最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第119話

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「まだモルガは帰ってきてないか」

 家に帰ってきた俺は、ゴーさんに少しだけ話をする。

「ゴーさんこれ持ってて」
「ゴゴ」
「あと原石削ってくれてありがとう」
「ゴゴ」
「興味無かったらしなくてもいいんだけど、魔玉とゴーレムの核が余ってるし、ゴーさんが新しいゴーレム作ってみない?」
「ゴゴ!」

 ゴーさんに角笛や魔法の果物籠など、俺が持ってるよりもゴーさんの方がまだ使ってくれそうなアイテムは渡した。
 そしてずっとやろうと思って出来ていなかったゴーレム作りも、この際ゴーさんに任せてみようと思って話してみたが、やっぱりやりたいと言ってきた。

「ゴーさんの思う必要なゴーレムを作っていいからね」
「ゴゴ!」
「え、今からやる?」
「ゴゴゴ!」

 今度やってもらおうと思ってたんだけど、俺がゴーさんの心に火をつけてしまった以上、ここは協力するしかない。

「あ、掘ってきた鉱石まだインゴットにしてないや」
「ゴ、ゴ」
「ごめん、また今度で良い?」
「ゴゴ」

 インゴットがないなら無理だと諦めてくれたが、ゴーさんには申し訳ないことをした。

「ただいまー」
「モルガおかえり。さっきもう1人の生徒に話をしてきたら、朝練もキプロとパーティーを組むのもやりたいって言ってたから、モルガにはキプロとハティの2人を教えてもらうことになったよ」
「オッケー、ぼくに任せてよ」
「俺も教えるけどハティは貴族だし、もしかしたら魔法を覚えてる可能性もある。その時はモルガに全部任せるね」
「じゃあ剣術とかはユーマに任せる」
「意外と教えるバランスは良いかもな」
「ただいま」
「あ、モニカさんが帰ってきた」

 そう言うとモルガは急に大人しくなり、固まって動けなくなっている。

「おかえりモニカさん」
「あぁ、エマは何と言ってた?」
「エマちゃんは俺がモニカさんの代わりに訓練したんで、大丈夫でしたよ」
「そうか、助かった」
「はい。あの、俺からもモニカさんに話したいことがありまして」
「なんだ?」
「モルガっていう魔術師の友達をこの家に住まわせたくて」
「私はユーマが良いなら全く問題はない」
「だってモルガ、良かったね」
「ここに居るのか?」
「リビングに居ます。行きましょうか」

 俺とモニカさんは玄関とリビングの間の廊下で立ち止まって話していたため、モニカさんはモルガの存在にまだ気付いていなかった。

「ぼくはも、モルガだ! あの、一緒に住むことを許してくれて、感謝する!」
「なんかモニカさんに話し方引っ張られてるな」
「私はユーマに助けられた身だ。モルガももしかしてユーマに助けてもらったのか?」
「いや、モニカさんの時ほどでは無いですよ」
「ぼくは村を出てこの街に来たんだけど、1人だと不安でユーマにお願いしたんだ。モニカがここに住んでるって話を聞いてぼくもそれなら住まわせてくれるかなって」
「ユーマが認めているなら、私は新しい同居人が出来て嬉しいぞ。今日はモルガのお祝いをしなきゃな」
「う、うん! モニカは良い人だ!」

 なんやかんや相性が良さそうな2人は、そのまま2人で座って話し始めた。

「ゴーさん、そういうことで今日はお祝いだから、ちょっと豪華なご飯にしてもらって良い?」
「ゴゴ」

 こうしてモニカさんとモルガが楽しそうにしている中、ゴーさんは料理をし、俺はウル達と戯れ時間を潰すのだった。

「おいしそう、いただきまーす!」
「うむ、いつも通りゴーさんのご飯は美味しいぞ」
「ゴーさん、本当に美味しいんだけど、お願いだから今は仕事をしようとしないで」
「ゴゴ」

 ゴーさんはたぶん今やらないといけないことは無いんだろうけど、またどこかへ仕事を求めて探しに行きそうだったので、せめて食事中はここに居てもらいたくて呼び止めてしまった。

「あ、モニカさん。明日以降朝の訓練にキプロともう1人ハティっていう冒険者を目指してる子が来るかもしれないんで、一緒に訓練しても良いですか?」
「私はいいぞ。エマも人が増えたほうが楽しいだろうしな」
「まぁこっちの2人は来る日と来ない日があると思うんで、来ない日は俺とモルガもエマちゃんの訓練を見させてもらいます」
「そういえばモルガというと、あの魔術師モルガか?」

 やっぱりモルガは有名だ。

「モルガって一体何したの?」
「ぼくはただ冒険者を頑張っただけだよ」
「モルガと組めばどんなモンスターも倒せると言う噂は聞いたことがある」
「ぼく以外に強い魔法使いがあまり居なかったからね。居たとしても固定のパーティーを組んでる人ばっかりだったし、実力以上に有名になったという自覚は少しだけあるよ」
「いや、それでもモルガの実力は本物だろう。臨時パーティーで実力を出せる魔法使いは本物だ」

