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第117話
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「あの、娘さんの話をしても良いですか?」
「……あぁ、どうしたんだい?」
「俺、もしかしたらですけど、娘さんが以前持っていた同じものを持っているかもしれなくて」
「同じもの?」
「この石なんですけど」
そう言って緑色に輝く熱想石を見せる。
「ああ! 確かに娘が綺麗な石を拾ったと言って大事にしていたよ。まさしくこれだ!」
おじさんはこの石を手に取り、懐かしそうに見つめる。
「この石は熱想石というらしいです。知ってますか?」
「災いと幸福を呼ぶって話だね。詳しくは知らないが、少しは聞いたことあるよ。これがあの……」
「たぶんこの石が、娘さんを襲ったモンスターを生み出したんだと思います」
「……」
「たぶんもう娘さんが帰ってこないことには気づいてると思いますけど、なんでなのかっていうのは分かっていないと思ったので」
「……」
おじさんはじっと熱想石を真剣な表情で見つめていたが、何か自分の中で納得したのか表情が柔らかくなる。
「娘がもう帰ってこないことくらい分かっていたさ。でもなかなか受け止めきれなくてね、あぁ、村の皆に迷惑をかけてしまった」
「ここからは俺の勝手な妄想の話です。聞かなくても良いですが、俺は話したいと思ってます。話しても良いですか?」
「あぁ、お願いしてもいいかい?」
一呼吸入れ、俺は熱想石の話をする。
「これは最近熱想石に詳しい人から聞いた話なんですけど、熱想石によって強いモンスターに襲われ逃げ帰った冒険者と、珍しいモンスターを見つけて狩ることが出来た冒険者の話を聞きました。たぶんどちらも本当の話で、今回は娘さんがその石によって生み出された強いモンスターに襲われてしまったんだと思います。ただそれは熱想石の力であって、神様のせいではないはずです。俺は前にこの村へ来た時、奥にあった大きなお墓まで行って、なんとなくお供え物もしたんです。そしたらすぐにお供え物がなくなって、相当お腹が空いてたのか、お供え物が嬉しかったのか、たぶん娘さんは神様にとってなくてはならない存在だったのだと思います。なので、神様に嫌われたとか、そういうことではないということだけ、伝えておこうと思って。長々と話して上手くまとめられなかったんですけど、俺から伝えたかったことは以上です」
もしかしたらこういった事が起こると、神様を恨んで更に不幸になったりするような展開もあり得る。
俺はそういったことが起こらないように、このことだけは伝えておきたかった。
「そうか、娘は神様に嫌われたわけではないんだね」
「それは絶対にないと思います。俺の勝手な妄想ですけど」
「良かった。それだけでも、本当に良かった」
「なので、もう神様を信じている人がこの村には少ないって言ってましたけど、どうかこれからもお供え物は続けてほしいと俺は思います」
「そうだね。もう久しくあの場所には行ってなかったが、ここで娘を待つ意味もなくなった。他の若い者に誰も居ないなら、やるしかないねぇ」
もしかしたら娘さんの話をして怒られたりするかもと思っていたけどそんなことはなく、むしろおじさんが冷静に見えたのはもう頭の中で娘さんが帰ってこないことを受け入れる準備が出来ていたからかもしれない。
「ありがとう、この石を返すよ」
「あの、良ければその石は差し上げますよ。要らないのであれば受け取りますけど」
「良いのかい? 珍しいものだというのは聞いているが」
「大丈夫です。ただ、もう外へは持ち運ばないようにしてくださいね」
「ありがとう。この石には思うところもあるが、娘が嬉しそうに持って帰ってきた時の事を思い出させてくれるんだ」
そう話すおじさんは今までで1番嬉しそうだった。
「あ、そうだ。焼き芋はいっぱい焼いたから持っていって! 明日からはもう焼き芋はたまにしか焼かなくなるから」
「ぼくもいっぱい欲しい!」
「あぁ、ちょっと待っててね。いっぱい焼くから」
モルガがおじさんに焼き芋を頼み、おじさんも嬉しそうに作っているが、たぶんこれまではモルガを娘と重ねていた部分もあったのだろう。
「ぼくも今日が最後だから、いっぱい食べないと」
