最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第107話

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「これで教えることは終わりかな。あとはレベル上げなり、装備更新なりして頑張って」

 俺達は王国領前でモンスターを狩ったあと、そのまま帝国領前に来てまたモンスターを狩っていた。
 正直帝国領前に来るまではアリスさんだけやる気があるみたいな空気になっていたが、実際はそんなことなく全員やる気があったのは良かった。

 それにやっぱり皆配信者である前にゲーマーなだけあって、集中力は少しずつ落ちていったものの、長時間やり続けることには慣れていた。
 最後の方は攻撃と素早さに特化した暴れカマキリに何度も挑んでは瀕死になって、エメラとシロに回復してもらってはまた挑むを繰り返してるのを見て、俺もこういう時期があったなと1人感慨深い気持ちになっていた。

「ありがとうございました! うちら以外の今日居なかった子にもユーマさんに教えてもらったこと伝えます!」
「実際ユーマのおかげで第2陣が来る前に次の街に行けそうだよね」
「もぐるもまだまだ強くなる」
「わたくしは帰ったらまず攻撃手段を考えますわ」
「僕は装備を整えないといけないから、アヤりんお願いするっす」
「あたいも鍛冶師として頑張らない訳には行かないからね。ヒナタの装備は帰ってから作るよ」

 皆に教えてる途中、そういえば俺ってなんでこんなことしてるんだろう? とふと我に返ることもあったが、この短時間でも皆の成長が見られて、みるみるモンスターを狩る動きが良くなっていくのは見ていて気持ちが良かった。
 あとは俺と皆が一緒に居た場面を見たファンが居て、後日俺に苦情が来なければ完璧だ。

「じゃあ俺達はこれで」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」
「ありがとうございました! いつでも連絡してくださいね!」
「たぶんアリスにはしばらく連絡しないでしょうね」
「ユーマっちはアリスっちと話す時だけいつも苦笑いだった」
「え、本当? ユーマさん本当ですか! なんでうちと話すと「皆頑張って! それじゃっ」」

 こうして急に始まった女性配信者強化訓練は、無事? 終了した。

「もぐるさんも最後にあんな事言わなくていいのに」

 アリスさんは本当に誰よりも動けてたけど、いつも俺が言ったことを戦闘中もずっと小声で繰り返してるのが怖くて、最後の方は目を見て話せなかった。

「いやぁ、全部のモンスターと戦うのはもっと時間がかかるかと思ってたけど、意外と明るいうちに終わったな」

 今日はもうアリスさん達に教えた後は、キプロのお店には行けないだろうなと思っていたのだが、これなら今から行っても間に合いそうだ。

「お、やってるな。キプロー!」
「あ、ユーマさんじゃないですか! お久しぶりです!」
「色々あって来るのが遅くなってごめん。その代わりにモンスターの素材は結構持ってきたから」
「いえいえ、僕は来てくれただけでも嬉しいです!」

 今はお店の中にお客さんが居ないため、キプロと話しながら売られている武器や防具を見る。

「お店の調子はどう?」
「今のところ予想以上に売れてます! 特にプレイヤー様が買ってくれることが多いですね。ただ、それ以上に弟子入りのお話も多くて……」
「それは凄いんじゃないか? キプロの腕が認められてるってことだろうし」
「いえいえ、僕はまだまだ人に教えられるような器じゃないです」
「そうか? ルリに作ってくれた武器もめちゃくちゃ助かってるんだけどなぁ」
「アウ!」
「そ、そうですか? ありがとうございます!」

 俺は店内に飾られている装備を見ながら、ふと気になったことを聞く。

「そういえばキプロって装備を作る素材とかどうしてるんだ? オーダーメイドとかなら直接素材を取ってきてもらったり、その人の手持ちの素材で作ったりすると思うんだけど、ここには結構な数の装備が売られてるよな?」
「それはその、冒険者ギルドへ依頼したり、職人ギルドで買ったりしてなんとか足りるようにはしてるんですけど、それでもそろそろ素材は切れそうです」

 俺はやんわりと聞いてみたが、飾られている装備が不自然な配置だったり、絶対にそこに装備が飾られていたと思われる場所に何もなかったりしたため、素材か時間が足りてないんだろうなとは思ったが、やはり俺の予想は当たっていたらしい。

