最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第85話

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「ユーマ、そろそろ良いんじゃないか?」
「確かにそうですね、ゴーさんありがとう」
「ゴゴ」

 ゴーさんに何が出来るのか試した結果としては、今ある魔法シリーズは全部使えるらしく、どうやってるのかは分からないが、魔法の笛までも上手に吹けることが証明された。

「ていうか俺がいない間にアイスも作ってくれたんだ」
「ゴゴ」「クゥ!」
「ユーマが新しいメニューを考えれば、あとはゴーさんが作ってくれるということだな」
「そうですね。なんなら俺が新しいメニューを考えなくても、ゴーさんは新しい料理を作りますよ」
「それはすごいな」
「これはゴーさんが色々できることが多くて何をさせようか困りますね。まぁとりあえず今は便利になったことを喜びます」
「そうだな」

 俺が必要なくなったことは少し寂しい気もするが、これから全部家のことを任せられると考えれば嬉しさの方が強い。

「私は今日ずっと家にいるから、何かあれば声をかけてくれ」
「まだモニカさんのお母さんが来るまでは10時間くらいありますけど」
「外に出て時間を潰す気にもなれなくてな」
「じゃあ俺達はちょっと出てきますね」
「分かった」

 ゴーさんの性能を調べていた時に気付いたのだが、魔法の笛を何かを吹く犬のぬいぐるみに持たせると楽譜無しでも演奏してくれるので、今後音楽をかけたい時は魔法の笛をあのぬいぐるみに持たせることになった。

「で、今からすることなんだけど、これからはゴーさんに色んな食べ物を作って欲しいし、厩舎もあと1つ小さい方が空いてるから、卵を産んでくれるカシワドリを捕まえに行こうと思う。雨もすぐやんだしね」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 ウル達も賛成してくれてるので、早速はじめの街に行き、魔獣ギルドで捕獲依頼を受ける。

「カシワドリ5体捕獲で3,000Gは、今となっては報酬として安いな」

 今は報酬ではなくメスのカシワドリが目当てなので、依頼を受けたあとはすぐ街の外に出てカシワドリを捕まえに行く。

「アポルの実はあるから、見つけたらこっちに誘導してきてくれ」
「クゥ!」
「ルリとエメラはウルのやり方を見てから、後で真似して同じように連れてきて欲しい」
「アウ!」「……!」

 もうカシワドリに大声で鳴かれながら街を歩きたくはないので、アポルの実を食べ切られることがないように気を付ける。

「クゥ!」
『ゴケーーー!』『ゴゲ!』『ゴケゴケ!』……
「よし、アポルの実を奥に入れてケージの中に誘導するぞ」
『……』『……』『……』『……』……
「ルリが運んでくれるか?」
「アウ!」

「まだ捕まえたいんですけどこれ使わせてもらっても良いですか?」
「使っていただいても大丈夫ですよ」
 
 1回目に捕まえてきたカシワドリは全部で10体だったが、メスは1体しかおらず、捕獲依頼を達成したあともケージを貸してもらって、何度もカシワドリを捕まえては連れてくるというのを繰り返すのだった。



「まぁメスが10体居れば十分かな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 俺は5体くらい居れば良いかなくらいに思ってたんだが、どうやらウル達にはこの作業が楽しかったらしく、結局10体も集めるまで続けてしまった。

「流石にその数は要らないな」
「ですよね」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 久し振りにギムナさんの屋台で串焼きを食べつつ、余ったオスのカシワドリを売るために話をしに来ていた。

「他のところに回したとしても、買い取るなら50が限界だな」
「そんなに買い取ってくれるんですか? というか無理して買わなくていいですからね。俺としては本当に今回はギルド価格で買ってくれていいので」
「まさかあの時カシワドリを数体売りに来たお前さんが、こんな大量のカシワドリを持ってくるようになるとはな」
「なんかいつも俺がカシワドリを持ってくるイメージになってません?」
「違うのか?」

 俺としてはただご飯を買いに来ることも多かった気がするが、ギムナさんからすると俺はカシワドリを売りに来る奴と覚えられてるらしい。

「まぁいいです。じゃあ今回もギルドの方で渡しておくので、後で受け取ってください」
「いつも焼いてくれって頼んでくる肉は売ってくれないのか?」
「カシワドリを売りに来る以外のイメージもあるじゃないですか」
「なんなら他の奴からもお前さんの話はたまに聞くぞ」
「え、それ変な噂だったりしません?」
「どうだろうな」

 ギムナさんにはウサギ肉やイノシシ肉、シカ肉やクマ肉等を追加で少しだけ売って、魔獣ギルドでギムナさんに50体のカシワドリを渡してもらうのと、北の街の俺の家までメスのカシワドリを10体送ってもらうことをお願いした。

「今から王国領の探索を進めるのはなんか違う気がするし、ウル達は何かしたいことあるか?」
「クゥ?」「アウ?」「……?」
「別にないのか、じゃあマルスさんの様子でも見に行くか」

