最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第133話

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 俺とペルタさんは今カジノ通りにあるお店に居て、軽食をとりながら色々な情報交換や雑談をしていた。

「どこのクランに入ってるんですか?」
「『怪物の足跡』っていう攻略とかはあんまり興味ない人達のクランに入ってるよ」
「へぇ、それは前から組んでいたパーティーの方とですか? 確かパーティーを組んでましたよね」
「そうそう、皆初心者だから先人達の後に続いて、頑張って進んで行こうっていう感じなんだよね」
「初心者だと最初のボスを倒すのとかたぶんしんどかったですよね。特に大鷲のボスとか」
「そう! もう全然倒せなくて困ってたんだけど、最前線攻略組っていう人達がボスの倒し方を説明してくれてる動画があって、それを見て勉強してから挑んだら、なんとか倒せたよ」

 こんなところに最前線攻略組の視聴者がいた。たぶん俺が最前線攻略組にいた頃も、こうやって初心者の人やボスで行き詰まった人達を助けてたんだなと思うと嬉しい。

「じゃあ皆で動画とか見ながら頑張って進んでる感じなんですね」
「クラン全体でも攻略動画を見て頑張ろうって感じかな。だから怪物の足跡っていう名前なんだって」
「あぁ、後に続いて行こう的な感じですか」
「そう。それでも倒すのが難しくて何回も挑戦することはあるけど、このゲームは本当に楽しいよ」
「そうですよね。あれ、でもそれならパーティーの人と一緒に行動しないんですか? お時間結構取っちゃいましたけど」
「あ、それなんだけど、なんと僕達のクランにクランハウスが出来てね! そこに飾るものとかを買いに来てたんだよ。探索も楽しいけどインテリアにこだわるのもいいね」
「なるほど、それであそこへ買い物に来てたんですね」

 頑張って皆でお金を集めて、クランハウスとしての家を買ったそうだけど、こういうのを見てると遊び方は人それぞれだなと思う。
 攻略クランじゃなくても皆でレベルを上げてボスに挑むのは楽しいんだろうなぁ。家を買うってことはクランメンバーも多いんだろうし、たぶんペルタさんのような人は俺の想像してる以上にいっぱい居るんだろう。

「そういえばユーマこそ何であそこに?」
「俺も家具をちょっと買いに来てたんですよ」
「自分のお家があるんだ」
「そうなんです。なので絶対に買うって決めてたものを頼んだあとは、その辺の商品を見てブラブラしてました」
「じゃあまた戻る?」
「いや、もう買うものは買ったので、このあとは帰ろうかなって思ってます」
「そっか、じゃあここでお別れかな」
「そうですね。色々聞けて良かったです」
「1番聞けて良かったのは名前かな」
「それは確かにそうですね」

 こうしてペルタさんはさっきの場所へ、俺はクリスタルへと歩いていくのだった。

「結構色んな話を聞けたなぁ」

 ペルタさんの話によると、テイマーはβテストの時ほど最弱職業だと言われるくらい最弱扱いではないが、戦闘職の中で比べたら全然強くないという位置だと聞いた。
 魔獣の強さはある程度保証されているため、テイマーは初心者にオススメの職業だと思われたが、仲間が増えたりゲームに慣れたりレベルが上がって進んでいくうちに、魔獣でパーティーメンバーの枠が減ってしまうのが辛いとかなんとか。

 結果としてテイマーは最序盤こそ初心者にオススメの職業だけど、時間とともに魔獣とプレイヤーの強さに差が出来てしまうため、このままだと満場一致で最弱に元通りらしい。

「ペルタさんも誰かから聞いただけって言ってたけど、言ってることは結構納得できるものばっかりだったんだよな」

 そもそもテイマーには家が必須で、もし家がなければ魔獣を入れ替えることが出来ない。
 よって自分の魔獣にしたいか悩むようなモンスターが現れた時、家がなければテイマーはなかなかテイムできない。
 なのでテイマーは家を買って、早く魔獣を入れ替えられる状況を整えないといけないのだ。

 しかし、それほどのお金を貯めることは個人だと難しいため、皆魔獣を増やすことに対して消極的になり、ほぼ最初の魔獣1体しか連れていない状態のテイマーでいっぱいらしい。

「もっと積極的にテイムしていけばいいのにって思うけど、俺も結構テイムするのは渋ってるしなぁ」

 やっぱりいくら入れ替えが出来るからって、1回仲間にしたならちゃんと面倒は見たい。他のテイマー達もそういう気持ちがあるんだろう。

「魔獣を増やさないとお金が稼げないけど、適当に増やしたら後々困るかもしれないってなったら増やせないよなぁ」

 そしてそんな中でもウサギマスターと呼ばれるテイマーの中でも有名な人が、角ウサギしか捕まえていないのに現状だと結構強いらしい。
 その人のおかげで、どんなモンスターでもある程度強くなるよという証明にもなって、少しずつ複数体の魔獣を連れているテイマーが増えているのだとか。

