最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第74話

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「いいね、やっぱり美味しい」
「クゥ!」「アウアウ!」「……!(コクコク)」

 俺達は昼ご飯を食べたあと、今朝取ってくれたアポル、オランジ、ピルチ、グラープの実を食べていた。

「これは流石にそのまま食べる以上の食べ方はあんまり思いつかないな」

 りんご、みかん、桃、ぶどうにあたるこの果物を加工しようと一瞬思ったが、このまま食べる以外の美味しい食べ方を俺は思いつかない。

「アップルパイ、いや、この世界だとアポルパイにするくらいしかないよな」

 あとはグラープをワインにするくらいか。

「まぁ今回は味見だからいいや」

 食器を片付けて、家を出る準備をする。

「じゃあ行くか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 クリスタルを使って南の街に移動し、街の外に出る。

「この辺のモンスターはもう敵にならないから無視していくぞ」
「クゥ」「アウ」「……!」

 家で今後について話したところ、俺は今日このまま戦うことなくのんびりした1日でもいいと提案したのだが、ウル達はむしろモンスターと戦いたいという意見だったので、せっかくなら戦ったことがなくて行き先も増やすことのできる帝国領を目指すことになった。

「俺達も強くなってるぞ」
「クゥ」「アウ」「……!」

 ブラウンピューマやブラウンサーペントなどが襲いかかってきたが、前に戦った時と比べて全く脅威ではなくなっていた。

「よし、こっからは油断せずに進もうか」
「クゥ」「アウ」「……!」

 出てくる敵が急に強くなり、ここからはおそらく今の俺達と同じくらいのレベルの敵と戦うことになる。

「さっき言ったことは普段から意識するんだぞ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 襲いかかってきたモンスターを相手に、ルリは出来るだけ攻撃を受けないように、ウルは自分の最適な立ち回りを考え慎重に行動し、エメラはいつもより積極的に攻撃をしている。

「俺も自分の立ち位置を考えないとな」

 俺が遊撃に出ればモンスターをすぐに倒すことが可能だが、その分ルリとエメラのメイン部隊が弱体化する。
 逆に俺がルリ達と一緒に居るとメイン部隊は安定するが、俺が自由に動けず攻撃回数が減る分パーティーとしてモンスターを倒す速度が遅くなる。

「4人パーティーだし、誰か1人でもミスすれば崩れるのは当たり前だよな」

 ミカさんとくるみさんの攻略組のペアですら2人での探索はしんどいって言ってたし、経験の浅いウル達が不安定なのは仕方がない。

「よし、俺は遊撃を一旦やめて、ルリとエメラのいる場所で戦うことにしようかな」
「クゥ」「アウ」「……!」

 また次の仲間が増えた時に俺のポジションは考えよう。

「このポジションなら黄金の槍を使う方がルリの後ろから攻撃も出来て良さそうだけど、片手剣を一旦頑張るって決めたしな」

 他人のポジションや仲間の武器で自分の使う武器や立ち回りを決めてた時とはもう違う。
 俺もウル達と同じように成長すると決めたからには、まずは片手剣の扱いを今よりも上手くなるよう練習する。

「いいぞ。俺には分からないけど、エメラの指示で動くのがやりやすいなら、そのままエメラに任せる」
「……!」

 おそらくエメラの支配スキルがウルとルリの動きをスムーズにしているんだろう。

「俺にもそれが伝わったらなぁ。仲間はずれにしてるのか?」
「(ふるふるっ)」
「冗談だから! モンスターの方を向いてくれ! 仲間はずれにされてるなんて思ってないよ」
「(コクコク)」

