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第71話
しおりを挟む「ユ、ユ、ユーマ様! それをどちらで!?」
マグマな置物から出てきた宝石をマルスさんに見せた瞬間、しばらく動きが止まっていた。が、意識を取り戻した途端すごい勢いでこの宝石のことを聞いてきた。
「落ち着いてください。話しますから、まずマグマの番人っていうボスを……」
それからこの宝石を手に入れるまでのことを全て話し、モニカさんにもこの宝石が相当高いものだということは教えてもらったと話す。
「ええ、私もこれまで一度しか見たことがありませんでした。そして、あの事件の時の宝石がまさにこれと同じ種類のものです」
「な、なるほど?」
ということは本当にとんでもない金額なのだろう。
「ユーマさん! こんなことをお願いするのは本当に失礼なことだと思っています。ですがどうか、どうかその宝石を私に売っていただけないでしょうか!」
「はい?」
話を聞いてみると、マルスさんはフォルスさんの行方がずっと気になっていてこれまで他のことを考えられなかったが、それが解決してからは届けることが出来なかった宝石のことを思い出し、今でもそのことを悔やんでいるらしい。
「事故だったとはいえ、宝石を届けることが出来なかったのは事実ですし、今まで私は被害者気分で注文してくれた方のことを考える余裕すらありませんでした。なので次同じ宝石を見つけた時は、絶対に私が加工してもう一度届けようと思っていたんです!」
とても力強く言うマルスさんの手は、白くなるほど握りしめられていた。
「分かりました、これはお譲りします。これを正規の値段で買っちゃったらそれこそまた借金地獄になりますよ?」
「へっ!? ユーマさん!! これはそのように簡単に渡して良いものでは」
「正直これは聞けば聞くほど俺の身に余るものなんですよ。モニカさんに高過ぎて金額が想像つかないって言われてから、今これを俺がどうにかするのは違うのかなとも思ってたので」
「ですが」
「まぁ失くした宝石がまた奇跡的に返ってきたってことにしましょう。てことで、どうぞ」
そう言って俺はこの宝石をマルスさんに渡す。
「ユーマさん、何から何まで本当にありがとうございます!」
「いや、運が良かったんですよ。たぶんフォルスさんの事件も、この宝石をマルスさんが加工して相手に届けるところまでがセットで解決だったんだと思います。考えてみると同じ宝箱からマグマな置物と宝の地図は出てきましたし」
「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうご……」
このままだとずっとマルスさんが感謝する人になってしまうので、聞きたかったことを聞くことにする。
「それで話は変わりますけど、今ゴーレムを作ろうと思ってて、何かオススメの素材とかあります? あと知ってたら作り方も教えて欲しいです」
「ゴーレム、ゴーレムですか。あまり見たことはないですが、外装が金属や石のものは見たことがありますね。他のものでも作れるのでしょうか?」
マルスさんはあんまりゴーレムについては詳しくなさそうだった。
「そうですか、ありがとうございました。また他の人に聞いてみます。加工してくれた宝石も、手を付けず置いててくれた宝石もありがとうございました。じゃあまた来ますね」
「あ、ユーマさん、ちょっと……」
用も済んだので俺は逃げるようにマルスさんの店を出た。
「あ、折角だから原石から宝石のカットまでマルスさんに加工してもらおうと思って職人ギルドでもやってもらわずに原石持ってたんだけど、今から戻るのもなぁ」
またあの俺に対して感謝全開のマルスさんに会うのはしんどいので、せっかくだし今日の夜にでも魔法の研磨機を使って自分でやってみることにする。
「じゃあ前たどり着いた王国領の街まで行くか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
俺たちはクリスタルを使い、王国領のクリスタルに移動した。
「なんかあの時は夜だったから分からなかったけど、街っていうより村っぽいな」
「クゥ」「アウ」「……」
「ここを少し探索するのも良いけど、まずは王国の主要な街まで行きたいよな。たぶんここからの敵は強いけど行けそうか?」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ということでここは一度スルーして次の街を目指す。
