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第125話
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「ありがとうございました」
「いえ、俺の方こそありがとうございました」
冒険者ギルドの中でニボルさんと少し雑談をしたあと、俺はニボルさんと別れ冒険者ギルドを出ようとする。
「お、もう帰ってきたのか腰抜け」
「あぁ、さっきの冒険者」
「あぁ? お前に冒険者って言われたくねえなぁ。色んな奴にプレイヤー様って言われてんだから、そっちも冒険者様だろ?」
「いや、あなたに今腰抜けって呼ばれたと思いますけど」
「俺はお前が腰抜けって知ってるからな」
「じゃあ俺もあなたを冒険者と呼びますよ。そもそも腰抜けと呼ばれる事に了承した覚えはないですけどね」
「喧嘩売られて逃げるような奴に何も言う資格はねぇよ!」
さっきはニボルさんもいたし、俺が何か問題を起こすと迷惑をかけてしまうと思って何もしなかったが、今はもう何も気にすることはない。
「じゃあ買いますよ、その喧嘩」
「お、流石に腰抜けでもそれくらいのプライドは持ってたか」
「まぁ今はもう丸く収まるなら結構謝って済ませることが多くなりましたけどね」
「なんだその昔は喧嘩してましたみたいなダセェ口ぶりは」
「まぁ何でも良いんで、すぐ終わらせましょう。どんな感じで勝負するんですか? ……じゃんけんとか?」
「ハッハッハ!! お前じゃんけんで勝ち負け決める喧嘩をしてたのか! お前のそのギャグセンスだけは認めてやるぜ」
あぁ、どんどん気持ちよくなってるなこの冒険者は。
「真面目に言うと、ここでもし戦ったらテーブルとか壊しちゃいません? 取り敢えず外に出ないと」
「そんなもん負けた奴に払わせれば良いんだよ!」
そう言ってこの冒険者は殴りかかってきた。
態度と口は悪かったが、腰の剣を抜かないあたり最低限冒険者の喧嘩をする時のルールは心得ているらしい。
「あんまりその、弱いものいじめみたいなのは苦手なんで、とにかくすぐ終わらせますね」
「はっ?」
俺は冒険者の腕を取りそのまま地面へと叩きつける。
「あと冒険者ギルドの中のものを勝手に壊して良いっていうのは自分勝手すぎるかなって。喧嘩の敗者に払わせるのも、それこそダサいんでやめた方が良いですよ」
「っ、」
地面に叩きつけられ息が出来なくなっている冒険者を見て、俺の攻撃ってこの世界の人には街の中でも効くんだなぁ、なんて思っていた。
今考えると最前線攻略組が街の冒険者ボコボコにしてたって言ってたし当たり前だが。
俺は目の前で力が抜けている冒険者が復活する前に、冒険者の腕を背中側で拘束する。
「はい、ここから何かできるならどうぞ。出来ないなら降参してください。別にそっちは謝ったりしなくていいんで、もう俺に話しかけてこないなら何でも良いですよ」
「……こ、降参だっ」
さっきまでと違い随分小さい声での降参宣言だったが、俺はプライドを更に傷付けるような嫌がらせをする気も無いので、すぐに腕の拘束を解くとその場で立つ。
「俺も最初は全部の喧嘩を買って少しでも強くなろうと思ってたタイプだから、色んな状況で喧嘩はしてきたんですよね。だからあなたの言う、昔は喧嘩やってました、がダサいかどうかは置いといて事実なんですよ」
「……」
「そんな昔喧嘩してた人からのアドバイスとして、やるなら外でやる。喧嘩は基本素手。人数は相手と同数。勝負がついたらそれで終わり。と、これだけ守っとけば大きな問題にはならないと思うんで、頑張ってください」
「……」
「あ、あと無理に謝らせない。やっぱり冒険者ってプライドも大事ですから、じゃあこれで」
俺はそう言ってウル達を連れて冒険者ギルドの受付まで行く。
「一応何も壊さないようにしたと思うんですけど、もし壊れてたりしたら俺に請求をお願いします」
「ありがとうございます。こちらから見ていましたが、特に壊れたものは無さそうなので大丈夫ですよ」
「そうですか。じゃあお騒がせしました」
そう言って外へ出ようとするが、門番以外で一番最初にこのアウロサリバの街へ来た時に挨拶した、元祖アウロサリバでプレイヤーが嫌いそうな冒険者パーティーが居た。