「まぁそれだけキプロの腕が良いってことだな」
「あ、ありがとうございます」
「よし、じゃあ鉱石系はそんなに渡せないけど、素材は結構あるからな」

 俺はそう言って、おそらくここなら邪魔にならないであろうと勝手に判断した店の奥で、これまで売らずに残していた素材を出す。

「あ、暴れカマキリの鎌に、溶岩ガメの甲羅! こ、これはモルデルウルフの牙と毛皮じゃないですか!」
「本当はボスの素材も渡したいんだけどな」

 ボスの素材は王都についてから、王都の鍛冶師に頼んで装備を作ってもらおうと思っているため、申し訳ないが渡せない。
 これはキプロの鍛冶師としての腕を疑っているわけではなく、完全に俺に染み付いた、次の街の鍛冶屋の方が強い装備を作ってくれる、というゲーム的思考でしかない。

「えぇ! こんなに良いんですか?」
「もうこの辺のは使わないし、もう少しでやってくる新しいプレイヤー達は、丁度それくらいの素材を使った装備が必要だろうからな」

 俺は口を動かしながらもインベントリから素材を出していく手は止めない。

「ちなみにこの量は邪魔にならないか?」
「いえ、全く問題ないです! むしろ本当にこんなに売ってもらって良いんですか?」
「いや、俺は別にお金は」
「それは駄目です! 僕は自分のお店で売る商品の素材を受け取ろうとしています。これは遊びや趣味で作るための素材ではないですから」
「わ、分かった」
「ただ、こんな事言うと格好つかないかもしれないですけど、少し安く売っていただけると」
「それはもちろん」

 と言うことで俺は素材の値段なんか分からないため、キプロに全て計算は丸投げして、また装備を見て回る。

「あ、そういえばシロの装備もだし、新しく枠が空いた皆の装備も買わないとだな」
「クゥ」「アウ」「……!」「コン」

 30レベルになった時、全員の装備枠が1つ追加されたことを忘れかけていた。

「ユーマさん、終わりましたよ」
「お、分かった」

 キプロに声をかけられ、また先程の場所まで戻る。

「納品依頼よりは安いですけど、商人ギルドへ売るよりは高い値段で買い取らせていただきました」
「ありがとう」
「こちらこそありがとうございます。正直最近同じようなデザインの装備を複数個欲しいという注文が多かったので、同じ素材が大量に必要だったんです」

 たぶんそれはプレイヤー達が作っているクランが関係しているんだろうな。

「まぁたまには息抜きも必要だぞ」
「そうですね。あの、それなら少しだけユーマさんにお願いしてもいいですか?」
「出来るかは分からないが、何でも言ってくれ」

 たぶんまたサポーターのお願いだろうななんて、この時の俺は思っていた。

「あの、僕、冒険者になりたいんです!」
「あぁ冒険者か、いいぞって、え? 冒険者?」
「はい! ずっとユーマさんと出かけたあの日から忘れられないんです! そして気付きました。やっぱり僕は冒険者を諦められないって」
「それはその、なんだ、俺は何を教えればいい?」
「簡単に言うと、僕は強くなりたいんです。お願いします! 僕を強くしてください!!」

 そう言ってキプロは俺に頭を下げてきた。
 最近なんでこんなに俺は人に何かを教えることが多いのだろうか。

「取り敢えず分かった。協力はする」
「ありがとうございます!」
「ちなみに鍛冶師としてはこれからどうするんだ?」
「このお店は続けます。これまでサポーターとして活動していた時間を、冒険者の時間にしたいんです」
「なるほど。じゃあキプロは今後誰かとパーティーを組んで冒険者の活動をするわけだな」
「そうですね。ただ僕にはこのお店がありますし、臨時パーティーしか組めないかもしれないですけど」

 そういうことならめちゃくちゃ今のキプロに合った人物を1人知っている。

「俺の知り合いに今サポーターの勉強中で、後々冒険者になることを夢見てる女の子が居るんだけど、紹介しようか?」
「い、良いんですか?」
「まぁ本人に聞いたわけじゃないからあっちが断る可能性もある。正直実力はまだそこまでないけど、やる気はあるからキプロとは相性良いと思うぞ」
「お願いします!」
「分かった。俺が連れてくるかもしれないし、キプロのこの店の場所を伝えて、自分で来てもらう形になるかもしれないけど、それでも良いか?」
「はい!」
「じゃあ一応名前だけ伝えておくと、ハティって名前だ。確かタルブ・ハティだったかな」
「え、ユーマさん?」
「ん?」
「もしかして貴族の方ですか」
「あぁ、そうだけど。何か問題でもあるのか?」
「え、いえ、ない、です、けど」
「じゃあまた来るよ。素材買い取ってくれてありがとう」
「は、はい」

 こうして俺はキプロの店を出たのだが、出たあと後ろの方からキプロの叫び声が聞こえた気がした。


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