最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第76話

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「ヤバいな、もうそろそろ暗くなる」

 最初は西の街から連合国領に行こうとしてたのだが、すぐ暗くなりそうだったので連合国領の街にクリスタルで移動して、街の近くでモンスターを狩っていた。
 危うく王国領前のボスを倒しに行った時と同じ過ちを繰り返すところだった。

「ボスが居ないと楽だな」

 他の街はボスエリアが邪魔して、ピオネル村から北の街や、北の街からはじめの街には行けないようになっているのだが、西の街から連合国領の街はボスが居ないので通ることが出来る。
 なので俺達は連合国領と西の街の間に居るモンスターを、ボスエリアを気にすることなく狩っていた。

「それにしても他の場所よりモンスターが強かったな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 ハティが言っていた通りボスが居ない分通常のモンスターが強く、なかなか戦いがいのあるモンスターが多かった。

「しばらく俺達のレベル上げは連合国領でするか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 効率を考えると狩るのはゴブリンでも良いのだが、ゴブリンの巣を壊せるようなレベルになるまでは王国領には行かない方がいい気がしたので、それまではこっちでレベルを上げることにする。

「夜だけどどうする?」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 まだウル達はやる気なので、サポーターを見つけてもう少し狩ることにしよう。

「今日の夜中に俺も色々やりたいことはあるから、いつもみたいに朝まで探索はしないからな」
「クゥ」「アウ」「……!」

 ということであと5時間から長くても8時間くらいを目処に探索をすることは決まった。

「一旦サポーターを探すために西の街を見てみるか」
「クゥ」「アウ」「……!」



 ということで西の街まで来たが、冒険者ギルドにはサポーターが見えない。この時間で見えないなら、おそらく西の街では夜はサポーターの需要がないのだろう。

「じゃあ次は連合国領の街だな」
「クゥ」「アウ」「……!」



「どっちも居ないな」
「クゥ」「アウ」「……」

 連合国領の最初の街とハティが住む街の両方の冒険者ギルドを見たが、そもそもプレイヤーがまだこの街に来ていないため、夜のサポーターの需要がないのか全く居なかった。

「南の街ほどではなくても、昼はどの街にもサポーターが少し居るし、明るいうちに声をかけとくべきだったか?」

 このままだと冒険者ギルドが閉まって、また夜は南の街の探索に行くか、ダンジョンに潜ることになる。

「いや、明かりを持ってもらうだけでも助かるし、もう1回頼んでみるか?」

 昨日あれだけ言っておいて今日また頼むのはおかしいかもしれないが、本人がもしやる気なら頼みたい。

「あ、そういえば貴族だった」

 家の前まで来てやっと思い出したが、もう引くに引けない。

「すみません、ハティは居ますか?」

 大きい家の前でハティを呼ぶが、昨日もここに来たのは夜中だったので、もしかしたら家を間違えてる可能性もなくはない。

「いや、流石にこんなでかい家を間違えることはないか」

 1人でツッコんで時間を潰していると、昨日のハティの護衛らしき人が俺の横に現れた。

「いきなり横に現れないでくださいよ。ウル達も警戒したじゃないですか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「申し訳ございません。それでハティお嬢様に何か?」

 家から執事かメイドさんが来ると思っていたのに、横から声をかけられるとは思わなかった。

「いや、あの後どうなったかなっていうのと、もしハティがやる気なら今日も少しサポーターをお願いしようかなと思いまして」
「なるほど、分かりました。大変申し訳ございませんが、こちらで少しお待ち下さい」
「それは全然大丈夫です」

 本来なら家の中に案内してくれるんだろうけど、俺はまだこの家の人に信用されてないだろうしな。

「ウル達も警戒ありがとな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 街の中でもこうして俺を守ろうという姿勢を見せてくれたのは嬉しい。

「ユーマさん!」
「おお、ハティ。昨日ぶり」

 家の前で待っていると、ハティがサポーターの格好をして家から出てきた。

「自分とまた探索に行ってくれると聞きました!」
「この辺はまだ夜一緒に行ってくれるサポーターが居ないし、もしハティがサポーターをやる気ならまた誘ってみようと思ってね」
「ありがとうございます!」

 昨日のハティとは大違いで、何か吹っ切れたような気持ちの良い返事だ。

「ただ、まだサポーターとしての動きは全然勉強出来てなくて」
「そりゃそうだろう、俺も少しは教えるよ。サポーターをしたことはないけど、サポーターの仕事には助けられてきたからね」
「それは助かります!」

 そしてハティはサポーターの訓練を俺に依頼して、逆にお金を払うと言ってきた。

「自分はユーマさんに教えて貰う立場ですし報酬を払いますよ」
「俺はそもそもハティにサポーターを依頼するつもりで来たし、ハティが俺に依頼しようと思うならどっちも報酬無しで良いんじゃないか?」
「うーん、分かりました」

 ハティは少し不満そうだったが、あまりここでゆっくりもしていられないので、すぐ準備に取り掛かる。

「ではまず持ち物の確認からですね」
「そうだな。いや、その前にご飯を済ませたい。ハティはもう食べたか?」
「いえ、自分はまだです」
「なら家で食べてくるか? たぶん用意されてるんだろ?」
「ではユーマさんも一緒にどうぞ!」
「え、いや、それは」
「さぁさぁ」
「あ、ちょっと、待って……」

 ズルズルとハティに家の中に連れて行かれて、メイドさんにジロジロ見られながらリビングまで来てしまった。

「ハティ、遅かったわ、ね。その方はどなた?」
「あ、あの、ユーマって言います。お邪魔でしょうし出ますね!」
「昨日会ったプレイヤー様」
「あぁ、君が。話は聞いてるよ。ほら、そこの椅子に座って一緒に食事でもどうかな?」
「あなたがユーマさんなのね」
「あれ? 自分はユーマさんのこと話してな「お食事をお持ちしました」」