「お、お前はあの時の」
「お前なんて言い方しないの! ごめんなさい、あたし達はプレイヤー様に危害を加えようなんて思ってないです!」
「いや、大丈夫大丈夫、俺も何とも思ってないから」
「くそっ、」
「そんな態度取らないの! あたし達にプレイヤー様が何かした?」
「……」
「じゃあ俺はこれで。気分悪くさせちゃってごめんね」
「いえ、謝らないでください! あたし達が全部悪いので!」
俺はそう言って冒険者ギルドから出るが、やってしまったという気持ちが強い。
「あぁ、こういうのは最前線攻略組に入ってから全部リキさんにやってもらってたのになぁ」
元々は対人戦を仕掛けられたら全て受けていたし、負けたら煽られ、勝ったら煽るのは当たり前だった。
俺は煽るよりも勝ったらお金をくれという条件でやっていたため、負けても金が取られるだけで酷い煽りをされることはなかったが。
「これ、俺も最前線攻略組みたいにプレイヤー嫌いのNPCに喧嘩仕掛けられまくる感じか?」
どうも冒険者に絡まれる条件として、その国へ一番最初に入った人達が標的にされているような気がする。
「もしこの予想が当たってたら、俺は王国と連合国の2カ国で絡まれるってことになるんだが」
流石にそれは避けたいし、そもそも俺はNPCと喧嘩するよりも仲良くしたい。
たぶん何かのイベントが俺の知らないところで進んでるんだろうけど、いちいち絡まれるなら王国じゃなくて帝国を進めていくことも考えないといけないな。
「ポドルに連絡するか」
せっかくフレンドになったし、ポドルならすぐ教えてくれる気がする。
「あ、もう返信きたな。なになに……」
最前線攻略組はネルメリアで止まっているから、どんなイベントが進んでいてどんな報酬が貰えるのかまだ分かっていないが、おそらく帝都に着いたら終わりだろう、と予想しているらしい。
「てことはここだと王都まで絡まれ続けるってことか?」
最前線攻略組は絡んできた人全員を倒してるらしいが、俺も倒すしかないのか?
「ん、なになに? あぁ、最前線攻略組は誰でもかかってこいって煽ったのか」
俺はそんなことしてないし、そういうことなら最前線攻略組より俺の方がマシだろう。
もしかしたら絡んできた冒険者を倒した分だけ良い報酬が貰えるみたいなこともあるかもしれないが、俺はそうだとしても喧嘩は遠慮したいと思う。
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
「俺の代わりに怒ってくれてありがとな」
何よりも俺には俺以上に怒ってくれる味方が近くにいるからこそ、冷静にならないといけない。
仮にの話だが、俺がもし万が一誰かに倒されたとして、そうなるとウル達が暴れてしまう可能性が非常に高い。俺はどうなっても良いが、これだけはなんとしても俺としては避けないといけないと思っている。
「よし、切り替えるか。そろそろインゴットに加工し終わっただろうし、鉱石取りに行こ」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」
ゴーさんに新しいゴーレムを作ってもらうためにも、忘れないように今取りに行きたい。
こうして俺達は冒険者ギルドの出来事を忘れてクリスタルから北の街へと移動し、職人ギルドでインゴットを受け取ってから家に帰るのだった。
「ただいま。ゴーさん居る?」
「ゴゴ」
「インゴット受け取ってきたからこれでゴーレムが作れると思う」
「ゴゴ!」
「でも、もし良かったら作るのを晩御飯のあとにしてもらっても良い? 俺もちょっと試したいことができて」
「ゴゴ」
「ありがとう」
ということでゴーレムを作るのは少しだけ待ってもらうことにした。
「来ちゃった」
「あ、ユーマさん」
「また急に来てどうした?」
「ちょっとこの本読んでみて」
「ん?」
「……何も起こらないかぁ。鍛冶師は採掘のスキルをもう持ってる判定なのかな」
「俺は今何をされたんだ」
「ちょっとスキルを習得できる本を読んでもらったんだけど、スキルレベル的なのが上がるような感じもしないよね」
「なんでいつも急にそういうのを試すんだよ」
