最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第83話

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「やっぱりダンジョンの道は分かりづらいな」
「クゥ」「アウ」「……!」

 もう最初の方の階層にいる敵はほぼ無視で駆け抜け、所々覚えていない道はウル達に助けられながら、俺達は今20階層前の階段にいる。

「よし、前回倒してるからって油断はしないぞ」
「クゥ」「アウ」「……!」
「俺とウルが遊撃、ルリとエメラが正面、8体の騎士が出てきたらウルが半分以上の騎士を引き離して、俺とルリとエメラで残りの騎士を倒す。前回の倒し方が本当に良かったからこそ、今回はそれ以上にスムーズに倒せるように頑張ろう」
「クゥ!」「アウ!」「……!(コク)」
「行くぞ!」

 こうして俺達は3度目のダンジョンボス戦へと挑むのだった。



名前:ユーマ
レベル:29
職業:中級テイマー
所属ギルド :魔獣、冒険者、商人
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:鑑定、生活魔法、インベントリ、『中級テイマー』、『片手剣術』
装備品:四王の片手剣、四王の鎧、四王の小手(暗闇の照明)、四王のズボン(協力の証)、四王の靴(敏捷の珠)、幸運の指輪(ビッグ・クイーンビー)

名前:ウル
レベル:29
種族:ホワイトウルフ
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:勤勉、成長、インベントリ、『ホワイトウルフ』『氷魔法』
装備品:黒の首輪(魔獣)

名前:ルリ
レベル:29
種族:巨人
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:忍耐、超回復、成長、インベントリ、『巨人2』
装備品:黒の腕輪(魔獣)、銀の手斧(魔獣)、銀の小盾(魔獣)

名前:エメラ
レベル:29
種族:樹の精霊
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:支配、成長、インベントリ、『樹の精霊』『樹魔法』
装備品:黒のチョーカー(魔獣)

「お疲れ、特に俺から言うことはないな。皆ボスの動きを知ってるのもあって完璧だった」
「クゥ」「アウ」「……!」

 そして完璧だったからこそまたこのダンジョンに来るようなことにはしたくない。
 同じ敵を何度も倒す周回の日々を、あの作業感をウル達にはあまり味わって欲しくない。

「で、この宝箱には何が入ってるんだ?」

 10万G、黄金の騎士の置物、魔玉、何かを吹く犬のぬいぐるみ、装備品『黄金の槍』、綺麗なクモの糸、ゴーレムの核、頑丈な高級皿

「特別な魔玉と万能鞍、装備装飾品が初単独ダンジョン踏破ボーナスかもしれないな。いや、もしかしたらレアアイテムの可能性もあるか」

 そもそも今手に入れた中にレアアイテムが入っている可能性もあるが、そこまで調べる気持ちはないので、とりあえず特別な魔玉と万能鞍、装備装飾品は、もしかしたら何回も宝箱を開けたらいつか出るかもくらいに思っておこう。

「でもまぁ大事なのはゴーレムの核じゃなくて特別な魔玉っぽいな」

 エリアボス討伐も、ダンジョンボス討伐も、俺は運良く誰よりも早く単独で倒すことが出来たが、この恩恵は凄い大きなものなのかもしれない。

「あとはユニークボスも俺が初討伐も単独初討伐も取ったか」

 そう考えると現時点では俺が1番そういう初討伐の恩恵を受けているのかもしれない。

「クゥ!」「アウ!」「……!」
「ん? どうした?」
「クゥ!!」「アウ!!」「……!!」
「もしかしてゴブリンを倒しに行きたいのか?」
「クゥ!」「アウ!」「(コクコク)」

 レベルが上がったからか、ウル達のやる気が凄いので、すぐ宝箱から出たアイテムをインベントリに入れ、ダンジョンを出てピオネル村に移動する。

「この辺でモンスターを倒すんじゃなくて、ゴブリンの巣を潰すってことで合ってるよな?」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 黄金の騎士を倒した後、俺は宝箱の中身を見てあれこれ考えていたが、その時からウル達のやる気は少し感じていた。

「前と同じ巣を目指すけど、今回は慎重にかつ冷静に倒すぞ?」
「クゥ」「アウ」「……!」

 俺としては結構ゴブリンの巣に挑むことは急だと感じるが、ウル達はそういうわけでも無さそうだ。
 前からこの日のために準備してきたような、今回にかける気持ちの強さを感じる。

 ウル達の表情を見ても、俺が思っていた以上にウル達にとってゴブリンに負けたことは、本当に大きなことだったのかもしれない。

「準備はいいか?」
「クゥ」「アウ」「……!」

 やる気がある、集中力があると言えば聞こえはいいが、今のウル達は周りが見えないくらい過集中している気がする。

「皆に俺から1つだけ」
「クゥ?」「アウ?」「……?」
「楽しもう。俺は楽しむために皆と冒険してるんだ。今回また失敗してももう1回挑戦すればいいだけだし、な?」
「クゥ」「アウ」「(コク)」
「周りが見えないとまた同じことを繰り返すのは俺が経験済みだからな。皆は俺の経験を無駄にしないようにしてくれ」
「クゥ!」「アウ!」「……!(コクコク)」

