイを見つけて、ユーマとアリスの関係を聞いてきた奴は何人か居たな」
「私も何人かそういう人が居たので、もしユーマさんやアリスさん、この幸福なる種族のクランメンバーに同じようなことを質問してきたら、次は通報しますと言っておきました」
「そんなことあったんだ。ガイルもメイちゃんもありがとう」

 皆を席に座らせておいて俺達が長々と話をしてるわけにもいかないため、俺はこの部屋で1番目立つ場所に向かい皆に話しかける。

「えーと、皆さんこんばんは。クランリーダーのユーマです。今日でクランメンバーが34名になったということで、取り敢えず幸福なる種族の始まりの日を今日としまして、今から幸福なる種族の第1回クラン会議を始めたいと思います」

 俺がそう言うと皆から拍手が起こる。

「じゃあ幸福なる種族の成り立ちというか、どうやって出来たのかの説明を今からしたいと思います」

 最初は俺とガイルとメイちゃんの3人から始まったクランだということを説明し、その後アリスさん達が入ったが、クランメンバーになるとアリスさん達がこのクランに居る事がバレるため、念の為アリスさん達には抜けてもらって皆を採用したという話もした。

「結局はガイルとメイちゃんが見つけてくる人は皆素晴らしい人ばかりで、入ってすぐにうちのクランメンバーを確認して、アリスさん達が居ないから抜ける、みたいな人は1人も居ませんでした」
「(それはユーマの方でも断ってただろ)」

 ガイルが言っているのはまだアキラさんがクランメンバーの時で、攻略パーティーを探してた時に連れてきたプレイヤーの話だろう。

「長々と皆さんには俺の話を聞いてもらいましたが、取り敢えず初期メンバーとして俺とガイルとメイちゃん、これだと少なすぎるのでアリスさん達も合わせた9人が、このクランの創設メンバー的な扱いになると思うので、分からないことがあったらこの中の誰かに聞いて下さい」

 急に創設メンバー扱いされたアリスさん達は驚いているが、これでアリスさん達の配信を見ている人にも、このクランが出来た流れは説明できたはずだ。

「じゃあまずは創設メンバー全員の自己紹介をした後、たぶん急に話すのは恥ずかしい人も居ると思うから、俺が名前を呼んだら職業と1言だけ皆に向けて話してもらおうかな。あと、アリスさん達は配信してるから、名前とかは隠されてると思うけど、皆が配信に映るのは許してね」

 一応全員このゲームをプレイする前に、顔が配信などに映ることには了承しているはずなので、そこまで神経質にならなくてもいいとは思うが、念には念を入れて確認しておく。
 ちなみに配信や動画で他の人の名前がデフォルトで表示されないようになっているのは、良くない名前の人がたまに居るかららしい。顔を隠さず名前を隠すのはプライバシーの問題ではないのだ。
 なんで動画や配信のAIはデフォルトで全員の名前を隠すんだと思っていたら、そういうことだと俺も最近理由を知った。

「じゃあまずは俺からで。俺はコネファンではテイマーをしているけど、前は最前線……」

 こうして幸福なる種族のクラン会議は、まだまだ続くのだった。


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