「メイちゃんも一応これ読んでくれる?」
「はい」
メイちゃんには採取の心得本を読んでもらったが、こっちも残念ながら何も反応がなかった。
「ありがとう、これだけだから。じゃ」
「お、おい! ま……」
「あ、ユーマさん……」
俺はそう言って工房を出ると、玄関の扉を閉めた。
「ルリは魔法使ってみたいか?」
「アウアウ」
「いらないか。俺もウル達に教えるなら魔法を覚えた方が良いんだろうけど、今から覚えてもステータスが魔法寄りになると弱くなりそうだし、もうここまで来たら近接でいきたいんだよな」
本来テイマーなら魔獣の強化と遠距離武器か魔法で戦うのが一番いいんだろうけど、もう手遅れだよな。
「ならこの本はあげるか」
オリヴィアさんにチャットして、今居る場所を教えてもらう。
「おお、王国領前のボスを目指してるのか」
クリスタルから北の街に移動して、一応今からオリヴィアさんを追いかけてみるが、もしかしたら俺が着く頃にはボスに挑んでる可能性もある。
「間に合ってくれ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
ウル達にも走ってもらって、王国領前のボスの場所へアリスさん達が挑む前に何とか間に合った。
「ゆゆゆ、ユーマさん! なな、なんでこの場所に?」
「アリス動揺しすぎ。でも確かになんでユーマがここに?」
「わたくしがユーマ様に今居る場所を聞かれたのでお伝えしました」
「ユーマっちとオリっちがなんで?」
「それは俺からオリヴィアさんに連絡したから。はいこれ、魔法はまだ覚えてないって聞いたし、使ってください」
「あの、ユーマ様。こちら初級魔法習得本と書かれているのですが」
「俺の知り合いで魔法習得を急いでる人はオリヴィアさんしか知らないですから。まぁプレイヤーならちょっと時間かけて魔術師ギルドに通えば初級は覚えられますし」
「僕はユーマがそう言ってくれるなら、オリりんにその本を使って欲しいっす」
「あたいもそれでいいと思う」
「ですが、本当にわたくしがこのような貴重なものをいただいて良いのでしょうか」
こうやって話していると、ガイル達からチャットがくる。
「ちょっと待ってくださいね。今クランメンバーからチャット来てて」
「く、クランですか!!!」
「うぉっ」
「どこのクランにユーマさんは! 私も入りたい! 教えてください!」
「ちょっとアリス!」
こうしてアリスさんの暴走により、王国領のボス前にも関わらず、ボス戦の話どころではなくなってしまうのだった。
「いえ、俺の方こそありがとうございました」
冒険者ギルドの中でニボルさんと少し雑談をしたあと、俺はニボルさんと別れ冒険者ギルドを出ようとする。
「お、もう帰ってきたのか腰抜け」
「あぁ、さっきの冒険者」
「あぁ? お前に冒険者って言われたくねえなぁ。色んな奴にプレイヤー様って言われてんだから、そっちも冒険者様だろ?」
「いや、あなたに今腰抜けって呼ばれたと思いますけど」
「俺はお前が腰抜けって知ってるからな」
「じゃあ俺もあなたを冒険者と呼びますよ。そもそも腰抜けと呼ばれる事に了承した覚えはないですけどね」
「喧嘩売られて逃げるような奴に何も言う資格はねぇよ!」
さっきはニボルさんもいたし、俺が何か問題を起こすと迷惑をかけてしまうと思って何もしなかったが、今はもう何も気にすることはない。
「じゃあ買いますよ、その喧嘩」
「お、流石に腰抜けでもそれくらいのプライドは持ってたか」
「まぁ今はもう丸く収まるなら結構謝って済ませることが多くなりましたけどね」
「なんだその昔は喧嘩してましたみたいなダセェ口ぶりは」
「まぁ何でも良いんで、すぐ終わらせましょう。どんな感じで勝負するんですか? ……じゃんけんとか?」
「ハッハッハ!! お前じゃんけんで勝ち負け決める喧嘩をしてたのか! お前のそのギャグセンスだけは認めてやるぜ」
あぁ、どんどん気持ちよくなってるなこの冒険者は。
「真面目に言うと、ここでもし戦ったらテーブルとか壊しちゃいません? 取り敢えず外に出ないと」
「そんなもん負けた奴に払わせれば良いんだよ!」
そう言ってこの冒険者は殴りかかってきた。