「え、最後?」
「言ってたでしょ? 冒険者をまた始めよっかなって」
「あぁ、確かにそんな感じの話は聞いたけど」
「あ、そうだ! 最初は北の街に行くから、このあと一緒に行こうよ!」
急な話だが、特に問題はないか。
「分かった、最初は俺の家を紹介しようかな」
「おお、あの噂のアイスが作られてる場所だね。あの美味しさにはどんな秘密があるんだろ」
「焼き芋出来たよ。これは焼く前のさつまいもね」
「こんなにありがとうございます」
「こっちは種芋だから、もし良かったら育ててみて」
「ユーマが育ててくれたら向こうでも焼き芋食べれるね」
「まぁ美味しくなるように頑張ってはみるけど(たぶんゴーさんが)」
俺の商品を買いに来た人達もおじさんの作った焼き芋を食べながら、皆で同じ空間に集まってお喋りをする楽しい時間が流れる。
そしてモルガのお別れ会のようなものも行われ、あっという間に時間は過ぎていくのだった。
「じゃあ皆今まででありがとう」
「元気でね」
「どうかモルガのことよろしくお願いします」
「いや、え、俺?」
「ぼくは1人でも大丈夫だって!」
「いつでも帰ってきていいからね」
「楽しんでおいで」
モルガと一緒に俺も村の皆に見送られ、なぜか俺が保護者みたいになっていた。
「皆元気でねーー!!」
見えなくなるまでお互いに手を振り続け、あれだけ騒がしかったのが2人になると急に静かに感じる。
「ユーマってアイスを作るの以外に何してるの?」
「農業でって意味なら色んなの作ってるな。フルーツに野菜に、卵に、色々だ」
「確かに前聞いたかも。でもそれを全部1人で?」
「いや、ほぼ人任せというか、ゴーレム任せかな」
「ユーマ凄いんだね」
「まぁ家のメンバーが凄いだけかな。お隣さんのモンスター大好きな使用人さんは、ずっとうちのモンスターのお世話してくれてるし。色んな人に支えてもらってるから」
そんな話をしながらアウロサリバに向けて歩いていくが、モルガが戦う出番もなく街に着いた。
「せっかくぼくの強さを見せる機会だったのに、全然出番がなかった!」
「いや、俺も戦ってないから」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
ウル達の活躍により、楽に街まで来れたことを俺は感謝したい。
「じゃあ先に行ってて」
「また後でね」
俺は冒険者ギルドで討伐依頼と納品依頼の達成報告をし、一応商人ギルドで全ての商品を売り切ったことだけ伝えて北の街へ帰る。
「あ、ユーマ」
「早いな。やっぱりワイバーン交通?」
「そうだよ。短い距離ならこれが1番だから。ちょっと高いけど」
「じゃあ家を案内するよ」
「やった! 楽しみだなぁ」
モルガは北の街に興味津々というような感じだが、別にそこまでのリアクションをする程村に籠もっていたわけではないだろうに。
「ここが俺の家」
「お、大きいね」
「モルガならもっと大きい家に住めるでしょ」
「ぼくの村の家見た? 住めるのと住んでるのは全然違うよ」
興奮しているモルガを落ち着かせ、家の中へと案内する。
「一応立ち入り許可出しとくか」
「ありがとう!」
「あ、その部屋は入らないでくれ」
「モニカ?」
「元騎士で貴族のモニカさんがその部屋に住んでるから」
「プレイヤー様の部屋じゃないの?」
「えっとな、そうだそうだ、玄関のすぐ近くの部屋に写真あるから、それ見たらプレイヤーかどうか分かるでしょ?」
「見てくる!」
玄関まで走っていったモルガのために、ゴーさんに何か作ってもらうことにする。
「ゴーさん、さっき焼き芋を食べたからそこまでお腹は空いてないと思うんだけど、何か飲み物だったり軽いおやつをお願いしても良い?」
「ゴゴ」
「あとこれ、この前言ってた焼き芋とさつまいもに、種芋も貰ったから、これは俺が植えるよりゴーさんに任せたほ「ゴゴ!」分かった、任せるね。一応あっちの畑じゃなくてこっちの畑で育てて欲しい」
「ゴゴ」
「あ、あと万能空き瓶に川の水を少し汲んできたんだけど、これがさつまいもの美味しさの秘密だって」
「ゴゴゴ!!」
「研究するなりなんなり好きに使って良いよ」
「ゴゴ!」
ゴーさんの仕事が増えて申し訳なくなるが、今回はそれ以上に嬉しそうなゴーさんを見ることが出来て良かった。