 エメラをからかったらモンスターをそっちのけで俺の方に詰め寄ってきた。

「不思議だけど、エメラがちゃんとウル達に指示してる時は本当に上手く動いてるもんなぁ」

 これは下手に俺が指示するよりもエメラに任せるほうが本当にいいのかもしれない。

「少なくとも戦闘中はエメラにあまり声をかけない方が集中出来そうだな」

 気になることがあったらウル達には俺から声をかけるとして、前までのように自由に敵を倒しに行けない分、俺もパーティーの歯車として動く。

「ルリの右のモンスターは俺に任せてくれ」
「アウ!」

「ルリが攻撃する時俺も合わせる」
「アウ!」

「ウルも来たならタイミング合わせて一緒に攻撃するか?」
「クゥ!」

「エメラ! 俺はこのままルリのサポートでいいか?」
「……!」

 前よりも自由ではないが、確実に安定しているし皆の動きが見える。

「おつかれ。良い感じだったな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 途中休憩も挟みながら、鋼鉄グモや溶岩ガメ、暴れカマキリなどのモンスターを倒し、俺達は帝国に向けて順調に進んでいた。

「暴れカマキリが危ないな。あれは王国領前のモンスターでいうと、四つ首トカゲのポジションだろう」

 防御力と体力はそこまで無いが、攻撃力が高く素早いため、普通の敵で出てくると1番厄介なステータスを持つモンスターだ。

「まぁエメラの指示もいいし皆の動きも良いから、このままの調子で行けば大丈夫だ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「じゃあ進むぞ」

 そして俺達は帝国領に向かって進み続けた。



「最後の休憩をしようか」
「クゥ」「アウ」「……!」

 目の前には帝国領前のエリアボスが居て、俺達以外に並んでいるパーティーは居なさそうだ。

「ボスの名前は、堅固なる戦馬ね」

 エリアボスのフィールドは、マグマの番人と戦った時のようにゴツゴツした岩が多く、草はほとんど生えていない。

 そしてボスである堅固なる戦馬は、全てが筋肉質で太くがっしりとした大きな馬で、黒い身体は初めてコネファンで戦ったボスである黒い獅子と違い、美しさや艶やかさよりも猛々しさを感じる。

「みんな大丈夫だと思うけど、もう一度ボスとの戦い方はイメージしておいてくれよ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 第2形態、第3形態の可能性を考えないといけないし、死に際のボスの行動にも注意しないといけない。

「じゃあ休憩もできたと思うし倒すか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
『ヒヒィィィン!』

 早速ボスは俺達に向かって走ってくる。

「好きに動いてくれ。俺はルリに合わせる」
「アウ!」

 ボスの突進をルリが左に避けたので、俺も合わせて同じ方向に避ける。

「魔獣ステータス強化」
「アウ!」
「魔獣スキル強化」
「……!」

 2人にスキルをかけて、俺はボスに攻撃しに行くことはせずあくまでも魔獣達の動きに合わせる。

「クゥ!」「アウ!」「……!」
「よし、じゃあ俺もルリに合わせるか」
『ヒヒィン!』

 ボスはルリに噛みついたり脚で蹴ろうとしているが、噛みつきは全て避け、蹴りは盾で受け流して防いでいる。
 前のルリなら1発くらいは正面から盾で受けて少しダメージを負っていた場面だが、徹底的に受け流すことに集中しているので、前よりカウンターの意識は低い分防御は完璧と言っていいだろう。

「エメラ、俺はこのままルリと居ていいか?」
「(コクコク)」

 エメラから許可が出たので俺はルリの後ろで待機し、ルリが攻撃するタイミングだけ俺もボスに攻撃する。

「攻撃しない時はバフかけるしかほぼやることはないな」

 やってみて思ったが、ボス戦だと俺もこれまでと同じように遊撃に回るほうが良さそうだ。ボスが複数体居たり新たにモンスターを連れてこない限り、ルリとエメラだけで十分戦えると感じる。