態度と口は悪かったが、腰の剣を抜かないあたり最低限冒険者の喧嘩をする時のルールは心得ているらしい。
「あんまりその、弱いものいじめみたいなのは苦手なんで、とにかくすぐ終わらせますね」
「はっ?」
俺は冒険者の腕を取りそのまま地面へと叩きつける。
「あと冒険者ギルドの中のものを勝手に壊して良いっていうのは自分勝手すぎるかなって。喧嘩の敗者に払わせるのも、それこそダサいんでやめた方が良いですよ」
「っ、」
地面に叩きつけられ息が出来なくなっている冒険者を見て、俺の攻撃ってこの世界の人には街の中でも効くんだなぁ、なんて思っていた。
今考えると最前線攻略組が街の冒険者ボコボコにしてたって言ってたし当たり前だが。
俺は目の前で力が抜けている冒険者が復活する前に、冒険者の腕を背中側で拘束する。
「はい、ここから何かできるならどうぞ。出来ないなら降参してください。別にそっちは謝ったりしなくていいんで、もう俺に話しかけてこないなら何でも良いですよ」
「……こ、降参だっ」
さっきまでと違い随分小さい声での降参宣言だったが、俺はプライドを更に傷付けるような嫌がらせをする気も無いので、すぐに腕の拘束を解くとその場で立つ。
「俺も最初は全部の喧嘩を買って少しでも強くなろうと思ってたタイプだから、色んな状況で喧嘩はしてきたんですよね。だからあなたの言う、昔は喧嘩やってました、がダサいかどうかは置いといて事実なんですよ」
「……」
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「……」
「あ、あと無理に謝らせない。やっぱり冒険者ってプライドも大事ですから、じゃあこれで」
俺はそう言ってウル達を連れて冒険者ギルドの受付まで行く。
「一応何も壊さないようにしたと思うんですけど、もし壊れてたりしたら俺に請求をお願いします」
「ありがとうございます。こちらから見ていましたが、特に壊れたものは無さそうなので大丈夫ですよ」
「そうですか。じゃあお騒がせしました」
そう言って外へ出ようとするが、門番以外で一番最初にこのアウロサリバの街へ来た時に挨拶した、元祖アウロサリバでプレイヤーが嫌いそうな冒険者パーティーが居た。
「お、お前はあの時の」
「お前なんて言い方しないの! ごめんなさい、あたし達はプレイヤー様に危害を加えようなんて思ってないです!」
「いや、大丈夫大丈夫、俺も何とも思ってないから」
「くそっ、」
「そんな態度取らないの! あたし達にプレイヤー様が何かした?」
「……」
「じゃあ俺はこれで。気分悪くさせちゃってごめんね」
「いえ、謝らないでください! あたし達が全部悪いので!」
俺はそう言って冒険者ギルドから出るが、やってしまったという気持ちが強い。
「あぁ、こういうのは最前線攻略組に入ってから全部リキさんにやってもらってたのになぁ」
元々は対人戦を仕掛けられたら全て受けていたし、負けたら煽られ、勝ったら煽るのは当たり前だった。
俺は煽るよりも勝ったらお金をくれという条件でやっていたため、負けても金が取られるだけで酷い煽りをされることはなかったが。
「これ、俺も最前線攻略組みたいにプレイヤー嫌いのNPCに喧嘩仕掛けられまくる感じか?」
どうも冒険者に絡まれる条件として、その国へ一番最初に入った人達が標的にされているような気がする。
「もしこの予想が当たってたら、俺は王国と連合国の2カ国で絡まれるってことになるんだが」
流石にそれは避けたいし、そもそも俺はNPCと喧嘩するよりも仲良くしたい。
たぶん何かのイベントが俺の知らないところで進んでるんだろうけど、いちいち絡まれるなら王国じゃなくて帝国を進めていくことも考えないといけないな。
「ポドルに連絡するか」
せっかくフレンドになったし、ポドルならすぐ教えてくれる気がする。
「あ、もう返信きたな。なになに……」
最前線攻略組はネルメリアで止まっているから、どんなイベントが進んでいてどんな報酬が貰えるのかまだ分かっていないが、おそらく帝都に着いたら終わりだろう、と予想しているらしい。
「てことはここだと王都まで絡まれ続けるってことか?」
最前線攻略組は絡んできた人全員を倒してるらしいが、俺も倒すしかないのか?