たぶんゴーさんの仕事を増やしただけじゃなくて、ちゃんと俺もゴーさんの役に立ったという実感があるからだろう。
「モニカは美人だった。あと、背も高そうだったし、ぼくよりも大人な雰囲気があった」
「いや、プレイヤーかどうか確認してくれればそれで良かったんだけどね。ゴーさんが軽い食べものを作ってくれてるから、ちょっと家の中を紹介とかしようか?」
「見たい!」
ということでモルガにこの家の中の全ての部屋を紹介したところでゴーさんに呼ばれた。
「美味しい! このグラープジュースは最高だね!」
「良かった」
「ゴゴ」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」
ウル達もモルガもいっぱい村で食べてたはずなのに、まだまだお腹に余裕はあるらしい。
「ユーマ」
「どうしたの?」
「ユーマは空き部屋を何かに使う予定はあるの?」
「今のところないな。玄関近くの部屋に写真を飾ってるけど、あそこも空き部屋みたいなもんだし、今見えてるリビング横の部屋もあと1つ余ってるし、使い道は今のところないかな」
「……部屋を貸し出してたりはする?」
「貸し出し? 別に貸せるけど何か使う?」
「ぼくが住むっていうのは、その、許されるのかな、なんて?」
「あぁ、そういうこと? 全然モルガが住みたいなら使ってくれて良いよ。モニカさんも女性だし、帰ってきたら確認はしてみるけど、俺が良いって言ったならたぶんモニカさんも良いよって言うと思う」
「ほ、本当か?」
「本当本当、住むなら玄関の方じゃなくてそこの部屋使ってね」
「分かった!」
途中からずっとテンションが高かったり真剣な表情をしたりと不安定だったが、この家に住みたかったと聞いて納得した。
モニカさんもそうだったけど、モルガも1人で新しい場所に住むのはちょっと不安だよな。
「モニカさんにもチャット出来たら良いんだけど、まぁ夜まではモルガにドキドキしてもらうか」
おそらくモニカさんならモルガが家に住む許可をくれると思うが、モルガはモニカさんに会ったことないのでそんなことわかるはずもなく、たぶんまた少し時間が経てばソワソワし出すのだろうと思いながら、俺はゴーさんが作ってくれたジュースをちびちびと飲むのだった。
「……あぁ、どうしたんだい?」
「俺、もしかしたらですけど、娘さんが以前持っていた同じものを持っているかもしれなくて」
「同じもの?」
「この石なんですけど」
そう言って緑色に輝く熱想石を見せる。
「ああ! 確かに娘が綺麗な石を拾ったと言って大事にしていたよ。まさしくこれだ!」
おじさんはこの石を手に取り、懐かしそうに見つめる。
「この石は熱想石というらしいです。知ってますか?」
「災いと幸福を呼ぶって話だね。詳しくは知らないが、少しは聞いたことあるよ。これがあの……」
「たぶんこの石が、娘さんを襲ったモンスターを生み出したんだと思います」
「……」
「たぶんもう娘さんが帰ってこないことには気づいてると思いますけど、なんでなのかっていうのは分かっていないと思ったので」
「……」
おじさんはじっと熱想石を真剣な表情で見つめていたが、何か自分の中で納得したのか表情が柔らかくなる。
「娘がもう帰ってこないことくらい分かっていたさ。でもなかなか受け止めきれなくてね、あぁ、村の皆に迷惑をかけてしまった」
「ここからは俺の勝手な妄想の話です。聞かなくても良いですが、俺は話したいと思ってます。話しても良いですか?」
「あぁ、お願いしてもいいかい?」
一呼吸入れ、俺は熱想石の話をする。
「これは最近熱想石に詳しい人から聞いた話なんですけど、熱想石によって強いモンスターに襲われ逃げ帰った冒険者と、珍しいモンスターを見つけて狩ることが出来た冒険者の話を聞きました。たぶんどちらも本当の話で、今回は娘さんがその石によって生み出された強いモンスターに襲われてしまったんだと思います。ただそれは熱想石の力であって、神様のせいではないはずです。俺は前にこの村へ来た時、奥にあった大きなお墓まで行って、なんとなくお供え物もしたんです。そしたらすぐにお供え物がなくなって、相当お腹が空いてたのか、お供え物が嬉しかったのか、たぶん娘さんは神様にとってなくてはならない存在だったのだと思います。なので、神様に嫌われたとか、そういうことではないということだけ、伝えておこうと思って。長々と話して上手くまとめられなかったんですけど、俺から伝えたかったことは以上です」