 ウル達から余計な緊張もなくなった気がするし、これならいつも通りの動きをしてくれそうだ。

「じゃああいつから倒そう」

 巣から離れているゴブリンを指差し、ウルとエメラに攻撃してもらう。

「クゥ」「……!」
「次はあいつだ。ルリは左のやつがこっちに帰ってきそうになったら声をかけてくれ」
「アウ」

 慎重に外側からゴブリンの数を減らしていく。

「もう既に前よりもゴブリンは倒したな」

 トラップにも気を付けて、今は俺が全員に指示を出してゴブリンを倒している。

「もうあとはたぶん巣の前に居るのと中だけだな。これなら後ろから挟まれる心配もないし、陣形を崩さなければ敵が多くても十分戦えそうだ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「じゃあ後はエメラに任せるぞ」
「……!」

 ここからは一方的に倒すのではなく、ゴブリン達との戦いになる。
 エメラにはその指揮を任せて、俺はルリの動きを見ながらそれに合わせる。

「……!!」
「クゥ!」「アウ!」

 エメラが何か指示を出すと、ウルは遊撃に、ルリは巣の前にいるゴブリンに向かって走り出した。

「基本的にルリの右のやつを俺が倒すぞ」
「アウ!」

 ゴブリンが俺達に気づき、巣から出てこようとするが、エメラがそうさせないように樹魔法で邪魔をしている。

「……!」
「クゥ!」「アウ!」
「分からないけど、俺もなんとなく合わせるか」

 ルリとウルの動きも素晴らしいが、特にエメラは前回と違ってこの戦場をコントロールしていると言ってもいいくらい押し引きが完璧だ。

「ナイスエメラ! ルリはもう少し前出ていいぞ! 俺もルリのカバーはする」
「アウ!」

 前回よりも俺達のレベルは上がったが、だからといって連携なしで4人で倒せるような難易度ではないし、しっかりとレベル以外の部分の成長を感じる。

「なんか俺泣きそうだわ」

 まるで自分が育てた子ども達が、いつの間にか成長していたような感覚がある。そんな子ども知り合いにすら居ないけど。

『ホブーーーーーー!!!』
「来たか」
「クゥ」「アウ」「……!」

 このままずっと出てこなければゴブリン達を倒し切れそうだったが、そう簡単には行かない。

「エメラどうする?」
「……」
「……クゥ」「……アウ」
「……!!」
「ホブゴブリンの相手は俺がするか?」
「(コク)」

 エメラもそうだが、ウルとルリもホブゴブリンと戦いたい気持ちが強いのは今のやり取りで分かった。

「じゃあ俺が耐えとくから皆で他のゴブリン倒してから来てくれ」
「クゥ!!」「アウ!!」「……!!(コクコク)」
「じゃあ皆頼むぞ!」

 ウル達は分かっているのだろう。
 俺がホブゴブリンと一対一をすれば勝つことを。
 いや、分かっているというよりも、信じているという方が正しいかもしれない。

『ホブ!!』
「その大振りは当たらないな」
『ホブ!!』「ゴブ!!」「ゴブ!」……
「ゴブリンに遠距離攻撃で援護してもらっても俺には当たらないって」
『ホブ! ホブ! ホブーーー!!!!』

 もうヤケクソになって攻撃してくるが、俺はその全てを受け流す。

「こっちは耐えてるから頑張ってくれ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 俺としては、もうホブゴブリンとの戦いを楽しむには少しレベルが上がり過ぎた気がする。

「これでも俺達より2か3レベルくらいは、お前の方がレベル高いよな?」
『ホブーーー!!!』

 ホブゴブリンとて所詮はただの中ボスレベルの相手でしかない。

「クゥ!」「アウ!」「……!」
「お、来たか、後は皆に任せる」
『ホブ!!!!!!』

 ウル達と交代して、俺はホブゴブリンとは戦わず後ろで見守る。

「いいぞー! そこだ!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「魔獣強化はかけとくか?」
「……(ふるふるっ)」
「そうか、じゃあ皆このまま頑張ってくれ」

 魔獣に強化を断られるテイマーってそれ本当に居る意味あるのか? と言われそうだが、大人しく見守る。

『ホ、ホブーーー!!』
「クゥ!」「アウ!」「……!」
『ホ、ホブ』

 結局最後まで俺は見守るだけで、ウル達によってホブゴブリンは倒された。

 このゴブリンの巣を破壊するという行為は、依頼でも何でもない俺のただの提案から始まったものだ。
 よってこの行為自体はほぼ意味のないものであり、その意味のない行動で初めて負けてしまったことに、正直ウル達への申し訳なさがあった。
 ただ、一度負けたことにより俺達は成長し、意味のなかったことが、意味のある勝利へとウル達が変えてくれたことに俺は感謝しかない。

「リベンジ達成だな」
「クゥ!!」「アウ!!」「……!!(コクコク)」

 俺はウル達の嬉しそうな表情を見て、やっぱりゴブリンの巣に挑んだのは間違ってなかったと思うのだった。


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