 確かに固定パーティーで慣れてるメンバーだったら実力を出しやすいだろうけど、臨時パーティーでずっと実力を出すって、魔法使いとかだと剣士より更に難しいだろうし。
 それに魔法を教えるのも上手いと来たら、モルガをパーティーに入れとけば基本間違いない。

「なんか照れるなぁ」
「本当のことだ」
「あ、そうだ。モニカさんにもダイヤモンドの指輪を渡してるし、モルガもこれ似合いそうだからあげるよ」

 そう言ってルビーのイヤリングをモルガに渡す。

「これをぼくがもらってもいいの?」
「これは入居祝い? 引っ越し祝い? 同居祝い? なんてあるのか分からないけど、モルガがここに住むお祝いだから、受け取ってよ」
「ユーマが掘った宝石らしいぞ」
「だからあんまりお金がかかってないんだよね」
「それでもぼくはこのイヤリングをもらえて嬉しいよ。ありがとう」
「それならよかった」

 こうしてモルガにプレゼントを渡せたし、たぶんモニカさんは今日の朝睡眠が足りてなかっただろうからこのあとすぐ寝ると思うし、モルガもちょっと疲れてるような顔をしてるからこの辺で食事も終わりかな。

「じゃあ俺はこのあとまた外に出るから、2人はぐっすり寝てね」
「そうだな、風呂に入って私は寝るよ」
「じゃあぼくもそうする」
「なら2人で入るか。ここの露天風呂は気持ち良いんだ」
「それは楽しみだね」

 モニカさんとモルガの仲が良さそうで安心したが、俺はそんなことよりも今の会話を聞いて露天風呂の確認に行ったゴーさんが目に入った。

「いつもありがとう、ゴーさん」

 なんだかゴーさんに最近目がいってしまうが、ゴーさんを目で追わないように早く直さないと、俺は罪悪感でどうにかなってしまう。

「よし、じゃあシロも新しく仲間になったことだし、カジノに行くか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 俺はクランのためにもお金を稼ぐ必要がある。そして最近は行ってなかったし、シロの実力も見てみたい。

 俺はクリスタルから西の街へ移動し、いつものカジノへと向かう。

「あれ、もしかして前居た人じゃない?」
「魔獣達を連れてるから間違いない」
「あの人がまたこのカジノに来たのか!」

 なんだか周りが騒がしくなり、俺達が注目されているのは分かる。

「よし、今回は1人10万チップからで」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

 これで一応今は45万Gのマイナスだ。

「本当ならお金に戻す時に10分の1になるカジノなんてイベント以外でやらないんだけど」

 ウル達も久し振りだから楽しそうだ。

「あぁ、勝つよね」
「クゥ!」「アウ!」
「また勝つか」
「……!」「コン!」
「で、俺も勝つよな」

 チップがどんどん増えていく。

「伝説のカジノプレイヤー、いや、カジノブレイカーが帰ってきたぞ!」
「いけーー!」
「魔獣達も頑張れー!」
「俺が負けた分勝ってくれ~!!」

 いつからカジノは他のお客さんから応援されるような団体戦になったのだろうか。

「やり辛いですよね」
「い、いえ」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン!」

 ディーラーをしてくれているカジノのスタッフさんも、こんな大勢の前でやらされるとは思ってなかっただろうに。

「よし、そろそろあっちに移動しよう」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 今までは低レートだったが、ここからは高レートへと移動する。

「皆の持ちチップを見てみると、大体平均で700万くらいか」

 もう既にお金に直すと300万くらいの黒字ではあるが、今日は朝までずっと時間があるし、もしかしたらとんでもない額を稼ぐことができるかもしれない。

「あれ、負けちゃったな」
「クゥ」「アウ」「……」「コン」

「また負けた」
「クゥ」「アウ」「……」「コン」

「なんか急に負けだした、かも?」
「クゥ」「アウ」「……」「コン」

 皆ほぼ負け無しだったのが、3回に2回か1回負けるくらいの確率になってきた。

「他のにするか」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

 すると先ほどまで俺達が勝負していたディーラーの人がついてくる。

「うん、こっちはまぁぼちぼち勝てるけど、また他のに行くか」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

 そしてまた俺達は移動するが、ずっと同じディーラーがついてきて、そのゲームを始めようとするとディーラーがその人と交代される。

「まぁディーラーは誰がやっても同じなんだけど、ゲームだとスキルとかあるし、もしかしたらとんでもない運がある人の可能性もあるからなぁ」

 結局俺達専属のディーラーみたいな人がついて回るため、一度低レートに帰ってその人がついてこないことを確認してから、低レートのディーラーと勝負してみる。

「勝てるな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 これはもうあの人がすごい運を持っているのだろう。俺達とあの人との運の戦いかもしれない。

「低レートでちょっとずつ稼いでも良いけど、あの人に勝ちたいよな?」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 こうして俺達はまたあの豪運ディーラーの待つ高レートの台へと戻るのだった。


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