 メイドさんが料理を俺達の分まで運んできてくれたので、もう逃げることは出来ない。

「い、いただきます」
「クゥクゥクゥ!」「アゥアゥアウ!」「……!」
「あら、魔獣さん達も偉いわね」
「ハティもユーマ君の横でいいから座って食べなさい」
「はい」

 そしてこの空間で俺だけ緊張しながら晩御飯をご馳走になったのだった。

「やはりプレイヤー様はいくらでも食べられるのか」
「初めて見ましたが本当なのですね」
「あ、なんかずっとおかわりを持ってきてくれるので何も考えずに食べちゃってました。すみません」
「いや、全く問題ないよ」

 緊張して喉を通らないと言う言葉がこの世界ではプレイヤーに全く当てはまらない。
 俺は無心で食べ続けてしまい、あれだけ緊張して粗相をしないように注意していた結果、この家の料理を大量に食べてしまった。

「あの、緊張してて頭が真っ白で、出てくる料理が美味しくて食べてたら、手を止めるのを忘れてました」
「それなら料理を作った者も嬉しいだろう」
「そ、そうですか。ご馳走様でした」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

「じゃあちょっとこれからユーマさんと出かけてくる」
「あら、今からですか?」
「私からは何も言わないが、気をつけてくるように」
「お、お邪魔しました」

 ハティの後をついていき、俺達は家を出る。

「なぁハティ? 俺の心の準備の時間くらいは欲しかったぞ」
「すみません。あそこで捕まえないとユーマさんが逃げると思って」

 正解です

「まぁいいや。でも良くハティが今から外に出ることを許してくれたね」
「そのことで少しユーマさんにはお話しておきます」

 少し歩いてハティと道の端に腰掛ける。

「ユーマさんに会う前の冒険者の話なんですけど、あの冒険者は両親が雇った者だと思います」
「ハティを取り残していった奴らのこと?」
「はい。おそらく自分がサポーターを諦めるきっかけを作ろうとしたのかと」
「それに気付いてたならなんで西の街の外でずっと居たの?」
「本当に冒険者に裏切られた可能性もあったのと、もし両親の差し金なら自分も何か予想できないことをしてしまおうと思って」

 それで俺にサポーターとして話しかけてきたのか。

「ユーマさんと出会って、本気で自分に言葉をかけてくれて、自分がどれだけ自分勝手だったのか痛感しました」
「いや、そんなことはないよ。ハティも色々頑張ろうとしていたのは聞いたしね」
「自分はいつもすぐに諦めて、楽な方に行こうとしてました。そんな自分をお父様もお母様も心配してくれていたことが今なら分かります」

 ハティにとって昨日の出来事は、これまでのことを見直すきっかけになったのだろう。

「そして自分は決めました! もう迷いません。これからサポーターとして勉強して、戦闘訓練も頑張ってやりたいと思います!」
「それは良いと思うけど、それこそ家族の許可は取らなくていいの?」
「それは大丈夫です。サイ、居るんでしょ?」
「ハティお嬢様、お呼びでしょうか?」

 ハティの声で現れたのは、先程俺に玄関で声をかけてきたハティの護衛である彼だった。

「サイがお父様達に連絡していたことももう分かってるわ」
「申し訳ございません」
「その事はもういいの。ただ、これからは本気でサポーターを、そして冒険者を目指すことにしたから、そのことをちゃんと伝えておきたいと思って」
「かしこまりました。ハティお嬢様なら必ずや成し遂げられるとサイは信じております」
「ありがとう。じゃあそれだけだから、サイは仕事に戻って」

 ハティがそう言うと彼はまた気配を消した。

「ユーマさんはあまり驚いていなかったように見えましたけど、もしかしてサイのこと知ってましたか?」
「前に少しだけ話したのと、今日この家に来て最初に対応してくれたのもあの人だよ」
「そうですか。……あの、ユーマさんは護衛に守られながらサポーターをするなんて、おかしいと思いますか?」

 今のハティのことを考えると難しい質問だが、俺は正直に答える。

「そりゃおかしいと思うよ。冒険者やサポーターに護衛が居るなんて、逆に普通だと思う?」
「……」
「でも、おかしいけど、駄目なわけじゃない。その状況が嫌なら実力をつければいいし、そもそも他人に大きな迷惑をかけてないなら、自分が納得できたらそれで良いんじゃない?」
「でも、自分がサポーターや冒険者をしている間、ずっと護衛するのはしんどいと思いますし」
「なら、心配されないくらい腕を上げるか、本人に聞いてみれば良いんじゃない? 自分の護衛はしんどくないか? って」
「……」

 あぁそうか。ハティはただ飽きるのが早い子どもだと思ってたけど、むしろ周りに迷惑をかけることを考えて、色々挑戦することをやめていたのかもしれない。
 だからこそサイという護衛の彼も俺に初めて会った時、ハティのことで感謝してきたのだろう。やっとハティが自分のやりたいことを本気で考えるようになったから。

「もしハティの護衛が嫌だったら言ってもらえばいいよ。それともハティの両親は嫌な仕事でも無理やり働かせる人なの?」
「いえ、そうですね。少し考えすぎてたかもしれないです。分かりました! もう大丈夫です。行きましょう!」
「ちょっと! まだ何も決めてないから待って」

 俺は街を出ようとするハティを止めて、持ち物の確認や今後の予定を話すのだった。


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