「ん、なになに? あぁ、最前線攻略組は誰でもかかってこいって煽ったのか」
俺はそんなことしてないし、そういうことなら最前線攻略組より俺の方がマシだろう。
もしかしたら絡んできた冒険者を倒した分だけ良い報酬が貰えるみたいなこともあるかもしれないが、俺はそうだとしても喧嘩は遠慮したいと思う。
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
「俺の代わりに怒ってくれてありがとな」
何よりも俺には俺以上に怒ってくれる味方が近くにいるからこそ、冷静にならないといけない。
仮にの話だが、俺がもし万が一誰かに倒されたとして、そうなるとウル達が暴れてしまう可能性が非常に高い。俺はどうなっても良いが、これだけはなんとしても俺としては避けないといけないと思っている。
「よし、切り替えるか。そろそろインゴットに加工し終わっただろうし、鉱石取りに行こ」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」
ゴーさんに新しいゴーレムを作ってもらうためにも、忘れないように今取りに行きたい。
こうして俺達は冒険者ギルドの出来事を忘れてクリスタルから北の街へと移動し、職人ギルドでインゴットを受け取ってから家に帰るのだった。
「ただいま。ゴーさん居る?」
「ゴゴ」
「インゴット受け取ってきたからこれでゴーレムが作れると思う」
「ゴゴ!」
「でも、もし良かったら作るのを晩御飯のあとにしてもらっても良い? 俺もちょっと試したいことができて」
「ゴゴ」
「ありがとう」
ということでゴーレムを作るのは少しだけ待ってもらうことにした。
「来ちゃった」
「あ、ユーマさん」
「また急に来てどうした?」
「ちょっとこの本読んでみて」
「ん?」
「……何も起こらないかぁ。鍛冶師は採掘のスキルをもう持ってる判定なのかな」
「俺は今何をされたんだ」
「ちょっとスキルを習得できる本を読んでもらったんだけど、スキルレベル的なのが上がるような感じもしないよね」
「なんでいつも急にそういうのを試すんだよ」
「メイちゃんも一応これ読んでくれる?」
「はい」
メイちゃんには採取の心得本を読んでもらったが、こっちも残念ながら何も反応がなかった。
「ありがとう、これだけだから。じゃ」
「お、おい! ま……」
「あ、ユーマさん……」
俺はそう言って工房を出ると、玄関の扉を閉めた。
「ルリは魔法使ってみたいか?」
「アウアウ」
「いらないか。俺もウル達に教えるなら魔法を覚えた方が良いんだろうけど、今から覚えてもステータスが魔法寄りになると弱くなりそうだし、もうここまで来たら近接でいきたいんだよな」
本来テイマーなら魔獣の強化と遠距離武器か魔法で戦うのが一番いいんだろうけど、もう手遅れだよな。
「ならこの本はあげるか」
オリヴィアさんにチャットして、今居る場所を教えてもらう。
「おお、王国領前のボスを目指してるのか」
クリスタルから北の街に移動して、一応今からオリヴィアさんを追いかけてみるが、もしかしたら俺が着く頃にはボスに挑んでる可能性もある。
「間に合ってくれ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
ウル達にも走ってもらって、王国領前のボスの場所へアリスさん達が挑む前に何とか間に合った。
「ゆゆゆ、ユーマさん! なな、なんでこの場所に?」
「アリス動揺しすぎ。でも確かになんでユーマがここに?」
「わたくしがユーマ様に今居る場所を聞かれたのでお伝えしました」
「ユーマっちとオリっちがなんで?」
「それは俺からオリヴィアさんに連絡したから。はいこれ、魔法はまだ覚えてないって聞いたし、使ってください」
「あの、ユーマ様。こちら初級魔法習得本と書かれているのですが」
「俺の知り合いで魔法習得を急いでる人はオリヴィアさんしか知らないですから。まぁプレイヤーならちょっと時間かけて魔術師ギルドに通えば初級は覚えられますし」
「僕はユーマがそう言ってくれるなら、オリりんにその本を使って欲しいっす」
「あたいもそれでいいと思う」
「ですが、本当にわたくしがこのような貴重なものをいただいて良いのでしょうか」
こうやって話していると、ガイル達からチャットがくる。
「ちょっと待ってくださいね。今クランメンバーからチャット来てて」
「く、クランですか!!!」
「うぉっ」
「どこのクランにユーマさんは! 私も入りたい! 教えてください!」
「ちょっとアリス!」
こうしてアリスさんの暴走により、王国領のボス前にも関わらず、ボス戦の話どころではなくなってしまうのだった。
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