もしかしたらこういった事が起こると、神様を恨んで更に不幸になったりするような展開もあり得る。
俺はそういったことが起こらないように、このことだけは伝えておきたかった。
「そうか、娘は神様に嫌われたわけではないんだね」
「それは絶対にないと思います。俺の勝手な妄想ですけど」
「良かった。それだけでも、本当に良かった」
「なので、もう神様を信じている人がこの村には少ないって言ってましたけど、どうかこれからもお供え物は続けてほしいと俺は思います」
「そうだね。もう久しくあの場所には行ってなかったが、ここで娘を待つ意味もなくなった。他の若い者に誰も居ないなら、やるしかないねぇ」
もしかしたら娘さんの話をして怒られたりするかもと思っていたけどそんなことはなく、むしろおじさんが冷静に見えたのはもう頭の中で娘さんが帰ってこないことを受け入れる準備が出来ていたからかもしれない。
「ありがとう、この石を返すよ」
「あの、良ければその石は差し上げますよ。要らないのであれば受け取りますけど」
「良いのかい? 珍しいものだというのは聞いているが」
「大丈夫です。ただ、もう外へは持ち運ばないようにしてくださいね」
「ありがとう。この石には思うところもあるが、娘が嬉しそうに持って帰ってきた時の事を思い出させてくれるんだ」
そう話すおじさんは今までで1番嬉しそうだった。
「あ、そうだ。焼き芋はいっぱい焼いたから持っていって! 明日からはもう焼き芋はたまにしか焼かなくなるから」
「ぼくもいっぱい欲しい!」
「あぁ、ちょっと待っててね。いっぱい焼くから」
モルガがおじさんに焼き芋を頼み、おじさんも嬉しそうに作っているが、たぶんこれまではモルガを娘と重ねていた部分もあったのだろう。
「ぼくも今日が最後だから、いっぱい食べないと」
「え、最後?」
「言ってたでしょ? 冒険者をまた始めよっかなって」
「あぁ、確かにそんな感じの話は聞いたけど」
「あ、そうだ! 最初は北の街に行くから、このあと一緒に行こうよ!」
急な話だが、特に問題はないか。
「分かった、最初は俺の家を紹介しようかな」
「おお、あの噂のアイスが作られてる場所だね。あの美味しさにはどんな秘密があるんだろ」
「焼き芋出来たよ。これは焼く前のさつまいもね」
「こんなにありがとうございます」
「こっちは種芋だから、もし良かったら育ててみて」
「ユーマが育ててくれたら向こうでも焼き芋食べれるね」
「まぁ美味しくなるように頑張ってはみるけど(たぶんゴーさんが)」
俺の商品を買いに来た人達もおじさんの作った焼き芋を食べながら、皆で同じ空間に集まってお喋りをする楽しい時間が流れる。
そしてモルガのお別れ会のようなものも行われ、あっという間に時間は過ぎていくのだった。
「じゃあ皆今まででありがとう」
「元気でね」
「どうかモルガのことよろしくお願いします」
「いや、え、俺?」
「ぼくは1人でも大丈夫だって!」
「いつでも帰ってきていいからね」
「楽しんでおいで」
モルガと一緒に俺も村の皆に見送られ、なぜか俺が保護者みたいになっていた。
「皆元気でねーー!!」
見えなくなるまでお互いに手を振り続け、あれだけ騒がしかったのが2人になると急に静かに感じる。
「ユーマってアイスを作るの以外に何してるの?」
「農業でって意味なら色んなの作ってるな。フルーツに野菜に、卵に、色々だ」
「確かに前聞いたかも。でもそれを全部1人で?」
「いや、ほぼ人任せというか、ゴーレム任せかな」
「ユーマ凄いんだね」
「まぁ家のメンバーが凄いだけかな。お隣さんのモンスター大好きな使用人さんは、ずっとうちのモンスターのお世話してくれてるし。色んな人に支えてもらってるから」
そんな話をしながらアウロサリバに向けて歩いていくが、モルガが戦う出番もなく街に着いた。
「せっかくぼくの強さを見せる機会だったのに、全然出番がなかった!」
「いや、俺も戦ってないから」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
ウル達の活躍により、楽に街まで来れたことを俺は感謝したい。
「じゃあ先に行ってて」
「また後でね」