「俺もウサギマスターさんには会ってみたいな」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

 クリスタルの前でぼんやり考えていたが、時間を見るともう朝ごはんの時間に迫っていたので、急いで家へと帰る。

「ただいま」
「ユーマさんおかえりなさい」
「お、ハティはもうモニカさんとモルガには会った?」
「あ、ユーマおかえり」
「帰ったか。一応部屋は私達で片付けさせてもらった。家具も移動させたから、ユーマにはあっちの部屋を使ってもらうぞ」

 モニカさんとモルガが居ないと思ったら、俺の寝室だった部屋に2人が居た。

「え? 何でですか?」
「自分がモニカさんとモルガさんに事情を説明したら、部屋を移動してくれることになって」
「家主が部屋で寝ないのはおかしい」
「そうそう。寝る場所がないならちゃんとぼく達に言ってよ」

 そうは言うが、俺とハティが話していた時にはモニカさんもモルガもその場にいなかった。

「俺もそのままで良いとは思ってなかったよ。だからモニカさんとモルガには後で相談しようとは思ってたけど、まさか帰ってきたら家の中で引っ越しが行われてるとは思わなかったから」
「ユーマが元々使ってた寝室にはぼくとハティが、モニカはそのままの部屋で、ユーマはぼくに昨日貸してくれた部屋を使ってもらうことになったよ」
「それはもう決定?」
「私が勝手に決めたが、ユーマは不満か?」
「いや、不満はないですけど、モルガとハティの2人は良いのかなって。1人部屋の方が良くない?」
「自分は全く問題ないです」
「ぼくも大丈夫。ユーマの寝室広いし」
「むしろユーマがあの寝室を使えないのは良いのか?」
「まぁ俺は本当にどこでも良いですよ。俺が寝てる間ウル達がどこで休むのかなっていう不安はありましたけど、これだと全部解決できますから」

 でも、今考えるとハティとモルガには俺の家で寝泊まりできると言ったのに、2人で同じ部屋を使わせることになったのは申し訳ないな。

「ちなみにサイさんとしてはモルガとハティが一緒の部屋なのは大丈夫なんですか?」
「はい、問題ありません」
「そうですか。それなら、この部屋割りでお願いしても良い?」
「はい!」
「いいよ」
「私だけ何も変わらないが、全員が納得出来る結果になって良かった」

 ということで、今日は錬金部屋でログアウトして次の日は鍛冶部屋で寝てみようかな、なんていう俺の頭の中で考えていた計画は、1つも実行されることなく終わった。

「あ、部屋のことで忘れてたけど、ハティはもう皆に挨拶した?」
「はい! サイと一緒に挨拶しました」
「俺もサイさんも男性だけど、2人は大丈夫?」
「ハティの護衛として来ていると聞いた。何も問題はない」
「ぼくも大丈夫だよ。何よりユーマが許可を出したんでしょ?」
「まぁそうだね」
「なら大丈夫」
「そうだな」

 俺が許可を出したら大丈夫という理論は分からないが、皆が問題ないなら良かった。

「あと話さないといけないことってあるかな」
「畑やモンスター達の話はしたのか?」
「いや、ハティ達にはまだ家の中も全部は紹介してないですね」
「じゃあぼくが時間ある時に説明しておくよ」
「モルガさんよろしくお願いします」
「うんうん」
「じゃあモルガに任せようかな。あ、ゴーさんありがとう」
「ゴゴ」

 俺達が話してる間にゴーさんは食事をテーブルへ並べていく。

「ユーマさんおはようございます」
「お、キプロおはよう」
「少しだけご飯は食べてきたんですけど、家で待つのもソワソワしてしまって、早く来ちゃいました」
「そっか。まだ少し食べれるならゴーさんに出してもらうけどどうする?」
「じゃあ少しだけ食べてもいいですか?」
「オッケー、そういうことだからゴーさんよろしく」
「ゴゴ」

 一応これで今日の訓練はエマちゃんが来れば全員集まったことになる。

「み、皆さん、お、おはようございます」
「あぁ、おはよう。今日からようやく全員で訓練だな」
「おはよう。そうだね、昨日はぼくが魔法をユーマに撃っただけだったし」
「キプロさんおはようございます。訓練が終わった後パーティーの話を少ししてもいいですか?」
「は、はい!」
「それなら私からも後で2人に伝えたい話がある。まぁそれも訓練後にしよう」
「分かりました」
「りょ、了解しました」

 モニカさんの話っていうのは、前に2人をパーティーへ誘っていいか俺に聞いてきたやつかな。

「サイさんって普段あんまり話さないんですか?」
「そうですね。ハティお嬢様へ声をかけることはありますが、基本的には話しません。護衛ですから」
「そうですか」

 サイさんはほぼ話さないが、話しかければコミュニケーションを取ってくれる。本当にハティのための護衛って感じだ。

「じゃあ食べようか。この後はエマちゃんが来たら皆で訓練だからね」
「楽しみです!」
「僕も楽しみですけど、ちょっと不安もあります」
「最初から完璧な人は居ない。大丈夫だ」
「そうそう、ぼくが教えたらすぐ立派な冒険者になれるよ」

 ハティとキプロは食事中も色々モニカさんやモルガに冒険者のことを聞き、俺もその会話に入ろうと思ったのだが、久し振りにウル達から俺の手でご飯を食べさせてくれと近寄られたので、皆の会話に参加する暇もなく魔獣達の口元にご飯を持っていくのだった。


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