「西の街の先にあった連合国領と同じ感じだと、結構近くに他の街はあるはずなんだよな」
ハティを届けた時はモンスターと戦うこともなかったので、すぐに次の街に着くことができた。
「おお!! ついに来たかゴブリン!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ウル達は俺が何に興奮しているか分からないだろうが、俺はやっとこれぞファンタジーというようなモンスターが出てきて喜びを隠せない。
「スライムだけだと物足りなかったけど、ゴブリンが出ててくるならもう完璧だ!」
『ゴブッ』
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ウル達はいつも通りの連携で倒していくので、俺は少し離れたところにいるこちらの様子を伺っていたゴブリン達を1人で倒しに行った。
「やっぱり何体も居るよな」
『ゴブッ』『ゴブ』……
コネファンで戦うのは初めてだが、他のゲームでは何度も戦ったことがあるため、ある程度敵の動きが分かる。
「やっぱ動きも他のゲームと似たような感じだな!」
『ゴ、ゴブ』
「まだまだ倒すぞ!」
気付いたらウル達はとっくの昔に倒し終わっていて、ずっと俺の戦闘を後ろで見ていたらしい。
「ふぅ、久し振りに倒したな。ウル達もお疲れ様」
「クゥ!!」「アウ!!」「……!!」
皆嬉しそうに俺に飛びついてくるが、余程さっきのゴブリン達と俺の戦いを気に入ってくれたらしい。
「まぁ俺はゴブリンとの戦闘は慣れてるからな」
「クゥ!!」「アウ!!」「!!(コクコク)」
ゴブリン戦に関しては、俺の動きは皆の参考になるだろう。それだけ俺はあいつらを倒してきた。
「あ、ドロップアイテムは何なんだろう?」
インベントリを確認するとゴブリンの牙と出てきた。
「流石に耳とかではなかったか」
他のゲームだと右耳を切り落として討伐証明にするなんてこともあったが、ここではそんなグロテスクなことはしなくていいし、使い道がありそうなアイテムでよかった。
「意外と倒せるな」
「クゥ」「アウ」「……!」
俺がゴブリンに慣れているというのもあるが、おそらく30レベルくらいの相手にここまで戦えるなら、次の街まではレベル上げをしなくても良さそうだ。
「あ、またゴブリン」
ちょっと進んだらまたゴブリンが出てきたので、街に行く前にゴブリンの巣を見つけようと思う。
「ここまで俺達ゲーマーが想像しているようなゴブリンを作ったなら、絶対にゴブリンの集落もあるはずだ」
少し道から離れて、ゴブリン達が住んでいそうな場所を探す。
「なかなか見つからないな」
イメージとしては開けた場所に家のようなものを建てて住んでるか、洞窟に住んでるかだと思うが、なかなか見つけることが出来ない。
「ウル達はどうだ?」
「クゥクゥ」「アウアウ」「(ふるふる)」
皆分からないということなので、一度街を目指してまた戻ってくることにする。
「見事にゴブリンばっかりだな」
また立ち塞がってきたのは見慣れたゴブリン達。
「エメラ、ウル、あの木の後ろにいる奴らは任せた」
「クゥ!」「……!(コクコク)」
『ゴブッ!』
「ルリは俺と一緒に目の前の奴らを倒そう」
「アウ!」
目の前のゴブリン達は、後ろの木から俺達を狙う遠距離武器を持ったゴブリンを隠していたのだろう。
こうやって仲間の位置を隠すような小賢しい真似をしてくるのも懐かしい。
「皆おつかれ、このまま進もうか」
「クゥ」「アウ」「……!」
やっぱりゴブリンを相手にするのは楽しい。これまでのモンスター達にはあまりなかった、連携や作戦のようなものを感じる。
「ゴブリンは人間っぽい戦い方をしてくるんだよな」
まだゴブリンしか出てきていないが、これからもっと進むとゴブリンが進化したようなモンスターも出てくると思うので楽しみだ。
「あ、あれかな?」
目の前に見えてきたのは、これまでの街とは違い、壁が高くしっかりモンスターの脅威に備えているような作りの街だった。
「こんにちは」
「ん? おお、プレイヤー様か。良く来たな」
門にいた人に声を掛けると、笑顔で迎えてくれる。
「プレイヤー様は誰でも街に入っていいからな。これからも入るのに許可を取る必要はない」
「そうなんですね。じゃあ入ります」
あの言い方だと、この世界の人達は持ち物のチェックや街に入るための確認みたいなものがあるのだろう。
「デカいなー」
「クゥ」「アウ」「(コクッ)」