 俺はウルと同じ役割で戦う方がボスにダメージを与えられるし、結果としてパーティーへの貢献度は高くなる。

「まぁ今回は俺が遊撃しない場合の練習だし、エメラの指示で皆が動く練習でもあるからな」

 そして俺達は安定した立ち回りを見せ、時間をかけてボスの体力を半分ほど削り取った。

「……!」
「そろそろ第2形態かな」
「クゥ!」「アウ!」

 エメラもしっかりとボスの第2形態には少し前から気をつけるようにウル達に知らせていたため、ボスの様子がおかしくなった瞬間全員がエメラの居る場所に集まった。

『ヒヒィィィ゙ィ゙゙ン』

 そしてボスが全身に力を込めたかと思うと、マグマの番人と戦った時のように、地形に変化が現れる。

「壁にトゲが出来たな」
「クゥ」「アウ」「……!」

 ボスは先程より更に力強そうになり、突進を正面から受けてしまえば壁のトゲに刺さってダメージを負ってしまうということなのだろう。

「噛みつきや踏みつけよりも突進がヤバいな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
「エメラ、俺はどうすればいい?」

 少しエメラが悩んだかと思うと、ウルの方を見て俺にも遊撃をするよう伝えてくる。

「よし、じゃあ俺は余裕がある時は魔獣強化のスキルをルリとエメラに使うよ」
「……!」

 話もまとまりボスもこちらに早速突進してきたので、俺達は先程とは違う陣形を取る。

「使ってて思うけど、片手剣って強い、なっ!」
『ヒヒィ゙ィ゙ン』

 ボスを横から斬りつけ、俺が狙われる前にまた距離を取る。

「これだけ使いやすくて強かったら二刀流もしたくなるか」

 片手剣で物理攻撃特化するなら2本持つのは正しい選択だろう。扱いは難しいが、使いこなすことが出来れば火力は単純に2倍だ。

「でも俺はこのまま片手剣1本で戦う方がやりやすいな」

 俺は結構片手剣を両手で持って戦うが、両手剣は片手剣と比べて長く重いことが多いため、両手で持つからといって両手剣にしようとはならないし、双剣にしたら攻撃の手数が増える分隙も大きくなり、自分の動きに精一杯になってパーティーとしての動きが疎かになりそうなためやりたくない。
 なので威力の高い両手剣やもう一本剣を持つよりかは、小さい盾を持つ方がまだ俺には合っている気がする。

「でもこの片手剣スタイルで今以上の動きってどうすれば良いんだ?」

 ルリ達にバフをかけボスを攻撃しながら、自分の成長する先を思い浮かべる。

「上達の余地があるのは空いてる左手の動きだよな」

 正直武器の扱いは、俺より上手い人を見つけるのが難しいと思うくらいやってきたつもりだ。だから俺は片手剣の扱いではなくて、右手だけで片手剣を持っている時の左手の使い方を考える。
 今は盾もないので、何も持っていない左手の状態で成長する先を模索する。

「練習相手になってくれよ」
『ヒヒィィィィン!』

 ボスを片手剣で斬りつけ、いつもならそのまま片手剣を相手に向けながら後ろにステップするところを、今回は敢えて近づき空いた左手でボスの身体を押して自分の身体をコントロールする。

「うーん、別に今のはもう1回斬りつけるか、そのまま下がれば良かっただけだな」

 すぐに今の反省をしつつも、これまでとは違った片手剣術と体術という新しい戦い方が少し見えた気がした。



『ヒヒィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ン!!!』
「……!!」「クゥ!」「アウ!」
「あ、もうボスの体力そんなに減ってたのか」

 自分のことに集中していて気づかなかったが、叫び声が聞こえた後、ボスがウル達に向かって今までとは段違いの速度で突進していく。

「シンプルな身体強化が続いたな。こういうのが結局対処しづらかったりするんだよ」

 俺は間に合わなかったが、ウル、ルリ、エメラはボスをちゃんと警戒していたからこそエメラの場所に集まっていたので、ボスの突進の範囲に全員入ってしまっている。

「魔獣ステータス強化、魔獣スキル強化。ルリ! ここだぞ!」
「アウ!!」

 俺はルリを強化し、ルリも持っている全てのスキルを使って自身を強化して、ボスの突進を自慢の怪力と盾でギリギリ横へ受け流した。

「クゥ!」「……!」
『ヒ、ヒィ゙ィン』

 そして攻撃に失敗したボスの隙を見逃さず、ウルとエメラの魔法攻撃によって堅固なる戦馬は倒されたのだった。


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