俺は冒険者ギルドで討伐依頼と納品依頼の達成報告をし、一応商人ギルドで全ての商品を売り切ったことだけ伝えて北の街へ帰る。
「あ、ユーマ」
「早いな。やっぱりワイバーン交通?」
「そうだよ。短い距離ならこれが1番だから。ちょっと高いけど」
「じゃあ家を案内するよ」
「やった! 楽しみだなぁ」
モルガは北の街に興味津々というような感じだが、別にそこまでのリアクションをする程村に籠もっていたわけではないだろうに。
「ここが俺の家」
「お、大きいね」
「モルガならもっと大きい家に住めるでしょ」
「ぼくの村の家見た? 住めるのと住んでるのは全然違うよ」
興奮しているモルガを落ち着かせ、家の中へと案内する。
「一応立ち入り許可出しとくか」
「ありがとう!」
「あ、その部屋は入らないでくれ」
「モニカ?」
「元騎士で貴族のモニカさんがその部屋に住んでるから」
「プレイヤー様の部屋じゃないの?」
「えっとな、そうだそうだ、玄関のすぐ近くの部屋に写真あるから、それ見たらプレイヤーかどうか分かるでしょ?」
「見てくる!」
玄関まで走っていったモルガのために、ゴーさんに何か作ってもらうことにする。
「ゴーさん、さっき焼き芋を食べたからそこまでお腹は空いてないと思うんだけど、何か飲み物だったり軽いおやつをお願いしても良い?」
「ゴゴ」
「あとこれ、この前言ってた焼き芋とさつまいもに、種芋も貰ったから、これは俺が植えるよりゴーさんに任せたほ「ゴゴ!」分かった、任せるね。一応あっちの畑じゃなくてこっちの畑で育てて欲しい」
「ゴゴ」
「あ、あと万能空き瓶に川の水を少し汲んできたんだけど、これがさつまいもの美味しさの秘密だって」
「ゴゴゴ!!」
「研究するなりなんなり好きに使って良いよ」
「ゴゴ!」
ゴーさんの仕事が増えて申し訳なくなるが、今回はそれ以上に嬉しそうなゴーさんを見ることが出来て良かった。
たぶんゴーさんの仕事を増やしただけじゃなくて、ちゃんと俺もゴーさんの役に立ったという実感があるからだろう。
「モニカは美人だった。あと、背も高そうだったし、ぼくよりも大人な雰囲気があった」
「いや、プレイヤーかどうか確認してくれればそれで良かったんだけどね。ゴーさんが軽い食べものを作ってくれてるから、ちょっと家の中を紹介とかしようか?」
「見たい!」
ということでモルガにこの家の中の全ての部屋を紹介したところでゴーさんに呼ばれた。
「美味しい! このグラープジュースは最高だね!」
「良かった」
「ゴゴ」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」
ウル達もモルガもいっぱい村で食べてたはずなのに、まだまだお腹に余裕はあるらしい。
「ユーマ」
「どうしたの?」
「ユーマは空き部屋を何かに使う予定はあるの?」
「今のところないな。玄関近くの部屋に写真を飾ってるけど、あそこも空き部屋みたいなもんだし、今見えてるリビング横の部屋もあと1つ余ってるし、使い道は今のところないかな」
「……部屋を貸し出してたりはする?」
「貸し出し? 別に貸せるけど何か使う?」
「ぼくが住むっていうのは、その、許されるのかな、なんて?」
「あぁ、そういうこと? 全然モルガが住みたいなら使ってくれて良いよ。モニカさんも女性だし、帰ってきたら確認はしてみるけど、俺が良いって言ったならたぶんモニカさんも良いよって言うと思う」
「ほ、本当か?」
「本当本当、住むなら玄関の方じゃなくてそこの部屋使ってね」
「分かった!」
途中からずっとテンションが高かったり真剣な表情をしたりと不安定だったが、この家に住みたかったと聞いて納得した。
モニカさんもそうだったけど、モルガも1人で新しい場所に住むのはちょっと不安だよな。
「モニカさんにもチャット出来たら良いんだけど、まぁ夜まではモルガにドキドキしてもらうか」
おそらくモニカさんならモルガが家に住む許可をくれると思うが、モルガはモニカさんに会ったことないのでそんなことわかるはずもなく、たぶんまた少し時間が経てばソワソワし出すのだろうと思いながら、俺はゴーさんが作ってくれたジュースをちびちびと飲むのだった。
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