全てが大きい、いや、大きいだけじゃなくてゴツいって感じか。モンスターが攻めてきてもこの街の中に居れば安全そうだ。
「先にクリスタル触って冒険者ギルドへ行こう」
魔獣ギルドはここの街にあるのか分からないので、絶対にあるであろう冒険者ギルドを先に探す。
「お、そこだな」
「こんにちは」
「はいこんにちは。おや、プレイヤー様かい。良く来たねぇ」
「はっ、プレイヤー様だからってなんだよ、おい行くぞ」
「そんな態度取らなくてもいいのに。うちの連れがごめんねぇ。あたし達は依頼に行くから、何か聞きたいことがあるなら他の人か受付に聞きな」
「あ、分かりました」
これまでの冒険者ギルドではプレイヤーに対して好意的な人が多かった気がするけど、ここでは俺も1人の冒険者として扱われている気がする。なんなら今の人はプレイヤーが嫌いっぽかったし。
「こんにちは、プレイヤー様ですね。アウロサリバ冒険者ギルドへようこそお越しくださいました」
「こんにちは、さっきここに来ました。ユーマです」
「ユーマ様ですね、本日はどうされましたか?」
この街はアウロサリバって言うのか。
「ここに来る途中に多くのゴブリンに襲われたんですけど、ゴブリンって巣とかあります?」
「はい。独自のコロニーを形成し、集団で生活しております。ですので討伐の際はあまり奥の方に行かないように注意してください。上位種が出てくる可能性があるので」
「分かりました。ちなみにゴブリンの巣を壊すことって誰かの許可が必要ですか?」
「いえ、壊せるのであれば冒険者の方には壊すようお願いしております。しかし、依頼でもない限り報酬はありませんので、労力とは見合ってないかもしれません」
「そうですか。ありがとうございました」
そう言って俺は受付の人と少し話したあと冒険者ギルドを出る。
「まぁゴブリンの巣は潰したいよな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
先程気をつけるようにと言われたばかりだが、そもそも巣があれば潰しに行こうと決めていたので、その気持ちのままさっき入ってきた門に戻る。
「ウル達も今回は厳しい戦いになると思うから注意してくれ」
「クゥ」「アウ」「(コクッ)」
さっきこの街に入る時に挨拶した門番の人にもう一度挨拶して、俺達はまた来た道を戻るのだった。
マグマな置物から出てきた宝石をマルスさんに見せた瞬間、しばらく動きが止まっていた。が、意識を取り戻した途端すごい勢いでこの宝石のことを聞いてきた。
「落ち着いてください。話しますから、まずマグマの番人っていうボスを……」
それからこの宝石を手に入れるまでのことを全て話し、モニカさんにもこの宝石が相当高いものだということは教えてもらったと話す。
「ええ、私もこれまで一度しか見たことがありませんでした。そして、あの事件の時の宝石がまさにこれと同じ種類のものです」
「な、なるほど?」
ということは本当にとんでもない金額なのだろう。
「ユーマさん! こんなことをお願いするのは本当に失礼なことだと思っています。ですがどうか、どうかその宝石を私に売っていただけないでしょうか!」
「はい?」
話を聞いてみると、マルスさんはフォルスさんの行方がずっと気になっていてこれまで他のことを考えられなかったが、それが解決してからは届けることが出来なかった宝石のことを思い出し、今でもそのことを悔やんでいるらしい。
「事故だったとはいえ、宝石を届けることが出来なかったのは事実ですし、今まで私は被害者気分で注文してくれた方のことを考える余裕すらありませんでした。なので次同じ宝石を見つけた時は、絶対に私が加工してもう一度届けようと思っていたんです!」
とても力強く言うマルスさんの手は、白くなるほど握りしめられていた。
「分かりました、これはお譲りします。これを正規の値段で買っちゃったらそれこそまた借金地獄になりますよ?」
「へっ!? ユーマさん!! これはそのように簡単に渡して良いものでは」
「正直これは聞けば聞くほど俺の身に余るものなんですよ。モニカさんに高過ぎて金額が想像つかないって言われてから、今これを俺がどうにかするのは違うのかなとも思ってたので」
「ですが」
「まぁ失くした宝石がまた奇跡的に返ってきたってことにしましょう。てことで、どうぞ」
そう言って俺はこの宝石をマルスさんに渡す。
「ユーマさん、何から何まで本当にありがとうございます!」