 前はマルスさんに宝石を渡したあと逃げるように店を出たが、無事に加工して届けることが出来たのか気になっていたので聞きに行くことにする。

「じゃあ行くぞー」
「クゥ」「アウ」「……!」 

 こうして俺達は家に戻ることなく、クリスタルで西の街に移動しマルス宝飾店へ向かう。

「西の街も人が多いな」
「クゥ」「アウ」「……!」

 ここでもはじめの街や南の街のようにクランやパーティーの募集をしている人達が居る。
 特にカジノの前で勧誘している人達が多いが、カジノで負けた直後のプレイヤーに声をかけて喧嘩になってるのは、外から見る分にはちょっと面白いな。

「あ、お店の中にお客さんがいるな」

 マルス宝飾店に着き外から店の中を覗くと、マルスさんがお客さんに対応している姿が見えたので、今すぐ店に入るか少し悩んだが、店の前でうろちょろしてるのもそれはそれで不審者っぽいので、そのまま中に入ることにする。

「いらっしゃいませ。あ、ユーマさん!」
「どうも。俺はちょっと適当に時間潰しときますね」
「マルスさん、あちらのお方は?」
「私の人生を救ってくれた方でございます。そしてフォルスの……」
「!? それは私も挨拶を……」

 何やら後ろで俺のことを話しているのが少し聞こえるが、こういう時は聞こえていないフリに限る。

「あの、プレイヤー様のユーマ様ですよね」
「あ、はい。ユーマです」
「私はフォルスの兄であるジェスといいます」
「フォルスさんというと、ここで前働いてた方ですよね」
「はい。亡くなってしまいましたが、以前はここで働いていたようです。そしてあなたが手紙とあの栞を見つけてくれたと聞きました」

 そういえば宝の地図で見つけた箱の中には、手紙と一緒に栞が入ってあった。

「あれは私が弟のためにプレゼントしたものなのですが、どうも本人は本を読むのがあまり好きではなくて、使っているところをこの目で見たことはありませんでした」
「俺は会ったことがないので分かりませんが、マルスさんから聞いたイメージだと、家を飛び出して働くようなとても好奇心旺盛な方だったんですよね」
「ええ。なのでフォルスがまさかあの栞をずっと持っているなんて全く思っていませんでした」

 後ろで話を聞くだけだったマルスさんが会話に入ってくる。

「フォルスはあの栞をお守りのように肌見離さず持っていましたよ」
「家にいた時はそんな姿見たことなかったんですけどね」
「私も偶然栞を持っているのを見かけた時、どこで買ったものか聞いたことがあるのですが、大事な人に貰ったと言っていました」
「フォルスが栞を自分で買うなんてしませんよ。フォルスは退屈なのが苦手で、いつも自由にやりたいことやって、叱られないように逃げて、家まで飛び出して、最後まで迷惑かけやがって、ホント何やってんだか」

 ジェスさんはその後もフォルスさんが生きていた時のことをマルスさんに詳しく聞くのだった。



「うちの弟がお世話になりました。マルスさんのお世辞もあるでしょうが、フォルスが仕事の役に立ってたと聞いて安心しました。先に逝ったことは絶対に許しませんが、本人が居ないんじゃ叱ることも出来ないですしね」
「フォルスは最後までこのマルス宝飾店のことを考えて行動してくれた、これまでもこれからも私が一番に想う従業員です」
「そうですか。私のどんな言葉よりもマルスさんの今の言葉がフォルスには嬉しいでしょう。長い時間話してしまってすみません。私はここで失礼しますね」
「ありがとうございました」

 こうしてジェスさんはお店を出ていった。

「ユーマさんお待たせしてすみませんでした」
「いえ、大事な話だったと思いますし、むしろお邪魔してしまってすみません。話し方は俺達にも丁寧でしたけど、一応貴族なんですよね?」
「はい。王国の公爵家の方だと聞いています」

 俺が知ってる貴族はモニカさんとハティのタルブ家くらいだが、ジェスさんは公爵という相当位の高い家の出身なのに、ハティを除いて貴族の中では1番こちらに近い距離感で話してくれた気がする。

「それで、ユーマさんは今日はどうされたのですか?」
「あ、この前渡した宝石がどうなったかなと思いまして」
「そうですか! では私からもそのことでお話があります」

 マルスさんが言うには、南の街に1番近い帝国領の街までは宝石を運ぶので、その街から届け先の街まで護衛をお願いしたいという話だった。

「すぐにではなくても良いですし、断っていただいても大丈夫です」
「受けたいとは思うんですけど、いつになりますかね?」
「3日後まででしょうか。出来るだけ早く届けることが出来ればそれに越したことはないので」
「分かりました。今日は無理ですけど、明日中にまた来ます。無理なら明後日で」
「ありがとうございます」

「じゃあまた」
「はい。ありがとうございました」

 こうして俺達は最後にマルスさんの護衛依頼を受ける約束をして家へと帰るのだった。


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