「いや、運が良かったんですよ。たぶんフォルスさんの事件も、この宝石をマルスさんが加工して相手に届けるところまでがセットで解決だったんだと思います。考えてみると同じ宝箱からマグマな置物と宝の地図は出てきましたし」
「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうご……」
このままだとずっとマルスさんが感謝する人になってしまうので、聞きたかったことを聞くことにする。
「それで話は変わりますけど、今ゴーレムを作ろうと思ってて、何かオススメの素材とかあります? あと知ってたら作り方も教えて欲しいです」
「ゴーレム、ゴーレムですか。あまり見たことはないですが、外装が金属や石のものは見たことがありますね。他のものでも作れるのでしょうか?」
マルスさんはあんまりゴーレムについては詳しくなさそうだった。
「そうですか、ありがとうございました。また他の人に聞いてみます。加工してくれた宝石も、手を付けず置いててくれた宝石もありがとうございました。じゃあまた来ますね」
「あ、ユーマさん、ちょっと……」
用も済んだので俺は逃げるようにマルスさんの店を出た。
「あ、折角だから原石から宝石のカットまでマルスさんに加工してもらおうと思って職人ギルドでもやってもらわずに原石持ってたんだけど、今から戻るのもなぁ」
またあの俺に対して感謝全開のマルスさんに会うのはしんどいので、せっかくだし今日の夜にでも魔法の研磨機を使って自分でやってみることにする。
「じゃあ前たどり着いた王国領の街まで行くか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
俺たちはクリスタルを使い、王国領のクリスタルに移動した。
「なんかあの時は夜だったから分からなかったけど、街っていうより村っぽいな」
「クゥ」「アウ」「……」
「ここを少し探索するのも良いけど、まずは王国の主要な街まで行きたいよな。たぶんここからの敵は強いけど行けそうか?」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ということでここは一度スルーして次の街を目指す。
「西の街の先にあった連合国領と同じ感じだと、結構近くに他の街はあるはずなんだよな」
ハティを届けた時はモンスターと戦うこともなかったので、すぐに次の街に着くことができた。
「おお!! ついに来たかゴブリン!」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ウル達は俺が何に興奮しているか分からないだろうが、俺はやっとこれぞファンタジーというようなモンスターが出てきて喜びを隠せない。
「スライムだけだと物足りなかったけど、ゴブリンが出ててくるならもう完璧だ!」
『ゴブッ』
「クゥ!」「アウ!」「……!」
ウル達はいつも通りの連携で倒していくので、俺は少し離れたところにいるこちらの様子を伺っていたゴブリン達を1人で倒しに行った。
「やっぱり何体も居るよな」
『ゴブッ』『ゴブ』……
コネファンで戦うのは初めてだが、他のゲームでは何度も戦ったことがあるため、ある程度敵の動きが分かる。
「やっぱ動きも他のゲームと似たような感じだな!」
『ゴ、ゴブ』
「まだまだ倒すぞ!」
気付いたらウル達はとっくの昔に倒し終わっていて、ずっと俺の戦闘を後ろで見ていたらしい。
「ふぅ、久し振りに倒したな。ウル達もお疲れ様」
「クゥ!!」「アウ!!」「……!!」
皆嬉しそうに俺に飛びついてくるが、余程さっきのゴブリン達と俺の戦いを気に入ってくれたらしい。
「まぁ俺はゴブリンとの戦闘は慣れてるからな」
「クゥ!!」「アウ!!」「!!(コクコク)」
ゴブリン戦に関しては、俺の動きは皆の参考になるだろう。それだけ俺はあいつらを倒してきた。
「あ、ドロップアイテムは何なんだろう?」
インベントリを確認するとゴブリンの牙と出てきた。
「流石に耳とかではなかったか」
他のゲームだと右耳を切り落として討伐証明にするなんてこともあったが、ここではそんなグロテスクなことはしなくていいし、使い道がありそうなアイテムでよかった。
「意外と倒せるな」
「クゥ」「アウ」「……!」
俺がゴブリンに慣れているというのもあるが、おそらく30レベルくらいの相手にここまで戦えるなら、次の街まではレベル上げをしなくても良さそうだ。
「あ、またゴブリン」
ちょっと進んだらまたゴブリンが出てきたので、街に行く前にゴブリンの巣を見つけようと思う。
「ここまで俺達ゲーマーが想像しているようなゴブリンを作ったなら、絶対にゴブリンの集落もあるはずだ」
少し道から離れて、ゴブリン達が住んでいそうな場所を探す。
「なかなか見つからないな」
イメージとしては開けた場所に家のようなものを建てて住んでるか、洞窟に住んでるかだと思うが、なかなか見つけることが出来ない。
「ウル達はどうだ?」
「クゥクゥ」「アウアウ」「(ふるふる)」
皆分からないということなので、一度街を目指してまた戻ってくることにする。
「見事にゴブリンばっかりだな」
また立ち塞がってきたのは見慣れたゴブリン達。
「エメラ、ウル、あの木の後ろにいる奴らは任せた」
「クゥ!」「……!(コクコク)」
『ゴブッ!』
「ルリは俺と一緒に目の前の奴らを倒そう」
「アウ!」
目の前のゴブリン達は、後ろの木から俺達を狙う遠距離武器を持ったゴブリンを隠していたのだろう。
こうやって仲間の位置を隠すような小賢しい真似をしてくるのも懐かしい。
「皆おつかれ、このまま進もうか」
「クゥ」「アウ」「……!」
やっぱりゴブリンを相手にするのは楽しい。これまでのモンスター達にはあまりなかった、連携や作戦のようなものを感じる。
「ゴブリンは人間っぽい戦い方をしてくるんだよな」
まだゴブリンしか出てきていないが、これからもっと進むとゴブリンが進化したようなモンスターも出てくると思うので楽しみだ。
「あ、あれかな?」
目の前に見えてきたのは、これまでの街とは違い、壁が高くしっかりモンスターの脅威に備えているような作りの街だった。
「こんにちは」
「ん? おお、プレイヤー様か。良く来たな」
門にいた人に声を掛けると、笑顔で迎えてくれる。
「プレイヤー様は誰でも街に入っていいからな。これからも入るのに許可を取る必要はない」
「そうなんですね。じゃあ入ります」
あの言い方だと、この世界の人達は持ち物のチェックや街に入るための確認みたいなものがあるのだろう。
「デカいなー」
「クゥ」「アウ」「(コクッ)」
全てが大きい、いや、大きいだけじゃなくてゴツいって感じか。モンスターが攻めてきてもこの街の中に居れば安全そうだ。
「先にクリスタル触って冒険者ギルドへ行こう」
魔獣ギルドはここの街にあるのか分からないので、絶対にあるであろう冒険者ギルドを先に探す。
「お、そこだな」
「こんにちは」
「はいこんにちは。おや、プレイヤー様かい。良く来たねぇ」
「はっ、プレイヤー様だからってなんだよ、おい行くぞ」
「そんな態度取らなくてもいいのに。うちの連れがごめんねぇ。あたし達は依頼に行くから、何か聞きたいことがあるなら他の人か受付に聞きな」
「あ、分かりました」
これまでの冒険者ギルドではプレイヤーに対して好意的な人が多かった気がするけど、ここでは俺も1人の冒険者として扱われている気がする。なんなら今の人はプレイヤーが嫌いっぽかったし。
「こんにちは、プレイヤー様ですね。アウロサリバ冒険者ギルドへようこそお越しくださいました」
「こんにちは、さっきここに来ました。ユーマです」
「ユーマ様ですね、本日はどうされましたか?」
この街はアウロサリバって言うのか。
「ここに来る途中に多くのゴブリンに襲われたんですけど、ゴブリンって巣とかあります?」
「はい。独自のコロニーを形成し、集団で生活しております。ですので討伐の際はあまり奥の方に行かないように注意してください。上位種が出てくる可能性があるので」
「分かりました。ちなみにゴブリンの巣を壊すことって誰かの許可が必要ですか?」
「いえ、壊せるのであれば冒険者の方には壊すようお願いしております。しかし、依頼でもない限り報酬はありませんので、労力とは見合ってないかもしれません」
「そうですか。ありがとうございました」
そう言って俺は受付の人と少し話したあと冒険者ギルドを出る。
「まぁゴブリンの巣は潰したいよな」
「クゥ!」「アウ!」「……!」
先程気をつけるようにと言われたばかりだが、そもそも巣があれば潰しに行こうと決めていたので、その気持ちのままさっき入ってきた門に戻る。
「ウル達も今回は厳しい戦いになると思うから注意してくれ」
「クゥ」「アウ」「(コクッ)」
さっきこの街に入る時に挨拶した門番の人にもう一度挨拶して、俺達はまた来た道を戻るのだった。
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